2017春季生活闘争まとめ

 
第7回中央闘争委員会確認/2017.7.21

はじめに

 2017春季生活闘争は、日本経済・社会全体として「経済の自律的成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワークの実現」のためには「底上げ・底支え」「格差是正」に重点を置いたすべての働く者の処遇改善が不可欠として、月例賃金にこだわり賃金の社会的水準確保を重視した取り組みを継続した。とりわけ中小企業で働く仲間の処遇改善原資を確保するために、「大手追従・大手準拠などの構造の転換」と「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の運動を前進させる方針を掲げ、組織一体となった取り組みをめざした。
 第75回中央委員会(6月1日)で確認された「2017春季生活闘争中間まとめ」を基本に、その後の組織討議と最終回答集計結果(7月5日公表)を踏まえ、改めて2017春季生活闘争の評価と今後に向けた課題を以下のとおり整理し、2018春季生活闘争の方針議論につなげていく。
 引き続き連合は、月例賃金にこだわった「底上げ・底支え」「格差是正」による「クラシノソコアゲ」実現をめざすと同時に、超少子高齢化・人口減少および情報通信技術の革新的進展がもたらす急激な環境変化のなかでも「働くこと」の価値を高め、労働者が豊かさを実感できる社会の実現をめざして、運動を進めていく。

I.2017春季生活闘争の評価と課題

1.総括的な受け止め

 日本経済は緩やかな回復基調にあったが、経営側は世界的な政治・経済の不透明感による先行き懸念や足下の収益の陰り、過去3年間の賃上げによる賃金水準の上昇などを理由に、賃上げに対しては慎重かつ厳しい態度を示した。
 組合は、経済の自律的成長実現に向けた社会的要請に応える責任を強調するとともに、企業の存続と発展に不可欠な職場の活力の維持・増進には「人への投資」が必要であると強く主張し、粘り強い交渉を展開した。
 結果、賃金改善を継続して実現したことは大きな成果である。加えて、ワーク・ライフ・バランス実現や両立支援、男女間賃金格差の是正に関しても、積極的な取り組みが行われた。

  1. (1)闘争のポイント
    1) 規模間格差の是正
     2017春季生活闘争方針は、2年目となる「大手追従・大手準拠などの構造の転換」および「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の運動を前進させることに重点を置いた。それも踏まえた構成組織および中小組合の取り組みにより、「賃上げ分」「定昇相当込み賃上げ」が昨年を超えると同時に、「賃上げ分」の率が大手を上回る等の結果を出した。中小組合がより主体的に取り組みを行った成果であると受け止める。  しかしながら賃金水準自体には依然として規模間格差が存在し、年齢が上がるにつれてその格差は拡大している。これを是正していくことは春季生活闘争の大きな課題である。
    2) 雇用形態間格差の是正
     非正規労働者の雇用安定の取り組み(正社員転換、無期労働契約への転換等)は要求・取り組み、回答・妥結とも昨年を上回り、前年以前も含めて取り組みは進んでいる。非正規労働者の賃上げも、昨年に続き、時給で正規の結果を上回っている。
     今後、いわゆる「同一労働同一賃金」の法制化を視野に入れて、法改正等の内容を先取りしていくとともに、賃金制度の整備に重点を置いた取り組みを進める必要がある。
    3) ワーク・ライフ・バランスの実現
     組合の長年の課題であった労働時間短縮に対する社会的認識の高まりもあって、インターバル休息導入など長時間労働是正や過労死ゼロへの取り組みに前進があった。また「ライフスタイルに応じた働き方と処遇に関する検討の提起」を行った組合は昨年比倍増程度の126組合に上った。
     しかし、連合組合員の年間総実労働時間は依然2000時間を超えており(連合「労働時間に関する調査(2016年度)」から2015年6月実績2,045時間)、引き続き長時間労働の是正とともに、労働者の立場に立った「働き方改革」の実現に向けて取り組みを強める必要がある。
    4) 闘争体制と発信力の強化
     2009春季生活闘争から設置した共闘連絡会議のさらなる活性化を検討していくことが必要である。
     メディアへの働きかけを進めた結果、春季生活闘争の状況を社会全体に伝える点で改善はみられた。今後も、マスメディア対策を含め、連合としての発信力の強化は喫緊の課題である。

