2024春季生活闘争 第1回回答集計結果記者会見

 

連合記者会見

2024春季生活闘争 第1回回答集計結果記者会見

芳野会長・松浦会長代行・金子副会長・安藤副会長・成田副会長・伊藤副会長・清水事務局長・村上副事務局長・仁平総合政策推進局長(2024年3月15日)

芳野会長

 多くの皆様にご参加をいただきまして誠にありがとうございます。5つの部門別共闘連絡会議の代表も今日は同席をさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは交渉に真摯に応じていただいたそれぞれの加盟組合にも敬意を表したいと思います。国際的に見劣りする賃金水準の改善、企業規模、雇用形態、男女間の賃金格差の是正、労働側への分配増の必要性など、従来からの課題に加え、物価高の暮らしへの影響、人手不足の現場への負荷など、足元の状況も踏まえ、積極的な要求を組み立てて要求の趣旨にこだわって交渉を進めていただいたと考えております。回答について正確な数は把握できていませんが、要求に対して満額、あるいは要求を超える回答を引き出した組合数は、昨年以上という印象でございます。本日の第1回回答集計では、1991年以来33年ぶりの5%台であり、日本のステージ転換にふさわしいスタートが切れたという判断をしております。パートタイム、有期契約の労働者についても、フルタイム組合員を上回る6%台の回答となってございます。各加盟組合の交渉において、労使双方が企業の持続的成長、さらには日本全体の生産性向上には、人への投資の拡充が不可欠との認識を深め、真摯かつ有意義な交渉が行われたことは、来年以降の持続的な賃上げにつながる重要な意味合いがあると考えております。2024闘争は経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換をはかる正念場だと位置づけておりました。本日の結果は、ステージ転換に向けたスタートラインです。これからが本当の正念場であると考えております。中小企業や組合のない職場で働く人を含む、「みんなの賃上げ」を実現しなければなりません。これから回答を引き出していく組合、さらに社会全体にこの流れをつなげていくことが、先行した組合、構成組織、そして連合の役割ではないかと思ってございます。精一杯サポートを引き続きしていきたいと思います。なお、昨日14日、中央闘争委員長としてのコメントを公表してございます。本日も配布しておりますので、こちらのほうもご覧いただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

仁平総合政策推進局長

 お手元にプレスリリースをお配りしているかと思いますので、資料をご覧いただきたいと思います。 開いていただいて2ページ目に、ちょっと細かい表なんですけどご覧いただきたいと思っております。1番上のところに、平均方式の①ということがあろうかと思います。本日段階の集計でございますが、771組合、5.28%というのが平均定昇込みの数字でございます。昨年比にしますと1.48ポイント上昇しています。ちなみに中小のほう300人未満のところを見ていただきますと4.42%ということで、これは全体の伸びには追いつけていないわけでございますが、昨年比0.97ポイント上昇しています。それと若干補足しておきたいと思っておりますが、組合数について、昨年がここの表でいきますと805組合が同時期に回答を、平均方式で引き出しておりました。今年771組と若干減ってございます。減っているのは大手と中小でいえば中小のほうの数がちょっと減っています。これはやはり全体的に水準が高水準の回答になっておりますので、中小では今交渉を継続しているところが多いのかなと、こういうふうに受け止めている次第でございます。
 1番最後のページをご覧いただきたいと思っております。表紙にも書いてございますが、時系列にとると正確に取れない部分もございますが、連合結成以来の賃上げ率についてグラフにしております。足元の5.28という数字でございますが、ずっと遡っていただきますと、91年に5.66とございます。まさに33年ぶりの5%超えということになろうかと思います。一番下に、有期・短時間・契約等の賃上げの時給の引き上げの推移ということでございますが、これも今年、連合が時給の集計をはじめてから、組合数、上げ幅とも最大ということになってございます。以上でございます。

金子副会長(金属共闘連絡会議)

 金属共闘代表の金子でございます。共闘内のことを簡単に申し上げたいと思います。金属については、2月の中旬に労使交渉をスタートし、3月13日、一昨日ですね、集中回答日を迎え、大手中心に一旦のヤマ場を迎えたということでございます。水曜日の時点では48組合、大手だけですけれども回答結果についてはすでにご提示しおりますが、今日の時点で申し上げると、さらに交渉が進んで約460組合が妥結に至っているということです。全体としてはこの水曜日からの流れは継続しており、非常に勢いのある取り組みになっていると判断をしております。数字で言うと、加重平均なので単純平均よりはかなりうちの共闘は高めに出る傾向が今年はあります。総額で言うと約2万円になりますし、賃上げ分で言っても1万4000円を超える水準で、現時点で推移をしています。いずれにしてもここまでの状況で言えば、全体として実質賃金を改善する水準、物価上昇を上回る賃上げを獲得しているということであります。これは組合員の生活の安心・安定を確保するという点、または金属産業全体での魅力を維持向上する観点、さらには日本経済に寄与するという、そういったあらゆる面からも十二分な水準になっていると思っております。あわせて、まさにこれ3月1日の決起集会でも申し上げた通り、この春闘を金属共闘が牽引するんだと、こういった気持ちでやっている思いを、今のところ労使がそういった社会的役割をしっかり果たしているんじゃないかと、このように評価しているところでございます。この後は、価格転嫁の実現も含めて、中小がしっかり後を追っていけるような交渉環境を構築して成果に結びつけるように引き続き取り組んでまいりたいと思っております。以上になります。

