1 .持続可能で健全な経済の発展(経済政策)

経済政策<背景と考え方>

  1. (1)日本経済は、通商をめぐる諸外国の動向や相次ぐ自然災害など国内外における懸念要因を抱えつつも、緩やかな景気回復基調が続いてきたが、2018年末頃から陰りが見える。政府の経済政策の中心であるいわゆる「アベノミクス」では、長らく日本経済を苦しめてきたデフレからの脱却をめざして、日本銀行によるマイナス金利政策を伴う異次元の金融緩和政策等が進められてきたが、2%の物価安定目標は度々先送りされた後に達成期限を掲げることをやめ、政策の手詰まり感は濃くなりつつある。デフレの大きな要因とされてきた需給ギャップは、2017年以降プラス基調に回復したが、足もと2018年10-12月期には▲0.2%のマイナスに転じ、再び供給過剰の状況にある。このような状況が続けば、企業の設備投資意欲が減退するばかりか、生産縮小にともなう雇用の減少・賃金の停滞をもたらし、そのことがさらに国内需要の低下につながり、再びデフレが蔓延するといった悪循環に陥ることとなる。
  2. (2)最近の日本経済を俯瞰すると、2017年度の実質GDP成長率は、前年度比1.9%増と、3年連続のプラス成長となった。2017年は各四半期毎でもプラス基調を維持したが、2018年に入ると、1-3月期は▲0.3%。4-6月期は2.2%、7-9月期は▲2.5%、10-12月期は1.6%(いずれも季節調整済前期比年率)と、景気は減速している。これは、自然災害による供給制約の影響に加え、海外経済の回復ペース鈍化に伴い2017年に企業収益を大きく押し上げた輸出が伸び悩んだこと、景気の牽引役となってきた設備投資の伸びが一服したことが要因としてあげられる。先行きについては、消費税率引き上げ、東京オリンピック・パラリンピック開催によって景気の振幅が大きくなることが見込まれるが、オリンピック関連需要の一巡後には景気の停滞色が強まることが指摘されている。また、貿易摩擦の激化に伴う不確実性の高まりが、設備投資を更に下押しするリスクも抱えている。一方、これまでの緩やかな景気回復を背景に安倍政権により進められた政策運営のもとで、一部の上位層や大企業が富める一方で、不安定雇用は増加し、格差・貧困問題は深刻化している。加えて、危機的なレベルに悪化している国の財政状況を背景に、社会保障制度の持続可能性に対する国民の将来不安は一層強くなっている。そのような中で、社会全体の「底上げ・底支え」「格差是正」を確実にし、国民の将来不安の払拭を進めなければ、安定的・持続的な経済成長は到底望めない。
  3. (3)これらの課題解決のためには、強者だけが生き残るのではなく弱者も包み込み成長していくという包摂的な社会の構築を進める必要がある。そして、東日本大震災からの復興・再生を着実に推進するとともに、わが国経済を支える人的資本を強化するための積極的雇用政策と、くらしの安心を支える積極的社会保障政策の一体的推進、そのための安定財源の確保や再分配機能の強化を通じ、内需を活性化する必要がある。社会を支える分厚い中間層の復活と経済社会の自律的成長を取り戻し、連合がめざす「働くことを軸とする安心社会」の実現をはかるためにも、金融政策と経済・財政政策が一体となった政策運営が必要である。

1.安定した経済成長と公正な配分を最優先とするマクロ経済政策を実施するとともに、国民にとって安全で安心・信頼できる金融システムを構築する。

  1. (1)政府は、日本銀行の独立性・健全性を尊重しつつ連携し、為替レートの適正化・安定化および持続的な成長軌道への復帰につながる適切な経済財政・金融政策として、以下の対応を行う。

    ①人口減少・超少子高齢社会においても実質2%程度の経済成長をめざし、雇用創出・安定化、消費回復・内需拡大につながる経済活性化策を実施する。

    ②海外における債務危機や新興国の急激な成長鈍化等に起因する世界的な景気減速、世界各地で発生する地政学的問題といった外的リスク要因に備えるとともに、万が一、それらが顕在化した場合には日本経済への影響を抑制するために機動的・弾力的な経済財政・金融政策を行う。

    ③経済財政見通しを行う政府から独立した組織を設置し、客観的な見通しを前提にした政策立案を行う。

    ④2013年から始まった大規模な量的質的金融緩和により、巨額の国債購入が財政規律を弛緩させる要因となっていること、マイナス金利政策を含め金融機関の収益を悪化させるなどの副作用が目立つようになり、金融システムの不安定化が懸念されること等から、日銀は、デフレへの回帰と急激な金利上昇を回避しつつ、平時型の金融政策運営への「出口」に向かうことを検討する。

