労働・賃金・雇用

 

2017春季生活闘争方針

第74回中央委員会確認/2016.11.25
はじめに
1.「経済の自律的成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワークの実現」をめざす

 2017春季生活闘争は、「総合生活改善闘争」の位置づけのもと、国民生活の維持・向上をはかるため、労働組合が社会・経済の構造的な問題解決をはかる「けん引役」を果たす闘争である。
 日本はすでに超少子高齢化・人口減少社会に突入しており、不可避的にもたらされる労働力不足の状況にあっても社会・経済を自律的かつ持続的に成長させるためには、多様な「人財」の活躍とそれを包摂する社会の構築が不可欠である。限られた「人財」はそれぞれの状況もニーズも多様であり、チームワークや暗黙知を活用する日本型経営の強みを発揮する中で活躍してもらうためには、個々人の状況・ニーズに合った働き方が選択でき、かつ、加速度的に進む技術革新に対応して生産性を向上させ、それに見合った処遇が確保できるようにすること、換言すれば「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現を可能にする「人への投資」を求めることが必要である。

2.「底上げ・底支え」「格差是正」で「クラシノソコアゲ実現」を

 「経済の自律的成長」「社会の持続性」を実現するためにも、所得の向上により消費の拡大をはかる事が必要である。そのためには、すべての働く者の賃金の「底上げ・底支え」と「格差是正」の実現が不可欠である。そして、将来不安の解消に向けた社会保障と税の一体改革実現の取り組みが不可欠である。
 賃金の社会的水準確保を重視した取り組みを継続するとともに、とりわけ中小企業労働者や非正規労働者の月例賃金・時給の改善のために、「大手追従・準拠などの構造の転換」と「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の運動を前進させる取り組みを進める。

3.働く者・国民生活の底上げをはかるために果敢に闘おう!

 わが国における賃金決定メカニズムとしての春季生活闘争の重要性を、社会全体で再認識する必要がある。連合は、社会・経済の活力の原動力であり、付加価値創造の源泉である「働くこと」の価値を高め、働く者が安心して働き続けられる環境整備こそが政府の役割であることを訴えていく。
 労働者を労働力ではなく人として尊重する社会の実現のためには、労働組合自らが仲間を増やしすべての職場や地域で集団的労使関係を拡大していくことが重要であり、組織拡大に全力で取り組む。連合・構成組織・地方連合会・単組は一致団結して、社会の不条理や格差の拡大を許さず、働く者・国民の生活の底上げをはかるため、『「底上げ・底支え」「格差是正」でクラシノソコアゲを実現しよう! 長時間労働撲滅でハッピーライフの実現を!』をスローガンに掲げ、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて果敢に闘おう。

I.2017春季生活闘争を取り巻く情勢
1.世界経済

 IMFの予測(2016年7月更新予測)によれば、世界全体の成長率は、2016年は3.1%にとどまった後、2017年には3.4%に回復すると見込んでいる。しかしながら、英国のEU離脱問題や中国の投資過剰が円滑に解消されないリスク、米国経済の減速リスクや世界各地で発生する地政学的なリスクが考えられる状況となっている。

2.日本経済

 日本銀行「経済・物価情勢の展望」(11月1日)では、日本経済の状況について以下の点をあげている。

  • (1)わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。
  • (2)先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していくと予想している。まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済政策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連需要の本格化などを受けて緩やかな増加基調を維持すると予想される。雇用者所得の改善が続き、個人消費は緩やかに増加していくとみられる。公共投資は、経済対策の効果などから2017年度にかけて増加し、その後は、オリンピック関連需要もあって高めの水準で推移すると考えられる。この間、海外経済は、幾分減速した状態が暫く続いたのち、先進国の着実な成長が続き、新興国経済も、その好影響の波及や各国の政策効果から減速した状態を脱していくにしたがって、徐々に成長率を高めていくと予想している。このため、輸出は緩やかな増加に転じるとみられる。

 以上のもとで、わが国経済は、2018年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。

3.雇用情勢と賃金の動向

 雇用情勢は、9月の完全失業率が3.0%、有効求人倍率が1.38倍と労働需給はタイトな状況が続いている。企業の人材確保に向けた取り組みが一段と強まっている。
賃金の動向を連合賃金レポートで見てみると、標準労働者の1997年賃金水準との比較をパーシェ指数で行っているが、いまだ復元がはかられてはいない。
雇用情勢の動向から、パート労働者の求人時給は引き上がっているが雇用労働者全体の賃金引き上げまでには波及していない状況にある。