2.具体的な要求項目にかかる取り組み結果と評価

  1. (1)要求状況
     2月27日時点の集計によれば、要求提出済みは3,243組合、うち月例賃金改善(定昇維持含む)を要求した組合が2,686組合であった。月例賃金改善を平均賃金方式で要求した2,405組合の要求水準(定昇相当分含む)は加重平均で8,828円・3.03%で、多くの組合が「経済の自律的成長」実現に向けて労働組合が果たすべき社会的役割を十分認識した上で、月例賃金の継続的な引き上げにこだわった要求を行った。
     300人未満の中小組合は昨年同時期比38増の1,553組合が要求を提出し、その水準は7,914円・3.21%であった。2016春季生活闘争から取り組んだ「大手準拠・大手追従などの構造を転換する運動」が定着してきていることが窺える。
     非正規労働者については、正社員あるいは無期労働契約への転換など雇用安定に関する要求が計1,059件となり、昨年を大幅に上回った。時給・月給の引き上げ要求額はそれぞれ33.79円、5,713円(単純平均)で、昨年を上回っていた。
     職場における男女平等の実現に向けた取り組みや「長時間労働の是正・過労死ゼロの取り組み」等ワーク・ライフ・バランス関連等の要求件数は、概ね昨年を上回った。
  2. (2)賃上げ
      平均賃金方式で要求・交渉を行った5,416組合の回答集計結果は5,712円・1.98%となった(昨年同時期比▲67円・▲0.02ポイント)。賃上げ分が明確に分かる2,308組合の集計結果は1,395円・0.48%で、昨年同時期を上回っている。要求趣旨がすべて満たされたとはいえないが、厳しい交渉の中で賃金改善を継続して実現しえたことは、今後の運動に大きな意味を持つ。  一時金は、年間月数4.81月(昨年同時期比▲0.05月)・年間金額1,535,678円(同3,310円増)となった(組合員数加重平均)。
  3. (3)規模間格差の是正
     300人未満の中小組合の回答集計結果は4,490円・1.87%で、昨年同時期を150円・0.06ポイント上回るという結果を引き出した。賃上げ分が明確に分かる1,461組合の集計結果は1,295円・0.56%で、率においては大手を上回った。
     2016春季生活闘争から提起してきた「大手追従・大手準拠などの構造を転換」する運動が浸透してきたものであり、賃金水準の規模間格差是正に向けた確実な一歩になりうると評価する。
  4. (4)非正規労働者の労働条件改善
     非正規労働者の雇用安定確保に向けた取り組みは、要求・取組件数1,498件のうち179件が回答を引き出しており、昨年同時期を大幅に上回った。7月5日に公表した「2017春季生活闘争および通年(2016年9月~)における非正規労働者の労働条件改善と労働時間短縮に向けた具体的な取り組み内容」からは、正社員への転換や無期労働契約への転換促進の取り組みはもとより、転換後の処遇・労働条件の制度構築に向けた協議が積極的に行われるなど、職場の実態に応じてきめ細やかな取り組みが行われている実態が窺える。
     均等処遇に関しても要求・取組件数がのべ2,047件で、うち890件で回答・妥結に至っている。なかでも「育児・介護休暇制度を雇用形態にかかわらず利用できる取り組み」「非正規労働者の年次有給休暇取得促進の取り組み」は要求・取組、回答・妥結とも昨年同時期を大幅に上回った。また、有給休暇の半日取得制度、特別休暇の新設や有給化、育児休職期間の拡充など、正社員との均等をめざした制度の導入がはかられた。
     このような労働契約法第18条、および非正規労働者の処遇改善などの取り組みについて、10月初旬を目途に『2017「職場から始めよう運動」取り組み事例集』を公表し、社会的波及の推進をはかっていく。
  5. (5)職場における男女平等の実現
     男女間の賃金格差是正に向けた取り組み、男女平等の推進の取り組みは、女性活躍推進法(2016年4月1日施行)に向けた取り組みの影響などで大幅に増えた昨年に引き続き、積極的な取り組みが行われている。
     また、男女雇用機会均等法の定着・点検に向けた取り組みは、積極的な差別是正措置(ポジティブ・アクション)などを含め、要求・取組件数がのべ421件と昨年(177件)を大幅に上回っており、職場における男女平等の実現に向けた取り組みが定着しつつあることが伺える。
  6. (6)ワーク・ライフ・バランスの実現
     労働時間関係のほぼすべての調査項目の取組・要求件数が昨年同時期を上回っており、長時間労働是正に向けて真剣な取り組みが行われたことが窺える。今次闘争ではじめて調査した「勤務間インターバル規制の導入に向けた取り組み」は要求・取組281件中91件で回答・妥結している。新規導入に加え、明文化や規制時間の延長などの取り組みも行われている。
     「両立支援の推進」も要求・取組ののべ件数は昨年同時期を超えた。はじめて提起した「不妊治療と仕事の両立に向けた取り組み」は13件の要求・取組となり、うち7件で回答・妥結を得た。ハラスメント防止の要求・取組は昨年同時期比倍増以上であった。
  7. (7)ワークルールの取り組み
     「改正労働者派遣法に関する取り組み」はほぼ昨年並みの状況であった。今次闘争においてはじめて提起した「治療と職業生活の両立支援に関する取り組み」は20件の要求・取組に対し13件で回答・妥結を得た。「高年齢者雇用安定法に関する取り組み」はのべ1,139件の要求・取組があり、直近で調査した2015春季生活闘争の1,069件を上回っている。

