①法律の名称を「男女雇用平等法」(注1)とする。
②第1条(法の目的)に記された「男女の均等な機会及び待遇の確保」には、賃金の男女均等取り扱いが含まれることを明確にするとともに、各条文の性差別禁止条項は賃金格差是正のためにも運用されるべきであることを各条文の指針等に明記する。また、均等法の対象に性的指向・性自認による差別を加える。
③第2条(理念)に「男女労働者の仕事と生活の調和をはかる」ことを明記する。
④第6条(性別を理由とする差別の禁止)について、事業主が労働者の性別を理由として差別的取り扱いをしてはならない事項に「賃金の決定」を加える。
⑤事業主は、第6条に規定された事項の基準や運用のあり方を明らかにすることと、労働者から説明を求められた場合、事業主は説明しなければならないこと、また説明を求めたことを理由に不利益取り扱いをしてはならないことを指針に明記する。
⑥第7条(性別以外の事由を要件とする措置)について、間接差別法理を条文に明記し、指針における間接差別(注2)の禁止の基準を、限定列挙から例示列挙とする(現行3項目はあくまで間接差別の一例とし、一方の性に対して合理的な理由がなく不利益を生じさせることを幅広く禁じる)。また、どのようなことが間接差別に当たるかを「指針」で広く示す。
⑦第9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)において、婚姻を理由とする退職・解雇以外の差別禁止を明確化する。マタニティ・ハラスメントにおける被害者の就業継続を確保する。
⑧第10条(指針)にもとづく「募集および採用並びに配置、昇進および教育訓練について事業主が適切に対処するための指針」の法違反の判断を雇用管理区分(同じ区分の男女)ごとに行うことは、差別の温存や差別認定の範囲を狭めることなどになることから、この部分を削除する。
⑨第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)について、セクシュアル・ハラスメントを禁止するとともに、「性別役割分担意識に基づく言動」(ジェンダー・ハラスメント)の防止措置義務を事業主に課す。さらに、指針で被害者の対象に職務の遂行に際して接触した取引先や顧客、利用者、患者、生徒などの第三者も含め「カスタマー・ハラスメント」として明記する。
⑩ハラスメントの回避や、療養が必要な労働者の休業と復職の権利の保障などについて、具体的なルールや手続を指針に明記する。また、被害者が第三者の場合も念頭に通報制度も含めた相談窓口の設置を行い、二次被害の防止対策を講じる。
⑪ドメスティック・バイオレンス(DV)などの性暴力(注3)が職場に与える影響を労働問題として認識し、被害者の継続就業のための支援として、加害者の接近や個人情報の開示を防ぐとともに、救済機関のアクセスなどに必要な休暇制度の整備などの配慮規定を設ける。
⑫ポジティブ・アクションに関する第14条(事業主に対する国の援助)に、事業主に以下の責務を課すことを追加する。
a)募集・採用・配置・昇進・教育訓練・福利厚生・退職などの取り扱いにおける男女の割合(格差)や賃金格差に関するデータの集計・作成・保管・開示について、義務を課す。
b)ポジティブ・アクションの計画策定、実施、実施状況の開示について、措置義務を課す。
c)ポジティブ・アクションの計画策定・実施状況のモニタリング結果の計画への反映等については、過半数労働組合もしくは過半数代表者への情報提供・協議を義務づける。
d)男女間格差の要因について労働者および労働組合から説明や協議を求められた場合、これに応じる義務を課す。
⑬「コース等で区分した雇用管理を行うに当たっての事業主が留意すべき事項に関する指針」を法的根拠のあるものとする。
⑭第18~27条(調停)を改正し、事業主に機会均等調停会議への出席を義務づける。
⑮第28条(調査)について、厚生労働大臣は、男女間賃金格差の改善に関して必要な事項、特に職務評価・職業能力評価などについて、調査、研究、資料を整備し、事業主への提供を行うように努めることを法律に明記する。
⑯第29条(報告の徴収ならびに助言、指導及び勧告)について、労働局長が勧告を行う場合であって必要と認められるときに、賃金格差をはじめとする現状の改善措置計画の作成を求めることができるようにする。措置計画は、労働組合もしくは過半数代表への説明・協議、または過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取と意見書の添付を義務づける。また、措置計画は労働者に対する義務でもある旨も明確化し、第29条に「措置計画の作成・提出が求められた場合は、労働者や労働組合に周知しなければならない」旨、追加する。
⑰事業主は、均等法の趣旨と事業主が講じている措置について労働者に周知・啓発しなければならない旨を法律に明記する。
⑱差別救済制度を設け、以下のようにする。
a)政府から独立した雇用平等委員会を設置し、都道府県単位で支部を設置する。
b)救済の対象は、雇用の全ステージおよび賃金等の労働条件に関する性差別(性的指向・性自認に関する差別を含む)、仕事と育児・介護に関する両立支援、短時間労働者等の均等・均衡待遇等、その他の労働条件に関する法違反および差別的取り扱いや不利益取り扱いの他、ハラスメントがあるときとする。
c)救済申し立てを理由とする不利益取り扱いを禁止する。
d)差別・格差の合理的根拠を示す証拠およびその裏づけ資料の提出義務は事業主にあるものとする。
e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。また、委員会は差別の認定に関して調査する権限を持つものとする。
f)事業主がこの勧告にしたがわない場合は刑罰を科す。
⑲差別救済において政府から独立した雇用平等委員会が設置されるまでの間、第30条(公表)にもとづき厚生労働大臣(都道府県労働局長)の勧告にしたがわない企業名を公表するなどの制裁措置を行う。
⑳政府から独立した救済機関が設置されるまでの間、男女雇用機会均等法の実効性を強化するため、都道府県労働局・雇用環境・均等部(室)の人員を増員し、増加傾向にある相談や救済依頼に対し、迅速に対応できる体制を整える。その際、男女平等の観点に関して職員への十分な研修を行うものとする。