3.安心できる社会保障制度の確立(社会保障制度の基盤に関する政策)

社会保障制度の基盤に関する政策<背景と考え方>

  1. (1)日本の社会保障制度は、国民皆保険・皆年金を柱に構築されてきた。しかし、高齢化の進展により65歳以上の高齢者人口は過去最高を更新し続け、総人口に占める割合は3割近くとなっている。社会保障給付費は増加し続けており、少子化の進行とあいまって、その基盤は大きく揺らいでいる。社会の基盤となる社会保障が将来にわたって必要な人に確実に提供され続けるよう、社会保障制度改革と安定財源の確保を一体的に進めていくことが必要である。
  2. (2)生活困窮者やその世帯の抱える課題は多様で複雑・複合的にからみあっている。生活困窮者自立支援制度や改正社会福祉法に新設された「重層的支援体制整備事業」を中核とし、早期的・予防的な観点からの支援も含め、包括的かつ伴走的な支援を強化していくことが重要である。また、生活困窮者が抱える家賃負担等の住まいをめぐる課題の解消に向けて、住居給付確保金の拡充策をはじめ、中長期視点での住まい保障について検討を進めるべきである。
  3. (3)生活保護受給世帯数は微減傾向にあるものの、その過半数を占める高齢者世帯の割合は増加傾向にある。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による雇用情勢の悪化により、生活保護の機動的な運用が求められている一方で、生活扶助基準が段階的に引き下げられている。
  4. (4)社会保険の適用拡大に関しては、法改正が行われてきているものの、被用者全体をカバーするには程遠い状況である。さらなる適用拡大に向けて、政府は衆参両院の付帯決議を踏まえ、すべての労働者に社会保険を適用するよう徹底的な要件の見直しを行うとともに、労働組合のより一層の関与など取り組みの強化が求められる。
  5. (5)日本年金機構は、適用の徹底に向けた対応を強化するも、人員体制は「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」に基づき削減が行われている。このため、業務運営の効率化とともに、確実な業務執行を可能とする人員の確保が急務となっている。。

1.すべての人が必要な社会保障サービスを確実に受けられるよう、社会保障制度の基盤を確立する。

  1. (1)国は、人々が就労し、健康で文化的な生活を送るための所得を得て、税金や社会保険料を負担し、支え合う「働くことを軸とする安心社会」を実現するため、全世代支援型の社会保障の構築とすべての国民を対象としたセーフティネット機能の強化を進める。
  2. (2)社会保険は、「保険給付を受ける被保険者をなるべく保険事故を生ずべき者の全部とし、保険事故により生じる個人の経済的損害を加入者相互に分担すべきもの」とされており、個々人の加入者が支払う保険料が、その受け取る給付の期待値と同額になるという原則のもと、強制加入による逆選択の防止や、高所得者から低所得者への所得再分配の機能がある。これらの機能を踏まえ、持続可能な社会保障制度の確立に向けて、国民皆保険を堅持するとともに、社会保険の運営にあたっては、保険料の拠出者である被保険者の意思を反映する。
  3. (3)国は、社会保障分野の人材確保を進めるため、医療・介護・健康・福祉・子育て分野等を魅力ある産業とし、総合的、専門的な人材確保・育成制度の整備、労働条件の抜本的改善をはかる。
  4. (4)国は、所得再配分機能の回復・強化と安心と信頼の社会保障の実現の視点から、マイナンバー制度を円滑・着実に普及させる。

    ①マイナンバー制度の普及にあたり、個人情報保護のためのセキュリティ対策を万全に整える。

    ②医療情報との連携については、継続的な保健事業の推進をはかる観点から、保険者間における特定健診・特定保健指導に関する情報連携を推進する。レセプト情報との連携については、機微性の高い情報であることから、慎重に検討する。

