5.くらしの安心・安全の構築(防災・減災に関する政策)

防災・減災に関する政策<背景と考え方>

  1. (1)わが国は、111の活火山、35,462の河川を有しており、1989年以降、毎年平均で25回の台風が上陸するなど自然災害の発生リスクは極めて高い。また、現時点において土砂災害の危険は約53万箇所、雪崩の危険が約2万箇所を数える。加えて、気象庁が1949年に震度階級を設定して以降、震度7以上の揺れを観測した阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本県を中心とする九州地震(2016年4月14日・16日)がある。そうした状況の中で、これまでの自然災害では、広範囲なライフラインの停止や燃料供給の途絶など、社会基盤への甚大な被害により、行政の限界と自助・共助の重要性、減災の考え方など多岐にわたる課題が浮き彫りとなった。
  2. (2)また今後、発災の確率が高い地震について、内閣府の被害推定にもとづき土木学会が示した発災後20年間に及ぶ経済活動の被害予測は、首都直下地震で死者約2万3,000人・被害額約778兆円、南海トラフ地震で死者30万5,000人・被害額約1,410兆円となっている。さらに、コースが予測しにくい「スーパー台風」(注1)の襲来、線状降水帯(注2)の発生など局地的な風水害の増加・大規模化、一部の火山活動の活発化、気温40度超えの猛暑など、深刻な被害をもたらす自然災害も発生している。災害を止めることは不可能であるものの、今後の災害による人的・物的被害の軽減するための「減災」の取り組みを強化することが不可欠である。
  3. (3)東日本大震災や熊本県を中心とする九州地震、西日本集中豪雨災害や北海道胆振東部地震などによる復興・復旧には、相当の時間を要する一方、被災地以外の地域においては、時間の経過とともに発災当時の不安が薄らいでおり、今後、震災の記憶が過去のものとなる前に、わが国において総合的な「防災・減災」対策を国民の参加のもとに構築する必要がある。
  4. (4)「災害対策基本法」における防災体制や防災計画については、取り巻く状況の変化に対応し、被害拡大の防止と迅速な災害復旧に備える必要がある。併せて、老朽化による事故や、災害発生時にライフラインを支えることになる公共施設等の施設を点検・整備し、耐震化・老朽化対策などの機能の向上・維持をはからなければならない。また、災害復旧時の市民生活の早期安定に向け、国および地方自治体の迅速な支援体制の強化が求められている。
  5. (5)東日本大震災や熊本県を中心とする九州地震、西日本集中豪雨災害や北海道胆振東部地震など、これまでの自然災害の教訓を経て明らかになったわが国の危機管理・防災対策の問題点を勘案しつつ、これからの「防災・減災」体制を実現するには、膨大な予算と長期間を要するが、重点的分野から優先的に対応する必要がある。
  1. (注1)スーパー台風 ~台風は、北大西洋や南シナ海(赤道より北かつ東経180度よりも西で100度より東)で発生する熱帯低気圧で、中心付近の瞬間最大風速が17.2m/s(34ノット)以上になる。2013年、フィリピンで発生した台風は、瞬間最大風速が80m/s以上だったことから、風速67m/s以上の台風が「スーパー」と呼ばれることになった。明確な定義はないが、気象庁の台風階級で最も強い、54m/s(105ノット)以上の「猛烈な台風」がほぼ該当する。米軍合同台風警報センターによる台風階級でも最も強い区分にあたる。
  2. (注2)線状降水帯 ~次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。最近の事例では、2018年6月28日から7月8日の西日本集中豪雨災害の総降水量が四国地方で1,800ミリ、東海地方で1,200ミリを超えた。また、九州北部、四国、中国、近畿、東海、北海道の観測地点で降水量値が観測史上第1位となり、岐阜県、京都府、兵庫県、岡山県、鳥取県、広島県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県(1府10県)に特別警報が発令された。

