(横断的な項目)・男女平等政策

男女平等政策<背景と考え方>

  1. (1)2020年12月、政府は「第5次男女共同参画基本計画」を閣議決定した。しかし、過去の基本計画で掲げられた目標の多くが未達成であり、それらの実現に向けた具体的な対策が急がれる。加えて、2003年に設定された「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に占める女性の割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する(202030)」目標は、「2020年代の可能な限り早期に」と先送りされた。世界の潮流は2030年までに意思決定の場に女性が50%入る「203050」であり、これ以上の停滞は許されない。加えて、世界経済フォーラムが発表しているGGI(ジェンダー・ギャップ指数)でも、日本は146ヵ国中116位と先進国で最下位となっており、特に政治・経済分野での男女間格差が指摘され続けている。その背景には、政治をはじめとする社会のあらゆる分野でジェンダー平等に対する意識の低さがいまだぬぐえない状況がある。
  2. (2)2021年の女性の就業者数は2,980万人、雇用者数に占める女性の割合は44.7%で、M字カーブの谷の部分は浅くなりつつあるが、その主な要因は、非正規雇用労働者の増加によるもので、新型コロナウイルス感染症の影響による女性非正規雇用労働者の変動が大きくなっている。
     2016年に女性活躍推進法が施行され、管理職に占める女性の割合は、長期的には上昇傾向にあるものの、部長相当職ありの企業割合は12.1%と諸外国に比べて低い水準にとどまり、男性の賃金を100とした時の女性の賃金は74.3と、依然として男女間格差は解消されていない。このような中、女性活躍推進法にもとづく一般事業主行動計画について、2022年7月から「男女の賃金の差異」に関する状況把握・情報公表が、大企業に義務化された。男女間賃金格差は企業規模にかかわらず是正されるべきであり、義務化の対象とならない300人以下の企業についても、男女の賃金の差異を把握し、実態を分析する必要がある。
     女性活躍推進に関する情報は、将来の業績予想や投資判断の際の有効な指標となり得る。男女が共に働きやすくなることが、多様なバックグラウンドを持つ人が会社に増えることにつながり、新しい取り組みやイノベーションが生まれるきっかけとなると考えられている。多様な人材、特に優秀な人材を引き付ける力や、意思決定や判断に多様性を浸透させることが、価値を高める上でも重要となってきている。
     女性が直面している様々な困難が解消され、働きがいを持てる就業環境の整備は急務であり、女性活躍推進法のさらなる周知・点検の徹底と定着、中小企業への浸透など、法の実効性を高める必要がある。
  3. (3)男女がともに仕事と生活の調和を実現するためには、働き方を見直し、男性も含めた労働時間の短縮や、仕事と育児や介護等の両立支援に向けた環境整備が不可欠である。2022年4月より三段階に渡って施行される改正育児・介護休業法は、男性の育児休業取得を促進させるための拡充策として「出生時育児休業(産後パパ育休)」を創設した。
     しかし、固定的性別役割分担意識と男性の長時間労働は、依然として男性の育児や家事への参画を阻んでいる。男性の育児休業取得率は13.97%で、2020年の7.5%と比較すると上昇傾向にあるが、育児休業の取得期間は2週間未満が5割を超える。そのような中、未だ女性労働者の半数が第1子出産前後で退職している。
     一方、介護の状況を見ると、家族の介護・看護のために離職した労働者は、年間約10万人で推移しており、働きながら介護をする男性も増えている。また、介護離職者の再就職は3割であり、その多くが非正規雇用となっている。さらに、育児と親の介護を同時に担う「ダブルケア」を行う人口も25万人と推計されており、男女ともに30歳から40歳代の働き盛りの世代がこの問題に直面している。それらの状況の改善は喫緊の課題であり、男女がともに仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をはかることができるよう、実態やニーズに応じたさらなる法整備が求められている。