3.政策・制度要求実現の取り組み

 第22回中央執行委員会(7月21日)に報告される「2017年度 重点政策実現の取り組みのまとめ」を参照されたい。

4.闘争の進め方

  1. (1)闘争体制
     戦術委員会および中央闘争委員会を中心に、部門別共闘連絡会議、中小共闘、非正規共闘および地場共闘を設置して重層的な共闘体制を構築した。また中小共闘担当者会議および非正規共闘担当者会議を適宜開催し、情報共有・発信に努めた。
  2. (2)社会対話の強化
     経団連との定期懇談会(2月2日)および経済同友会(5月30日)に加え、全国中小企業団体中央会(全国中央会)(2月28日)および中小企業家同友会全国協議会(中同協)(3月10日)など中小企業の経営者団体とも懇談などを実施し、春季生活闘争に臨む労働組合の主張はもとより、「公正取引」や「人への投資」についても意見を交換した。全国中央会とは、昨年に続いて2回目の開催となった懇談会において「下請取引等取引環境」などをテーマに双方の取り組みとその成果を共有した上で、4月12日に「全国中小企業団体中央会と日本労働組合総連合会の共同宣言」を締結した。
     2月3日に「2017春季生活闘争・闘争開始宣言2.3中央総決起集会」、3月6日に「2017春季生活闘争・政策制度 要求実現3.6中央集会」を開催し、すべての組合が「底上げ・底支え」「格差是正」をめざして月例賃金の継続的な引上げにこだわることを確認すると同時に、社会全体に向けたアピールを行った。また3月31日に闘争推進集会を開催し、各組織のさまざまな取り組み事例を共有するとともに、中小組合・非正規労働者・未組織の労働者への賃上げ波及に向けて決意を新たにした。
     また、有期契約労働者の雇用安定に向けて2月9日~11日に「~雇用の不安・雇止めの不安はありませんか~パート・アルバイト・契約・派遣などで働くみなさんのための連合労働相談ホットライン」(電話相談)、および「-労働契約法改正(無期転換ルール)への対応- 労働者・経営者のためのお悩み解消セミナー」を実施(2月14日および28日)した。労働契約法18条の無期転換権について社会全体として周知不足の感が否めないことから、引き続き周知徹底の取り組みが必要である。さらに、適正な価格転嫁と公正取引の実現に向けて「取引問題ホットライン」を設置した(相談件数1件)。
     2016年10月から展開してきた「クラシノソコアゲ応援団!RENGOキャンペーン」第2弾において、長時間労働の是正など2017春季生活闘争と連動した取り組みを実施した。
  3. (3)地域フォーラム
     「地域の活性化には地域の中小企業の活性化が不可欠」をスローガンに、地域フォーラムを全47都道府県で開催することをめざした。6月末時点で20ヵ所が開催済みであり、地域固有課題の解決と活性化に向けてさまざまな利害関係者との有意義な意見交換が行われた。以降も6ヵ所で開催が予定されており、引き続き全地方連合会での開催に向けて取り組みを拡げていく必要がある。
  4. (4)情報発信の強化
     第74回中央委員会(2016年11月25日)において確認された2017春季生活闘争方針・中小共闘方針において「連合リビングウェイジ」「47都道府県 産業別特性値(2016地域ミニマム・規模計)」を開示し(その後最新データに更新)、地域における賃金水準の相場波及に努めた。また要求策定段階では「中核組合の賃金カーブ維持分・賃金水準」「代表銘柄・中堅銘柄(職種別賃金主要銘柄)」を開示し、賃金相場の形成に取り組んだ。
     経団連「2017年版経営労働政策特別委員会報告」に対する連合見解を1月17日に公表し、闘争方針の趣旨を改めて社会にアピールした。6月を除き毎月開催した中央闘争委員会の「確認事項」において、すべての組合が月例賃金にこだわり「底上げ・底支え」「格差是正」をめざすことを発信し続けた結果、取り組みの趣旨が運動全体に浸透した。また3月15日のヤマ場には中央闘争委員長名で「2017春季生活闘争アピール:底上げに向けた今後の取り組みについて ~賃上げをすべての働く者へ~」を発出して、中堅・中小組合はもとより未組織労働者を含めすべての働く者に賃上げを波及させる必要を再確認した。
     要求集計および各次回答集計の都度「プレスリリース」を公表した。加えて3月中の回答集計結果公表に際しては記者会見を開催するなど、連合の見解が正しく報道されるようメディアへの働きかけを積極的に行った。これら記者会見の様子は連合ホームページ等を通じて、動画で配信した。
     地方連合会においては、各々の闘争方針や地域ミニマム運動結果から算出された地域の賃金水準、また要求および回答の集計結果の公表を通じて、未組織組合を含む地場の労働条件の底上げと賃上げの波及に努めた。
  5. (5)春季生活闘争を通じた組織拡大・強化の取り組み
     2017年の連合組合員総数は686万人となり、離脱・解散した組織があったものの、昨年水準を維持した。連合の全組織を挙げて取り組んでいる「1000万連合」の実現に向けて、構成組織および地方連合会による組織拡大の取り組みに加え、連合本部・構成組織・地方連合会の三位一体の取り組みが実際に結果として現れてきたものと考える。引き続き、「1000万連合」の旗の下、“全ての職場に集団的労使関係を!”を合言葉に、未加盟・未組織労働者に対する36協定に関する周知など、構成組織・地方連合会と連携し組織拡大・組織強化に取り組んでいく。

