- (1)地方を取り巻く環境は、グローバル化の進展や、若年人口の大都市への流出とこれに伴う高齢化・人口減少、産業構造の急激な変化等によって長らく厳しい状況が続いている。 こうした状況に対し、国はこれまでも様々な地方活性化策を講じてきたが、三大都市圏(特に東京圏)への人口集中には歯止めがかからず、地方部を中心とした工場立地の低迷や中心市街地の衰退による雇用の減少は、時を追うごとに深刻化している。
- (2)人口減少問題については、国立社会保障・人口問題研究所が2053年に日本の人口は1億人を下回り、2065年には8,808万人になると推計しているが、このまま地方から大都市への人口流出が継続すれば、現存の地方自治体の半数以上は、その存続自体が危機的な状況になるとの報告もある。こうした中、第2次安倍政権は、2014年9月に「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、同年11月には地方創生関連2法案(まち・ひと・しごと創生法、地方再生法の一部を改正する法律)を成立させるとともに、翌12月には人口の将来展望を示す「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と、向こう5か年の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定した。あわせて、同法にもとづき、全国の自治体に対し「地方人口ビジョン」と、それを達成するための「地方版総合戦略」の策定を要請するとともに、広く関係者の意見が反映されるよう「産官学金労(言)」からなる推進組織の設置を求めた。2019年は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の最終年となることから、各基本目標の進捗状況などを丁寧に振り返った上で、次期総合戦略に向けた検討を進め、地方創生のさらなる充実・強化に取り組んでいくことが求められる。
- (3)連合は、これまで「地域に根ざした顔の見える労働運動」を標榜する中で、未組織中小労働者や非正規労働者も含めた、すべての労働者の暮らしの底上げ・底支えのため、地方連合会・地域協議会を中心に地域課題の解決に取り組んできた。また、政府の「まち・ひと・しごと創生」の取り組みを「連合のめざす政策の早期実現」と「地域に根ざした顔の見える労働運動の実践」に結びつけるべく、地方創生に積極的に関与していくことを確認し、「地方人口ビジョン」「地方版総合戦略」を策定する地方自治体の推進組織に積極的に参画してきた。
- (4)地域産業の振興をはかり、安定的な地域雇用を創出するためには、国内の生産や研究機関、金融も含めた周辺サービスなど、事業活動を一体的に支援する環境の整備が求められる。また、地域活性化の推進にあたっては、持続可能な地域経済・地域社会の形成のため、地域の特性を熟知した地元住民、地元産業が主体となったまちづくりをめざすことが必要である。そのためにも、産官学の連携のみならず、地域金融機関、地域の労働組合、地域マスメディアなどが参加する産官学金労言のネットワークが求められており、「開かれた春闘」をめざし地域の様々な関係者と連携をはかる「地域フォーラム」を積極的に活用することも重要である。全国の地方自治体が「地方版総合戦略」の推進に取り組む中で、PDCAサイクルを着実に回していくことが重要であり、その際には、それぞれの地域が自主性・主体性を発揮し、地域の特性を活かしたまちづくりに取り組むことが必要である。連合は、産官学金労言をはじめ地域の幅広い関係者とのネットワーク構築・強化をはかり、引き続き地域活性化の実現をめざしていく。