1.総合的な防災・減災対策を充実させる。

  1. (1)国・地方自治体は、わが国の公助、共助、自助、外助が適切に機能する「災害マネジメントサイクル(Disaster Management Cycle)」を構築し、人命を最優先しつつ自然災害リスクに対する国民のリテラシー向上に向けてハザードマップを周知するとともに、活用に向けた防災教育を徹底し、関係団体と連携し、社会全体としての防災能力を向上させる。
  2. (2)地方自治体は、平時から地域における「顔の見える関係」を構築し、災害時の助け合いにつなげ、女性、子どもも含めた地域のコミュニティづくりを推進する。
  3. (3)国・地方自治体は、地域防災計画の策定・修正において、地域住民・地域企業の意見を反映させることはもとより、地方防災会議に女性・若年者・高齢者・障がい者・生活困窮者・外国人労働者の参画を担保する。地域防災会議へは、多様な立場の参画を担保し、タイムライン防災などについて住民の理解が深まる理解促進をはかる。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照
  4. (4)地方自治体は、国が定めた「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」に従って防災・復興に取り組むとともに、防災担当部局に女性職員を配置し、女性のニーズを把握する。
  5. (5)国・地方自治体は、市民・事業者による自主防災活動との連携や、災害に対するボランティア活動など地域で求められる役割を広く周知・広報するとともに、ボランティア休暇制度の充実について産業・使用者団体等の理解を促進する。また地方自治体は、地域の社会福祉協議会が災害時の被災地支援活動を円滑かつ体系的に実施できるようにするため平時から社会福祉協議会の強化を支援する。さらに、災害時に避難施設となりうる民間施設の登録利用とともに、当該施設を所有する企業・組織への支援・助成制度を構築する。
  6. (6)国・地方自治体は、支援協定の締結など地方自治体間の連携を促進する。また、支援協定にもとづく特例として、行政機関の許認可などにより営業区域が限定される民間事業者が、指定営業区域を越えて被災地支援を行えるよう、法整備を行う。
  7. (7)被害が広域・甚大で当該地方自治体の対応能力が著しく低下している場合には、首長の要請がなくても自衛隊の出動を含め、国が復旧・復興の指揮を執る。さらに、甚大な被害が発生した被災自治体の自主財源が乏しく、その後の復旧・復興に向けて、国による財政支援の明確な担保と長期的な支援が必要な場合には、特別の立法措置を行う。
  8. (8)国・地方自治体は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、台風や集中豪雨などの風水害に備えるとともに、災害に強い国土づくりに向け、人命を最優先にして被害の最小化をはかる減災対策を推進する。
  9. (9)国は、被災者生活再建支援法を改正し、被災者の住宅に対する被災者生活再建支援金の対象・金額を拡大する。また、応急仮設住宅の建設、公営住宅などの提供、被災者が自ら民間賃貸住宅を仮住居とした場合の家賃補助など、仮住居に関する公的支援を拡充する。なお、応急仮設住宅での滞在期間が長期化する場合、早急に仮設ではない公営住宅等に移り住むことができるよう対策を強化する。
  10. (10)国・地方自治体は、地震保険の制度としての強靭性を高めつつ、関係団体と連携し、地震保険の必要性や制度内容をこれまで以上に周知・広報し、その普及・促進を行う。
  11. (11)国・地方自治体は、防災上、緊急整備を要する地域や被害・復旧コストを明確に公表し、地域住民の自然災害に対する認識を深める。また、「都市防災総合推進事業」の範囲を拡大し、都市以外においても「災害危険度判定調査」を実施するなど、防災整備事業を拡大する。
  12. (12)国・地方自治体は、自然災害に対応できる人材確保を含めた体制の維持をはかる。
  13. (13)国・地方自治体は、電気・ガス・石油・交通・運輸などの社会インフラに関する防災・減災対策について、作業員の安全を確保しつつ、ハード・ソフトの両面から強化し住民への周知をはかる。
  14. (14)国・地方自治体は、近年の多発する災害を受け、雇用確保に向けた施策、企業による地域への貢献、避難所の提供などに対する支援を含む企業の「事業継続計画(BCP)」の策定を努力義務として法制化し、その策定・改定を促進する。また、まだBCPを策定していない中小企業に対する策定支援について、技術的支援を行うとともに、企業の防災対策の強弱を入札における加点要素に加えるなどBCP改定・制定のインセンティブを導入する。
  15. (15)国・地方自治体は、企業の安全配慮義務が自然災害にもおよぶことを周知・広報し、就業中の事業場で遭った自然災害や、帰宅を命じた際の通勤途上などでの労働者保護をさらに促進させる。
  16. (16)国・地方自治体は、気候変動適応法にもとづき、地域が限定された災害に対応できる農作物に対するリスク分散につながる保障制度の確立と、気候変動に対応した品種の開発と転作などの指導を行う。
  17. (17)国・地方自治体は、防災教育の場としての「学校」に継続的な防災教育の仕組みを構築していくとともに、地域住民を対象とした防災訓練や勉強会を実施し、防災意識の向上と危険地域の周知徹底をはかる。また、災害時に子どもが通う学校と保護者が情報共有するための安価で安定的なシステムを開発・普及するとともに、帰宅できない子どもが多く発生する場合に備え、あらかじめ学校と保護者の間で引き渡し判断などのルールについて確認する。
  18. (18)国・地方自治体は、災害用の装備品・備蓄品について、女性、高齢者、障がい者、子ども、外国人労働者の意見もふまえて拡充するとともに、防災訓練を強化する。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照