  4. (4)2019年6月、ILOは第108回総会において「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約と勧告を採択した。あらゆるハラスメントの根絶は今や国際的な課題となっている。
     日本国内の現状を見ると、都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーに寄せられる「職場のいじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は増加傾向にあり、2012年以降すべての相談の中でトップとなっている。また、厚生労働省の実態調査(2020年)では、企業の相談窓口へ寄せられる内容は、パワー・ハラスメントに関する相談が31.4%、いじめ・嫌がらせの相談件数も2020年度は約8万件にのぼり、対策は喫緊の課題である。都道府県労働局へ寄せられる相談件数は、セクシュアル・ハラスメントに関する相談が最も多く、次いで婚姻、妊娠・出産等に関するハラスメントについての相談が多い。
     2020年6月には改正労働施策総合推進法、改正男女雇用機会均等法等が施行され、2022年4月からはパワー・ハラスメントの防止措置義務が全事業所に義務化された。ハラスメントは「行ってはならない」との責務規定が法制化されるなど、ハラスメントの抑止効果が期待される。しかし、ハラスメントが蔓延する現状に鑑みれば、ハラスメント行為そのものを禁止することが重要であり、さらなる法整備に向けて早期に取り組む必要がある。
     2021年6月に改正された「政治分野における男女共同参画推進法」により政党や国・地方自治体の施策と責務が強化されたが、女性議員の数は遅々として増えない。政治分野における女性の参画をより積極的に推進するため、クオータ制導入へ向けた法整備が必要である。
     なお、職場以外でも女性に対する差別発言や性的指向・性自認(SOGI)に関する問題発言などが頻発しており、あらゆるハラスメント対策を求める声が高まっている。G7広島サミットを契機として2023年6月にLGBT理解増進法が制定されたものの、同法は差別の禁止を規定するものではなく、極めて不十分な内容である。法の履行確保のため、施行状況を継続的に確認・検証する仕組みを構築し、差別の禁止を含めた法改正に向け、当事者と連携して取り組む必要がある。
  5. (5)国連で採択された「持続可能な開発目標・SDGs」に係る施策を総合的かつ効果的に推進し、目標を達成させていく必要がある。貧困や不平等をなくし、年齢や性別、障がいの有無などにかかわらないディーセント・ワークの実現に向け、女性のエンパワーメント、女性に対するあらゆる形態の差別や暴力の根絶などをめざす目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の取り組みを中心に位置づけることが重要である。
     そのうえで、国際的な連携をはかり、条約などの取り決めを遵守する姿勢を示すべきである。女性差別撤廃条約にもとづく性差別禁止、特に雇用の全ステージにおける直接・間接差別の禁止に関する法制度の充実が必要である。また、「雇用及び職業についての差別待遇」に関するILO第111号条約や、2021年6月25日に発効した「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関するILO第190号条約を早期に批准すべきである。さらには、ILO条約勧告適用専門家委員会が日本政府に強く求めている同一価値労働・同一賃金の原則の実現による均等待遇の確保や、性やライフスタイルに中立な税・社会保障制度の実現による格差是正、貧困の解消が強く求められている。
     加えて、日本は、国連女性差別撤廃委員会から再三の勧告を受けているにもかかわらず、選択的夫婦別氏制度を導入するための法改正が実現していない。この制度については、国民世論で実現を望む声が高いにもかかわらず、「第5次男女共同参画基本計画」では極めて消極的な記述にとどまっており、民法における男女差別の解消に向けて引き続き運動を展開する必要がある。