II.2017春季生活闘争の取り組み内容
1.基本的な考え方

(1)「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みの強化

 月例賃金にこだわった闘争を進めてきたことにより3年連続して賃金の引き上げを獲得したものの、個人消費をけん引するまでの水準には至っておらず、引き続き月例賃金にこだわる取り組みを進めなければ、デフレ状況に再度落ち込みかねない。また、格差の是正も不十分である。したがって2017春季生活闘争においても月例賃金引上げの流れを継続させる必要がある。
 とりわけ、中小企業労働者や非正規労働者の月例賃金・時給の「底上げ・底支え」と「格差是正」をはかることに重点を置いた取り組みを進めるとともに、その効果が広く社会に浸透する要求を組み立てることが極めて重要である。この観点に立って「大手追従・準拠などの構造を転換する運動」を前進させ、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配に資する公正取引の実現を重視し、その効果が広く社会に浸透する取り組みを行う。
 「経済の自律的成長」をはかるためには、マクロの観点から雇用労働者の所得を2%以上引き上げることが必要である。構成組織は、あらゆる手段を用いて「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に取り組むとともに、従来以上に加盟組合への指導を強化し、賃上げの流れを確実なものとしていく。
 そして、企業内最低賃金協定の締結拡大や水準の引き上げ、適用労働者の拡大を法定最低賃金の引き上げにつなげ、賃上げの社会的波及をはかることも重要である。
こうした観点から、名目賃金の到達目標の実現やミニマム基準の確保に取り組む。その上で賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みを強化する観点から2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする。

(2)賃金水準改善の社会的波及を高める取り組み

 それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みに関する情報開示を進めるとともに、春季生活闘争が持つ日本全体の賃金決定メカニズムを活かしつつ、とりわけ中小企業で働く仲間や、非正規労働者の処遇改善に向け、より主体的な闘争を進め、大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動を前進させる。
 また、取引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や、産み出した付加価値の適正な価格での取引が展開される取り組みに総合的に取り組む。そのために連合は、取引問題に関する相談窓口として「取引問題ホットライン」を設置し、経営者団体とも認識を共有化する取り組みを強化する。

(3)超少子高齢化・人口減少社会を踏まえた働き方と処遇のあり方の見直しを

 日本が直面する超少子高齢化・人口減少という構造問題は、すでに労働力不足という形で顕在化している。われわれの働く場が将来に亘って存続しその価値を高め続けるためには、マーケットが求める商品やサービスを提供し、かつ、その価値に見合う価格で取引が行われることが必要である。
 そのためには、働く者一人ひとりの多様な価値観に対応する働き方の実現と生産性の向上とを同時に実現すること、言い換えれば、すべての働く者がディーセント・ワーク(人間らしい働きがいのある仕事)に就け、その仕事に応じた適正な処遇を確保することが求められる。
 2017春季生活闘争を通じて、改めて「人への投資」を求めると同時に、働き方と処遇のあり方の見直しを進め、労使協議を通じてその必要性を確認する。

2.具体的な要求項目

(1)賃上げ要求

1)月例賃金

  • [1] すべての組合は月例賃金にこだわり、賃金の引き上げをめざす。要求の組み立ては、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を確保したうえで、「底上げ・底支え」「格差是正」にこだわる内容とする。
  • [2] その際には、賃金の上げ幅のみならず、めざすべき賃金水準への到達など「賃金水準の絶対値」にこだわる取り組みを進める必要がある。構成組織はそれぞれの産業ごとに設定する個別銘柄の最低到達水準・到達目標水準を明示し、社会的な共有に努める。単組は組合員の個別賃金実態を把握し、賃金水準や賃金カーブを精査しゆがみや格差の有無を確認したうえで、これを改善する取り組みを行う。
  • [3] 賃金制度が未整備の組合は、構成組織の指導のもと、制度の確立・整備に向けた取り組みを強化する。

2)企業内最低賃金

  • [1] すべての組合は、企業内最低賃金を産業の公正基準を担保するにふさわしい水準で要求し、協定化をはかる。また適用労働者の拡大をめざす。
  • [2] すべての賃金の基礎である初任給について社会水準を確保する。
    18歳高卒初任給の参考目標値……170,100円*1

3)一時金

 月例賃金の引き上げにこだわりつつ、年収確保の観点も含め水準の向上・確保をはかることとする。

(2)規模間格差の是正(中小の賃上げ要求)

