4.社会インフラの整備促進(国土・住宅政策)

国土・住宅政策<背景と考え方>

  1. (1)人口減少に伴う年齢や世帯構成の変化により、地域社会に様々な影響が生じている。「国土形成計画」にもとづき、地域の主体性を確保した上で、すべての生活者にとってくらしやすい国土計画・都市計画・まちづくりを進めていくことが求められる。
  2. (2)「社会資本整備重点計画」にもとづき、選択と集中の徹底をはかるとともに、地域住民の生活に係わる社会資本の長寿命化対策を推進し、持続可能で包摂的な社会資本整備を進める必要がある。
  3. (3)「住生活基本計画」では、「住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備」を目標の1つとし、支え合いで多世代が共生するコミュニティの形成、公営住宅等による住宅確保要配慮者の住まいの確保など、住宅セーフティネット機能の強化等に関する各施策が掲げられている。「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、経済状況にかかわらず、誰もが安全・安心で快適に住み続けることのできる賃貸住宅を確保することが求められる。
  4. (4)核家族化や単身世帯の増加といった家族構成の変化等から、全国の空き家数は増加傾向にある。空家等対策計画に基づく空き家対策を強化するとともに、住宅セーフティネット法の住宅確保要配慮者や外国人労働者など、特に配慮が必要な世帯に一定の基準を満たした空き家を提供するなどの支援策を拡充していくことが求められる。

1.人口減少や少子高齢化、外国人労働者の増加などを踏まえ、すべての生活者にとってくらしやすいまちづくりを推進する。

  1. (1)国・地方自治体は、人口減少や少子高齢化、外国人労働者の増加などを踏まえ、地域の主体性を確保しながら、すべての生活者にとってくらしやすいまちづくりを推進する。

    ①人口減少に伴う年齢や世帯構成の変化などの地域実態に応じ、地域住民の参画のもとで、コンパクトなまちづくりなどについて検討できる環境を整備する。

    ②コンパクトなまちづくりを進める際には、都市計画や交通基本計画をはじめ、様々な施策が相互に機能し合うよう、都市間および省庁間の連携をはかる。

    ③都市部における中心市街地の整備を進め、大型集客施設・業務用ビル・公共施設等を集約し、都市緑化やエネルギーの共同利用などを促進する。

    ④市街地再開発事業施行区域の要件を緩和し、既存建築物の老朽化、敷地細分化の状況などに応じて対象範囲を拡大し、敷地細分化の防止と既成市街地再開発を推進する。

    ⑤すべての生活者が快適にくらすことができる、ユニバーサルデザインにもとづいたまちづくりを推進する。

    ⑥オフィスビルの新築・改修時に、省エネルギー型設備の導入をさらに促進するとともに、ビル・エネルギーマネジメントシステム(BEMS)や省エネルギー支援サービス(ESCO)などの事業育成のための補助金制度を拡充する。

    ⑦地域の山林資源を活用し、木材住宅、バイオマス発電源燃料、森林保全に向けた産業、雇用、再生可能エネルギーなどを作り出す。

  2. (2)国は、全国における地籍調査を推進するため、市町村に対する財政面および人材面での支援を行う。

    ①地籍調査の実施の有無により、自然災害発生後の住宅再建やライフライン復旧にかかる時間と費用に大きな差が生じるため、地籍調査を強化する。

    ②住みやすいまちづくりの観点から、地籍調査により所有者が不明確な土地をなくすことで、利用優先の土地活用と地価安定により生活と経済の安定をはかる。

    ③まちづくりと連動した土地政策を推進するため、土地取引の情報提供、土地行政の連携強化などにより、土地市場の透明化および活性化を推進する。

2.地域住民の生活に係わる既存社会資本の長寿命化や老朽化対策など、持続可能で包摂的な社会資本整備を行う。

  1. (1)国・地方自治体は、地域住民の生活に係わる橋梁、交通施設、上下水道施設、港湾岸壁など既存社会資本の長寿命化や老朽化対策により、持続可能で包摂的な社会資本整備を行う。

    ①橋梁、上下水道施設、港湾岸壁などについては、ICTを活用した早期検知システムの導入などによる維持管理を適切に行い、破損や事故を未然に防ぐ。

    ②交通安全の確保、都市景観の保全、災害拡大の防止・減災等の観点を重視し、情報通信回線・上下水道管・ガス管・電線等を一括埋設する共同溝の整備を推進する。

    ③内水氾濫・浸水対策における雨水貯留管の積極敷設ならびに下水道施設における重要な幹線(管路)等の耐震化を進める。

    ④大規模建築物や避難路沿道建築物などの耐震化や避難道路および沿道の建築物、軟弱地盤の地域を中心に液状化対策を推進する。

    ⑤学校、病院、空港、港湾、旅客施設、主要幹線道路、橋梁、公的賃貸住宅、公園緑地、排水処理施設の耐震補強など、地域住民の生活・安全・環境に関連した社会資本を優先的・効率的に整備する。