 

2.災害時に機能する信頼性の高い情報収集・伝達体制を構築する。

  1. (1)国・地方自治体は、住民、地域組織、学校、企業などと連携し、災害発災時に被害状況を収集・集約・精査し、関係機関へ情報が迅速かつ確実・正確に伝達・共有されるよう人的体制も含めた体制整備を行う。(「ICT(情報通信)政策」より再掲

    ①Lアラートの普及・拡充とともに、情報発信と伝達について多言語発信を含めた手段の多様化を推進する。

    ②J-Alertや防災行政無線などを通じた警報等が確実に伝わるよう設置場所や人的体制なども含めた整備を行う。

    ③防災行政無線および消防救急無線の早期かつ円滑なデジタル方式への移行を進めるとともに、妨害電波への対策を強化する。

    ④ソーシャルメディアなども含めた多様な情報通信手段の利用を周知・徹底するとともに、障がい者や生活困窮者、外国人労働者等に対しても確実に情報が伝わるよう施策を講じる。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照

    ⑤官民が保有するG空間情報を活用した「総合防災情報システム」の整備・運用を早急に進めるとともに、都道府県等における当該システム導入促進に向けた必要な財政や人的支援を積極的に行う。

    ⑥自治体における防災担当者の育成・確保や平時におけるLアラートなどを活用した総合的防災演習の充実をはかる。

    ⑦国・地方自治体は、災害発生時においても住民サービスや医療が提供されるよう情報資産を保護する取り組みを推進する。また、事業者に対してもバックアップ体制の構築などを指導する。

    ⑧発災が予測される際に公共交通機関等を停めて安全を確保するなどの災害対応に関する情報を広く周知するため、地域の企業や学校等との情報共有のための必要なネットワークづくりを進める。

  2. (2)地方自治体は、情報が錯綜しないよう、住民、地域の消防団・水防団や地域コミュニティ組織、民間企業などと連携し、特性の違う複数の手段により被害状況を収集・集約し、防災関係機関、報道機関、ライフライン・公共交通機関へ逐次情報の共有化をはかる。
  3. (3)国・地方自治体は、発災時における防災担当者の業務負担の極度な増加につながらないシステムを構築し、迅速な情報の収受を実現する。また、災害により故障が発生した場合にも、迅速に対応できる体制の整備をはかる。
  4. (4)国・地方自治体は、大規模災害発生後における情報通信手段の確保や情報提供のあり方など、情報の発信や収集に関わる総合的な取り組みを推進する。(「ICT(情報通信)政策」より再掲
  5. ①大規模災害時における臨時災害放送局(ミニFM放送局等)の設置・開設にかかる行政手続きの迅速化・簡素化を制度化する。