1.雇用の分野における性差別を禁止し、賃金格差の是正、男女の平等を実現する。(「雇用・労働政策」より再掲)

  1. (1)男女雇用機会均等法を以下のように見直す。

    ①法律の名称を「男女雇用平等法」(注1)とする。

    ②第1条(法の目的)に記された「男女の均等な機会及び待遇の確保」には、賃金の男女均等取り扱いが含まれることを明確にするとともに、各条文の性差別禁止条項は賃金格差是正のためにも運用されるべきであることを各条文の指針等に明記する。また、均等法の対象に性的指向・性自認による差別を加える。

    ③第2条(理念)に「男女労働者の仕事と生活の調和をはかる」ことを明記する。

    ④第6条(性別を理由とする差別の禁止)について、事業主が労働者の性別を理由として差別的取り扱いをしてはならない事項に「賃金の決定」を加える。

    ⑤事業主は、第6条に規定された事項の基準や運用のあり方を明らかにすることと、労働者から説明を求められた場合、事業主は説明しなければならないこと、また説明を求めたことを理由に不利益取り扱いをしてはならないことを指針に明記する。

    ⑥第7条(性別以外の事由を要件とする措置)について、間接差別法理を条文に明記し、指針における間接差別(注2)の禁止の基準を、限定列挙から例示列挙とする(現行3項目はあくまで間接差別の一例とし、一方の性に対して合理的な理由がなく不利益を生じさせることを幅広く禁じる)。また、どのようなことが間接差別に当たるかを「指針」で広く示す。

    ⑦第9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)において、婚姻を理由とする退職・解雇以外の差別禁止を明確化する。マタニティ・ハラスメントにおける被害者の就業継続を確保する。

    ⑧第10条(指針)にもとづく「募集および採用並びに配置、昇進および教育訓練について事業主が適切に対処するための指針」の法違反の判断を雇用管理区分(同じ区分の男女)ごとに行うことは、差別の温存や差別認定の範囲を狭めることなどになることから、この部分を削除する。

    ⑨第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)について、セクシュアル・ハラスメントを禁止するとともに、「性別役割分担意識に基づく言動」(ジェンダー・ハラスメント)の防止措置義務を事業主に課す。さらに、指針で被害者の対象に職務の遂行に際して接触した取引先や顧客、利用者、患者、生徒などの第三者も含め「カスタマー・ハラスメント」として明記する。

    ⑩ハラスメントの回避や、療養が必要な労働者の休業と復職の権利の保障などについて、具体的なルールや手続を指針に明記する。また、被害者が第三者の場合も念頭に通報制度も含めた相談窓口の設置を行い、二次被害の防止対策を講じる。

    ⑪ドメスティック・バイオレンス(DV)などの性暴力(注3)が職場に与える影響を労働問題として認識し、被害者の継続就業のための支援として、加害者の接近や個人情報の開示を防ぐとともに、救済機関のアクセスなどに必要な休暇制度の整備などの配慮規定を設ける。

    ⑫ポジティブ・アクションに関する第14条(事業主に対する国の援助)に、事業主に以下の責務を課すことを追加する。

    a)募集・採用・配置・昇進・教育訓練・福利厚生・退職などの取り扱いにおける男女の割合(格差)や賃金格差に関するデータの集計・作成・保管・開示について、義務を課す。

    b)ポジティブ・アクションの計画策定、実施、実施状況の開示について、措置義務を課す。

    c)ポジティブ・アクションの計画策定・実施状況のモニタリング結果の計画への反映等については、過半数労働組合もしくは過半数代表者への情報提供・協議を義務づける。

    d)男女間格差の要因について労働者および労働組合から説明や協議を求められた場合、これに応じる義務を課す。

    ⑬「コース等で区分した雇用管理を行うに当たっての事業主が留意すべき事項に関する指針」を法的根拠のあるものとする。

    ⑭第18~27条(調停)を改正し、事業主に機会均等調停会議への出席を義務づける。

    ⑮第28条(調査)について、厚生労働大臣は、男女間賃金格差の改善に関して必要な事項、特に職務評価・職業能力評価などについて、調査、研究、資料を整備し、事業主への提供を行うように努めることを法律に明記する。

    ⑯第29条(報告の徴収ならびに助言、指導及び勧告)について、労働局長が勧告を行う場合であって必要と認められるときに、賃金格差をはじめとする現状の改善措置計画の作成を求めることができるようにする。措置計画は、労働組合もしくは過半数代表への説明・協議、または過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取と意見書の添付を義務づける。また、措置計画は労働者に対する義務でもある旨も明確化し、第29条に「措置計画の作成・提出が求められた場合は、労働者や労働組合に周知しなければならない」旨、追加する。

