労働・賃金・雇用

 

2016春季生活闘争方針

第71回中央委員会確認/2015.11.27
はじめに
1.「デフレからの脱却」と「経済の好循環実現」をめざす

 2016春季生活闘争は、「総合生活改善闘争」の位置づけのもと、国民生活の維持・向上をはかるため、労働組合が社会・経済の構造的な問題解決をはかる「けん引役」を果たす闘争である。20年近く続くデフレからの脱却には時間を要するが、日本経済の「デフレからの脱却」と「経済の好循環実現」のためにはすべての働く者の賃金の「底上げ・底支え」と「格差是正」の実現が不可欠である。そのために、月例賃金の改善にこだわる取り組みを継続するとともに、あらゆる手段を用いてそれぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みを展開する。春季生活闘争が持つ日本全体の賃金決定メカニズムを活かしつつ、とりわけ中小企業で働く仲間や、非正規労働者の処遇改善に向け、より主体的な闘争を進め、大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動に挑戦する。

2.「世界一働きやすい国」をつくろう

 政府は「日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にする」などサプライサイドに偏った成長戦略を掲げ、労働者保護ルールの改悪をはじめとした規制緩和を強引に推し進めようとしている。こうした「人を犠牲にした経済成長」は、一部の企業の短期的な利益をもたらしても、持続可能で自律的な経済・社会の発展にはつながらない。われわれはデフレと低成長の「失われた20年」の間に「合成の誤謬」に陥った経緯を忘れてはならない。これら政府や経済界の一部の動きに対して厳しく対峙する必要がある。
 連合は、社会・経済の活力の原動力であり、付加価値創造の源泉である「働くこと」の価値を高め、働く者が安心して働き続けられる環境整備こそが政府の成長戦略の核心であることを訴えていく。また、短期的な利益追求に偏った企業運営から、生産性三原則の考え方や企業倫理を重んじる企業運営への転換を求めていく。

3.日本が抱える構造問題への対応

 わが国は、急激な超少子高齢化・人口減少という人口動態の変化に直面している。経済成長の担い手である労働力人口の減少は、潜在成長率を下振れさせ、経済規模の縮小をもたらす。また、社会保障制度の持続可能性にも大きな影響を及ぼすなど、社会のあらゆる面に大きな影響を与える。このような社会の構造変化のもとで、持続可能な経済・社会を維持していくためには、多様な人材の活躍とそれを包摂する社会の構築が不可欠である。限られた人財の活用について、社会全体の問題として検討を加えるとともに、人材の確保・育成のための「人への投資」を求めていく。労働力不足において生産性の向上と、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の両立をめざし、労使での議論とともに、あらゆる場を活用した社会対話など社会的運動を展開する。

4.働く者・国民生活の底上げをはかるために果敢に闘おう!

 労働者を労働力ではなく人として尊重する社会の実現のためには、労働組合自らが仲間を増やしすべての職場や地域で集団的労使関係を拡大していくことが重要であり、組織拡大に全力で取り組む。連合・構成組織・地方連合会・単組がこれらの観点について意思統一し、社会の不条理や格差の拡大を許さず、働く者・国民の生活の底上げをはかるために「すべての働く者の処遇を改善! 『底上げ・底支え』『格差是正』で経済の好循環実現!」をスローガンに掲げ、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて果敢に闘おう。

I.2016春季生活闘争を取り巻く情勢
1.世界経済

 米国の景気は、堅調に回復の経路をたどっている。また、ユーロ圏経済は景気の回復が続いており、総じて、世界経済は引き続き緩やかな拡大基調を維持しているものと考えられる。しかし先行きについては、中国をはじめ新興国の景気の減速傾向が見られるほか、2015年内ともいわれる米国の利上げによる金融市場の反応の行方、EU圏の経済動向、中東など地政学的リスクなど、今後の動向やわが国経済に与える影響について注視が必要である。