 企業数の99.7%を占め、全従業員の約7割を雇用する中小企業*2の経営基盤の安定と、そこで働く労働者の労働条件の向上および人財の確保・育成は、日本経済の「底上げ・底支え」「格差是正」の必要条件であり、健全かつ自律的持続的な発展にとって不可欠である。
3年連続で賃上げを実現したが、水準の格差は依然存在しており、この是正に取り組むことは最重要課題である。「底上げ・底支え」「格差是正」の実現をはかるため、都道府県ごとに連合リビングウェイジにもとづく「最低到達水準」をクリアすることをめざす。

中小共闘方針】抜粋

1.「底上げ・底支え」「格差是正」に向けた月例賃金にかかる取り組み

1)月例賃金の引き上げ
 中小組合の平均賃金を基準とした引き上げ額をベースとしたうえで、「格差是正」「底上げ・底支え」をはかる観点で、連合加盟組合平均賃金との格差の拡大を解消する水準を設定する。すなわち、連合加盟組合全体平均賃金水準の2%相当額との差額を上乗せした金額を賃上げ水準目標(6,000円)とし、賃金カーブ維持分(1年・1歳間差)(4,500円)を含め、総額で10,500円以上を目安に賃金引き上げを求める。

詳細は添付の別紙1「2017春季生活闘争 中小共闘方針」を参照。

(3)非正規労働者の労働条件改善

 すべての働く者、とりわけ雇用労働者の37.7%を占め2,028万人を数える*3非正規労働者の労働条件の改善に重点的に取り組むことが重要である。質・量の側面で一般労働者(正規)と同等の仕事を遂行しているにもかかわらず、賃金や処遇に格差が存在する場合も多い。非正規労働者の約7割を占めるパートの時間給は、一般労働者(正規)の6割に満たない水準である。*4
さらに非正規労働者の約16.0%(299万人)は今の雇用形態を余儀なくされている非正規労働者(不本意非正規)である。*5
 非正規労働者を取り巻く環境は、社会保険適用労働者の拡大、2018年4月より労働契約法18条に基づく有期契約労働者の無期契約への転換の開始、法定地域別最低賃金上昇による就労時間調整などにより大きく変化する。こうした動向を把握し、春季生活闘争を通じて、総合的な労働条件の改善に向けた取り組みを一層強化する必要がある。
 公務職場を含め雇用安定化など総合的な労働条件改善に取り組むとともに、賃金(時給)については「誰もが時給1,000円」の実現をめざす。

非正規共闘方針】抜粋

1.雇用安定に向けた取り組み

  • (1)正社員への転換ルールの導入・明確化・転換促進
  • (2)無期労働契約への転換促進など

2.仕事に応じた適正な処遇の確保に向けた取り組み

  • (1)賃金引き上げの取り組み

1)時給の引き上げ
 時給の引き上げの取り組みは、「底上げ・底支え」「格差是正」と均等待遇の実現をはかるため、次のいずれかの取り組みを展開する。

  • [1]「誰もが時給1,000円」の実現に向けた時給の引き上げ
  • [2]時給1,000円超の場合は、37円*6を目安に要求する。
  • [3]取り組む地域ごとに「県別リビングウェイジ」を上回る水準をめざして取り組む。
  • [4]正社員との均等待遇の実現をはかるため、昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化する。昇給ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保した上で、「底上げ・底支え」「格差是正」にこだわる内容とする。

2)月給の引き上げ
 月給制の非正規労働者の賃金については、正社員との均等待遇の観点から改善を求める。

  • (2)均等待遇に関する取り組み

1)一時金の支給
2)福利厚生全般および安全管理に関する取り組み
3)社会保険の加入状況の確認・徹底*7と加入希望者への対応
4)有給休暇の取得促進
5)育児・介護休業の取得は正社員と同様の制度とする。
6)再雇用者(定年退職者)の処遇に関する取り組み

詳細は添付の別紙2「2017春季生活闘争 非正規共闘方針」を参照。

(4)職場における男女平等の実現

 男女の人権が尊重され、その持てる能力を発揮できる社会を作っていくことは日本の社会・経済の活性化と持続可能性維持にとっても極めて重要である。職場における男女平等の実現に向けて、別紙3「2017春季生活闘争における男女平等課題に関する取り組み」に掲げる次の取り組みを行う。

  • 1)男女間の賃金格差の是正
  • 2)男女平等の推進(女性活躍推進法、男女雇用機会均等法の定着・点検)

(5)ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて(時短などの取り組み)