伊藤副会長(化学・食品・製造等共闘連絡会議)

 化学・食品・製造等共闘連絡会議でございます。本日は都合によりまして、堀谷代表・JEC連合会長に代わりまして、幹事でございます、私、フード連合の伊藤より報告を申し上げます。この共闘連絡会議はですね、UAゼンセン製造部門、JEC連合、フード連合、ゴム連合、紙パ連合、印刷労連、セラミックス連合で構成をしております。産業および企業の情勢は様々でございますが、すべての構成組織におきまして昨年を上回る要求を掲げて闘っております。本日の段階におきまして、大手を中心に回答を引き出しており、連合に報告が上がってる組織でいきますと、110組合がすでに回答を得たと報告をいただいておるところでございます。全体的には回答指定日前に回答引き出したところも含めて、本日段階では要求に対して満額、もしくは満額に限りなく近い、昨年実績を上回る水準の回答が引き出されています。現時点では連合の方針に基づいて、全体では5%以上、ベア分については3%以上がキープできています。今次闘争におきましては、それぞれ各組合が要求にこだわって交渉を展開してまいりました。一方、経営側におきましても、この賃上げの流れといいますか、こういった社会的な要請ですね、物価上昇への対応、それとやはり人材確保・流出防止といった理由から、賃金の引き上げに対する理解を示す企業が多く見られております。経済の好循環につなげていくためにも、賃上げが必要であるという認識は労使ほぼ一致した考えではないかということで、我々の要求に答えていただいたものと判断をしております。これから、中堅・中小の組合が交渉していくわけでございますけども、すでに大手組合に匹敵する回答を早期に引き出したところも一部ございます。これは私どもフード連合におきまして、地方に拠点を置く中小組合で、1万2000円のベアを満額回答で引き出した組合もございます。また、有期・短時間・契約等労働者の賃上げにつきましても、正規社員と同様、あるいは率で上回る回答を引き出していただいたところもございますし、また60歳以上の労働者の賃上げを確保したという組合も報告が上がっております。これから中小組合の交渉が本格化してまいりますが、今現在交渉中、またこれから交渉をはじめるところもたくさんございます。2024春季生活闘争は、まだまだ我々の認識としましては始まったばかりで、これからも闘いが続くと受け止めております。各構成組合とも、やはり今年は中小組合の支援については、例年以上にきめ細かく行っているということも報告も受けております。先行組合の成果を広く波及させるためにも、化学・食品・製造等共闘連絡会議として最後まで共闘して取り組んでまいりたいと、このように思います。私からは以上でございます。

松浦会長代行(流通・サービス・金融共闘連絡会議)

