2-27-0.(横断的な項目)・男女平等政策<背景と考え方>

  1. (1)2020年12月、政府は「第5次男女共同参画基本計画」を閣議決定した。しかし、過去の基本計画で掲げられた目標の多くが未達成であり、それらの実現に向けた具体的な対策が急がれる。加えて、2003年に設定された「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に占める女性の割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する(202030)」目標は、「2020年代の可能な限り早期に」と先送りされた。世界の潮流は2030年までに意思決定の場に女性が50%入る「203050」であり、これ以上の停滞は許されない。加えて、世界経済フォーラムが発表しているGGI(ジェンダー・ギャップ指数)でも、日本は156ヵ国中120位と先進国で最下位となっており、特に政治・経済分野での男女間格差が指摘され続けている。
     そのような中で、2021年2月には、公的組織のトップが、「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」などと発言した。女性に対する偏見に満ちた差別発言であり、国内外から非難の声が上がった。にもかかわらず、その後も「(女性の登用が進まないことに関して)女性側にも原因がないことはない」などの差別発言が続き、日本の人権感覚が国際社会からも疑われかねない状況となった。一方で、一連の発言に対して、今まで声を上げてこなかった人々が抗議したことは、ジェンダー平等に関する意識の変化といえ、この機運を確実なものとする必要がある。
  2. (2)2020年の女性の就業者数は3,044万人、雇用者数に占める女性の割合は44.3%で、M字カーブの谷の部分は浅くなりつつあるが、その主な要因は、非正規雇用労働者の増加によるところが大きい。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で就業者数は減っており、特に非正規雇用の女性への影響が大きくなっている。
     2016年に女性活躍推進法が施行され、管理職に占める女性の割合は、長期的には上昇傾向にあるものの、13.7%と諸外国に比べて低い水準にとどまり、男性の賃金を100とした時の女性の賃金は74.3と、依然として男女間格差は解消されていない。雇用や賃金における格差が存在しているにもかかわらず、女性活躍推進法の状況把握の基礎項目には「男女間の賃金の差異」が含まれておらず、情報公表の対象項目にもなっていない。
     女性が直面している様々な困難が解消され、働きがいを持てる就業環境の整備は急務であり、女性活躍推進法のさらなる周知・点検の徹底と定着、中小企業への浸透など、法の実効性を高める必要がある。
  3. (3)男女がともに仕事と生活の調和を実現するためには、働き方を見直し、男性も含めた労働時間の短縮や、仕事と育児や介護等の両立支援に向けた環境整備が不可欠である。
     しかし、固定的性別役割分担意識と男性の長時間労働は、男性の育児や家事への参画を阻んでおり、男性の育児休業取得率は上昇傾向にあるものの7.48%にとどまる。育児休業の取得期間も2週間未満が7割を超える。そのような中、未だ女性労働者の半数が第1子出産前後で退職している。
     一方、介護の状況を見ると、家族の介護・看護のために離職した労働者は、年間約10万人で推移しており、働きながら介護をする男性も増えている。また、介護離職者の再就職は3割であり、その多くが非正規雇用となっている。さらに、育児と親の介護を同時に担う「ダブルケア」を行う人口も25万人と推計されており、男女ともに30歳から40歳代の働き盛りの世代がこの問題に直面している。それらの状況の改善は喫緊の課題であり、男女がともに仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をはかることができるよう、実態やニーズに応じたさらなる法整備が求められている。
  4. (4)2019年6月、ILOは第108回総会において「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約と勧告を採択した。あらゆるハラスメントの根絶は今や国際的な課題となっている。
     一方、日本国内の現状を見ると、都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーに寄せられる「職場のいじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は増加傾向にあり、2012年以降すべての相談の中でトップとなっている。また、厚生労働省の実態調査(2017年)では、企業の相談窓口へ寄せられる内容は、パワー・ハラスメントに関する相談が32.4%と最も多くなっており、従業員の32.5%が過去3年間にパワー・ハラスメントを受けている。都道府県労働局へ寄せられる相談件数は、セクシュアル・ハラスメントに関する相談が最も多く、次いで婚姻、妊娠・出産等に関するハラスメントについての相談が多い。なお、職場以外でも女性に対する差別発言や、各級議員による性的指向・性自認(SOGI)に関する問題発言などが頻発しており、あらゆるハラスメント対策を求める声が高まっている。
     国内外の動きも背景として、2020年6月には改正労働施策総合推進法、改正男女雇用機会均等法等が施行された。パワー・ハラスメントの防止措置義務や、ハラスメントは「行ってはならない」との責務規定が法制化されるなど、ハラスメントの抑止効果が期待される。しかし、ハラスメントが蔓延する現状に鑑みれば、ハラスメント行為そのものを禁止することが重要であり、さらなる法整備に向けて早期に取り組む必要がある。
     2018年5月に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立したものの、理念法にとどまり、女性議員の数は遅々として増えない。政治分野における女性の参画をより積極的に推進するため、クオータ制導入へ向けた法整備が必要である。
  5. (5)国連で採択された「持続可能な開発目標・SDGs」に係る施策を総合的かつ効果的に推進し、目標を達成させていく必要がある。貧困や不平等をなくし、年齢や性別、障がいの有無などにかかわらないディーセント・ワークの実現に向け、女性のエンパワーメント、女性に対するあらゆる形態の差別や暴力の根絶などをめざす目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の取り組みを中心に位置づけることが重要である。
     そのうえで、国際的な連携をはかり、条約などの取り決めを遵守する姿勢を示すべきである。女性差別撤廃条約にもとづく性差別禁止、特に雇用の全ステージにおける直接・間接差別の禁止に関する法制度の充実が必要である。また、「雇用及び職業についての差別待遇」に関するILO第111号条約や、2021年6月25日に条約発効となる「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関するILO第190号条約を早期に批准すべきである。さらには、ILO条約勧告適用専門家委員会が日本政府に強く求めている同一価値労働・同一賃金の原則の実現による均等待遇の確保や、性やライフスタイルに中立な税・社会保障制度の実現による格差是正、貧困の解消が強く求められている。
     加えて、日本は、国連女性差別撤廃委員会から再三の勧告を受けているにもかかわらず、選択的夫婦別氏制度の導入や女性の再婚禁止期間の廃止について未だに法改正が実現していない。特に選択的夫婦別氏制度については、国民世論で実現を望む声が高まっているにもかかわらず、「第5次男女共同参画基本計画」では極めて消極的な記述にとどまった。民法における男女差別の解消に向けて引き続き運動を展開する必要がある。

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