    ⑤国民生活や貿易財の交易条件に過度な悪影響をおよぼすような実体経済からかけ離れた急激な為替変動に対しては、G7各国と連携をはかりつつ、機動的かつ強力な市場介入を実施する。

  2. (2)金融機関が健全かつ適正な事業を運営し、預金者等の消費者利益を保護するとともに、地域経済を支える中小企業等に対してきめ細やかな融資判断を通じた資金供給を行うことができるよう、政府は、適切な監督と公的なバックアップを行う。

    ①金融機関の破綻への対応を強化するため、消費者保護の観点から、セーフティネット制度の充実をはかる。その財源は、事業者負担を基本としつつも、システミックリスクなど国民生活への影響を回避するため、政府が適切に公的資金を注入できるようにする。また、破綻処理にあたっては、取引先や従業員の雇用に十分配慮するとともに、経営健全化計画の確実な履行、経営者責任や株主責任を問う。

    ②政府は、金融機関の再編については、個別金融機関の主体性を尊重し、経営体質の強化と地域経済の活性化を重視した監督を行う。

    ③政府は、金融機関の破綻懸念先以下の債権への引当金に対する無税償却制度の導入や「銀行等保有株式取得機構」の活用などにより、金融機関の健全性をはかる。

    ④政府は、金融機関によるきめ細やかな融資判断やコンサルティング機能の強化、専門人材の育成など、中小企業やベンチャー企業の経営支援につながる政策の推進をはかり、事業育成の視点に立った支援をおこなう。

    ⑤政府は、信用保証制度枠の拡大を通じ、民間金融機関等による中小企業等への融資を促す。また、政府系金融機関は、地域の民間金融機関と協調のもと担保免除特例制度やDIPファイナンス(事業再生支援融資)を拡充するなど、中小企業等への事業融資強化、育成、支援、再生をはかる。

    ⑥政府は、中小企業やベンチャー企業が多様な手段を通じて資金調達ができるよう必要な環境整備を行う。一方で、投資家のすそ野を拡大する政策を実行する際には、投資家保護策や広報活動の充実をはかる。

    ⑦Fintech(注1)をはじめとした金融市場におけるICTやAIなどの進展を踏まえ、金融サービスの利便性の向上、セキュリティ対策の強化など国民が安全に利用できる制度を構築するとともに、利用者の保護や公正な競争条件の確保に向けて、金融機能ごとに同一の機能・リスクには同一のルールを適用するなど金融規制体系の再構築をはかる。また、金融機関やベンチャー企業などの連携と、双方の新たな事業展開に資する包括的な支援を行う。

    ⑧政府は、国民がライフステージに応じた金融経済教育を受けることができるよう、金融機関やNPOなどとも連携し、学校における教育の充実などをはかる。

    ⑨地域金融機関は、債務企業の「再生」「活性化」を最優先に据え、不良債権処理にあたっては、地域経済を支える中小企業等の役割や特性を十分に踏まえた上で、直接償却を多用することなく、間接償却も併用し、計画的に進める。(「地域活性化政策」参照

    ⑩国・地方自治体は、地域金融機関が地域密着型金融としての役割を発揮し、産官学金労言の連携のもと事業再生や成長分野の育成、産業集積など雇用の創出に資する取り組みを推進するよう指導や支援を行う。(「地域活性化政策」参照

  3. (3)政府は、国際的な連携もはかりつつ、金融資本市場の透明性を高め、労働者や国民生活に悪影響を与える投機的な資金の流れを規制する。

    ①政府は、金融危機につながる投機的な資産運用を防ぐため、運用成績を過度に反映する評価・報酬体系の是正に資するルール整備などを進める。

    ②政府は、金融機関への規制強化がシャドーバンキングへの資金のシフトを生まないよう、国際的な連携のもとで網羅的なルールづくりや監督強化を推進する。

    ③政府は、仮想通貨(暗号資産)に関する規制・監督強化を急ぎ、不正取引の防止・監視、預かり資産の保全、交換業者の財務内容開示等を含めた資金決済法や金融証券取引法の改正等によりルール・検査の厳格化を行う。

    ④政府は、機関投資家に対して「責任投資原則」「日本版スチュワードシップ・コード」や「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」の受入れを促すなど、責任投資の概念が広く浸透するよう取り組みを進め、責任投資に対する正しい理解のもと、個々の機関投資家が自らの投資判断においてESGを適切に考慮し非財務的要素を重視することを促す。

  1. (注1)Fintech ~主にICTを活用した革新的な金融サービス事業をさす。金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語。

2.政府は、雇用創出・安定化、社会保障制度の改革による生活・将来不安の解消、地域活性化・中小企業支援策の実施等の政策に重点を置き、内需主導による自律的な経済成長 を実現する。