 松浦でございます。流通・サービス・金融共闘、まずUAゼンセン以外のところから状況を申し上げます。確か生保労連さんは、今年はじめて賃金改善の統一要求基準を作った形だと思います。その中で10組合中、生保労連の場合は営業職員と内勤職員という、この2つの形でやられているので、2つ数字が出てくるということになるわけですが、まずはこの賃金改善を統一要求された中で、営業職員、これは比例的な要素がある賃金ですけれど、10組合中7組合が収束をしているということで、様々な営業に関する手当等を含めた賃金改善に関する回答を引き出しています。また、内勤職員については15組合中4組合が収束ということで、こちらについてもベースアップ等々獲得をしていると聞いておるところです。
 それから損保労連さんは昨年からぐらいですかね、統一要求という形でやられております。まだ回答は行われておりませんが、業界ベースで会社側から賃金改善の必要性については認識をしているという回答をいだいてるということでございます。
 それからサービス連合さん。非常にコロナ禍で厳しい状況にあります。国内はインバウンド効果ということがございますが、いわゆる旅行関係についてはやっぱり海外旅行が苦戦をしている、厳しい状況が続いているということですが、現在のところ中核組合の2組織が合意をしていると、そのうちの1組合は満額回答、もう1組合も満額ではないですが前年から大幅な改善という話を聞いております。
 あと全労金さんは3月19日回答指定日ということでございます。
 労済労連さんは3月に入ってから要求を出されているのでまだ交渉中と、そのような状況でございます。
 UAゼンセンにつきましては、昨日も記者会見行いました。記事にもしていただきましたけれど、正社員、それから短時間、合わせて約80万人分の妥結。正社員では127組合というところでございます。加重平均では5.91%、総額ベースで5.91%ということでございます。昨年と比較をするとプラス1.64ですかね、ということでございまして、短時間については104組合で、加重平均で6.45%という率で引き上げがされております。いずれももちろん昨年を大きく上回っておりますし、物価上昇分もクリアできた数字になっておると思います。また、今日の連合の集計を見させていただいて、連合平均を超えることができているので、引き上げに貢献できていると、ほっとしているところでございますが、いずれにしてもこれからがやはり正念場というところで、中堅・中小の交渉に移ってまいるというところです。先行妥結組合の好影響もあり、いわゆる地域的なスーパーマーケット等も昨年よりは大幅に引き上げているという状況が出ておりますので、こうした形で中堅・中小についても、やはり、例えば満額は無理であっても昨年よりは大幅に引き上げるという傾向を続けていくことが重要なんだろうと思っておりますし、やっぱりしっかりした賃上げを行うためには適正な価格転嫁、価格形成ということにも、我々サポートをしてまいりたいと思っております。
 まだまだ、流通・サービス・金融共闘では、これから交渉するというところが多くございますので、このことについても共闘としてサポートしながら進めてまいりたいと思います。私からは以上です。

安藤副会長(インフラ・公益共闘連絡会議)

 インフラ・公益共闘連絡会議代表の安藤です。当共闘連絡会議はインフラ事業など民間で働く仲間だけではなく、公務で働く仲間が多く結集しておりますが、現時点ではインフラ事業を中心とした説明になることをあらかじめご了承いただきたいと思います。今春闘においては、当然インフラ産業においても価格転嫁の取り組みを進めておりますが、ユーザーである皆様に価格転嫁の必要性を十分理解してもらうよう丁寧な説明を行うことが大切と考えております。国民の命と暮らしを守る良質な公共サービスの実現・維持に向けて、その重要性と普遍性を社会的に喚起し、それを支える適正な賃金、労働条件と人員の確保のために、そうした機運を引き続き高めてまいりたいと考えております。
 賃上げについては、満額回答、満額以上の回答を引き出した組合も複数あります。また、従業員の成長を加速させる他、専門性の高い人材を継続的に確保したいという会社側の考え方などもあり、労使で例年よりも早い段階で回答妥結に至った例もありました。この勢いがこの後に続くこと期待しているところでございます。
 次に、有期・短時間・契約等で働く人の処遇改善についてでございますが、月例賃金改善や特別一時金などを引き出した組合も報告を受けています。現時点において回答を引き出した組合は例年に比べると多いもののまだまだ限られており、これから要求を提出する部門・組合もありますが、インフラ・公益部門としては先行組合が引き出した回答を中小組合に波及させ、前進回答を引き出すためにも、それぞれの構成組織で個々の交渉を強力にサポートしていきたいと思います。
 最後になりますが、本年1月1日に発生した能登半島地震では、人的被害も甚大でしたが、電気・水道・ガス・通信・郵便局などをはじめとしたインフラについても大きな被害が発生しており、その復旧に向けて働く仲間が全力で作業をしております。また、被災地の自治体で働く仲間については、自身も被災者または避難者でありながら復旧作業にあたっているところでございます。そうした使命感を持って日夜懸命に働く組合員の期待に応えるためにも、物価を上回る昨年以上の賃上げの実現と、個人消費を通じて経済の好循環に結びつけていくことが大切だと考えております。また、この春季生活闘争の流れを、人事院勧告を通じて公務で働く人へも波及できるよう、今後の労使交渉においても力強く取り組みを進めていきたいと思います。私からは以上でございます。

成田副会長(交通・運輸共闘連絡会議)