    ⑰事業主は、均等法の趣旨と事業主が講じている措置について労働者に周知・啓発しなければならない旨を法律に明記する。

    ⑱差別救済制度を設け、以下のようにする。

    a)政府から独立した雇用平等委員会を設置し、都道府県単位で支部を設置する。

    b)救済の対象は、雇用の全ステージおよび賃金等の労働条件に関する性差別(性的指向・性自認に関する差別を含む)、仕事と育児・介護に関する両立支援、短時間労働者等の均等・均衡待遇等、その他の労働条件に関する法違反および差別的取り扱いや不利益取り扱いの他、ハラスメントがあるときとする。

    c)救済申し立てを理由とする不利益取り扱いを禁止する。

    d)差別・格差の合理的根拠を示す証拠およびその裏づけ資料の提出義務は事業主にあるものとする。

    e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。また、委員会は差別の認定に関して調査する権限を持つものとする。

    f)事業主がこの勧告にしたがわない場合は刑罰を科す。

    ⑲差別救済において政府から独立した雇用平等委員会が設置されるまでの間、第30条(公表)にもとづき厚生労働大臣(都道府県労働局長)の勧告にしたがわない企業名を公表するなどの制裁措置を行う。

    ⑳政府から独立した救済機関が設置されるまでの間、男女雇用機会均等法の実効性を強化するため、都道府県労働局・雇用環境・均等部(室)の人員を増員し、増加傾向にある相談や救済依頼に対し、迅速に対応できる体制を整える。その際、男女平等の観点に関して職員への十分な研修を行うものとする。

  2. (2)労働施策総合推進法等の関係法令を以下のように改正する。

    ①ハラスメント行為そのものを禁止する。

    ②パワー・ハラスメントの行為類型に「セクシュアル・ハラスメント」や「その他のいじめ・嫌がらせに該当する行為」を含め、あらゆるハラスメントを包括的に規制できるように指針で例示する。

    ③パワー・ハラスメントに関する事業主が雇用管理上講ずべき措置の行為者・被害者の対象に、職務の遂行に際して接触した取引先や顧客、利用者、患者、生徒などの第三者を含め「カスタマー・ハラスメント」として明記する。

    ④ハラスメントの回避や、療養が必要な労働者の休業と復職の権利の保障などについて、具体的なルールや手続を指針に明記する。また、被害者が第三者の場合も念頭に通報制度も含めた相談窓口の設置を行い、二次被害の防止対策を講じる。

    ⑤ハラスメントに関する事後的な救済措置として、新たに行政から独立したハラスメントに関する専門の救済機関を設置する。

    ⑥事業主が雇用管理上講ずべき措置も含めたハラスメント対策について、(安全)衛生委員会の活用を含め、労働者が参加した場で協議を行うものとする。

    ⑦ハラスメントが起こりやすい業種・業態・職務等の実態を把握し、効果的な追加措置を講じる。

  3. (3)労働基準法を以下のように改正する。

    ①第3条(均等待遇)に規定されている、差別的取り扱いをしてはならない理由に「性別」を加える。

    ②第4条(男女同一賃金の原則)について、ILO第100号条約の趣旨にもとづき同一または同一価値の労働に就く男女に同一の報酬を支払うことを義務づける旨を明記する。

    ③第64条の3(危険有害業務の就業制限)にもとづく女性労働規則第2条第2項に関して、同規則第2条1項第13号の「土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5m以上の地穴における業務」および第14号「高さが5m以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務」についても、産後1年を経過しない女性から申し出があれば就業できないこととする。

  4. (4)女性活躍推進法を以下のように見直す。

    ①法の目的に、人権と性差別禁止にもとづいた雇用平等の実現と、非正規雇用も含めたすべての女性を対象とする格差是正と貧困の解消、および長時間労働削減による仕事と生活の調和の推進および法が女性差別撤廃条約の理念にもとづくことを明記する。

