5.くらしの安心・安全の構築(東日本大震災からの復興・再生および防災・減災に関する政策)

東日本大震災からの復興・再生および防災・減災に関する政策<背景と考え方>

  1. (1)国は、「東日本大震災からの復興の基本方針」(2011年7月)で定めた「復興・創生期間」が10年間で終了することを踏まえ、「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」を2019年12月に閣議決定した。新たな基本方針では、復興庁の設置期間を2030年度まで延長し、地震・津波被災地域については、復興・創生期間後5年間において、復興事業がその役割を全うすることをめざすとともに、原子力災害被災地域については、国が前面に立って、当面10年間、本格的な復興・再生に向けた取り組みを行うこととしている。
     被災地においては、災害廃棄物処理の完了(帰還困難区域除く)はもとより、基幹インフラの本格復旧が進み、最大47 万人にのぼった避難生活者は、減少はしているものの、いまだに3.8 万人(2022 年3月時点)の被災者が避難生活を余儀なくされている。また、被災地における雇用者数は、震災後の緊急雇用創出事業等の実施や復興需要等による有効求人数の増加により震災前の水準まで回復しているが、その一方で、沿岸部を中心に雇用のミスマッチなどの課題が生じている。
     福島においては、原子力災害の影響が復興の大きな足かせとなってきたが、除染の進捗により、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除された。帰還困難区域についても「特定復興再生拠点区域」として6 つの町村が再生計画を認定され、一部地域では避難指示が解除されたが、住民の帰還が十分に進まないことなど、いまだに復興・再生への課題は山積している。
     今後もとぎれのない震災復興をはかるべく、「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」を踏まえた取り組みの早急かつ着実な実施と、政策面・財政面における国の強力なバックアップが求められる。
  2. (2)被災地では、時間の経過とともに被災者のニーズは多様になり、課題も変化している。住まいとまちの復興・再生においては、住宅再建が着実に進捗し、自主再建も進んでいる。その一方で、避難が長期化する中、要介護者の重度化や孤立死の増加が懸念されるなど、避難先における対応を含めコミュニティ形成への支援、住宅・生活再建に関する相談支援体制の整備等、医療・介護・福祉サービスなどの充実・強化が求められる。
     産業の復興・再生については、「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」を通じて、地域経済の核となる中小企業の再建・復興を支援する取り組みが行われてきた。津波で被災した農地や漁港は概ね機能を回復しているが、水産加工業においては震災により失われた販路確保の課題が依然存在するなど、売上げの回復は道半ばである。また、インバウンドを中心とした観光振興に向け、政府が主体となった広報活動の推進など風評被害等の払拭への取り組みが引き続き求められる。
     雇用の面についてみると、被災3 県の有効求人倍率は1倍以上の水準で推移しているが、沿岸部の一部では、有効求人倍率は高いものの人口減少の影響や復興・復旧の遅れなどにより、雇用者数が震災前の水準まで回復していない地域や産業もあり、人材確保に向け、地域の振興と一体となった取り組みが必要である。
     また、医療・介護は復興に欠くことのできない生活基盤の1つであり、被災地へ医療・介護人材を派遣する取り組みが継続されているが、とくに福島県沿岸部ではぎりぎりの人員体制でサービスを提供している実態があり、人材確保対策の継続・強化が必要である。さらに、持続可能な地域づくりの観点では、震災以前から存在する人口減少・超少子高齢化の進行への対応も欠かすことができない課題である。この間の復興の遅れから若年ファミリー層が転出し、高齢化に一層拍車をかけているとの報告もある中、子ども・子育て支援にとどまらず、若年雇用の創出など、取り組むべき課題の重要性は高い。
  3. (3)福島県は、福島第一原子力発電所事故により深刻な被害を受け、現在もその影響が復興の大きな足かせとなっている。この間、国は、避難指示解除区域への帰還に向けた避難者への生活支援等の総合的な対策を講ずるとともに、「福島再生加速化交付金」を新設し、長期避難者の生活支援から、早期帰還のための生活拠点形成などまで一括で支援する体制を整えた。しかしながら、小売店などの日常を支える生活インフラが十分に整っていないことなどから、住民の帰還は十分に進んでいないのが現状である。
     産業の再生・活性化に向けては、福島相双復興官民合同チームによる個別訪問を通じた支援や、復興大臣の指示でまとめられた「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」に基づく情報発信および被災地産品の利用・販売促進等の取り組みが進められている。しかしながら、風評被害は国内外に根強く残っており、また、原材料の調達や流通のサプライチェーンがまだ完全な状態ではないことなどから、生産が本格軌道に乗り切れていない産業も存在する。国は、被災地の加工・流通・消費対策として産業復興販売加速化支援事業を新設し、福島県水産物の安全実証に取り組むことなどを打ち出しており、実効性のある対応が求められる。
     福島に住む人々が将来にわたって安心・安全に生活を営むことができるよう、帰還に向けた各種環境整備や生活再建・自立に向けた支援に引き続き取り組むとともに、風評被害の払拭や産業の再生・活性化、モニタリングポスト周辺や生活する家屋周辺での放射線線量に関する情報提供や定期的な健康診断など、多岐にわたる課題に的確に対応していく必要がある。
  4. (4)連合は、東日本大震災からの復興・再生をわが国の最重要課題と位置づけ、2011 年からの11年間、様々な機会を通じて取り組みを進めるとともに、政府、関係機関への要請を行ってきた。今後も同様の認識のもとで、連合本部、構成組織、地方連合会が一体となって震災からの復興・再生に取り組んでいく。
  5. (5)わが国は、111の活火山、35,462の河川を有しており、1989年以降、毎年平均で25回の台風が上陸するなど自然災害の発生リスクは極めて高い。また、現時点において土砂災害の危険は約53万箇所、雪崩の危険が約2万箇所を数える。加えて、気象庁が1949年に震度階級を設定して以降、震度7以上の揺れを観測した阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本県を中心とする九州地震(2016年4月14日・16日)がある。そうした状況の中で、これまでの自然災害では、広範囲なライフラインの停止や燃料供給の途絶など、社会基盤への甚大な被害により、行政の限界と自助・共助の重要性、減災の考え方など多岐にわたる課題が浮き彫りとなった。
  6. (6)また今後、発災の確率が高い地震について、内閣府の被害推定にもとづき土木学会が示した発災後20 年間に及ぶ経済活動の被害予測は、首都直下地震で死者約2万3,000 人・被害額約778 兆円、南海トラフ地震で死者30 万5,000 人・被害額約1,410兆円となっている。さらに、コースが予測しにくい「スーパー台風」の襲来、線状降水帯の発生など局地的な風水害の増加・大規模化、一部の火山活動の活発化、気温40 度超えの猛暑など、深刻な被害をもたらす自然災害も発生している。自然災害による人的・物的被害を軽減するための防災・減災の取り組みを強化することが不可欠である。
  7. (7)東日本大震災や熊本県を中心とする九州地震、西日本集中豪雨災害や北海道胆振東部地震などによる復興・復旧には、相当の時間を要する一方、被災地以外の地域においては、時間の経過とともに発災当時の不安が薄らいでおり、今後、震災の記憶が過去のものとなる前に、わが国において総合的な「防災・減災」対策を国民の参加のもとに構築する必要がある。
  8. (8)「災害対策基本法」における防災体制や防災計画については、取り巻く状況の変化に対応し、被害拡大の防止と迅速な災害復旧に備える必要がある。併せて、老朽化による事故や、災害発生時にライフラインを支えることになる公共施設等の施設を点検・整備し、耐震化・老朽化対策などの機能の向上・維持をはからなければならない。また、災害復旧時の市民生活の早期安定に向け、国および地方自治体の迅速な支援体制の強化が求められている。
  9. (9)東日本大震災や熊本県を中心とする九州地震、西日本集中豪雨災害や北海道胆振東部地震など、これまでの自然災害の教訓を経て明らかになったわが国の危機管理・防災対策の問題点を勘案しつつ、これからの「防災・減災」体制を実現するには、膨大な予算と長期間を要するが、重点的分野から優先的に対応する必要がある。