    ②政府や地方自治体は、災害時における非常用移動基地局、非常用電源設備の移送、燃料の確保など、情報通信事業者が確実に事業を遂行できるよう必要な支援や対策を行う。

    ③政府は、停電時においても情報通信手段が確保されるよう非常用蓄電池の普及・開発に対する支援や非常用発電機の燃料備蓄などの取り組みを進める。

    ④公共施設や避難所等に衛星携帯電話などの非常用通信手段を配備する。

    ⑤国・地方自治体は、被災地で必要となる情報の発信について一元的な管理を行うとともに、被災者からの行政等に関する問い合わせについてもワンストップでの対応が可能となるよう取り組みを推進する。また、地域ごとにきめ細やかな情報提供が行われるよう、通信と放送の融合などICTの活用や情報通信事業者をはじめとする民間事業者との連携を強化する。

    ⑥訪日外国人旅行客の増加をふまえ、観光庁の災害アプリ「Safety tips」の利用促進と共に、適宜機能の充実をはかる。

  6. (5)地方自治体は、自然災害が発生した後に建築物の敷地・構造および建築設備の安全・衛生・防火・避難などの状況について、土木・建築に関する公的資格を有する者が検査・判定し、その結果を報告する現行の「被災宅地危険度判定」・「応急危険度判定」制度を統合する。
  7. (6)国・地方自治体は、高齢者、障がい者、子ども、外国人労働者その他特に配慮を要する者に対し、発災時に実現可能な対応策を定めるとともに、「地域の連携や助け合い」による正確な情報の伝達と安全な避難活動につなげるための支援を行う。また、防災・減災に関する児童用、障がい者用、外国人労働者用などのパンフレットを作成し、効果的に配布する。(「社会保障制度の基盤に関する政策」(12)① 参照
  8. (7)国・地方自治体は、これまでの災害の教訓をもとに、情報伝達の補完手段としての、自治会・町内会などによる連絡網の整備など、地域の助け合いなどを促進する。また、非常時において特定小電力トランシーバの活用や、アマチュア無線を活用した「非常通信ボランティア活動」について検討を行う。
  9. (8)国・地方自治体は、防災行動計画の中に、国・地方自治体、公共交通機関、企業、学校、住民が連携する「タイムライン(「いつ」、「誰が」、「何をするのか」をあらかじめ時系列で整理した防災行動計画)」を組み込み、災害時に各主体が連携した対応を行うことを支援する。

3.災害の被害を低減させるための施設・装備を充実させる。

  1. (1)国・地方自治体は、研究機関や大学、民間企業と協力し、自然災害軽減化技術の開発・普及を行う。
  2. (2)国・地方自治体は、災害に向け優先的に補強すべき箇所を把握するための診断技術の精度を向上させるとともに、災害に耐えうる設計・施工方法を進展させる。
  3. (3)国・地方自治体は、予防保全の観点から、建築物・構造物の変状を単に補修するだけでなく、その原因を追及して機能を強化し、相対的に安全性を高める。
  4. (4)国・地方自治体は、既存施設の耐震化や津波対策をはかる。また、老朽化が進む社会資本を適切に維持管理・更新し、長寿命化を推進する。さらに近年の大規模災害の教訓をふまえ、上下水道のような生活に必要な公益事業の迅速な復旧を行うため、非常時における自治体間の相互応援体制の整備を促進する。(「経済政策」「国土・住宅政策」参照
  5. (5)国・地方自治体は、救援ヘリ、特殊車両、特殊艦艇、発電機、防災備品などの装備品の充実と備蓄品の拡充を行う。
  6. (6)国・地方自治体は、大規模建築物や避難路沿道建築物などの耐震化や、住宅の耐震改修に対する支援をはかる。
  7. (7)国・地方自治体は、平常時にはスポーツ施設として運営し、発災時には緊急避難施設としての機能を備えた運動施設の整備など、民間の知恵や資金を活用したPPP/PFIを推進する。
  8. (8)国・地方自治体は、水害や土砂災害を未然に防ぐため、災害の起こりやすさや想定される被害を考慮した上で、予防的な治水対策を計画的かつ着実に実施する。
  9. (9)国・地方自治体は、災害に強い国土づくりや防災・減災対策を推進するため、社会資本整備総合交付金等を活用する。
  10. (10)地方自治体は、大規模な災害発生時に備え、平時から他地域の地方自治体との効果的な相互扶助をはかるため、「広域的地域間共助推進協議会」を活用し、行政・民間事業者・労働組合などによる広域的な地域間共助を推進する。
  11. (11)国・地方自治体は、東日本大震災の教訓を生かし、津波などによる被害が大きいと想定される地域において地籍調査を強化することで、官民境界の調査などを推進する。(「国土・住宅政策」参照
  12. (12)国・地方自治体は、訪日外国人旅行客が安全に安心して旅行できるように、大規模災害時に宿泊・観光施設における初動対応や避難誘導が行える体制を構築する。
  13. (13)国・地方自治体は、情報通信・上下水道・石油・ガス・電気などのライフラインの安心・安全を担保するとともに、学校・病院・空港・港湾・旅客施設・主要幹線道路・橋梁などの公共・生活関連施設における耐震補強や老朽化対策を早期に完了させる。
  14. (14)国・地方自治体は、わが国の多くの地域に立地する臨海部工業地帯を自然災害に強い構造へと速やかに整備をすすめる。
  15. (15)国は、災害発生時における避難施設となる公共施設において、最新の基準法令に沿った耐震化を計画的に進め、耐震補強工事後の耐震強度や工事費用を国民にとってわかりやすいものとなるような仕組みづくりを推進する。
  16. (16)国は、巨大地震に伴う津波などが想定される地域において、地域全体の「高台移転」など大規模な減災対策に当該自治体および住民の合意が得られている場合は、その実施に向け適切な財政的支援を行う。
  17. (17)国・地方自治体は、初期消火の成功率向上の観点から、家庭用消火器・簡易消火器具の保有、風呂水のためおきなどの促進や、家具の転倒・落下防止対策の実施による防災行動の実施可能率の向上に向けた周知・広報活動を強化する。
  18. (18)国・地方自治体は、落石や土砂災害の予防の観点から、山林などの地籍調査をさらに推進し、その所有者に対し管理の強化を求める。(「国土・住宅政策」参照