2.日本経済
  • (1)日本経済は2015年6月の上海株式市場の暴落に象徴される中国経済の落ち込みにより、新興国の経済減速の影響が世界経済の先行き不透明感へとつながり、国内経済への影響が懸念される状況となっている。
  • (2)企業業績は、上場企業の決算見通しの発表によれば、全体としては増収・増益動向にあるものの、産業ごとや、同一産業内においても個別企業ごとに業績にバラツキが見られる。
  • (3)物価はここのところ横ばいとなっている。これらの物価の低迷には、原油などのエネルギー価格の下落の影響が色濃く現れており、2015年度平均の消費者物価上昇率は、日銀の予測は+0.1%(除く生鮮食品)とされている。しかし、生鮮食品を加えると概ね0.3%ポイント上昇しており、生活実感としては物価が上昇している。
3.雇用情勢と賃金の動向

 雇用環境は改善している。9月の有効求人倍率は1.24倍、完全失業率は3.4%と完全雇用状態ともいわれる状況にまで至っている。正社員の有効求人倍率はいまだ1倍を切る状況となっているが、2014年7月以降の求人数の増加率は、非正規を上回る状況となっている。しかしながら、いわゆる「不本意非正規」は、約300万人を上回っており、非正規から正社員への転換が大きな課題となっている。
 賃金の動向は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」における賃金指数では、対前年同月比で見れば、プラスとなっているものの、消費税増税影響が剥落したに過ぎず、賃金水準そのものの回復には至っていない。
 連合賃金レポートでは、標準労働者の1997年賃金水準との比較をパーシェ指数で行っているが、いまだ復元がはかられてはいない。

II.2016春季生活闘争の取り組み内容
1.基本的な考え方

(1)「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みの強化

 月例賃金にこだわった闘争を進めてきたことで賃金の引き上げを実現してきたものの、要求の趣旨からすると十分な水準には至っていない。また、格差の是正も実現していない。したがって2016春季生活闘争においても月例賃金にこだわり、賃上げの流れを継続させる必要がある。
 「底上げ・底支え」「格差是正」をめざし、従来の取り組みに加え、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配に資する公正取引の実現を重視し、その効果が広く社会に浸透する取り組みを行う。
 「デフレからの脱却」と「経済の好循環実現」をはかるためには、マクロの観点から雇用労働者の所得を2%程度引き上げることが必要である。また、人口動態の変化を背景として人手不足感は強まる一方であり、とりわけ中小企業において、企業の存続と生産性向上のためには、魅力ある産業・企業の構築が不可欠であり「人への投資」を求めていく。
 そして、雇用安定の促進や処遇改善など非正規労働者の総合的な労働条件改善の取り組みや、企業内最低賃金協定の締結拡大や水準の引き上げ、適用労働者の拡大を法定最低賃金の引き上げにつなげ、賃上げの社会的波及をはかることも重要である。
 こうした観点から、賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みを強化する観点から2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする。

(2)賃金水準改善の社会的波及を高める取り組み

 それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みに関する情報開示を進めるとともに、春季生活闘争が持つ日本全体の賃金決定メカニズムを活かしつつ、とりわけ中小企業で働く仲間や、非正規労働者の処遇改善に向け、より主体的な闘争を進め、大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動にチャレンジする。
 また、取引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や、産み出した付加価値の適正な価格での取引が展開される取り組みに総合的に取り組む。そのために、連合は、取引問題に関する相談窓口として「価格転嫁ホットライン」を継続するとともに、経営者団体とも認識を共有化する取り組みを強化する。

(3)超少子高齢化・人口減少社会を踏まえた働き方と処遇のあり方の見直しを

 労働力人口が減少していく中で国民生活を維持し向上をはかるには、生産性向上が必要である。そのためには、マーケットが求める商品やサービスを提供し、かつ、その価値に見合う価格で取引が行われることが必要である。加えて、働く者一人ひとりがそれぞれの能力を活かしながら生産性を高めていくこと、言い換えれば、すべての仕事がディーセント・ワークであること、そして仕事に応じた適正な処遇を確保することが求められる。
 2016春季生活闘争では、働き方と処遇のあり方の見直しに着手するとともに、労使協議を通じてその必要性を確認する。