 交通・運輸共闘連絡会議、運輸労連の成田でございます。よろしくお願いします。交通・運輸共闘連絡会議では共通の課題としては慢性的な労働力不足にどう対応していくかということだと思っています。そこで春闘交渉の報告をさせていただきますが、人流・物流とを少し分けながら話させていただきます。
 人流では、国内旅行需要の回復、そしてインバウンド増加等により、コロナ禍前の9割程度まで、企業業績、利用者数が回復しており、鉄道旅客の3社は、報道にもあるように大幅な賃上げ、そして昨年実績や物価上昇率を上回る内容を引き出しております。民間私鉄も過去最高益となる会社も多く、大手組合は物価上昇を加味したベアを獲得し、これも過去最高水準の単組もあるなど、昨年を上回る賃金改善が勝ち取られています。航空関係も大手企業で1992年以降最大のベアの獲得がされています。タクシーはこれからになりますが、運賃改定が15~20%アップしており、賃上げの機運は高まっているという報告を受けているところであります。
 そして物流、運輸ですが、労働時間規制による2024年問題への対応を目前に、燃油費の高止まりや物価高による取り扱い物量の減少に加え、適正料金、運賃の収受がなかなかまだまだ進まないなどもあり、企業収益が圧迫する厳しい状況ではありましたが、人への投資に重点を置き、労働条件の改善から人材を確保することをベースに全力を尽くして交渉を行ってまいりました。私の運輸労連の大手の組合は昨日ヤマ場を迎えました。解決状況は、賃上げ方針1万5000円にはなかなかおよびませんが、多くの組合で前年を上回る賃金引き上げができております。中小においても、一部ではありますが、昨年、一昨年の妥結が3000円台、4000円台の妥結の組合も、1万円を超える妥結をしている組合も多く出ており、1単組ですが2万円を獲得している組合もあり、他産業の大幅な賃上げ、満額獲得の解決には追いつけませんが、大きく前進をしていると考えています。中小組合の春闘はこれから本番を迎えますが、この流れを全体に波及させるよう取り組んでいきたいと思いますし、そして次年度以降も継続した賃金引上げにつなげていきたいと考えています。以上であります。

質疑応答[1]
Q.(テレビ東京・オノ氏)

 テレビ東京のオノと申します。芳野会長にお伺いします。今回、非常に予想を超える数字が出たかと思いますが、実際我々の生活に関係するのは実質賃金です。各産別の方は物価上昇を超えるというコメントもいただいてるんですけれども、芳野会長は、今回の結果が物価上昇をしっかり超えられるような結果になっているのか、生活者が安心して消費をできるようなものになっているという感触を得ているのか、そこについての率直のご感想をお願いいたします。

A.(会長)

 はい、ありがとうございます。今日の第1回集計結果を見てみますと、33年ぶりの5%超えという結果ですので、これまで労使が真摯な交渉の結果を出していただいたということで、それなりの成果ではないかという判断をしています。この間、新たな経済社会へのステージ転換ということを申し上げてきましたが、まさしくその第1歩となったのではないか、そしてこの結果が今後消費につながっていくことを期待したいと思います。ただ、これからが中小・小規模事業所、そしてこの間も地方が重要だということを申し上げてきましたけれども、3月末、そして4月いっぱいまで交渉が続くかと思いますので、今日の時点ではそれなりの水準ではありますけれども、やはり簡単なことではないと思いますので、引き続き今日を起点に気を引き締めながら中小・小規模事業所のサポートを徹底的にやっていきたいと考えています。

Q.(テレビ東京・オノ氏)

 ではやはりですね、生活者の実感、実質賃金を超えられるかっていうのは、今回の大企業中心ではなくて今後にかかってるという?

A.(会長)

 そうですね、はい。すべてが終わってからだと思います。

質疑応答[2]
Q.(モリ氏)

 フリーの記者のモリと申します。芳野会長にお尋ねします。今回のこのかなりいい結果は、賃上げが必要だと、それから人への投資が必要だということを、労使の認識が一致したということにあると思うんですね。では、一昨年まですごく低い賃上げがずっとこう鍋底のように続いたんですが、これはどういう認識に囚われていたんでしょうかね、労使は。 それともう1つ、満額および満額を超える、要求以上の回答が出てますけども、これはどう見たらいいんでしょうか。組合の要求が低すぎたのか、あるいは経営者の気前が良すぎたのか、あるいは他に何か理由があるのか、どう見ておられるのか。この2点お尋ねします。

A.(会長)

 ありがとうございます。これまでも労使の考え方は一致していたのではないかと思いますが、昨年から今年にかけて、さらに人への投資が非常に重要だということが強く結びついたのではないかと考えます。満額以上の回答が出ていますけれども、やはり今人手不足の問題もありますし、また初任給も上がっていますので、初任給を上げることによって、初任給是正も含めておそらく要求以上の回答が出ているかと思いますので、それぞれの労使交渉の中で職場の実態を含めて真摯な協議・交渉の結果ではないかと考えています。

質疑応答[3]
Q.(NHK・ゴトウ氏)

 NHKのゴトウです。芳野会長にお伺いしたいんですけれども、これからがまだスタートだっていうことをおっしゃってくださったと思うんですが、まさにその中小企業の賃上げに向けて、何か現時点で中小企業から、このすごい高い水準の賃上げが続いていることについてどういう声が上がってらっしゃるのかっていう、何かもし聞いてらっしゃる声があれば伺いたいなっていうところと、改めて、サポートされていくってことですけれども、どのようにサポートされていこうとお考えなのか、この2点をお伺いできればと思っております。