 

1.東日本大震災からの復興・再生を着実に推進する

  1. (1)復興財源の確保および被災自治体への継続的支援を行う。

    ①とぎれのない震災復興をはかるべく、第2期復興・創生期間(2021年度~2025年度)における復興財源を確実に確保するとともに、被災自治体の復興事業の進捗や財政状況にきめ細かく配慮した支援を行う。また、復興の進捗等のチェックを通じて、予算が適正に執行されていることを確認する。

    ②地域の特性を活かし、農林漁業の6次産業化の推進や、医療・介護分野、再生可能エネルギー分野などの成長産業の育成、観光産業における需要喚起施策など、複合政策を推進するとともに、それらの産業に従事する労働者の人材育成を支援する。

    ③中小企業等のグループで融資を受ける補助金制度(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)を継続するとともに、より利用しやすい制度とすべく、手続きを簡素化・効率化する。

    ④被災地における人口減少対策として、UJIターンを促進するとともに、起業や企業誘致などに対する必要な支援を行う。あわせて、地域交流や高齢者の見守りなどのボランティアに対する財政的支援を検討する。

    ⑤国内外の風評払拭に向け、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」にもとづき、政府が主体となった広報活動による正確で分かりやすい情報発信、アジア各国を中心とした諸外国への働きかけによる輸入規制の緩和・撤廃の実現など、風評対策を強力に進める。

    ⑥震災の記憶を風化させないために、 被災地の現状や復興に向けた活動等を内外に発信するとともに、震災語り部の育成や震災遺構の保存などに対する支援を行う。

    ⑦復興・再生に必要な地域の行政機能を回復し、住民のニーズに対応するため、被災自治体における専門的分野に対応できる職員の配置や、適切な要員の確保など必要な措置を講じる。また、被災自治体の人材確保を支えるため、震災復興特別交付税措置を継続・強化する。

    ⑧防災集団移転元地について、土地利用計画策定に必要な土地に関する取得要件を緩和するなど、市町村による利活用の取り組みを支援する。また、復興に必要な区画整理における土地所有者不明時の手続き簡素化など特例措置の法整備を求める。

    ⑨生活支援相談員等による被災地における生活支援・相談活動を行う社会福祉協議会や、NPOなど中間支援組織の体制強化に向け、補助金など各種支援のさらなる充実を求める。

    ⑩福島第一原子力発電所事故からの復興・再生に向けて、国内外の原子力研究機関と連携した事故の収束および放射性物質の除染を早期かつ着実に進めるとともに、モニタリングポスト周辺や生活する家屋周辺での放射線線量に関する情報提供や定期的な健康診断などを継続・徹底する。