4.災害発生時に機能する医療体制を整備・強化する。

  1. (1)災害があっても医療機関あるいは在宅で安心して医療を受けられる体制を整える。(「医療政策」より再掲

    ①DMAT(災害派遣医療チーム)による救命・急性期医療の対応や、DPAT(災害派遣精神医療チーム)および「心のケアチーム」によるメンタルケアに加え、感染症、慢性疾患、精神疾患など慢性期医療にも対応できる医療チーム体制を平時から整備する。

    ②災害時でも地域住民に対する医療・介護サービスを提供できるよう、広域的な医療と介護の連携体制を確保する。

    ③災害時の医薬品・医療機器・医療材料の安定供給と流通体制の確保に向けて、国、都道府県、市町村、企業、卸業者の連携を平時から強化する。

    ④都道府県は、関係団体と連携し、「災害医療コーディネーター」および「地域災害医療コーディネーター」の設置を推進し、国はこれを支援する。

    ⑤災害により機能停止した医療機関に受診していた患者が、他の医療機関で速やかに診療や処方箋の交付を受けられるよう、電子カルテ化の推進とデータのバックアップ体制を構築する。

    ⑥在宅でも安心して医療機器を使用できるよう、たん吸引機、人工呼吸器、酸素発生器、腹膜透析機器、輸液、中心静脈栄養および経管栄養のポンプなど在宅用医療機器のバックアップ電源の普及を進めるとともに、レンタル機器の確保と提供体制、患者への情報提供体制の確保を進める。

    ⑦大災害や停電下での地域における人工透析の提供体制を確保するため、水および透析液を備蓄した透析医療機関の計画的な整備を行い、患者への情報提供を確実に行う。

    ⑧国は、すべての医療機関に非常用電源装置の設置を義務付けるなど、停電対策の推進とそのための財政支援を行う。また、大規模災害発生時における医療機関への優先的な燃料供給体制を構築するとともに医療機関における事業継続計画(BCP)の策定を進める。

  2. (2)国・地方自治体は、被災地や避難所における感染性疾患の拡大を防止する観点から、医療分野での感染症抑制の知見や経験をもとにした予防措置に対し、人的・物的・財政的な対策を行う。
  3. (3)国・地方自治体は、一次救命措置が実施可能な市民を育成するため、救命講習などを各地で開催するとともに、学校教育においても、積極的に導入する。
  4. (4)国・地方自治体は、クラッシュシンドロームとその対象方法などについて、広く周知・広報を行う。