A.(会長)

 ありがとうございます。中小からの声については、もしかすると仁平さんのほうがいいかもしれませんが、この間連合に上がってきているのは、やはり労務費を含む価格転嫁がなかなか進んでいないということで、賃上げの原資が確保できないという声は上がってきています。ガイドラインも出ましたけれども、それがすぐ職場の中で周知徹底できるかというと、なかなかそれもそう簡単にはいかないと思いますので、連合としては引き続き労務費を含めた価格転嫁ができるように職場に周知をしていくということが第1義としてあるかと思います。それから、これから中小が本番になっていくわけなんですが、今回の流れを中小、また労働組合のない職場にどれだけ波及できるかということが、私たち連合に課せられた使命だと思っていますので、4月に集会・街宣行動もありますけれども、もう1つ何か波及効果を発揮できるようなものができないかどうか、現在検討中です。そして、是非マスコミの皆様にお願いしたいんですが、この第1回集中回答が終わりますと春闘の報道が比較的少なくなってまいりますので、3月末、4月も春闘の報道をたくさん出していただけるとさらに波及効果が現れていくのではないかと思いますので、連合としてもしっかり行動してまいりますが、ぜひ取材を続けていただければと思います。よろしくお願いします。

質疑応答[4]
Q.(日経新聞・ハンザワ氏)

 日経新聞のハンザワと言います。芳野さんと松浦さんにちょっとお聞きしたいと思います。初任給についてちょっとお聞きしたいんですが、先ほどもちらっとおっしゃいましたけど、外食とかすごく初任給が上がってるんです、今回ですね。ちょっとお聞したいと思います。初任給ですね、去年も上がってますけど、今年それ以上に上がっていて、広がりもあって、ベア以上に上がっているような企業もあります。先ほど芳野さんおっしゃいましたけど、これをどう評価するのか、先ほど賃金カーブを維持するために、若手にたぶん配るからそれが底上げになるから上がるんじゃないかと話ありましたけど、これ来年以降ですね、今年たくさん初任給を上げたことで来年以降もそのプラスの影響はあるのか、もしくは逆に若手のほうに傾斜をして配分するんで、そこから上の中年とかですね、中堅が抑えられて、結局あまり効果がないんじゃないかっていう見方もあるんですけど、そのあたりちょっとお二人に伺えますか。

A.(会長)

 はい、ありがとうございます。まず初任給については、やはり労働力人口不足が非常に大きいと思いますし、今やはり安い日本と言われているだけあって若い人たちがどんどん海外に出ていってしまっているという状況もありますので、企業からすれば優秀な人材をきちっと採用していきたいということがあるかと思います。その意味で初任給を上げていくということがあるのではないかと。来年は来年でおそらくそれぞれの企業も初任給は、同業他社の初任給の水準を見ながら決定していくかと思いますので、それはまた来年連合としても見ていきたいと思います。そして初任給が上がることによって、やはり賃金カーブの是正が行われ、中堅のところもある意味、良い影響が出てくるのではないかと、そこを期待したいと思います。

A.(松浦会長代行)

 初任給の関係ですね、やっぱりこれは人材確保、優秀な人材を確保したいという企業の経営者の思いの表れだろうと思います。ただ、やっぱり賃金カーブというものを考えていくということと、それから働く方のニーズがどうなっていくかというところで、いわゆるその転職思考の高まりだとかいうところもですね、どうなっていくか考えていかなきゃいけないというところなんだろうと思います。ですから、あまり賃金カーブが寝すぎると、これはやっぱり人材の育成という部分でも課題が出てくる可能性があると思っていますので、今はちょっと加熱気味、ちょっと初任給引き上げ競争みたいになっている部分もあるのかと思っていますが、今の上がり方のレベルということで言うと、おそらく日本の賃金カーブの立ち方っていうのは先進国の中では非常に立っているほうなので、少しカーブが寝る程度ということで収まるのか、あるいは逆に言うと人材の育成の仕方というところにこれから企業は目を向けていかなきゃいけない、それではその40代なら40代の人、中堅どころに求められる能力っていうのはどういうことになっていくかっていうことを本当に企業は見つめていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。

質疑応答[5]
Q.(朝日新聞・サワジ氏)