2.具体的な要求項目

(1)賃上げ要求

1)月例賃金

  • [1] すべての組合は月例賃金にこだわり、賃金の引き上げをめざす。要求の組み立ては、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を確保したうえで、「底上げ・底支え」「格差是正」にこだわる内容とする。
  • [2] その際には、賃金水準の上げ幅のみならず、めざすべき賃金水準への到達など「賃金水準の絶対値」にこだわる取り組みを進める必要がある。構成組織はそれぞれの産業ごとに設定する個別銘柄の最低到達水準・到達目標水準を明示し、社会的な共有に努める。単組は組合員の個別賃金実態を把握し、賃金水準や賃金カーブを精査しゆがみや格差の有無を確認したうえで、これを改善する取り組みを行う。
  • [3] 賃金制度が未整備の組合は、構成組織の指導のもと、制度の確立・整備に向けた取り組みを強化する。

2)企業内最低賃金

  • [1] すべての組合は、企業内最低賃金を産業の公正基準を担保するにふさわしい水準で要求し、協定化をはかる。また適用労働者の拡大をめざす。
  • [2] すべての賃金の基礎である初任給について社会水準を確保する。
    18歳高卒初任給の参考目標値……168,800円

3)一時金

月例賃金の引き上げにこだわりつつ、年収確保の観点も含め水準の向上・確保をはかることとする。

(2)規模間格差の是正(中小の賃上げ要求)

 企業数の99.7%を占め、全従業員の70%を雇用する中小企業*1の経営基盤の安定と、そこで働く労働者の労働条件の向上および人財の確保・育成は、日本経済の「底上げ・底支え」「格差是正」の必要条件であり、健全かつ自律的持続的な発展にとって不可欠である。
 「底上げ・底支え」「格差是正」の実現をはかるため、都道府県ごとに連合リビングウェイジにもとづく「最低到達水準」をクリアすることをめざす。

中小共闘方針】抜粋

(1)「底上げ・底支え」「格差是正」に向けた月例賃金にかかる取り組み

1)月例賃金の引き上げ
 中小組合の平均賃金を基準とした引き上げ額をベースとしたうえで、「格差是正」「底上げ・底支え」をはかる観点で、連合加盟組合平均賃金との格差の拡大を解消する水準を設定する。すなわち、連合加盟組合全体平均賃金水準の2%相当額との差額を上乗せした金額を賃上げ水準目標(6,000円)とし、賃金カーブ維持分(1年・1歳間差)(4,500円)を含め総額で10,500円以上を目安に賃金引き上げを求める。

詳細は添付の別紙1「2016春季生活闘争 中小共闘方針」を参照。

(3)非正規労働者の労働条件改善

 すべての働く者、とりわけ雇用労働者の38.2%を占め2,043万人を数える*2非正規労働者の労働条件の改善に重点的に取り組むことが重要である。質・量の側面で一般労働者(正規)と同等の仕事を遂行しているにもかかわらず、賃金や処遇に格差が存在する場合も多い。非正規労働者の約7割を占めるパートの時間給は、一般労働者(正規)の6割に満たない水準である*3
 さらに非正規労働者の約18%(315万人)は今の雇用形態を余儀なくされている非正規労働者(不本意非正規)である*4
 公務職場を含め雇用安定化など総合的な労働条件改善に取り組むとともに、賃金(時給)については「誰もが時給1,000円」の実現をめざす。

非正規共闘方針】抜粋

(1)総合的な労働条件向上への取り組み

【2016重点項目】

〈雇用安定に関する項目〉

  • [1]正社員への転換ルールの導入促進・明確化
  • [2]無期労働契約への転換促進

〈均等処遇に関する事項〉

  • [1]昇給ルールの導入・明確化
  • [2]一時金の支給
  • [3]福利厚生全般および安全管理に関する取り組み
  • [4]社会保険の加入状況の点検と促進*5
  • [5]有給休暇の取得促進
  • [6]育児・介護休暇制度を雇用形態にかかわらず利用できるよう整備
  • [7]再雇用者(定年退職者)の処遇に関する取り組み