 健康で働き続けられる労働時間と過労死ゼロの実現、超少子高齢・人口減少社会が進むわが国の社会構造を踏まえ、「社会生活の時間」の充実を含めワーク・ライフ・バランス社会の実現をめざす。とりわけ喫緊の課題である総実労働時間縮減に向けて、労働時間管理の徹底、年次有給休暇の取得促進を「職場点検活動のポイント」も活用し取り組む。

(6)ワークルールの取り組み

 すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」をはかる観点から、ワークルールの取り組みを別紙4「2017春季生活闘争におけるワークルールの取り組みについて」に則り進める。

  • 1)雇用形態にかかわらない均等待遇の実現に向けた取り組み
  • 2)有期労働契約に関する取り組み
  • 3)改正労働者派遣法に関する取り組み
  • 4)若者雇用に関する取り組み
  • 5)高齢者雇用に関する取り組み
3.運動の両輪としての「政策・制度実現の取り組み」

 すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」に向けて、別紙5「政策・制度実現の取り組み」を春季生活闘争の労働条件改善の取り組みとともに運動の両輪として推し進める。

  • 1)地域活性化に向けた中小企業・地場産業への支援強化
  • 2)雇用の安定と公正労働条件の確保
  • 3)社会保障と税の一体改革の推進によるセーフティネットの拡充
  • *1 連合「2016年度 連合構成組織の賃金・一時金・退職金」調査結果(速報)より、主要組合の高卒初任賃金水準 事務・技術166,539円と生産166,938円の平均額に2%分上乗せ
  • *2 2016年版 中小企業白書
  • *3 総務省「労働力調査(基本集計) 平成28年(2016年)8月分」
  • *4 例えば、厚生労働省「毎月勤労統計調査 平成28年8月分結果確報」によれば約51.5%
  • *5 総務省「労働力調査(詳細集計)」平成28年(2016年)4-6月期平均(速報)
  • *6 中小共闘方針が提起する賃上げ6,000円を月所定労働時間164時間(厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」)で除して時給換算
  • *7 厚生年金保険法・健康保険法の改正により、2016年10月1日から短時間労働者への適用が拡大された。従来の適用対象者(1日または1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が通常の就労者の概ね4分の3以上である者)に加え、以下①~⑤をすべて満たすパート労働者も適用対象者となる。①1週間の所定労働時間が20時間以上あること②月額賃金が8万8,000円以上(年収が106万円以上)であること③継続して1年以上雇用されることが見込まれること④学生でないこと⑤従業員数が501人以上の企業で雇用されていること)。
III.闘争の進め方
1.基本的な考え方
  • (1)すべての労働者を対象とし、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に重点を置いた闘争を展開するために、連合・構成組織・地方連合会は、その機能と力量を最大限発揮すべく、重層的かつ総がかりでの共闘体制を構築する(別紙6参照)。中央闘争委員会および戦術委員会を適宜開催し、闘争の進め方などを協議・決定する。
  • (2)「地域の活性化には地域の中小企業の活性化が不可欠」をスローガンに、地域のあらゆる関係者との連携をはかるために地域ごとに「地域フォーラム」を開催する。
  • (3)「政策・制度実現の取り組み」を運動の両輪と位置づけ、国民全体の雇用・生活条件の課題解決に向け、政策・制度実現の取り組みと連動させた運動を展開する。
  • (4)「クラシノソコアゲ応援団!RENGOキャンペーン」第2弾の取り組みと連動し、暮らしの「底上げ」に関するテーマを広く社会に浸透させるとともに、職場と一体となってワーク・ライフ・バランス実現の取り組みを推進する。
  • (5)労働基本権にこだわる闘争の展開をはかる。
2.取り組み体制

(1)共闘連絡会議の運営

 5つの部門別共闘連絡会議(金属、化学・食品・製造等、流通・サービス・金融、インフラ・公益、交通・運輸)を設置し(別紙7参照)、会合を適宜開催して相互に情報交換と連携をはかる。先行組合の集中回答日における回答引き出し組合数を一段と増やすよう努める。また、相場形成と波及力の強化をはかるべく、個別賃金水準の維持・向上をはかるため、運動指標として代表・中堅銘柄(現在78銘柄)の拡充と開示を行うとともに、中核組合(現在約340組合)の「賃金水準」「賃金カーブ維持分」の開示を行い、賃金水準の相場形成を重視した情報開示を進めていく。

(2)中小労組の取り組み体制(中小共闘)

