労働・賃金・雇用

 

Q&Aで見る不払い残業の事例

日本の不払い残業の実態を、Q&A方式でご紹介します。皆さんの職場は、大丈夫ですか?

Q1
社員が減って毎日残業。残業時間を正しく請求したら、上司に「業績を考えて残業を付けろ」と言われ、あきらめました。月に残業は軽く100時間、そのうち60時間は不払い残業ですが、これは違法ではないのでしょうか?
A1

 不払い残業は労働基準法37条違反です。使用者は1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働かせたら、通常の賃金に最低でも2割5分増、法定休日に働かせたら3割5分増の割増賃金を支払わなければなりません。これに違反すると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰則が科せられます。

 不払い残業は、労働時間の把握が労働者の自己申告にゆだねられていたり、割増賃金の支払いに予算上の制約があったり、割増賃金の定額払制をとっているような場合に多く発生しています。定額払相当の時間を超えて時間外労働の申告をしたら、一時金や昇格などで不利益を被るなど、正しい時間外労働を申告した者に対して不利益な取り扱いをすること自体違法ですが、何より不払い残業をなくすためには労働時間を正しく把握することが第一歩です。連合は「労働時間管理徹底の取り組み指針」を中央執行委員会で確認し、不払い残業撲滅と労働時間管理の協定化に取り組んでいます。

Q2
営業職で毎日外回りの後、事務所で書類作成や伝票整理で月に100時間を超える残業をしています。でも時間外手当は月額3万円だけです。これって、許されるのですか?
A2

 時間外手当がその月の残業時間に基づいて計算した割増賃金額に不足していたら、不払い残業となり労働基準法違反です。
 時間外労働に対する割増賃金が定額制になっていたとしても、使用者は始業・終業時刻をきちんと把握し、時間外手当が残業時間にきちんと対応しているかチェックすることが義務づけられています。そして賃金台帳に労働日数や時間数を正確に記載して、3年間保存しなければなりません。
 不払い残業代を請求するためには、使用者に労働時間の管理記録、業務記録の提出を求めることが必要ですが、少なく記載した虚偽の労働時間管理記録もあるので、自分で記録をとっておくことも大事です。

Q3
我が社では36協定を結んでいません。
でも時間外労働した場合、割増賃金を請求できますか?
A3

 使用者が36協定を結ばないで時間外労働や休日労働をさせること自体が違法行為であり、処罰の対象となります。また、違法にさせた時間外・休日労働といえども、使用者は働いた時間に対して割増賃金を支払わなくてはなりません。当然、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働いたら最低でも2割5分増、法定休日なら3割5分増の賃金を請求できます。

Q4
管理職だからと深夜労働、休日労働をしても割増賃金が支払われないのですが、仕方ないのでしょうか。
A4

 確かに「管理・監督者」は労働基準法の労働時間に関する規定が適用されませんが、管理・監督者とは労働時間の自由裁量、労働条件の決定その他経営者と一体的立場にあるものをいい、名称だけで判断できません。管理・監督者であるか否かは職務内容、責任と権限、勤務態様など実態に基づいて判断しなければなりません。少なくとも出退勤の自由がない人に対し、適用除外を理由に割増賃金を支払わないのは労働基準法違反です。
 また、管理・監督者でも夜10時~朝5時の深夜に働いた場合は割増賃金を支払わなければなりませんし、健康を確保するためにも、使用者は適正な労働時間管理を行う責任があります。

  • ※「管理・監督者」については、都市銀行等で男子行員の多数に「支店長代理」の肩書きを与え、労働時間制の規制の枠外の扱いをする事例が多発したことから、各支店の「支店長」以外の行員は、部長、次長、課長等の役付者を含め管理監督者として扱うことは違法という特別の監督基準が出されています(昭52.2.28 基発104号の2)。
     裁判でも銀行の「支店長代理」で出退勤の自由がなく、経営方針の決定への参画や労働者の雇入、解雇等の人事管理に関する権限をもたない者は管理監督者ではないとされた判決(静岡銀行事件、静岡地裁昭53.3.28)や、「取締工場長」の肩書きで1日11時間ないし12時間拘束され、労働時間を管理されていた者は管理監督者ではないとされた判決(橘屋事件、大阪地裁昭40.5.22)などがあります。