  2. (2)被災地域の雇用のミスマッチ解消につながる職業訓練の充実と雇用の確保、復興事業における労働安全衛生対策の強化をはかる。

    ①被災地経済の早期復興、地域の雇用創出の核となる事業への雇用支援措置の継続などを通じ、質・量ともに十分な雇用を確保する。
    a)特定求職者雇用開発助成金(被災者雇用開発コース)の継続などにより、被災した離職者や被災地域に居住する求職者の就職を支援する。
    b)事業復興型雇用確保事業については、被災地における雇用創出の状況などを踏まえ、必要に応じて事業期間を延長する。
    c)被災者の自立支援に向け、住宅補助制度(住宅の現物給付または家賃補助)、就労支援のための融資制度などの拡充をはかる。

    ②雇用のミスマッチ解消に向けて職業訓練メニューや公共職業安定所(ハローワーク)の人材確保対策コーナーの拡充をはかるとともに、労働局や公共職業安定所(ハローワーク)が地方自治体と連携して就職支援体制を強化する。

    ③復興計画を着実に推進し、地元雇用を創出する。
    a)復興計画の担い手となる労働者に対して職業訓練の必要がある場合は、国がその職業訓練を支援する。職業訓練の実施にあたっては、地域の実情やニーズに即した職業訓練となるよう、地域職業能力開発促進協議会を活用する。
    b)公共事業を発注する際は、被災地域の労働者の雇用に配慮するとともに、公契約条例制定の考え方をふまえ、労働基準や労働安全衛生基準の遵守などを要件化する。
    c)復旧・復興事業において必要とされる資格・技術(建設機械・大型自動車運転免許など)を習得するための公共職業訓練・求職者支援訓練の周知を徹底する。
    d)労働者の安定的な就労への移行が円滑に進むよう、医療や介護など、地域の雇用創出の核となる事業に関連した訓練メニューを強化する。
    e)復旧・復興事業に従事する要員が不足している地方自治体への人的支援を強化する。
    f)低賃金による人手不足等を理由とする安易な外国人労働者の受入れは行わない。

    ④復旧・復興事業に際してのアスベスト・危険有害物質のばく露、過重労働などを防止するための、労働安全衛生教育および労働災害防止対策を徹底する。
    a)労働基準、労働安全衛生基準が遵守されるよう、指導・監督を強化する。また、現行基準の緩和は行わない。
    b)復旧・復興事業に従事する労働者の過重労働を防止するため、労働安全衛生法に定める産業医との面接指導の実施、労働時間の管理を徹底するなど、企業への指導・監督を強化する。
    c)復旧・復興事業における高所からの墜落防止、重機災害の防止などの労働安全衛生管理や、未熟練労働者に対する労働安全衛生教育を徹底する。

    ⑤福島第一原子力発電所の廃炉作業に従事するすべての労働者について、離職後も含めた被ばく線量の管理徹底、過重労働防止のための十分な交替要員の確保、熱中症対策や墜落制止用器具の適切な使用による転落防止など、労働安全衛生・健康管理対策を強化する。
    a)作業に従事する労働者の被ばく線量については、電離放射線障害防止規則(電離則)に則って管理を徹底するよう指導を強化する。特に、内部被ばく防止策を徹底するよう指導・監督する。
    b)電離則に規定された特別教育を、作業に従事するすべての労働者に実施するよう指導・監督する。
    c)放射線被ばくについては、離職後を含めた長期的な被ばく線量管理にもとづく長期的な健康管理が重要であるため、緊急作業従事者の被ばく線量、健康診断結果などの情報のデータベース化による健康管理に加え、緊急作業に従事しなかった労働者についても、一定量以上の放射線を被ばくした場合には長期的な健康管理の対象とする。
    d)作業に従事するすべての労働者に対する、保護具の適切な装着、健康診断の受診を徹底するとともに、熱中症対策や作業環境の改善、メンタルヘルス対策にも万全を期すよう指導・監督する。また、国としても必要な援助を行う。
    e)電離則に規定された被ばく線量の限度超過により、一定期間原発業務に従事できなくなる労働者に対する、解雇などの不利益な取り扱いがないよう、企業への指導を徹底し、当該企業による配置転換や職業訓練、転職支援などに対して、必要に応じて国としての助成を行う。

    ⑥18歳未満の者や外国人技能実習生の除染業務就労や、偽装請負や違法派遣などの労働法令違反がないよう、指導・監督を強化する。国が発注する除染などの業務において、下請を含めたすべての労働者に特殊勤務手当(除染手当)が確実に支払われる仕組みを早急に構築する。また、除染手当の中間搾取を行っている業者などに対する指導・監督を強化する。

    ⑦除染特別地域等およびその周辺で働く労働者に対する安全衛生対策を強化する。
    a)一定の放射線量を超える環境下で働く労働者に対し、特別教育、保護具の適切な装着、被ばく線量の適切な管理、健康診断の受診など、除染電離則の遵守を徹底する。
    b)上記以外の場合であっても、労働者の安全確保のため関連3ガイドライン(除染等業務ガイドライン、特定線量下業務ガイドライン、事故由来廃棄物等処分業務ガイドライン)の遵守を徹底する。

    ⑧原発事故収束および廃炉作業完了までには長期間を要し、多数の労働者が従事することから、放射線量の状況や健康への影響などに関する正確な情報を、政府として一元的に収集・把握し、速やかに開示する。

    ⑨原子力規制委員会「放射線審議会」に委員として労働災害の専門家を加えるとともに、その審議状況を定期的に労働政策審議会安全衛生分科会に報告する。

  3. (3)防災性・環境性能が高く、社会保障サービスの提供体制が確保された「ひとが中心のまちづくり」の実現をはかる。

    ①電気・ガス・上下水道・情報通信などのライフラインなどの基幹設備や管路の耐震化を進め、災害時におけるバックアップ機能を充実させる。

    ②ハザードマップや集団移転・高台居住などのまちづくり計画を踏まえ、医療・介護・教育・交通などの機能を集約した、防災性が高くひとに優しいまちづくりを推進する。

    ③仮設住宅から災害公営住宅への移転を進めるため、災害公営住宅の管理6年目から段階的に縮小され11年目で通常家賃となる家賃低減措置を拡充し、家賃負担の軽減をはかる。災害公営住宅への移転を進めるにあたっては、グループでの入居を促したり、集会施設を併設したりするなど、新たなコミュニティを構築しやすい対策を行う。