  • 1)中小企業労働者の底上げ・底支え、格差是正の取り組みの実効性を高めるために、中小労働委員会(中小共闘センター)のもとにすべての構成組織が参加する中小共闘担当者会議を設置する。また、中小共闘担当者会議と非正規共闘担当者会議、地方の地場共闘担当者との合同会議や「格差是正フォーラム」、共闘推進集会の開催など取り組みを行う。
  • 2)中小共闘を中心に、闘争情報の交流強化、交渉ヤマ場の統一ゾーンの設定などに取り組むとともに、取り組み強化の観点から、中堅組合も含めた共闘を展開する。
  • 3)地方における「地場共闘」の強化をはかるために、「地域フォーラム」の開催をはじめ、政府の「まち・ひと・しごと(地方創生)」にかかる地方版総合戦略の推進組織や「都道府県における地方公共団体及び労使等の関係者から構成される会議」への参画など、地域のあらゆる関係者と連携をはかり、地場の労働条件の底上げと賃上げの波及力を高める取り組みを行う。
  • 4)「取引問題ホットライン」を設置し、悪質な取引の抑制をはかるとともに、適正な価格転嫁と公正取引の実現に向けた取り組みを推進する。

(3)非正規労働者の労働条件改善にかかる取り組み(非正規共闘)

  • 1)「非正規共闘」を設置し、5つの部門別共闘連絡会議との連携を深め、非正規労働者の労働条件改善の取り組みを強化する。
  • 2)非正規労働者の処遇改善の取り組み内容の共有化と情報開示を進める。

(4)社会対話の推進

  • 1)連合は、経団連や経済同友会とのトップ懇談会のほか、日本商工会議所、中小企業団体中央会、中小企業家同友会全国協議会などとの協議を進め、労働側の主張を明確にしていく。
  • 2)地方連合会は、地域フォーラムを開催するとともに、地方経営者団体との懇談会、『まち・ひと・しごと(地方創生)』にかかる地方版総合戦略会議や都道府県における地方公共団体及び労使等の関係者から構成される会議などに積極的に参画する。

(5)闘争体制と日程

  • 1)中央闘争委員会、戦術委員会、共闘連絡会議の設置
    中央闘争委員会および戦術委員会を設置し、闘争の進め方を中心に協議を行う。
  • 2)要求提出
    原則として2月末までに要求を行う。
  • 3)ヤマ場への対応
    新年度の労働条件は年度内に確立させることを基本とする。そのために、3月のヤマ場に回答を引き出す「第1先行組合」と、その翌週の決着をめざす「第2先行組合」を設定し、相場形成と波及をはかる。具体的には、共闘連絡会議全体代表者会議、戦術委員会などで協議する。

(6)闘争行動

 非正規労働者に関わる「職場から始めよう運動」の展開をはかるとともに、「格差是正フォーラム」(11・28)、闘争開始宣言中央総決起集会(2・3)、春季生活闘争・政策制度要求実現中央集会(3・6)、共闘推進集会(3・31)の開催など、切れ目のない取り組みを展開する。
 また、常設の「なんでも労働相談ダイヤル」の活動を強化し、2016年12月6-7日および2017年2月9-11日には「全国一斉集中相談ダイヤル」をそれぞれ長時間労働、無期転換に向けた雇い止めなど非正規雇用をテーマとして実施し、長時間労働や労働組合のない職場で働く非正規労働者の課題解決に取り組む。

3.春季生活闘争を通じた組織拡大の取り組み

 組織化は労使交渉の大前提であり、2017春季生活闘争がめざす「底上げ・底支え」「格差是正」の実現には不可欠である。構成組織は、通年の取り組みである組織化についても、2017春季生活闘争での成果獲得に向けて、交渉の前段での取り組みを強く意識して進める。

  • (1)非正規労働者の組織化と処遇改善の促進をめざして、「職場から始めよう運動」をより強化し、同じ職場で働くパート・有期契約などの非正規労働者の組織化に積極的に取り組むよう加盟組合を指導する。
  • (2)未組織の子会社・関連会社、取引先企業などを組織化のターゲットに定め、加盟組合とともに組合づくりを前進させるとともに、同じ産業で働く未組織労働者、未組織企業の組織化に取り組む。
労働・賃金・雇用
春闘(春季生活闘争)
最低賃金
労働時間
不払い残業
過労死 (過労死等ゼロに向けた取り組み)
労働保険・社会保険の加入
雇用・労働に関する取り組み
労働安全衛生
非正規雇用