5.多発化・深刻化する気象災害(大雨(豪雨)、台風、高潮、竜巻、内水氾濫(浸水害)、 洪水害、地すべり、崖崩れ、土石流、豪雪、暴風雪等)の発災時に対応できる体制を 整備する。

  1. (1)国・地方自治体は、風水害の頻度・規模が大きく変化していることを受け、想定最大規模(1,000年に一度の降雨量)の浸水想定域の公表を定めた水防法(2015年改正)など風水害対策関連法規を検証し、より深刻な事態を想定した「命を守ることを重点とした地域防災計画」を策定・改定する。
  2. (2)国・地方自治体は、気象情報の分析などを強化し、気象災害の予見可能性を高めるとともに、災害対策技術の向上をはかる。
  3. (3)国・地方自治体は、建築・建造物、工作物の管理・予防措置に不備があった場合、天災であっても損害賠償を請求される可能性があることについて周知・広報を行い、管理者による施設管理を徹底させる。
  4. (4)国・地方自治体は、各地域の様々な災害に対応した各種ハザードマップや危険箇所など住民の資産に影響を及ぼす可能性のある情報の提供について、地域の実情を踏まえつつ、慎重かつ確実に実施するとともに、自主避難の目安について一層の周知・広報を行う。(「国土・住宅政策」参照
  5. (5)国・地方自治体は、避難勧告などを出しても安全確保行動をとらない住民が一定程度存在することを想定し、深刻化する風水害と生活への影響に関する啓発活動をこれまで以上に強化する。
  6. (6)国・地方自治体は、土砂災害防止の観点から、災害がより発生しやすい箇所を特定しつつ森林管理を重点的に行うとともに、斜面の崩壊等防止工事などを強化する。
  7. (7)国・地方自治体は、豪雪地帯対策特別措置法にもとづき、豪雪時における、交通・通信の確保、農林業対策、生活環境施設の整備等などを強化するとともに、除雪中の事故防止対策を拡充する。
  8. (8)国・地方自治体は、除雪にかかる予算を拡充しつつ、豪雪時における弱者対策を充実させるとともに、除雪作業の地域格差を低減する。
  9. (9)国・地方自治体は、ICT技術を活用し、地域防災機能を強化するとともに、自然環境保護との両立を基本に、流域における森林・農地・河川などを一体とした治水計画を作成・実施する。

    ①自治会や消防団等の地域コミュニティを支援・強化し、地域防災力の向上をはかる。

    ②多発化する豪雨災害などを受け、洪水・内水(浸水)・土砂災害等の各種ハザードマップの作成・公表、および、見直しを行うとともに、地域防災計画の見直しを行う。また、きめ細かな気象予報と地域住民への緊急情報システムを早急に確立する。

  10. (10)国・地方自治体は、地下河川や地下遊水池を含む河川整備を推進するとともに、道路の透水性・排水性舗装への転換を促進し防災機能を強化する。
  11. (11)国・地方自治体は、風水害や土砂災害を未然に防ぐため、特殊土壌地帯災害防除および振興臨時措置法などにもとづき、災害の起こりやすさや想定される被害を考慮した上で、予防的な治水対策を計画的かつ着実に実施する。
  12. (12)国・地方自治体は、建設発生土の不適切処理に対処するため以下の対策を講ずる。

    ①公共工事におけるフロー管理にもとづく指定処分(発注者が契約業者に土砂の搬出先を指定)を民間工事も対象とする。

    ②堆積に伴う生活環境保全上(粉じん、濁水など)及び防災上の支障の未然防止と除去ができるよう地方自治体が土地所有者と盛土の行為者に適正管理の責任や指定処分など取扱いの徹底ができるよう法令・条例の運用の実効性を高める。

    ③建設発生土の不適切な投棄に対しては、廃棄物の不法投棄に対する罰則と同等とする。

6.到来が予想される巨大地震や火山活動などの発災時に対応できる体制を整備する。

  1. (1)国・地方自治体は、大規模建築物や避難路沿道建築物などの耐震化や、住宅の耐震改修に対する支援をはかる。また、住宅の「直下率」を建築基準法や住宅性能表示制度に規定することを検討するとともに、軟弱地盤の地域を中心に液状化対策を推進する。(「国土・住宅政策」参照
  2. (2)国・地方自治体は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などに備えた、災害に強い交通・運輸体系を構築する。(「交通・運輸政策」参照