(2)賃金(時給)の引き上げの取り組み

1)時給の引き上げ
 時給の引き上げの取り組みは、「底上げ・底支え」「格差是正」の観点から均等処遇の実現をめざし、次のいずれかの取り組みを展開する。

  • [1]「誰もが時給1,000円」の実現に向けた時給の引き上げ
  • [2]時間給1,000円超の場合は、「底上げ・底支え」「格差是正」の点から37円*6を目安に要求する。
  • [3]単組が取り組む地域ごとの水準については、「県別リビングウェイジ」を上回る水準をめざす。
  • [4]正社員との均等処遇をめざす観点から、昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化する。昇給ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保する。

2)月給の引き上げ
 月給制の非正規労働者の賃金については、正社員との均等処遇の観点から改善を求める。

詳細は添付の別紙2「2016春季生活闘争 非正規共闘方針」を参照

(4)職場における男女平等の実現

 男女がその持てる能力を発揮できる社会を作っていくことは日本の社会・経済の活性化と持続可能性維持に極めて重要である。職場における男女平等の実現に向けて、別紙3「2016春季生活闘争における男女平等課題の取り組みについて」に掲げる次の取り組みを行う。

  • 1)職場における男女平等と男女間の賃金格差の是正
  • 2)女性の職業生活における活躍の推進(女性活躍推進法)
  • 3)改正男女雇用機会均等法の定着・点検

(5)ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて(時短などの取り組み)

 健康で働き続けられる労働時間と過労死ゼロの実現、超少子高齢・人口減少社会が進むわが国の社会構造を踏まえ、「社会生活の時間」の充実を含めワーク・ライフ・バランス社会の実現をめざす。とりわけ喫緊の課題である総実労働時間縮減に向けて、労働時間管理の徹底、年次有給休暇の取得促進、また、新たな祝日の増(8月11日「山の日」)の取り扱いなども踏まえ、以下の項目を中心に取り組む。

(6)ワークルールの取り組み

 すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」をはかる観点から、ワークルールの取り組みを別紙4「2016春季生活闘争におけるワークルールの取り組みについて」に則り進める。

  • 1)改正労働者派遣法に関する取り組み
  • 2)若者雇用に関する取り組み
  • 3)障がい者雇用に関する取り組み
  • 4)安全な職場づくり
  • 5)有期労働契約(無期転換ルールの特例)に関する取り組み
3.運動の両輪としての「政策・制度実現の取り組み」

 すべての働く者の生活改善・格差是正に向けて、別紙5「2016年度 政策・制度実現の取り組み」を春季生活闘争の労働条件改善の取り組みとともに運動の両輪として推し進める。

  • 1)経済の好循環に向けた中小企業・地場産業への支援強化
  • 2)雇用の安定と公正労働条件の確保
  • 3)社会保障と税の一体改革の推進によるセーフティネットの拡充
  • 4)子どもの貧困と教育格差の解消
  • *1 中小企業白書(2015年版)
  • *2 総務省「平成24年就業構造基本統計調査」
  • *3 例えば、厚生労働省「毎月勤労統計調査 平成27年8月分結果確報」によれば約52%
  • *4 総務省「労働力調査(詳細集計)」平成27年(2015年)7-9月期平均
  • *5 本来社会保険が適用されるべき短時間労働者などの把握と適用を求める。(※厚生年金保険法・健康保険法の改正による短時間労働者への適用が2016年10月1日から拡大される。従来の適用対象者(1日または1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が通常の就労者の概ね4分の3以上である者)に加え、以下[1]~[5]をすべて満たすパート労働者も適用対象者となる。[1]1週間の所定労働時間が20時間以上あること[2]月額賃金が8万8,000円以上(年収が106万円以上)であること[3]継続して1年以上雇用されることが見込まれること[4]学生でないこと[5]従業員数が501人以上の企業で雇用されていること)
  • *6 中小共闘方針が提起する賃上げ6,000円を月所定労働時間163時間(厚生労働省「平成26年賃金構造基本統計調査」)で除して時給換算
III.闘争の進め方
1.基本的な考え方
  • (1)すべての労働者を対象とし、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に重点を置いた闘争を展開するために、連合・構成組織・地方連合会は、その機能と力量を最大限発揮すべく、重層的かつ総がかりでの共闘体制を構築する(別紙6参照)。中央闘争委員会および戦術委員会を適宜開催し、闘争の進め方などを協議・決定する。
  • (2)「地域の活性化には地域の中小企業の活性化が不可欠」をスローガンに、地域のあらゆる関係者との連携をはかるために地域ごとに「地域フォーラム」を開催する。
  • (3)「政策・制度実現の取り組み」を運動の両輪と位置づけ、国民全体の雇用・生活条件の課題解決に向け、政策・制度実現の取り組みと連動させた運動を展開する。
  • (4)労働基本権にこだわる闘争の展開をはかる。
  • (5)「クラシノソコアゲ応援団! 2016RENGOキャンペーン」と連動し、キャンペーンの4つのテーマ、とりわけ「『底上げ・底支え』『格差是正』で経済の好循環!」を広く社会に浸透させる。
2.取り組み体制