    ⑥社会資本整備を支える労働者の労働環境に配慮しつつ、国・地方自治体の技術者を含め、現場の担い手を安定的に確保および育成する。

  2. (2)国・地方自治体は、交通施設の整備について、都市計画やまちづくり、交通機関ごとの役割分担や既存施設の活用、効率化と利便性向上、自然環境への配慮を重視して推進する。

    ①交通施設の整備について、納税者・利用者への説明責任、自然環境への配慮を重視して推進する。併せて、整備事業に対する事後評価制度の導入も検討する。

    ②鉄道施設や道路について、老朽化し安全上問題がある橋梁やトンネル等の構造物に対し、民間事業者への支援も含め早急に対策を講じる。

    ③空港施設について、滑走路、空港ビルや駐車場などを一体的に運営し、安全性の確保と利便性の向上を前提に効率性を高める。また、滑走路延長やターミナルビルの増設などの追加投資は、既存空港を効率的に運営し必要性を精査する。

    ④新幹線整備について、国民の理解が得られるよう慎重な検討を行うとともに、投資の重点化を推進する。また、地域交通維持の観点から、並行在来線の経営分離問題や貨物路線の維持問題を解決する。

    ⑤道路整備について、拠点都市への接続向上、物流の円滑化など、地域住民の意見を踏まえて計画し整備を行う。三大都市圏においては、通過車両削減による渋滞解消などを目的に、環状道路・バイパス道路を拡充する。

    ⑥民間活力により社会資本整備を推進するため、PPPおよびPFIを活用するとともに、「公」と「民」の事業の責任範囲の明確化をはかる。

    ⑦上下水道など公益性の高い公共事業については、地方自治体における技術・管理人材の確保に努めるとともに、公共サービス事業の持続性・安定性と安全性を担保し、非常時における自治体間の相互応援体制の整備を促進する。

    ⑧上下水道の設備更新については、民間活用も含めた具体的方策について、受益者たる住民参加のもとで意思決定を行う。

    ⑨大都市圏への一極集中とそれに伴う住環境悪化、通勤問題、交通渋滞、防災問題など、様々な弊害を是正するため、地方分権や行政改革について国民的な議論を推進する。

3.「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、誰もが安心して住み続けることのできる賃貸住宅を確保する。

  1. (1)国・地方自治体は、「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、住宅セーフティネット法の住宅確保要配慮者などに加えて、外国人労働者など、特に配慮が必要な世帯に公的賃貸住宅や一定の基準を満たした空き家を供給するとともに、民間の優良賃貸住宅に対する支援を強化する。(「防災・減災に関する政策」参照

    ①子育て世帯が安心して子育てできるよう、十分な広さと質を備えた賃貸住宅を供給する。また、高齢者が所有する住宅を子育て世帯が居住する賃貸住宅として活用する。

    ②高齢者がコミュニティを維持しながら地域に住み続けられるよう、サービス付き高齢者向け住宅を活用する。また、居住の安定と居住用資産の有効活用をはかるため、自己所有の住宅等を担保として高齢者に融資を行うリバースモーゲージ制度の普及に向けた支援を講ずる。

    ③「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者居住安定確保法)」におけるサービス付き高齢者向け住宅を拡充する。また、障がい者にも対象を拡大し「高齢者および障がい者の居住の安定確保に関する法律(高齢者・障がい者居住安定確保法)」に改正する。

    ④住宅セーフティネット法の住宅確保要配慮者などの自立生活を支援するため、生活保護制度の生活扶助を見直し、住宅支援制度や住宅手当制度(住宅の現物支給又は家賃補助)を創設する。その際、一定の基準を満たした空き家の提供を含める。また、国は、無料低額宿泊所の利用者の自立を助長する適切な住環境を確保するため、無料低額宿泊所の防災体制を強化するとともに適切な相談支援体制の整備を行う。(「社会保障制度の基盤に関する政策」参照

    ⑤住宅確保要配慮者などに良好な居住環境を備えた特定優良賃貸住宅を供給するため、家賃減額などの支援を強化する。

    ⑥公的賃貸住宅への入居資格を持つすべての対象者が入居できるよう、入居者の公平性・効率性を担保した制度の見直しを行う。また、地方自治体は、条例における「連帯保証人規定」を削除し、入居者が保証人を立てられない場合には保証人を免除する。