    ②企業内の女性活躍に関するデータの現状把握、分析およびこれらの情報開示については、すべての事業主の義務とする。

    ③状況把握、分析、情報開示は、パートタイム労働者、有期契約労働者、派遣労働者、臨時・非常勤職員等を含むすべての労働者を対象とする。

    ④すべての事業主に対し、雇用の全ステージにおける男女別の比率、男女別の配置状況、教育訓練(OJT、OFF-JT)の男女別の受講状況、両立支援制度の導入や男女別の利用状況、男女の賃金の差異、男女別の1つ上位の職階へ昇進した者の割合、男女の人事評価の結果における差異、非正規から正規への転換制度の有無と転換実績の男女別データ、各項目に関する現状把握、分析、情報開示を義務とする。

    ⑤行動計画策定指針には、あらゆる形態のハラスメントの禁止の取り組みについて盛り込む。

    ⑥各事業主の目標設定および行動計画策定、実行、改善見直し、達成のすべてのプロセスにおいては、具体的な取り組みが継続的に行われるよう労使の協議にもとづく検証が確実に行われる体制の整備を義務づける。

    ⑦時限立法となっている女性活躍推進法の一般事業主行動計画部分については、男女雇用機会均等法の第14条(ポジティブ・アクションに関する条文)に位置づけ、統合する。

    ⑧女性活躍推進法にもとづくえるぼし認定に際しては、基準の適合確認の徹底と厳格化をはかり、認定後において基準に適合しなくなった場合は速やかに認定の取り消しを行う。

  5. (5)すべての労働者の均等・均衡待遇の実現と労働条件の向上に向けて、以下のようにパート・有期法の改正を行う。

    ①第7条(就業規則の作成の手続)について、パートタイム労働者もしくは有期雇用労働者用の就業規則を作成・変更する場合は、パートタイム労働者もしくは有期雇用労働者のそれぞれ過半数を代表する者から意見を聴取することを事業主に義務づける。

    ②第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)については、要件でパート・有期雇用労働者の待遇を分ける規定を削除し、第8条(不合理な待遇の禁止)と統合する。将来的には、すべてのパート・有期雇用労働者を対象に、合理的理由がある場合を除き、待遇についてパート・有期雇用労働者であることを理由とする差別的取り扱いを禁止する。

    ③第10条(賃金)について、合理的な理由がない待遇の格差を禁止した上で、合理的な理由が認められた場合でも、均衡待遇の具体的な改善策を講じるよう事業主に措置義務を課す。

    ④第11条(教育訓練)について、通常の労働者と職務の内容が同一であるパート・有期雇用労働者には、職務遂行に必要となるもの以外の教育訓練も、通常の労働者に準じて実施することを義務づける。

    ⑤第13条(通常の労働者への転換)について、「短時間正社員制度」の活用を含めて正規労働者への転換の間口を広げ、キャリアラダーを整備し、希望する者の正規労働者化を促すことについて、事業主に義務を課す。また、差別的取り扱いの禁止の対象となる通常の労働者と同視すべきパート・有期雇用労働者が希望する場合は、優先的に雇用する。

    ⑥第14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)について、通常の労働者との待遇の違いの程度とそれが生じた理由を含めて説明する手段は、文書によることとする。

    ⑦事業所ごとに「雇用管理改善計画」の策定を課し、一定基準を満たせば厚生労働大臣の認定を与え、表示できるようにする。認定事業所には、法人税の税額控除など税制上の一定のインセンティブを与える。

    ⑧パート・有期法および省令、指針などを周知徹底するとともに、監督・指導体制を強化し、法の実効性を確保する。

    ⑨第18条(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等)について、労働局長が勧告を行う場合であって、必要と認められるときには改善措置計画の作成を求めることができるようにする。当該計画については、過半数労働組合もしくは過半数代表者への説明・協議、または過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取と意見書の添付を義務づける。

    ⑩パート・有期法の努力義務規定にも紛争解決援助制度の対象を拡大する。また、労働契約法第18条の無期転換権を行使した労働者やパートとして採用されながらフルタイムで働いている無期雇用労働者に対する不合理な差別は、パート・有期法の脱法的行為として、同法に関する紛争解決手続を利用できるようにする。