    ③目的外利用やなりすましなどの不正行為を防止するための実効ある措置を講じる。また、苦情処理、権利侵害にかかる調査・救済などの機能を持つ第三者機関を設置する。

  5. (5) 国は、社会保障サービスの利用者自己負担を一定額に抑える「総合合算制度」の実現に向け、直ちに検討を進める。
  6. (6) 国は、生命の安全、人権、子どもの成長に深く関わる分野の最低基準について、積極的に役割を果たす。一方、地方の特性に応じた社会保障政策の実施に向けて、地方分権の観点から、国の義務づけを縮小する。
  7. (7)国および地方自治体は、社会保障や福祉の意義・制度の基本、社会連帯の重要性など、学校における「社会保障教育」を充実する。
  8. (8)地方自治体は、医療・福祉・介護・子ども子育て等の分野を超えた地域生活課題について、支援を必要とする人に寄り添った包括的・伴走的な支援を行うため、重層的支援体制整備事業(相談支援・参加支援・地域づくり)の実施体制を整備し、だれもが安心してくらせる共生社会を構築する。また、国は、好事例を展開するなど、任意事業である重層的支援体制整備事業の全国的な普及に向けた取組を進める。
  9. (9)国は、地域福祉の推進に向けて、市町村地域福祉計画および都道府県地域福祉支援計画の策定を義務づける。
  10. (10)国は、医療法人および社会福祉法人に対し、良質なサービスが提供されるよう、事業の継続性、経営状況や労働関係法令遵守事項を含め事業運営の透明性を確保し、他事業との経営・財務の分離、配当の制限、財務諸表の公表、理事会の公益性の確保、理事・役員などの親族制限、使途制限の徹底を進める。また、地方自治体は、医療法人、社会福祉法人に対し、実効性ある指導監督を徹底する。
  11. (11)国および地方自治体は、地域の見守りなど、地域福祉の重要な担い手となっている民生委員と児童委員について、兼務規定の廃止や報酬の改善、任命方法などの見直しを検討する。
  12. (12)国および地方自治体は、被災者に必要な支援が確実に提供されるよう、被災者の所在を把握するための「全国避難者情報システム」の運用を進める。そのため、避難者からの情報提供が確実に行われるよう、市民に対する周知活動を徹底する。
  13. (13)被災者の命と安全、健康を確保するための避難体制を確保する。

    ①国は、地方自治体が高齢者、障がい者、子ども、疾患のある人、外国人などの移動手段の確保を含む避難計画を策定し、周囲への遠慮をせずに避難所で生活できる体制を整えるための支援を強化する。また、外国人の防災対策に関しては、避難訓練時のアナウンスや被災時の避難場所の案内における多言語対応等、情報伝達を支援する体制を整備する。

    ②国および地方自治体は、被災地や避難所における感染性疾患の拡大を防止する観点から、様々な災害時に対応する感染症抑制の知見や経験を普及し、平時から対策を講じる。また、感染拡大状況における避難時の三密回避の観点から、平時からリスクアセスメントを行い、避難所の環境に応じた体制作りを行う。

    ③国および地方自治体は、夏場の大規模な災害等に備え、熱中症対策、衛生状態の確保を念頭に置いた避難所運営、避難体制を構築する。また、衛生管理に必要なドライアイスの製造・確保拠点の計画的な整備を進める。

    ④国および地方自治体は、避難所における被災者の健康状態を維持するため、マスク、手指用アルコール消毒剤、消毒剤、総合感冒薬、うがい薬等の分散備蓄体制を構築し、衛生環境を保持する。

    ⑤国および地方自治体は、医薬品、ワクチン、医療材料、衛生材料、水および医療用ガス等の分散備蓄・供給体制を構築する。

    ⑥地方自治体は、乳幼児の健康状態を確保するために特に必要となる水、粉ミルク、アレルギー食、清潔な環境などの確保に十分配慮した避難体制を構築する。

    ⑦地方自治体は、病院、介護保険施設、居住系サービス、福祉施設等における避難計画・体制を見直すとともに、同計画にもとづき職員・入所者等に対する防災教育や避難訓練の実施を徹底する。

    ⑧地方自治体は、在宅医療・介護等のニーズを把握し、避難体制を確保するため事業者との連携を深める。また、事業者が移動手段を確保できる体制整備を行う。

    ⑨国および地方自治体は、災害発生時の状況把握や復旧を担う労働者の健康確保の観点から、作業に従事する労働者の待機・宿泊施設の確保について必要な支援を行うこと。また、そうした支援について、災害協定締結業者や維持工事等の契約相手方にも周知する。

2.すべての人が健康で文化的な生活を送れるよう、重層的な社会的セーフティネットを確立する。

  1. (1)国は、現在の生活保護制度と雇用保険制度をベースに、社会保険・雇用保険制度の機能強化(第1のネット)、生活困窮者自立支援制度の就労支援や生活支援の充実・実施体制の強化(第2のネット)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する給付制度(第3のネット)に加え、いずれの層の施策とも組み合わされる「住宅支援制度」と「医療・介護費補助制度」(第4のネット)を整備し、きめ細やかな重層的なセーフティネットを構築する。