    ④地域コミュニティの希薄化や被災者が抱える問題の複雑・多様化を踏まえ、被災者の心身のケア、孤独・孤立、生活困窮などに対応し、安全・安心な生活を再建することができるよう、アウトリーチ型の見守り機能や相談体制を含む重層的な支援を強化する。また、被災者が差別を受けずに地域でくらせるよう地域住民への意識啓発を行う。

    ⑤「福島再生加速化交付金」を継続し、避難指示解除が見込まれている地域の避難住民が早期帰還・定住を実現できるよう、安心・安全な生活拠点形成のための対応を着実に進める。

    ⑥被災地で安心して医療・福祉・介護を受けられるようにするため、サービスを担う人材の養成・定着に資するよう、地域枠を活用した養成の促進や、住宅の確保など生活基盤への支援策を継続する。特に福島第一原発事故の影響で人材確保が困難な地域においては、地域包括ケアシステムのモデル事業を積極的に実施するなど、安心してくらし続けられるまちづくりに向けた支援策を強化する。

  4. (4)放射性物質により汚染された廃棄物・表土の迅速な処理と除染実施後のフォローアップを徹底する。

    ①放射性物質により汚染された廃棄物や除染後の表土などの処理について、地元・近隣住民・地方自治体の合意を得つつ、中間貯蔵施設など処理に必要な施設の整備を進め、仮置き場・仮々置き場に山積している残土を含め迅速に対応する。また、大量の残土などを処理施設に輸送する際には、通学時間や渋滞時間帯を避けるなど、地域住民や一般の道路利用者への影響を抑えつつ、安全を確保する。

    ②現地の復興作業に従事した車両や機械設備類の除染と、当該機材の除染完了後の線量検査などに対し必要な支援を行う。

    ③帰還困難区域を除く面的除染が完了した区域については、住民の安心・安全の確保に向け、継続的に線量の測定を行うなど、除染実施後のフォローアップを行う。

  5. (5)放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物・加工食品に関する安心・安全を確保する。

    ①放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物や食品に対し、法定による生産・出荷時の検査体制を維持するための地方自治体等への公的補助を継続し、検査結果にもとづく適切な流通管理を通じて食の安心・安全を確保する。

    ②放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物や食品を取り扱う流通・販売事業者において、事業規模にかかわらず広く放射性物質の検査体制整備・強化がはかられるよう公的補助を行い、風評被害の回避を進める。

  6. (6)安心して学び遊べる教育環境を整備する。

    ①被災による心的ストレスを抱える子どもや、特別な配慮を必要とする子どもにきめ細かな支援を行うため、養護教諭の未配置校への配置および配置校への複数配置を行う。また、スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーを常勤配置する。

    ②福島県において、運動不足に伴う子どもの肥満傾向や体力低下が続いていることから、「福島再生加速化交付金」を継続し、子どもたちの運動機会を確保するため、運動施設の整備を進める。

    ③子どもたちが安心して学べるよう、保育料や入園料、小中学生に対する学用品費や給食費の援助など、「被災児童生徒就学支援等事業交付金」による教育費に関する公的支援を継続する。