    ①広域物資拠点として選定された民間物流施設における非常用電源設備を導入する。

    ②大規模災害時に民間事業者と連携して、「災害救援フェリー」による救急輸送ネットワークを整備する。

    ③大規模災害時に鉄道が運行できない場合に備え、燃料を備蓄し、トラック・バス輸送の活用などにより代替輸送を確保する。

    ④駅や高架、橋梁やトンネルなどの耐震対策を行う。

  3. (3)国・地方自治体は、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本県を中心とする九州地震、西日本集中豪雨災害や北海道胆振東部地震など、これまでの自然災害の教訓を踏まえ、地震に伴う土砂災害・津波などの情報発信のあり方や、避難所の設定・運営のあり方について、女性、高齢者、障がい者、子ども、外国人労働者の意見も踏まえて検証・改定するとともに、震災の記憶が忘却されないよう必要な措置を講ずる。
  4. (4)国・地方自治体は、都市部においては、公共交通機関の体制整備をはかるとともに、企業、住民と協力しつつ、駅前滞留対策や一時滞在施設の運営など帰宅困難者対策の充実をはかる。また、帰宅困難者対策を総合的に推進するための条例を制定する。
  5. (5)国・地方自治体は、農村部においては、危険なため池や、溢水のおそれのある農業用施設などの整備を進めつつ、農業用燃料タンクの重油流出による火災発生などの二次災害への対策を講じる。離島においては、ヘリコプターや船舶を活用した関係機関の連携による避難体制や救出・救助体制を構築する。過疎地においては、建設発生土の投棄や、残土崩落による水路の閉塞や景観悪化、資源有効利用促進法や条例等で定められた施策では十分な効果が得られない課題について対応するため、循環型社会形成推進基本法を根拠とした排出者責任の具体化を検討する。
  6. (6)国・地方自治体は、火山などの監視体制の強化と、桜島などの経験をもとにした火山灰対策の蓄積と水平展開をはかる。また、噴火の場合は、避難までの時間的猶予がほとんどなく、生命に対する危険性が高いため、噴火警報や避難計画の周知を十分に行う。
  7. (7)国・地方自治体は、住宅・マンションの耐震診断・耐震改修の支援(改修費用の一部補助を強化)を行う。(「国土・住宅政策」参照
  8. (8)国・地方自治体は、ビル・マンション、戸建住居などにより異なる防災対応の周知・広報の強化をはかる。(「国土・住宅政策」参照
  9. (9)国・地方自治体は、火山活動や噴火の予知が現状では困難であることを踏まえ、火山活動の変化を感知するシステムのより一層の普及とともに、活動変化をすばやく近隣の市町村や登山者などに伝達する。
  10. (10)国・地方自治体は、火山活動や噴火による影響が長期間継続する傾向にあることに鑑み、噴火などによる被害が発生した場合においても、地域住民が日常的な仕事や生活を送れるよう十分な準備と対策を検討する。

7.自主防災組織と消防団・水防団の体制を強化する。

  1. (1)国・地方自治体は、防災ボランティアの登録制度を全国に展開させるとともに、ボランティア休暇制度の充実について産業・使用者団体等の理解を促進し、防災NPOによる専門家派遣を強化する。
  2. (2)国・地方自治体は、自主防災組織や消防団・水防団への女性の参画を促進するとともに、女性の能力が発揮できるよう環境整備を行う。
  3. (3)国・地方自治体は、自主防災組織や消防団・水防団の役割と意義について、地域住民への意識啓発・広報を行い、参加と協力を求める。
  4. (4)国・地方自治体は、消防団・水防団員が活動するために必要な人数を確保する観点から、団員が所属する企業に対するインセンティブ施策を導入する。
  5. (5)国・地方自治体は、消防団・水防団員の装備品の充実と訓練の強化を行うと共に、防災ボランティア活動共済保険などへの加入を支援する。

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