  1. (1)新規産業・雇用を創出するために、将来にわたり特に発展が求められる分野(ICT、グリーン、ライフ、観光、サービス、農林漁業の6次産業化等)において、人材育成、技術開発、規制改革、予算・税制措置等官民の資源を集中投資する。(「産業政策」参照
  2. (2)国・地方自治体は、「グリーン・ジョブ戦略」にもとづき、「グリーン」で「ディーセント」な雇用の拡大・創出が期待できる分野に重点的に投資を行うとともに、グリーン産業および構造転換をめざす産業に対し、技術的・財政的支援を行う。また、それら産業・雇用の転換に伴う「失業や労働条件の低下」に対し、社会対話を行いつつ、労働者の教育・訓練、再就職先の斡旋・確保、住宅の確保など、公正な移行措置を整備する。(「環境政策」参照
  3. (3)求職者支援制度の訓練内容・訓練期間の拡充・強化、産業政策・雇用政策・教育政策と連携した職業能力開発施策の推進などにより、すべての働く者に対する職業能力開発施策と日本の成長と競争力を支える人材の育成を強化する。(「雇用・労働政策」参照
  4. (4)多様な雇用・就業形態の労働者の雇用の安定と公正な処遇を確保するとともに、若年者・女性・高齢者・障がい者の雇用対策を強化する。(「雇用・労働政策」参照
  5. (5)全世代支援型・すべての国民を対象としたセーフティネットへの機能強化を進めるべく、財源の確保、負担の分かち合い・所得再分配機能の強化など税制と一体となった社会保障制度改革を行う。(「社会保障制度の基盤に関する政策」参照
  6. (6)地域における産官学金労言の連携のもと、ものづくり技術・技能の維持強化とその支援、人材育成強化とその支援、地域特性を活かしたまちづくりの推進など、地域連携を強化した地域経済・社会の活性化を進める。また、総合特区制度なども活用しさらなる活性化をはかる。(「地域活性化政策」参照
  7. (7)金融機関が健全かつ適正な事業を運営し、預金者等の消費者利益を保護するとともに、地域経済を支える中小企業等に対してきめ細やかな融資判断を通じた資金供給を行うことができるよう、政府は、適切な監督と公的なバックアップを行う。(「経済政策」1.(2)参照
  8. (8)政府は、協同組合の価値と役割・機能、政府の対応方針・行動指針を示した「協同組合憲章(仮称)」を制定する。

3.財政再建は、増税や一律的な歳出削減による財政赤字削減のみを先行させるのではなく、社会保障充実のための安定財源確保と中長期的な財政健全化を強く意識した財政構造の抜本改革を実施する。

  1. (1)政府は、自律的な経済成長をめざし、以下の点にもとづき、中長期的な財政健全化を進める。

    ①行財政改革と税制改革、および節度ある国債の発行により早期の「プライマリーバランス(注1)の黒字化」を達成した上で、高水準にある債務残高を中長期的に圧縮する。

    ②中長期的な財政再建・健全化をめざすうえでは、本格的な人口減少・超少子高齢社会に突入することを前提としながら、一律的な歳出削減を行うのではなく、税収基盤の強化を進めるとともに、社会保障、教育、環境、防災・減災、地域活性化など国民のくらしに直結した歳出項目へ予算配分を重点化する。そのために、社会保障と税の一体改革の着実な実現を通じて自動安定化機能を強化し、景気循環の影響を受けにくい財政構造を構築する。

    ③政府は、財政規律の維持・強化に向けて、補正予算編成も含めた年度予算全体の中での規律を厳格化する。そのために、中期財政フレームのような財政計画を策定する中で、新規国債発行や歳出額の上限を設けるなど、予算編成の枠組みをルール化する。

    ④歳入・歳出を含む行政監視機能の充実をはかるため、立法府への「日本版GAO(注2)」(行財政監視評価委員会(仮称))の設置も展望しつつ、国と地方の財政に関する将来推計や、政府の財政計画の監視・評価を行う内閣から独立した機関を設置する。