2.総合的な防災・減災対策を充実させる。

  1. (1)国・地方自治体は、避難勧告と避難指示が一本化されたことに伴い、個別避難計画を作成するとともに、すべての人が自然災害に関する情報を利用できる体制を構築する。わが国の公助、共助、自助、外助が適切に機能する「災害マネジメントサイクル(Disaster Management Cycle)」を構築し、人命を最優先しつつ自然災害リスクに対する国民のリテラシー向上に向けてハザードマップを周知するとともに、活用に向けた防災教育を徹底し、関係団体と連携し、社会全体としての防災能力を向上させる。
  2. (2)地方自治体は、平時から地域における「顔の見える関係」を構築し、災害時の助け合いにつなげ、女性、子どもも含めた地域のコミュニティづくりを推進する。
  3. (3)国・地方自治体は、地域防災計画の策定・修正において、地域住民・地域企業の意見を反映させることはもとより、地方防災会議に女性・若年者・高齢者・障がい者・生活困窮者・外国人労働者の参画を担保する。地域防災会議へは、多様な立場の参画を担保し、タイムライン防災などについて住民の理解が深まる理解促進をはかる。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照
  4. (4)地方自治体は、国が定めた「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」に従って防災・復興に取り組むとともに、防災担当部局に女性職員を配置し、女性のニーズを把握する。
  5. (5)国・地方自治体は、市民・事業者による自主防災活動との連携や、災害に対するボランティア活動など地域で求められる役割を広く周知・広報するとともに、ボランティア休暇制度の充実について産業・使用者団体等の理解を促進する。また地方自治体は、地域の社会福祉協議会が災害時の被災地支援活動を円滑かつ体系的に実施できるようにするため平時から社会福祉協議会の強化を支援する。さらに、災害時に避難施設となりうる民間施設の登録利用とともに、当該施設を所有する企業・組織への支援・助成制度を構築する。
  6. (6)国・地方自治体は、支援協定の締結など地方自治体間の連携を促進する。また、支援協定にもとづく特例として、行政機関の許認可などにより営業区域が限定される民間事業者が、指定営業区域を越えて被災地支援を行えるよう、法整備を行う。
  7. (7)被害が広域・甚大で当該地方自治体の対応能力が著しく低下している場合には、首長の要請がなくても自衛隊の出動を含め、国が復旧・復興の指揮を執る。さらに、甚大な被害が発生した被災自治体の自主財源が乏しく、その後の復旧・復興に向けて、国による財政支援の明確な担保と長期的な支援が必要な場合には、特別の立法措置を行う。
  8. (8)国・地方自治体は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、台風や集中豪雨などの風水害に備えるとともに、災害に強い国土づくりに向け、人命を最優先にして被害の最小化をはかる減災対策を推進する。
  9. (9)国は、被災者生活再建支援法を改正し、被災者の住宅に対する被災者生活再建支援金の対象・金額を拡大する。また、応急仮設住宅の建設、公営住宅などの提供、被災者が自ら民間賃貸住宅を仮住居とした場合の家賃補助など、仮住居に関する公的支援を拡充する。なお、応急仮設住宅での滞在期間が長期化する場合、早急に仮設ではない公営住宅等に移り住むことができるよう対策を強化する。
  10. (10)国・地方自治体は、地震保険の制度としての強靭性を高めつつ、関係団体と連携し、地震保険の必要性や制度内容をこれまで以上に周知・広報し、その普及・促進を行う。
  11. (11)国・地方自治体は、防災上、緊急整備を要する地域や被害・復旧コストを明確に公表し、地域住民の自然災害に対する認識を深める。また、「都市防災総合推進事業」の範囲を拡大し、都市以外においても「災害危険度判定調査」を実施するなど、防災整備事業を拡大する。
  12. (12)国・地方自治体は、自然災害に対応できる人材確保を含めた体制の維持をはかる。
  13. (13)国・地方自治体は、電気・ガス・石油・交通・運輸などの社会インフラに関する防災・減災対策について、作業員の安全を確保しつつ、ハード・ソフトの両面から強化し住民への周知をはかる。
  14. (14)国・地方自治体は、近年の多発する災害を受け、雇用確保に向けた施策、企業による地域への貢献、避難所の提供などに対する支援を含む企業の「事業継続計画(BCP)」の策定を努力義務として法制化し、その策定・改定を促進する。また、まだBCPを策定していない中小企業に対する策定支援について、技術的支援を行うとともに、企業の防災対策の強弱を入札における加点要素に加えるなどBCP改定・制定のインセンティブを導入する。
  15. (15)国・地方自治体は、企業の安全配慮義務が自然災害にもおよぶことを周知・広報し、就業中の事業場で遭った自然災害や、帰宅を命じた際の通勤途上などでの労働者保護をさらに促進させる。
  16. (16)国・地方自治体は、防災教育の場としての「学校」に継続的な防災教育の仕組みを構築していくとともに、地域住民を対象とした防災訓練や勉強会を実施し、防災意識の向上と危険地域の周知徹底をはかる。また、災害時に子どもが通う学校と保護者が情報共有するための安価で安定的なシステムを開発・普及するとともに、帰宅できない子どもが多く発生する場合に備え、あらかじめ学校と保護者の間で引き渡し判断などのルールについて確認する。
  17. (17)国・地方自治体は、災害用の装備品・備蓄品について、女性、高齢者、障がい者、子ども、外国人労働者の意見もふまえて拡充するとともに、防災訓練を強化する。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照

 

3.災害時に機能する信頼性の高い情報収集・伝達体制を構築する。

  1. (1)国・地方自治体は、自然災害が発生した際には、「すべての人の命とくらしを守る」ことを最優先にした対策を実行する。住民、地域組織、学校、企業などと連携し、災害発災時に被害状況を収集・集約・精査し、関係機関へ情報が迅速かつ確実・正確に伝達・共有されるよう人的体制も含めた体制整備を行う。

    ①Lアラートの普及・拡充とともに、情報発信と伝達について多言語発信を含めた手段の多様化を推進する。

    ②J-Alertや防災行政無線などを通じた警報等が確実に伝わるよう設置場所や人的体制なども含めた整備を行う。

    ③防災行政無線および消防救急無線の早期かつ円滑なデジタル方式への移行を進めるとともに、妨害電波への対策を強化する。

    ④ソーシャルメディアなども含めた多様な情報通信手段の利用を周知・徹底するとともに、障がい者や生活困窮者、外国人労働者等に対しても確実に情報が伝わるよう施策を講じる。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照

    ⑤官民が保有するG空間情報を活用した「総合防災情報システム」の整備・運用を早急に進めるとともに、都道府県等における当該システム導入促進に向けた必要な財政や人的支援を積極的に行う。

    ⑥自治体における防災担当者の育成・確保や平時におけるLアラートなどを活用した総合的防災演習の充実をはかる。

    ⑦国・地方自治体は、災害発生時においても住民サービスや医療が提供されるよう情報資産を保護する取り組みを推進する。また、事業者に対してもバックアップ体制の構築などを指導する。

    ⑧発災が予測される際に公共交通機関等を停めて安全を確保するなどの災害対応に関する情報を広く周知するため、地域の企業や学校等との情報共有のための必要なネットワークづくりを進める。