3.生活困窮者自立支援制度の実施体制の整備を進める。

  1. (1)地方自治体は、生活困窮者自立支援制度の確実な実施に向けて、総合的な実施体制を整備し、NPOや社会福祉法人、社会福祉協議会などの社会資源を活用するとともに、人材の確保と育成を進める。
  2. (2)国は、必須事業である「自立相談支援事業」「住居確保給付金」などの確実な実施を支援するとともに、好事例などの情報収集や横展開を進め、事業の質の改善を行う。「就労準備支援事業」など任意事業の地域差の平準化をはかる。また、事業委託にあたっては、事業の継続性や人材確保等を重視する。
  3. (3)国および地方自治体は、生活困窮者支援の質を確保するため、縦割りでない包括的なチームによる相談支援体制を全国的に構築し、アウトリーチによる早期からの「包括的」かつ「伴走型」の支援体制を確立・強化する。
  4. (4)国は福祉事務所設置自治体に対して、就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業などの任意事業を積極的に実施するよう支援する。補助率については4分の3とする。
  5. (5)国は、就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)の認定制度について、安全衛生の確保、情報公開、報告の義務等を要件化するなど、貧困ビジネス防止の観点から強化する。
  6. (6)国および地方自治体は、生活困窮者が抱える家賃負担や連帯保証人等の住まいをめぐる課題の解消に向けて、住居確保給付金の支給期間の延長や入居費用の支給に充てる金額の拡充、機関保証の活用を進める。また、住まいは生活の基盤であることから、国は住居費の支援等の生活困窮者に対する恒常的な居住保障のしくみの検討を進める。
  7. (7)国は、無料低額宿泊所の利用者の自立を助長する適切な住環境を確保するため、無料低額宿泊所の防災体制を強化するとともに適切な相談支援体制の整備を行う。
  8. (8)国および地方自治体は、登録住宅を増やすため、賃貸住宅の所有者等に対して改正住宅セーフティネット法の内容の周知を徹底する。また、地方自治体は、地域の実情に応じた賃貸住宅供給促進計画の策定を進める。
  9. (9)国および地方自治体は、就学援助金制度について、準要保護者への援助基準を保護基準の1.2倍以上とするとともに、援助経費などの改善を検討する。
  10. (10)国および地方自治体は、ホームレスに対して生活保護の給付を行い、併せて生活支援を充実する。

    ①緊急一時保護施設(シェルター)の活用、自立支援センターの整備・拡充等の適切な対応をはかる。

    ②新たな貧困層(ワーキングプア等)等若年層への相談支援体制の整備・拡充、就業機会の確保など、自立支援策を強化する。

    ③ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法第11条(公共施設の利用が妨げられている場合は、その管理者が適正利用のための必要な措置を講じる)は、国際人権法に則った上での措置とする。

 

4.すべての人の生存権が保障されるよう生活保護制度の基盤を強化する。

  1. (1)国は、生活保護制度が、すべての人が健康で文化的な最低限度の生活を保障していることに鑑み、生活扶助などの水準について、引き続き消費水準等に着目した改定を行い、安易な引下げは行わない。

    ①実施機関の窓口に生活保護の申請書類一式を備え置くことを義務づける。

    ②受給者の権利擁護をはかるため、苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。

    ③資産の保有状況の調査について、署名捺印によって包括的に同意を強制する「123 号通知」とその関連通知については廃止する。

  2. (2)国は、生活保護世帯の捕捉率について調査方法を確立し、公表する。
  3. (3)国および地方自治体は、 生活保護の申請にあたって、申請権が損なわれることのないよう徹底する。また、扶養義務を強要する運用を改善し、将来的には民法の扶養義務の範囲も縮小する。
  4. (4)国および地方自治体は、医療扶助の適正化を進めるとともに、不正請求を行った指定医療機関の取消を行う。
  5. ①高額薬剤における不適正事案への対応については、レセプト電子請求を普及し、レセプト点検のさらなる強化や重複投薬の是正に取り組むほか、指定医療機関制度の見直しによる不正請求を行った医療機関の排除を徹底的に行う。