(1)共闘連絡会議の運営

 5つの部門別共闘連絡会議(金属、化学・食品・製造等、流通・サービス・金融、インフラ・公益、交通・運輸)を設置し(別紙7参照)、会合を適宜開催して相互に情報交換と連携をはかる。先行組合の集中回答日における回答引き出し組合数を一段と増やすよう努める。また、相場形成と波及力の強化をはかるべく、個別賃金水準の維持・向上をはかるため、運動指標として代表・中堅銘柄(現在78銘柄)の拡充と開示を行うとともに、中核組合(現在約400組合)の「賃金水準」「賃金カーブ維持分」の開示を行い、賃金水準の相場形成を重視した情報開示を進めていく。

(2)中小労組の取り組み体制(中小共闘)

  • 1)中小企業労働者の底上げ・底支え、格差是正の取り組みの実効性を高めるために、中小労働委員会(中小共闘センター)のもとにすべての構成組織が参加する中小共闘担当者会議を設置する。また、中小共闘担当者会議と非正規共闘担当者会議、地方の地場共闘担当者との合同会議や共闘推進集会の開催など取り組みを行う。
  • 2)地方における「地場共闘」の強化をはかるために、「地域フォーラム」の開催をはじめ、政府の「まち・ひと・しごと(地方創生)」にかかる地方版総合戦略の推進組織や「都道府県における地方公共団体及び労使等の関係者から構成される会議」への参画など、地域のあらゆる関係者と連携をはかり、地場の労働条件の底上げと賃上げの波及力を高める取り組みを行う。
  • 3)連合が設置する「価格転嫁ホットライン」を継続し、悪質な取引の抑制をはかるとともに、適正な価格転嫁と公正取引の実現に向けた取り組みを推進する。

(3)非正規労働者の労働条件改善にかかる取り組み(非正規共闘)

  • 1)非正規共闘と5つの部門別共闘連絡会議の連携を深め、非正規労働者の労働条件改善の取り組みを強化する。
  • 2)非正規労働者の処遇改善の取り組み内容については「2015『パート・有期契約労働者等組織化・処遇改善』取り組み事例集」の活用をはかるとともに、さらなる情報開示を進める。

(4)社会対話の推進

  • 1)連合は、経団連や経済同友会とのトップ懇談会のほか、日本商工会議所、中小企業団体中央会などとの協議を進め、労働側の主張を明確にしていく。
  • 2)地方連合会は、地域フォーラムを開催するとともに、地方経営者団体との懇談会、『まち・ひと・しごと(地方創生)』にかかる地方版総合戦略会議や都道府県における地方公共団体及び労使等の関係者から構成される会議などに積極的に参画する。

(5)闘争体制と日程

  • 1)中央闘争委員会、戦術委員会の設置
    中央闘争委員会、戦術委員会を設置し、闘争の進め方を中心に協議を行う。
  • 2)要求提出
    原則として2月末までに要求を行う。
  • 3)ヤマ場への対応
    新年度の労働条件は年度内に確立させることを基本とする。そのために、3月の最大のヤマ場に回答を引き出す「第1先行組合」と、その翌週の決着をめざす「第2先行組合」を設定し、相場形成と波及をはかる。具体的には、共闘連絡会議全体代表者会議、戦術委員会などで協議する。

(6)闘争行動

 非正規労働者に関わる「職場から始めよう運動」の展開をはかるとともに、闘争開始宣言中央総決起集会(2・5)、春季生活闘争・政策制度要求実現中央集会(3・3)、共闘推進集会(4・1)の開催など、切れ目のない取り組みを展開する。