II.今後の主な検討課題

 連合は、これまで「春季生活闘争」が果たしてきた日本社会全体の賃金決定メカニズムとしての役割は維持しつつ、社会的賃金相場形成がとかく賃上げ率中心であったことを改革し、産業・地域における賃金水準そのものの社会的波及をめざした取り組みが重要であることを訴えてきた。そして、2017春季生活闘争ではめざすものとして日本経済・社会全体としての「経済の自律的成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワークの実現」を掲げ、「底上げ・底支え」「格差是正」に重点を置いたすべての働く者の処遇改善が不可欠として、月例賃金にこだわり賃金の社会的水準確保を重視した取り組みを継続した。
 とりわけ中小企業で働く仲間の処遇改善原資を確保するために、「大手追従・大手準拠などの構造の転換」と「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の運動を前進させる方針を掲げ、組織一体となった取り組みを進めてきた。
 こうした主張が、連合内のみならず社会全体に浸透しつつあることが大きな成果であると受け止める。今後とも、こうした考え方を維持して運動を継続していくことが重要である。
 また3月28日に政府「働き方改革実現会議」が決定した「働き方改革実行計画」は、「長時間労働の是正」および「同一労働同一賃金の実現」に向けた方向性を示した。労働力不足が当面継続するという見通しのもと、今後の通年的な取り組みとして、法改正等の内容を先取りしていくと同時に、企業の存続に不可欠な「人財」確保のためにも、労働者の立場に立った本来の意味での「働き方改革」を職場から実現する取り組みが必要である。
 これらを踏まえて2018春季生活闘争の基本構想に向けた検討を行うにあたっては、以下3点を考慮する必要がある:

  • 1)労使が社会的役割と責任を意識して労働条件改善の進展をはかることが必要である。働く者のモチベーションを維持・向上させていくためには「人への投資」が不可欠であり、それが生産性の向上をもたらし、ひいては経済の自律的成長実現につながっていくことになる。
  • 2)労働力不足と情報通信技術の革新が職場にもたらす影響の大きさと速さも考慮しつつ、個々人の状況やニーズに合った働き方が選択できるようにすること、働く者一人ひとりがそれぞれの能力を高め活かし生み出す付加価値を向上していくこと、それに応じた適正な処遇を確保することが求められる。
  • 3)今後とも社会・経済の変化に応じて春季生活闘争が果たす役割や意義を主張し続け、自らの運動の推進と社会全体での共有化に向けて、情報発信のあり方等の改善に向けて検討が必要である。

 なお、春季生活闘争時期に限らず労使協議を進めていくべき課題も山積しているため、労働条件委員会を中心に検討を深めていく。

以 上