    ②生活保護受給者に先発医薬品と後発医薬品について差額分の自己負担を求めることは、医療における患者の選択の幅が狭められることになりかねないため、慎重に検討する。

    ③医療扶助受給者による頻回受診が行われている医療機関に対する指導を徹底する。

    ④医療扶助による医療を受診した場合であっても、医療機関に対して診療明細書の発行を義務化する。

    ⑤医療扶助におけるオンライン資格確認等システムの導入にあたっては、被保護者の受療機会を確実に保障する。

  6. (5)国および地方自治体は、生活保護を受けずに自立的な生活に早期に移行できるよう、集中的な就労・自立支援方針を早期に策定する。様々な要因で就労できていない被保護者が就労できるよう、就労意欲の回復を含めたきめ細かな取り組みを促進する。また、被保護者が積極的に就労することで自立的な生活への移行を促進するため、生活扶助の勤労控除を拡大し、「脱却インセンティブ」を強化する。
  7. (6)国および地方自治体は、新たな生活困窮者支援など業務拡大等を踏まえ、福祉事務所の地方財政措置を大幅に充実するとともに、福祉事務所設置自治体においては、ケースワーカー標準配置数にもとづいた人員の配置、専門職などの人材の確保と育成を強化する。
  8. (7)国および地方自治体は、刑期を終えた人への支援に向けて、社会的な居場所づくり、住まいの確保、就労促進の支援に向けた取り組みを進める。
  9. (8)国は、総合支援資金貸付については連帯保証人等の貸付要件を緩和し、雇用保険の基本手当等の給付対象者に対する緊急小口資金については住所等の貸付要件を緩和する。併せて、生活資金貸付制度の周知を徹底する。

 

5.すべての労働者に社会保険を適用し、働き方に中立的な制度を確立する。

  1. (1)国は、すべての労働者が安心して働き、暮らし続けられるよう、雇用形態や企業規模の大小を問わず、社会保険の適用拡大を強力に推進する。

    ①社会保険適用の意義や、改正法の趣旨、労働条件不利益変更の禁止について効果的な周知を行う。

    ②事業者が、社会保険料負担を回避するため、労働時間等の労働条件を引き下げや偽装請負などの契約形態変更などにより、社会保険適用から外すことがないよう、指導・監督を徹底する。

    ③就業調整を防ぎ、被用者保険の適用拡大を円滑に進めるための支援策を講じる。また、労働者が誤解により就業調整を行うことを防ぐため、給付と負担について正確に理解することができるように周知徹底を行う。

    ④事業者の違法な適用逃れや該当する労働者の未適用などの労働者の不利益を防止するため、国税庁や地方自治体と連携し、徹底して社会保険適用を推進する。

    ⑤介護休業中の社会保険料の免除制度を創設する。

    ⑥自営業者等の所得比例年金の創設に向け、マイナンバーやインボイス制度の早期導入等による所得捕捉の徹底を進めるとともに、自営業者等の保険料負担(事業主負担)のあり方を整理する。

    ⑦短時間労働者等へのさらなる適用拡大に向けて、企業規模要件を速やかに撤廃し、適用基準として労働時間要件(週20時間以上)または年収要件(給与所得控除の最低保障額以上)のいずれかに該当すれば社会保険を適用させるように見直す。また、現行の被扶養者の年収要件を現行の130万円から給与所得控除の最低保障額以上に変更する。

    ⑧社会保険の非適用業種を撤廃し、常時5人未満の個人事業所も適用対象とする。

  2. (2)国は、社会保険の適用、徴収業務の確実な対応を進めていくため、公権力行使業務が行える職員(正規職員)を含め、日本年金機構の人員を確保し、体制を強化する。
  3. (3)社会保険の運営にあたっては、保険料の拠出者である被保険者の意思を反映する。
  4. (4)国は、社会保険審査会の審査の簡易・迅速化に向け、審査体制の見直しを行う。

    ①被保険者や受給権者など請求人の立場に立ち、審査基準の見直しや体制の整備を行う。

    ②請求人の審査会参加を担保する観点から、利便性を確保するため、社会保険審査会の開催場所を東京のみと限定せず、8ブロック(各地方厚生局単位)での開催や、ICTの活用を検討する。

    ③審査基準(関連法規や運用基準)や手続きなどを平易かつ的確に説明できるよう、請求窓口担当者に対する研修を強化する。

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