 朝日新聞のサワジです。仁平さんに2点をお伺いしたいんですが、1点目はデータの見方として、先ほどから33年ぶりの5%超えということが強調されているんですけれども、ここで示されているデータ、昨年までは最終6月末時点の数字で、今日は3月半ばの数字なわけですね。例年この3月半ばの数字からだんだん、だんだん、こうダラダラと下がっていくというのが例年の傾向ですけれども、今年の場合、6月末時点でも5%を超えると見通しておいていいのかどうかっていうのが1点目の確認です。
 あと、2点目が、これちょっと早いかもしれないんですが、来年以降を考えた時に、今まで仁平さんは、今の連合は過年度物価上昇プラスアルファという考え方を採らないんだと何度かおっしゃってきたと思うんですが、昨年、今年と見ると結果的にはその過年度物昇を意識した春闘のほうがむしろ大きな成果を得たというようにも評価できると思うんですが、今後、物価が落ち着いていくかもしれないという状況の中で、来年以降どういうふうに考えていくのかっていうあたり、ちょっと早いかもしれませんが、現時点で何かあれば教えてください。以上に2点お願いします。

A.(仁平総合政策推進局長)

 まさに4ページ、サワジさんが言っていただいた表でございますが、実は本当は真ん中の表みたいに、同じように同じ時点を取れれば非常に比較しやすいんですけど、ちょっとこの過去のデータっていうのはなかなかつなぎ合わせが難しいもんですから、全部2023年以前のものについてはまさに6月の最終集計のところについてつなぎ合わせました。大手のところを中心に今回答が出ていて、今回の結果もやっぱり大手のほうがすごく率も高いということがあって、今後、確かにどれだけ維持できんのかということはこれやってみなきゃ分からないと思っておりますし、会長が申し上げたように、やっぱり中小が同じように取れるように、しっかりとここはやっていくのが我々の運動というか、これからの取り組みだと思っています。ただ、人員のところをちょっと見ていただきますと、実は現段階で144万人、定昇込みの平均のところでいきますと、例年最終の集計のところの人員のウェイトでいきますと大体300万人を切るくらいな感じですから、ちょうど半分くらいまで今人員ベースでいくと来ているというのがこの時点、組合数ではまだまだ5000組合くらいはやらなきゃいけない、これから中小がまさにこれからが本番ということなんですけど、加重平均で見れば半分のところまで来ているということでありますし、その数字が今5.28ということでございますので、それなりの期待を持って我々としても推移をしっかりと見守りたいし、集計も都度都度していきたいと思っております。
 あと来年の話は、また来年改めて、今年の総括も含めてやっていきたいと思っておりますが、これも言われるように、去年の1月が消費者物価でいくとピークで4%を超えたところでございますけど、今足元2%台まで落ち着いてきていて、そういう意味でその高さだけの話をしていけば物価の上昇加速局面においてはそういう理屈を使うことも1つあったのかもしれませんけど、やっぱり落ち着いていく中では改めてそういう意味では実質賃金がちゃんと暮らしを良くしていくっていう意味では、物価を超えてということは1つ大事な要素として我々も4つの要素の1つとしては見ているわけでありますから、ただ物価分だけ取れればいいということは、落ち着いていく中でですね、そういうことではなくて、やっぱり経済も安定する中で働く人の暮らしが中長期的に安定して良くなっていくという、やっぱり流れを作っていかなきゃいけないんじゃないかなと、そういう総括も含めて次年度につなげていきたいなと思っておる次第でございます。

質疑応答[6]
Q.(シカタ氏)

 シカタと言いますが、2点ほどお聞きしたいんですが、まずこの回答集計表の2ページのベアのところですが、大手の場合、大体大手の場合は3.72で、ほぼ僕の見通しではおそらく実質賃金を確保してさらに働き方とかそういうものを確保するんではないかと思うんですが、300人未満ですね、これは2.98%なわけです。それで昨年との上げ幅を見ても、大手の場合は大体1ポイントぐらい上がっているのに、中小の場合は大体0.8ポイントという調子なんですよ。おそらく中小の場合、これから回答が出るにしても厳しい回答が出ると思いますので、それで今問題は中小の支援をどうするかということです。例えば、皆さん、組合のないところも広げるって言われますけれど、連合で見るとベア獲得っていうのは去年よく行っても52%ぐらいなんですよ、1年前が40%、その前は20%ぐらいでね、言ってみればまだ連合の産別の中でベアを取っているのは半分しかないわけです。そういう点ではまず未組織労働者、職場に組合がない人に賃金を広げるんじゃなくてね、連合の産別をいかに、要するにこのベア獲得でサポートしていくかと。先ほど伊藤さんが言われたけれど、今年はきめ細かくやっているということで、芳野会長もこれまでとは違った中小支援があるんではないかということで、具体的に例えばですね、この調子で行くと中小の場合は実質賃金割れになるかもしれませんので、少なくとも交渉で昨年以上、もう「昨年以上」っていうのは経団連まで言っているわけですから、で、さらに言えば物価、目減り賃金をするような水準は要するに妥結できないというのか、もしそういうものができれば、産別本部あるいは産別の地方本部がそういう職場に赴いてオルグをしたり、経営者にものを言ったり、あるいは場合によれば交渉まで乗り込んでいくようなね、そういうような工夫も1つ必要ではないかと思うんですが、何かこれから検討されるってことで、そういう点ではかなりきめ細かさの中身で水準については産別指導や地方組織の指導が重要になってくると思いますので、そのあたりについての見解をお聞きしたいということです。
 それから、松浦会長にお聞きしたいのが、連合の要求を見ると3%以上なわけです、ところが「以上」の中で蓋を開けてみれば各産別とも物価以上に、人への投資とかですね、あるいは働き方改善を取っているわけです。そういう点ではベアミニマムの3%以上ではなくて、ゼンセンの場合は必要最低限に物価分にプラス生活向上分というのを入れているわけです。で、そういうあたりでかなり満額回答も組織の半数ぐらいに達しているし、そういうその要求のあり方について、要するにその物価ミニマムだけでいいのかどうかね、そのあたりについての今年の生活向上分を入れた効果と手応えというのか、そのあたりについてお聞きしたいと思います。