  2. (2)地方自治体は、情報が錯綜しないよう、住民、地域の消防団・水防団や地域コミュニティ組織、民間企業などと連携し、特性の違う複数の手段により被害状況を収集・集約し、防災関係機関、報道機関、ライフライン・公共交通機関へ逐次情報の共有化をはかる。
  3. (3)国・地方自治体は、発災時における防災担当者の業務負担の極度な増加につながらないシステムを構築し、迅速な情報の収受を実現する。また、災害により故障が発生した場合にも、迅速に対応できる体制の整備をはかる。
  4. (4)国・地方自治体は、大規模災害発生後における情報通信手段の確保や情報提供のあり方など、情報の発信や収集に関わる総合的な取り組みを推進する。(「ICT(情報通信)政策」より再掲
  5. ①大規模災害時における臨時災害放送局(ミニFM放送局等)の設置・開設にかかる行政手続きの迅速化・簡素化を制度化する。

    ②政府や地方自治体は、災害時における非常用移動基地局、非常用電源設備の移送、燃料の確保など、情報通信事業者が確実に事業を遂行できるよう必要な支援や対策を行う。

    ③政府は、停電時においても情報通信手段が確保されるよう非常用蓄電池の普及・開発に対する支援や非常用発電機の燃料備蓄などの取り組みを進める。

    ④公共施設や避難所等に衛星携帯電話などの非常用通信手段を配備する。

    ⑤国・地方自治体は、被災地で必要となる情報の発信について一元的な管理を行うとともに、被災者からの行政等に関する問い合わせについてもワンストップでの対応が可能となるよう取り組みを推進する。また、地域ごとにきめ細やかな情報提供が行われるよう、通信と放送の融合などICTの活用や情報通信事業者をはじめとする民間事業者との連携を強化する。

    ⑥訪日外国人旅行客の増加をふまえ、観光庁の災害アプリ「Safety tips」の利用促進と共に、適宜機能の充実をはかる。

  6. (5)地方自治体は、自然災害が発生した後に建築物の敷地・構造および建築設備の安全・衛生・防火・避難などの状況について、土木・建築に関する公的資格を有する者が検査・判定し、その結果を報告する現行の「被災宅地危険度判定」・「応急危険度判定」制度を統合する。
  7. (6)国・地方自治体は、高齢者、障がい者、子ども、外国人労働者その他特に配慮を要する者に対し、発災時に実現可能な対応策を定めるとともに、「地域の連携や助け合い」による正確な情報の伝達と安全な避難活動につなげるための支援を行う。また、防災・減災に関する児童用、障がい者用、外国人労働者用などのパンフレットを作成し、効果的に配布する。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照
  8. (7)国・地方自治体は、防災行動計画の中に、国・地方自治体、公共交通機関、企業、学校、住民が連携する「タイムライン(「いつ」、「誰が」、「何をするのか」をあらかじめ時系列で整理した防災行動計画)」を組み込み、災害時に各主体が連携した対応を行うことを支援する。

4.災害の被害を低減させるための施設・装備を充実させる。

  1. (1)国・地方自治体は、研究機関や大学、民間企業と協力し、自然災害軽減化技術の開発・普及を行う。
  2. (2)国・地方自治体は、災害に向け優先的に補強すべき箇所を把握するための診断技術の精度を向上させるとともに、災害に耐えうる設計・施工方法を進展させる。
  3. (3)国・地方自治体は、予防保全の観点から、建築物・構造物の変状を単に補修するだけでなく、その原因を追及して機能を強化し、相対的に安全性を高める。
  4. (4)国・地方自治体は、既存施設の耐震化や津波対策をはかる。また、老朽化が進む社会資本を適切に維持管理・更新し、長寿命化を推進する。さらに近年の大規模災害の教訓をふまえ、上下水道のような生活に必要な公益事業の迅速な復旧を行うため、非常時における自治体間の相互応援体制の整備を促進する。(「経済政策」「国土・住宅政策」参照
  5. (5)国・地方自治体は、救援ヘリ、特殊車両、特殊艦艇、発電機、防災備品などの装備品の充実と備蓄品の拡充を行う。
  6. (6)国・地方自治体は、大規模建築物や避難路沿道建築物などの耐震化や、住宅の耐震改修に対する支援をはかる。
  7. (7)国・地方自治体は、平常時にはスポーツ施設として運営し、発災時には緊急避難施設としての機能を備えた運動施設の整備など、民間の知恵や資金を活用したPPP/PFIを推進する。
  8. (8)国・地方自治体は、水害や土砂災害を未然に防ぐため、災害の起こりやすさや想定される被害を考慮した上で、予防的な治水対策を計画的かつ着実に実施する。
  9. (9)国・地方自治体は、災害に強い国土づくりや防災・減災対策を推進するため、社会資本整備総合交付金等を活用する。
  10. (10)地方自治体は、大規模な災害発生時に備え、平時から他地域の地方自治体との効果的な相互扶助をはかるため、「広域的地域間共助推進協議会」を活用し、行政・民間事業者・労働組合などによる広域的な地域間共助を推進する。
  11. (11)国・地方自治体は、東日本大震災の教訓を生かし、津波などによる被害が大きいと想定される地域において地籍調査を強化することで、官民境界の調査などを推進する。(「国土・住宅政策」参照
  12. (12)国・地方自治体は、訪日外国人旅行客が安全に安心して旅行できるように、大規模災害時に宿泊・観光施設における初動対応や避難誘導が行える体制を構築する。
  13. (13)国・地方自治体は、情報通信・上下水道・石油・ガス・電気などのライフラインの安心・安全を担保するとともに、学校・病院・空港・港湾・旅客施設・主要幹線道路・橋梁などの公共・生活関連施設における耐震補強や老朽化対策を早期に完了させる。
  14. (14)国・地方自治体は、わが国の多くの地域に立地する臨海部工業地帯を自然災害に強い構造へと速やかに整備をすすめる。
  15. (15)国は、災害発生時における避難施設となる公共施設において、最新の基準法令に沿った耐震化を計画的に進め、耐震補強工事後の耐震強度や工事費用を国民にとってわかりやすいものとなるような仕組みづくりを推進する。
  16. (16)国は、巨大地震に伴う津波などが想定される地域において、地域全体の「高台移転」など大規模な減災対策に当該自治体および住民の合意が得られている場合は、その実施に向け適切な財政的支援を行う。
  17. (17)国・地方自治体は、初期消火の成功率向上の観点から、家庭用消火器・簡易消火器具の保有、風呂水のためおきなどの促進や、家具の転倒・落下防止対策の実施による防災行動の実施可能率の向上に向けた周知・広報活動を強化する。