  2. (2)政府は、資産・負債両面からの視点による債務管理政策の充実をはかり、財政破綻に対する行き過ぎた懸念を払拭する。資産・負債の圧縮に際しては、不要な資産を適正に売却し債務を返済するとともに、資産の収益率と負債の調達金利とが見合うように、資産や負債の質を替える。資産については、金融資産や知的財産の運用を適正に行っていく。負債については、市場との親和性を高めた国債の発行計画を立て、資金調達コストを軽減する。また、国債管理と土地を除いた金融資産、知的財産、特許等の資産管理の機能を持つ組織の設置についても検討する。
  3. (3)政府は、財政投融資制度や特別会計についても、その財政活動を国民にわかりやすく明示するとともに、国会において透明性のある審議を行う。財政投融資制度は、民業補完を前提として、政府支援の必要性を終えた事業への融資・投資の廃止等抜本的な改革を進める。財投機関は、情報開示の促進と市場原理との調和をはかり、公的な役割を終える時期に合わせ、職員の雇用の場を確保しつつ廃止・縮小、民営化などを計画的に行う。特別会計は、仕組みを簡素化するとともに、経済や社会の環境変化に応じて毎年見直しを行う。
  4. (4)国と地方の役割分担を明確化し、地方自治体の自主性・自立性を高める地方分権を推進するために、政府・地方自治体は以下の諸施策を行う。

    ①国税と地方税の比率は、当面は社会保障と税の一体改革の進捗状況を踏まえて、国と地方の役割分担に応じた配分を進めつつ、将来的には少なくとも50対50 となるよう税源移譲を進める。

    ②地方交付税は、地方自治体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方自治体が必要な公共サービスの一定水準を維持しうるよう財源を保障する制度であることから、政府は、基準財政需要額の算定にあたっては、地方自治体が参加する中で算定方法や交付税特別会計の予算・決算を決定し、その透明化をはかるとともに、効率的な行政事務を行うための算定方法の簡素化を進める。地方交付税の財源として、交付税の対象税目と地方への配分比率を拡大し、十分な交付税財源を確保するとともに、既存の国庫補助負担金制度について、公共事業等のための地方自治体の使い勝手の良い財源として国庫補助金の一括交付金化をはかるなどの改革を進める。このとき、社会保障や義務教育に係わる一般行政費国庫負担金は、一括交付金化の対象としない。

    ③地方自治体は、住民や地域の労働組合、NPO等、関係団体の参加のもとで、国または他の地方自治体が行うべき業務の仕分け、不要事業の廃止や民間への委託等を行い、行財政改革を進める。

  5. (5)公共事業について、一律的な事業量の削減を行うのではなく、地方の独自性と効率性の強化をめざし、国・地方自治体は以下の見直しや体制構築に向けた諸施策を行う。

    ①雇用創出、地域経済活性化および老朽化した社会インフラの再整備に資するもので、福祉型社会において不可欠なサービス部門や通信、防災、省エネ化などの生活基盤強化につながり経済効果も大きい事業を中心に重点化する。重点化にあたっては、雇用創出量を明示したうえで、必要なものは速やかに実行する。

    ②政府は、公共投資関係予算の効果検証を厳格に行い、不要事業を廃止するとともに、PPP(注3)・PFI(注4)による民間の資金やノウハウの活用も行いながら、投資効率を引き上げる。

    ③政府は、公共事業を地域の実情に即した地方自治体主導に改め、国の直轄事業は、地方自治体単独では実施が困難な広域事業や大規模災害の復旧事業、国際競争力強化のための産業基盤整備事業等に絞り込む。個別補助金は、地方の歳出に対する国の義務付けを縮小し、整理・統合する。

    ④国・地方自治体は、PFIも活用し、高齢者施設、病院、学校等、機動的かつ効率的な社会資本整備をはかる。また、事業の適用範囲や税制の軽減措置の拡大を行う。対象事業の選択にあたっては、公正・透明な手続きで行うことはもちろん、公共サービスの質の確保と適正な業務執行をはかる観点から、国や地方自治体が事業を行う場合とのコスト比較を義務づける。また、民間を活用する場合は、不当な価格競争に陥ることのないよう、事業者の選択方法についても公正性・透明性を担保したうえで、民間委託先従業員の適切な労働処遇条件の確保を要件に入れる。

  1. (注1)プライマリーバランス ~基礎的財政収支。国債など借入を除いた税収などの歳入から、過去の借入に対する元利払いを除いた歳出を差し引いた財政収支。
  2. (注2)GAO ~General Accounting Office の略。米国では、立法府内に設置され、議会の指示を受けて、行政に対する調査・提言を行っている。立法府が行政府の行った評価をチェックするとともに、行政府が評価し難い分野について評価を行う。分析・評価に関する専門的知識を活用するため、民間のシンクタンク、コンサルタント等の活用が求められている。
  3. (注3)PPP~Public Private Partnershipの略。公共サービスの提供に民間が参画する手法を幅広く捉えた概念で、「官民連携」とも呼ばれ、民間資本や民間のノウハウを活用し、効率化や公共サービスの向上を目指すものとされている。
  4. (注4)PFI~Private Finance Initiativeの略。PPPの代表的な手法の一つ。公共施設などの建設や運営などを民間企業の資金や経営能力、技術的能力を使って行う手法。

 

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