3.春季生活闘争を通じた組織拡大の取り組み

 構成組織は、通年の取り組みである組織化についても、2016春季生活闘争での成果獲得に向けて、交渉の前段での取り組みを強く意識して進める。

  • (1)非正規労働者の組織化と処遇改善の促進をめざして、「職場から始めよう運動」をより強化し、同じ職場で働くパート・有期契約などの非正規労働者の組織化に積極的に取り組むよう加盟組合を指導する。
  • (2)未組織の子会社・関連会社、取引先企業などを組織化のターゲットに定め、加盟組合とともに組合づくりを前進させるとともに、同じ産業で働く未組織労働者、未組織企業の組織化に取り組む。
参考資料

本資料の位置づけ

 「総合労働条件改善指針(仮称)」の策定に向け、現実の働く者の実態把握を推し進めるとともに、多くの関係者からの意見を拝聴することが必要と判断し、現時点の検討経過の大枠を示すこととした。
 また、2015春季生活闘争から提起している「超少子高齢・人口減少化で社会的な責任を果たすための働き方改革」をさらに推し進めていく労使協議のための視点としての参考資料と位置づける。
 「働くことを軸とする安心社会」に向けた政策・制度実現の取り組みとあわせ、労使間で労働条件改善テーマの実現に向けて取り組みを進めることが必要である。

 なお、今後とも構成組織・地方連合会や有識者などから多くの意見をいただきながら、検討を深めていくこととする

総合労働条件改善指針策定にあたっての基本的な検討方向
(成長制約要因が山積する中で、ディーセント・ワークの実現をめざす労使の取り組み指針)

はじめに

 総合労働条件改善指針の策定にあたっては、人口減少社会のもとで、わが国の将来像(経済・社会のあり方など)を議論するとともに、わが国唯一の財産ともいえる「人財」をいかに経済・社会の安定と自律的成長に活かしていくかという視点が重要である。

 連合は、2013春季生活闘争まとめ(2013.8.23第23回中央執行委員会確認)において、「働くことを軸とする安心社会」(2010.12.2第59回中央委員会確認)の実現に向けて、これまで個別テーマごとに示してきた指針を相互に関連づけて「総合労働条件改善指針(仮称)」の策定に向けて検討を進めることを確認してきた。

 この間の議論経過を大枠として示し、一般論とならない指針策定に向けた議論を継続するとともに、労使での実践に向け参考にしていただきたい。

I.現状認識と課題

1.超少子高齢・人口減少社会における日本経済/社会の活性化に向けて

(1)わが国の人口動態は、総人口の減少ととともに、少子高齢化が進展していくことが以前より明確であったが、2013年以降の経済の回復過程において、人手不足感がより一層切迫した問題となってきた。政府は、少子化対策を進めるとしている。そのことは非常に重要であり、推進していくことが求められる。しかし、労働力人口の実質的な増加につながるまでには20年余の時間が必要となる。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によれば、2050年の総人口は9,707万人と1億人を割り込むと見通され、その時点の労働力人口は約5,000万人とされている。1997年から2014年までの年間GDP総額(名目)は、おおよそ500兆円程度で推移している。これを雇用者1人当たり換算すれば、1996年度が948万円、2013年度は943万円となっている。今後の人口減少(労働力減少)の局面で、単純に現在と同程度のGDPを維持しようとするならば、雇用者1人あたりGDPを2倍近くに引き上げるか、労働参加率を高めていかなければ維持できない。すなわち、労働参加率と生産性の両面を向上させることが必要である。

(2)これからの経済の成熟化、超少子高齢・人口減少社会の克服に向けては、家庭や地域での活動を含めた生活時間が保障される働き方の実現や、働く意欲のある人すべてが、それぞれの能力と意欲に応じて労働に参加するために、それぞれの就労ニーズに応じて長く働き続けられる環境整備を行うことが必要である。