    ⑦生活困窮者が抱える家賃負担や連帯保証人等の住まいをめぐる課題の解消に向けて、住居確保給付金の支給期間の延長や一時金の支払い、機関保証の活用を行う。(「社会保障制度の基盤に関する政策」参照

    ⑧公的賃貸住宅の計画的な建て替え、設備充実、ユニバーサルデザイン化、防犯対策などに対して、経費補助により事業期間を短縮する。

    ⑨民間賃貸住宅に住宅確保要配慮者などが入居している場合には、一定の要件のもと賃貸住宅の所有者に経費補助を行う。。

    ⑩誰もが安全・安心・快適に暮らせるよう、民間賃貸住宅の改修・建て替えを行う際には、一定の要件のもと賃貸住宅の所有者に経費補助を行う。。

    ⑪年間所得が1,500万円以下の個人が賃貸住宅に居住している場合は、支払い家賃額20%(上限は24万円)を各年分の所得税額から控除する「家賃比例税額控除制度」を創設する。(「税制改革」参照

 

4.安全で良質な住宅・設備を適正価格で取得・改修できる住宅政策を推進するとともに、空き家対策を強化する。

  1. (1)国・地方自治体は、適正な価格で新築住宅を取得できるよう、税制の優遇や費用の補助を行う。

    ①新築住宅にかかる固定資産税の軽減期間を10年に延長する。また、居住用財産の譲渡損失の繰越控除期間を5年に延長する。(「税制改革」参照

    ②長期優良住宅の税制優遇の拡充、超長期住宅ローンの開発などの環境整備を推進する。

    ③失業や収入の減少、病気などによって、住宅ローンの返済が困難になった者に対する、元金返済の猶予や返済期間の延長などの救済制度を設ける。

  2. (2)国・地方自治体は、適正な価格で既存住宅を取得できるよう、税制の優遇や費用の補助を行う。

    ①太陽光発電、高効率給湯器や燃料電池など、初期投資額の大きいリフォーム費用の補助、固定資産税の軽減などを行う。

    ②耐震性・省エネルギー性能・バリアフリー性能等を向上させるリフォームの促進とともに、省エネルギー性能を一層向上しつつ、長寿命でライフサイクルCO2排出量が少ない長期優良住宅ストックや ZEHストックを拡充する。

    ③リフォームが住宅の資産価値を高め、市場で適正に評価される仕組みづくりを推進する。また、既存住宅の住宅ローン減税を延長し減税額の上限を引き上げる。

    ④既存住宅の質や管理状況を反映させた価格査定方法の普及、リフォームにかかる費用を含む既存住宅への融資、既存住宅における固定資産税の軽減を新築住宅と同等にする。

    ⑤住宅履歴情報の蓄積・活用の普及を促進するとともに既存住宅の売買時における住宅性能表示、瑕疵担保責任、修繕記録、管理情報などに関する情報提供を行う。また、住宅・建築の専門家・専門家団体による相談窓口を整備する。

    ⑥既存住宅の耐震改修促進税制における所得税の特別控除額や固定資産税の減税額を拡充する。また、耐震性能診断・耐震改修工事を新耐震基準による住宅にも適用する。また、住宅の「直下率」を建築基準法や住宅性能表示制度に規定することを検討する。(「防災・減災に関する政策」参照

    ⑦シックハウス対策については、ホルムアルデヒドなどの原因物質以外の代替物質も含めて総量規制を導入する。また、建築資材等に含まれる有害物質に関して、事業者への意識啓発、居住者への情報提供を推進する。

  3. (3)地方自治体は、増え続ける空き家(共同住宅含む)が火災や自然災害などによって周辺の住宅や住民に危険を及ぼさないよう、「空き家等対策計画」を策定し、実施する。また、住宅セーフティネット法にもとづく居住支援協議会を設置し、登録住宅を増やすため、賃貸住宅の所有者等に対して改正住宅セーフティネット法の内容の周知を徹底する。さらに、地域の実情に応じた賃貸住宅供給促進計画の策定を進める。

    ①倒壊のおそれのある空き家については、火災や自然災害などによって周辺の住宅や住民に危険を及ぼさないよう、先進的な事例をもとに計画を策定し対策を行う。

    ②倒壊のおそれのない空き家については、住宅弱者に向けた空き家データベースの構築や改修費の補助などを通じて有効活用をはかる。

 

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