- (1)新型コロナウイルスの感染拡大は、経済・雇用・生活へ大きな影響を与えただけでなく、不安定雇用や格差、人口減少に伴う社会保障・財政・地域の持続可能性、デジタル化の遅れなど様々な社会課題を顕在化させた。
落ち込んだ経済・社会を回復させるためには、単に内需主導型で経済を自律的な成長に引き戻すだけでなく、新たな成長や雇用創出の基盤となる分野への予算・税制措置、規制の見直しを通じて、わが国の経済・社会・産業構造の転換に繋げ、持続可能な社会への構造変革を促す必要がある。
また今回の危機を契機に、露呈された日本社会の様々な脆弱性を是正させ、持続可能な社会につなげていくために、雇用の質の向上や安全網の確立、格差是正、貧困の解消のための施策につながる歳出項目への予算配分を重点化していくことが求められる。それは、社会の支え手(納税者)を増やすことにもつながる。 - (2)コロナ対応で一層深刻さを増したわが国財政の健全化をめざすうえでは、税制の抜本改革と合わせ税財政一体で対応をはかり、補正予算編成も含めた年度予算全体の中での財政規律を厳格化する等、基礎的財政収支の黒字化に向けた具体的な道筋を国民に示し、理解を促進することが重要である。
この間の巨額の財政支出を契機に、将来世代への責任を再認識し、負担の先送りを解消していく必要がある。そのためにも、財政に関する将来推計や、政府の財政計画の監視・評価を行う内閣から独立した機関を設置し、歳入・歳出を含む行政監視機能の充実をはかることが求められる。 - (3)実態として国債の大量消化や低金利環境維持を通じて金融政策が財政を支える構図が鮮明になっており、日銀へのさらなる依存と制御不可能な財政赤字拡大を招くリスクを増大させている。税財政の改革による財政健全化の取組みを進め日銀への依存から徐々に脱却し、デフレへの回帰と急激な金利上昇を回避しつつ、平時型の金融政策運営への出口に向かうことを検討する必要がある。