A.(会長)

 はい、ありがとうございます。まず、中小、また労働組合のないところへの波及について連合としてできることは、やはり労務費を含めた価格転嫁ガイドラインがどのくらい職場に周知できるかということになるかと思いますので、引き続きこの運動を強めていきたいと考えています。今ご指摘あったように、それぞれの加盟組合に構成産別が交渉にまで出向いてということは、それぞれの構成産別のオルガナイザーの皆さんがしっかり加盟組合のサポートをしているのではないかと思います。

A.(松浦会長代行)

 はい、ありがとうございます。中小の話はまさにUAゼンセンがやっている行動にほぼ近い話です。要求の話ですけども、私、2023年の要求の話の時にUAゼンセンの記者会見で申し上げたように、この連合の3%っていうのは数年間ずっと2%でやってきたものを3%にっていうペースチェンジをするんだと、そのように認識をしてますよと、ですから2024年に物価がもし1%台に収まっていたとしても連合は3%を続けていくんだと、そういう認識で私はおりますよ、と申し上げてまいりました。その中でやはり今年こそ実質賃金向上、あるいはすべての産業でやっぱり一緒にできる数字をやっていこうっていうことで3%以上ということになったと思っています。UAゼンセンの場合は非常にパートタイマーが多く、半分以上の組合員でございますので、やっぱりパートタイマーの生活実感等々を踏まえると、格差是正の意味合いも込めて、それはより高めの要求をさせていただいているということでございますので、やっぱり大事なのは来年以降ということになるんだろうなと思っています。

質疑応答[7]
Q.(毎日新聞・トウカイリン氏)

 毎日新聞トウカイリンです。2点ほどお願いします。誰に答えてもらうのかな、金子さんと会長かな、ごめんなさい、ちょっとお答えお願いしたいんですけども。金子さんのほうになんですけども、何度も聞かれてて申し訳ないですが、中小の今後の見通しについてちょっと思うところあればお尋ねしたいと。中小という意味において、中小というか、今日、全労連も集計の結果を公表していたんですけども、全労連の金属機械ってJMITUってちっちゃなところなんですけども、ほぼ中小が多いと思うんですよね、で、かなり数字的には良くなかった、良くないって言ったらおかしいけど、彼らの中では良いって言ってるんですけども、自動車の大手と…自動車というか、金属の大手と比べたらまあ半分ぐらいの額であったと。そういう状況を見ると、やっぱり今後の中小の賃上げは相当厳しいのが続くのかなと思います。で、金子さんは、実態、中小の部分をどう見てるかっていうのをお尋ねしたいです。
 あと、先ほどから松浦さんもおっしゃっていましたけども、その初任給含め若手への賃上げがちょっと加熱気味だとおっしゃっていて、僕もそうだなと思うんですね。で、実際今回上がった、上げた上げたって言っているところも若手に傾斜しているもんですから、中高年以上はほとんど上がんないっていうところがあるということをちょっと何箇所か聞きました。となると、やっぱりその物価上昇の中で若手を上げたと言っても、それは企業の人手不足対策であるとすればね、実際働いてる労働者が生活改善になってないというか、中高年以上が、全く繋がってないという厳しい状況も出てくるんだろうなと、ちょっと松浦さんの話も聞きながら思っていたんですけども、そのへん、賃上げの構造を連合としてちょっと調査するとかですね、分析する、そういった考えがあるかっていうことを会長にちょっとお尋ねしたいと思います。以上2点です。

A.(金子副会長)