(3)労働力減少は、機械化・ロボット化やICT・AIの活用や、IoT(Internet of Things)、IoE(Internet of Everything)、インダストリー4.0などの生産性向上ツールの活用による働き方の変化や人的労働力から機械的労働力(広義の設備投資、設備代替)への置き換えを進めていくことが容易に想定される。
 その際、限られた人的資本をどのように有効活用するかということを、ディーセント・ワークの実現をはかる観点で検討を進めていく必要がある。

(4)働く者・生活者が安心してくらせる社会の実現に向けて、国・地方・家族・企業など様々なレベルのコミュニティーがその役割と機能を発揮させながら、インクルーシブ(包摂)な社会を構築することが必要である。労働力減少に対して単に労働参加率の向上を求めるのみならず、地域・社会の担い手不足への対応とのバランスを考慮しながら進めることが重要である。

2.グローバル化の中で、産業構造変化と多国間にわたる公正労働基準の形成

(1)グローバル化の進展は、輸出型産業であれ内需型産業であれ、直接・間接的にグローバルな取引は拡大することになる。また、地球環境問題への対応も含めたグリーン・ジョブへの移行など、今後日本がどのようなポジションで産業を構築していくのかも問われている。

(2)また、日本企業がグローバル競争の中での立ち位置(発注側か受注側か)にかかわらず、グローバルなサプライチェーン、バリューチェーンの一員として社会正義(公正労働基準)を遵守する必要がある。

3.「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた労使の取り組み

 「働くことを軸とする安心社会」に向けた政策・制度実現の取り組みとあわせ、労使間で実現していく労働条件改善テーマの実現に向けて取り組みを進めることが不可欠である。

II.ライフステージに応じた働き方とその処遇に関する検討の視点

 働く側の就労ニーズに応じた柔軟で多様な働き方を認め合うことは、産業・企業特性を活かしつつ、雇用や処遇の維持・向上の基盤となる企業の存続・発展を求める労使の共通課題と認識し議論を深めることが重要である。

1.「働くことを軸とする安心社会」を実現するために、働く人それぞれのライフステージに応じた働き方が選択可能なしくみを構築する。

例えば、
[1] 働く時間や時間帯を選択できるしくみ
[2] 育児や介護など事情に応じた休職・休業制度や短時間勤務の導入
[3] 居所変更を伴う配転のない働き方(常時または一時的)
[4] 一時的に離職せざるを得ない事由が生じても、その事由が解消したときには復職できるしくみ
[5] 通勤を要しない働き方
などである。

2.働く側の就労ニーズに応じた柔軟で多様な働き方の実現をはかるためには、同時に処遇など*1についても検討を深める必要がある。働く者一人ひとりの役割と貢献*2に応じた処遇がなされることが必要である。その際の原則は、あらゆる差別の禁止(合理的理由のない差別の禁止)の徹底をはかり、均等処遇の実現をはかることである。使用者は、雇用・処遇に対する均等処遇(合理的な違いの有無)の説明責任を有するものと位置づける。
 また、労働組合は制度運用について関与し、運用結果の開示などを含め、制度の透明性を高め、従業員の納得性を高めることが必要である。

  • *1 職種別賃金(職務給)がベターな働き方もあれば、なじまない働き方もある。また、業務のローテーションを通じて生産性の向上が望まれる働き方もある。産業・企業の生産性向上を無視した働き方でよいのか。
    米国のように、雇用契約で明確となっている職務のみ遂行する働き方があったとして、職種別に横断的な賃率が形成されていない場合、内部労働市場内での相対的な賃金水準となるのか。
    その際、マルチな働き方をする場合とそうでない場合の相対的賃金水準の査定が困難であるとともに、マルチな働き方をする人のモチベーションはどのように維持・向上をはかるのか。
    単一業務(あるモデル)に対して、マルチ部分を加算していく方法も考えられる。
  • *2 貢献の定義は一義的には「企業の収益への貢献」であろうが、産出した付加価値が市場で実現しなかった場合についてどのように考えるか。
別紙
労働・賃金・雇用
春闘(春季生活闘争)
最低賃金
労働時間
不払い残業
過労死 (過労死等ゼロに向けた取り組み)
労働保険・社会保険の加入
雇用・労働に関する取り組み
労働安全衛生
非正規雇用