労働・賃金・雇用

 

民法の消滅時効と賃金

 民法の債権に関する部分が2017年に大きく改正され、2020年4月より施行されています。改正により、民法上の消滅時効期間は、債権の種類を問わず、①権利を行使できることを知った時から5年、または、②権利を行使できる時から10年になりました。

民法の消滅時効規定

【改正前】(2020年3月31日まで)
  起算点 時効期間 具体例
原則 権利を行使することができる時から 10年 個人間の貸金債権など
職業別 権利を行使することができる時から 1年 飲食料、宿泊料など
2年 弁護士・公証人の報酬など
3年 医師・助産師の診療報酬など
商事 権利を行使することができる時から 5年 商行為によって生じた債権
【改正民法】(2020年4月~)
  起算点 時効期間 具体例
原則 知った時から 5年 債権の種類を問わない
権利を行使することができる時から 10年

 民法は様々な債権の消滅時効期間を定めていますが、労働者にとって重要な債権である「賃金」の消滅時効期間は、労働基準法で定められています。

 もともと、民法では「月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」は1年で消滅すると定められていたことが「労働者の保護に欠ける」として、労働者保護の観点から、賃金債権については労働基準法によって、民法より長い2年の消滅時効期間が定められていました。

 改正民法施行と同時に、労働基準法も改正され、賃金の消滅時効期間も原則5年になりました。主な改正のポイントは次の通りです。

【改正労働基準法のポイント】
  • 賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長されました。
    (ただし、当分の間、消滅時効期間は3年となります)
  • 2020年4月1日以降に支払われるすべての賃金が新たな消滅時効期間の対象となります。
  • 賃金台帳など、記録の保存期間も5年に延長されます。
    (ただし、当分の間、記録の保存期間は3年となります)
【改正労働基準法の消滅時効期間】
  改正前
(~2020年3月31日)
改正後
(2020年4月1日~)
賃金 2年 5年(当分の間3年)
有給休暇 2年 2年
退職金 5年 5年
災害補償請求権 2年 2年
記録※1の保存 3年 5年(当分の間3年)
※1 「記録」とは、①労働者名簿、②賃金台帳、③雇入れに関する書類、④解雇に関する書類、⑤災害補償に関する書類、⑥賃金に関する書類、⑦その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿、タイムカードなどの記録、労働時間の記録に関する書類など)を指します。

 今回改正された賃金請求権等の消滅時効期間については、5年後に見直しが予定されています。連合は、労働者保護の観点から、消滅時効期間を原則5年とするよう、引き続き求めていきます。

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