 トウカイリンさん、ありがとうございます。一昨日大手の集計結果を報告しましたし、今日も出ている数字ってかなり加重平均ですから高めに出ているのは事実なんですね。これ単純平均すると実際の数字はもっと低いのは事実ではあります。で、今後ですね、成行きでいけば、中小が大手と同じような獲得をできるとは正直思っておりませんので、以前から申し上げているように交渉環境をいかに高めていくかといったところが具体的な対策になるんじゃないかなと思っています。特に製造業で言えば、昨今、非常に話題になってるというか、関心の高い、価格転嫁の部分が、要は「無い袖は振れない」と、いかに言わせないかと。思い切って中小の経営者の皆さんも人への投資をしていただける状態にどれだけできるかといったところが、今後の成果とかなり連関性が高いのではないかと思っていますので。組合からも、価格転嫁を、上に対してしっかりもの申して、下に対してしっかり対応すると、こういったことができる、しているのか、していないのかとか、やるような働きかけを今かなりギアを上げて取り組んでるということです。これをやるとですね、組合のあるところというか、取引先には必ずしも組合のあるところばかりじゃなくて、むしろ無いところが多いですから、中小に行けば行くほど。我々の直接的に手の届かなかったところも、価格転嫁ということを通じて製造業のサプライチェーン全体にこういった交渉環境の土壌を作っていけるっていう利点もあるだろうと思っていますので、そういう意味でも少し力を入れてやっているというところです。ただ、賃金交渉と価格交渉のタイミングがちょっと前後するところがやっぱり多々出てきますのでね、価格転嫁しますよと契約更新した後に賃金交渉ができていると、もっと堂々とやれるんですけど、それを待っていると少し交渉結果が遅れてしまいますので、最低限ですね、OEMを通じてしっかり価格転嫁がされるんだということが、中小を含めた経営者にしっかり確認というか認知できる状態までなんとか持っていきたいなと思っております。そういうことをすれば、水準はちょっとどうか分かりませんけれども、しっかり労使が納得した賃金獲得、賃金引上げがはかれるんではないかと期待して今取り組んでいるところでございます。

A.(会長)

 はい、ありがとうございます。今回は第1回の集計で先行組合の集計ですので、2024春季生活闘争の取りまとめのときに、初任給の水準がどうだったのか、カーブがどういうふうに変化をしたのか検証をしていきたいと思います。

質疑応答[8]
Q.(ブルームバーグ・ヨコヤマ氏)

 ブルームバーグのヨコヤマです。芳野会長にお願いいたします。来週、日銀決定会合が予定されているということで少し関連して伺いたいと思います。本日の結果、物価高を上回るような非常に強い結果となりましたが、日銀の掲げてまいりました物価と賃金の好循環、こちら会長ご自身は達成されたというふうに感じていらっしゃいますでしょうか。

A.(会長)

 はい、ありがとうございます。日銀からは年に2回経済状況の報告をいだいておりますが、先ほどから申し上げているとおり、今は先行組合の集計結果、第1回の集計結果ですので、全体を見てからということになるかと思いますので、コメントは差し控えたいと思います。

質疑応答[9]
Q.(朝日新聞・カタダ氏)

 朝日新聞のカタダです。芳野会長に2点お伺いします。1点目がですね、非正規労働者の賃上げ率が一般組合員を上回っていると思いますけど、その要因と格差是正に向けた取り組みの評価を教えてください。 もう1点が、はじめのほうに戻るんですけども、33年ぶりの賃上げの実現というところで、人手不足であったり、改めて、要因、背景の分析を教えてください。

A.(会長)

 はい、ありがとうございます。非正規も含めてですけれども、やはり労使の真摯な交渉の結果だったと思います。やはり新たなステージ転換に向けてということが労使で共通の認識として結果に現れたのではないかと思います。非正規についても、やはり連合としては企業規模間格差もそうですし、雇用形態間もそうですし、男女間格差もそうですし、格差の是正については方針の中で強く掲げていましたので、その中で雇用形態間格差の是正ということで結果に現れたのではないかという判断をしています。

質疑応答[10]
Q.(ロイター通信・カジモト氏)

 ロイター通信のカジモトと申します。賃金の中でベアがですね、賃金の基調をはかる上で重要だということをかねがね言われていたと思うんですけども、今回3.70%っていうのは正直ちょっと高いなという印象を受けたんですけども、実際連合さんとしてはこの3%以上という目標を掲げてこられましたけども、この結果について、途中経過ですけどもどのようにご覧なられてますでしょうか。

A.(会長)

 ありがとうございます。これまでも何度も言っているように、各組合の労使双方がやはり人への投資も含めて企業の持続的成長ですとか生産性向上等を考えての結果ではないかと思いますので、この結果は連合として真摯に受け止めたいと思います。ただ、先ほども申し上げましたように、今回第1回の集計結果ですし、これからが中小・小規模事業所が本格化していきますので、現段階ではそこの取り組みを強化していきたい、この好循環を維持していきたいと考えています。

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