5.災害発生時に機能する医療体制を整備・強化する。

  1. (1)災害があっても医療機関あるいは在宅で安心して医療を受けられる体制を整える。(「医療政策」より再掲

    ①DMAT(災害派遣医療チーム)による救命・急性期医療の対応や、DPAT(災害派遣精神医療チーム)および「心のケアチーム」によるメンタルケアに加え、感染症、慢性疾患、精神疾患など慢性期医療にも対応できる医療チーム体制を平時から整備する。

    ②災害時でも地域住民に対する医療・介護サービスを提供できるよう、広域的な医療と介護の連携体制を確保する。

    ③災害時の医薬品・医療機器・医療材料の安定供給と流通体制の確保に向けて、国、都道府県、市町村、企業、卸業者の連携を平時から強化する。

    ④都道府県は、関係団体と連携し、「災害医療コーディネーター」および「地域災害医療コーディネーター」の設置を推進し、国はこれを支援する。

    ⑤災害により機能停止した医療機関に受診していた患者が、他の医療機関で速やかに診療や処方箋の交付を受けられるよう、電子カルテ化の推進とデータのバックアップ体制を構築する。

    ⑥在宅でも安心して医療機器を使用できるよう、たん吸引機、人工呼吸器、酸素発生器、腹膜透析機器、輸液、中心静脈栄養および経管栄養のポンプなど在宅用医療機器のバックアップ電源の普及を進めるとともに、レンタル機器の確保と提供体制、患者への情報提供体制の確保を進める。

    ⑦大災害や停電下での地域における人工透析の提供体制を確保するため、水および透析液を備蓄した透析医療機関の計画的な整備を行い、患者への情報提供を確実に行う。

    ⑧国は、すべての医療機関に非常用電源装置の設置を義務付けるなど、停電対策の推進とそのための財政支援を行う。また、大規模災害発生時における医療機関への優先的な燃料供給体制を構築するとともに医療機関における事業継続計画(BCP)の策定を進める。

  2. (2)国・地方自治体は、被災地や避難所における感染性疾患の拡大を防止する観点から、人的・物的・財政的な対策を行う。
  3. (3)国・地方自治体は、一次救命措置が実施可能な市民を育成するため、救命講習などを各地で開催するとともに、学校教育においても、積極的に導入する。
  4. (4)国・地方自治体は、クラッシュシンドロームとその対処方法などについて、広く周知・広報を行う。

6.多発化・深刻化する気象災害(大雨(豪雨)、台風、高潮、竜巻、内水氾濫(浸水害)、 洪水害、地すべり、崖崩れ、土石流、豪雪、暴風雪等)の発災時に対応できる体制を 整備する。

  1. (1)国・地方自治体は、風水害の頻度・規模が大きく変化していることを受け、想定最大規模(1,000年に一度の降雨量)の浸水想定域の公表を定めた水防法など風水害対策関連法規を検証し、より深刻な事態を想定した「命を守ることを重点とした地域防災計画」を策定・改定する。
  2. (2)国・地方自治体は、気象情報の分析などを強化し、気象災害の予見可能性を高めるとともに、災害対策技術の向上をはかる。
  3. (3)国・地方自治体は、建築・建造物、工作物の管理・予防措置に不備があった場合、天災であっても損害賠償を請求される可能性があることについて周知・広報を行い、管理者による施設管理を徹底させる。
  4. (4)国・地方自治体は、避難勧告などを出しても安全確保行動をとらない住民が一定程度存在することを想定し、深刻化する風水害と生活への影響に関する啓発活動をこれまで以上に強化する。
  5. (5)国・地方自治体は、土砂災害防止の観点から、災害がより発生しやすい箇所を特定しつつ森林管理を重点的に行うとともに、斜面の崩壊等防止工事などを強化する。
  6. (6)国・地方自治体は、豪雪地帯対策特別措置法にもとづき、豪雪時における、交通・通信の確保、農林業対策、生活環境施設の整備等などを強化するとともに、除雪中の事故防止対策を拡充する。
  7. (7)国・地方自治体は、除雪にかかる予算を拡充しつつ、豪雪時における弱者対策を充実させるとともに、除雪作業の地域格差を低減する。
  8. (8)国・地方自治体は、ICT技術を活用し、地域防災機能を強化するとともに、自然環境保護との両立を基本に、流域における森林・農地・河川などを一体とした治水計画を作成・実施する。

    ①自治会や消防団等の地域コミュニティを支援・強化し、地域防災力の向上をはかる。

    ②多発化する豪雨災害などを受け、洪水・内水(浸水)・土砂災害等の各種ハザードマップの作成・公表、および、見直しを行うとともに、地域防災計画の見直しを行う。また、きめ細かな気象予報と地域住民への緊急情報システムを早急に確立する。

  9. (9)国・地方自治体は、地下河川や地下遊水池を含む河川整備を推進するとともに、道路の透水性・排水性舗装への転換を促進し防災機能を強化する。
  10. (10)国・地方自治体は、風水害や土砂災害を未然に防ぐため、特殊土壌地帯災害防除および振興臨時措置法などにもとづき、災害の起こりやすさや想定される被害を考慮した上で、予防的な治水対策を計画的かつ着実に実施する。
  11. (11)国・地方自治体は、建設発生土の不適切処理に対処するため以下の対策を講ずる。

    ①公共工事におけるフロー管理にもとづく指定処分(発注者が契約業者に土砂の搬出先を指定)を民間工事も対象とする。

    ②堆積に伴う生活環境保全上(粉じん、濁水など)及び防災上の支障の未然防止と除去ができるよう地方自治体が土地所有者と盛土の行為者に適正管理の責任や指定処分など取扱いの徹底ができるよう法令・条例の運用の実効性を高める。

    ③建設発生土の不適切な投棄に対しては、廃棄物の不法投棄に対する罰則と同等とする。

7.到来が予想される巨大地震や火山活動などの発災時に対応できる体制を整備する。

  1. (1)国・地方自治体は、大規模建築物や避難路沿道建築物などの耐震化や、住宅の耐震改修に対する支援をはかる。また、住宅の「直下率」を建築基準法や住宅性能表示制度に規定することを検討するとともに、軟弱地盤の地域を中心に液状化対策を推進する。(「国土・住宅政策」参照
  2. (2)国・地方自治体は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などに備えた、災害に強い交通・運輸体系を構築する。(「交通・運輸政策」参照

    ①広域物資拠点として選定された民間物流施設における非常用電源設備を導入する。

    ②大規模災害時に民間事業者と連携して、「災害救援フェリー」による救急輸送ネットワークを整備する。

    ③大規模災害時に鉄道が運行できない場合に備え、燃料を備蓄し、トラック・バス輸送の活用などにより代替輸送を確保する。

    ④駅や高架、橋梁やトンネルなどの耐震対策を行う。

  3. (3)国・地方自治体は、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本県を中心とする九州地震、西日本集中豪雨災害や北海道胆振東部地震など、これまでの自然災害の教訓を踏まえ、地震に伴う土砂災害・津波などの情報発信のあり方や、避難所の設定・運営のあり方について、女性、高齢者、障がい者、子ども、外国人労働者の意見も踏まえて検証・改定するとともに、震災の記憶が忘却されないよう必要な措置を講ずる。
  4. (4)国・地方自治体は、都市部においては、公共交通機関の体制整備をはかるとともに、企業、住民と協力しつつ、駅前滞留対策や一時滞在施設の運営など帰宅困難者対策の充実をはかる。また、帰宅困難者対策を総合的に推進するための条例を制定する。
  5. (5)国・地方自治体は、農村部においては、危険なため池や、溢水のおそれのある農業用施設などの整備を進めつつ、農業用燃料タンクの重油流出による火災発生などの二次災害への対策を講じる。離島においては、ヘリコプターや船舶を活用した関係機関の連携による避難体制や救出・救助体制を構築する。過疎地においては、建設発生土の投棄や、残土崩落による水路の閉塞や景観悪化、資源有効利用促進法や条例等で定められた施策では十分な効果が得られない課題について対応するため、循環型社会形成推進基本法を根拠とした排出者責任の具体化を検討する。
  6. (6)国・地方自治体は、火山などの監視体制の強化と、桜島などの経験をもとにした火山灰対策の蓄積と水平展開をはかる。また、噴火の場合は、避難までの時間的猶予がほとんどなく、生命に対する危険性が高いため、噴火警報の周知とともに、地方自治体による避難確保計画策定や避難促進施設指定の促進を行う。
  7. (7)国・地方自治体は、住宅・マンションの耐震診断・耐震改修の支援(改修費用の一部補助を強化)を拡充する。(「国土・住宅政策」参照
  8. (8)国・地方自治体は、ビル・マンション、戸建住居などにより異なる防災対応の周知・広報の強化をはかる。
  9. (9)国・地方自治体は、火山活動や噴火の予知が現状では困難であることを踏まえ、火山活動の変化を感知するシステムのより一層の普及とともに、活動変化をすばやく近隣の市町村や登山者などに伝達する。
  10. (10)国・地方自治体は、火山活動や噴火による影響が長期間継続する傾向にあることに鑑み、噴火などによる被害が発生した場合においても、地域住民が日常的な仕事や生活を送れるよう十分な準備と対策を検討する。

8.自主防災組織と消防団・水防団の体制を強化する。

  1. (1)国・地方自治体は、防災ボランティアの登録制度を全国に展開させるとともに、ボランティア休暇制度の充実について産業・使用者団体等の理解を促進し、防災NPOによる専門家派遣を強化する。
  2. (2)国・地方自治体は、自主防災組織や消防団・水防団への女性の参画を促進するとともに、女性の能力が発揮できるよう環境整備を行う。
  3. (3)国・地方自治体は、自主防災組織や消防団・水防団の役割と意義について、地域住民への意識啓発・広報を行い、参加と協力を求める。
  4. (4)国・地方自治体は、消防団・水防団員が活動するために必要な人数を確保する観点から、団員が所属する企業に対するインセンティブ施策を導入する。
  5. (5)国・地方自治体は、消防団・水防団員の装備品の充実と訓練の強化を行うと共に、防災ボランティア活動共済保険などへの加入を支援する。

 

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