    ⑪差別救済制度を設け、以下のようにする。

    a)政府から独立した雇用平等委員会を設置し、都道府県単位で支部を設置する。

    b)救済の対象は、雇用の全ステージおよび賃金等の労働条件に関する性差別(性的指向・性自認に関する差別を含む)、仕事と育児・介護に関する両立支援、パート・有期雇用労働者等の均等・均衡待遇等、その他の労働条件に関する法違反および差別的取り扱いや不利益取り扱いの他、ハラスメントがあるときとする。

    c)救済申し立てを理由とする不利益取り扱いを禁止する。

    d)差別・格差の合理的根拠を示す証拠およびその裏づけ資料の提出義務は事業主にあるものとする。

    e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。また、委員会は差別の認定に関して調査する権限を持つものとする。

    f)事業主がこの勧告にしたがわない場合は刑罰を科す。

    ⑫第28条(雇用管理の改善等の研究等)に、厚生労働大臣は、教育訓練の実施やパート・有期雇用労働者に関する評価制度(職務評価・職業能力評価)について資料の整備を行い、必要な事業主に対して提供することを促進していくことを明記する。

  6. (6)性的指向・性自認に関する差別を禁止する法律を以下のように制定する。

    ①法の目的に、あらゆる人の性的指向・性自認に関する差別を禁止する旨を明記し、憶測による差別等にも対応できる法制とする。

    ②性的指向・性自認に関する差別に関して、雇用の全ステージや学校をはじめとするあらゆる分野における差別的取り扱いを禁止する。その際、憶測による差別や、家族が性的指向や性自認に関して困難を抱える者であることに対する差別についても禁止する。

    ③雇用の分野をはじめとするあらゆる分野において、性的指向・性自認に関するハラスメント防止措置として、国は事業主等が防止に取り組む際の指針を作成し、プライバシー保護を徹底する等、性的指向や性自認の課題の特徴を踏まえた措置を講ずる。

    ④性的指向・性自認に関する合理的配慮を各事業主に義務づけるとともに、職場の円滑な対応を可能とするため、対応要領や指針を作成する。対応要領や指針には、労働者の施設利用や服装に関する扱い、性別欄の見直し、プライバシー保護や教育訓練等をはじめ、詳細な事例とともに記載する。

    ⑤対応要領や指針を作成する際には、労働者代表や性的指向・性自認で困難を抱える当事者等を構成員とする審議会を内閣府に設置し、意見反映の場とする。雇用の分野については労働者代表の意見を労働政策審議会において反映する。

    ⑥学校におけるいじめやハラスメント等の対応については、性的指向・性自認にかかわらず広く相談支援に応じることのできる体制整備を進めるとともに、外部の専門機関や地方自治体の相談窓口との連携を強め、子どもからの相談に応じることができるようにする。

    ⑦プライバシー保護や孤立等を防止する観点から、各都道府県に相談センター等の設置を義務づける。その際、相談者のプライバシーを相談センターが厳守するよう、相談対応のガイドライン作成や、秘密厳守の義務、および秘密漏洩に対する罰則を課す。

    ⑧行政は広範な性的指向・性自認に関する差別等の実態や、国内外の差別禁止や権利保障の取り組みに関する情報収集を進める。特に、合理的配慮の事例について積極的な収集を行う。

  7. (7)労働条件の時間比例を原則とする「短時間公務員制度」などの導入を行い、公務における臨時職員・非常勤職員の雇用安定と処遇改善をはかる。
  8. (8)男女間および雇用・就業形態間の賃金格差是正の実現へ向け、日本が批准しているILO第100号条約「同一価値労働・同一報酬」の実効性を確保のため、職務評価手法の周知・普及とさらなる研究開発を進める。
  9. (9)男女の職務分離の改善を進め、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男性の進出を積極的に推進するために学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取り扱いなどの関連する行政の連携を進める。
  10. (10)ILO第183号母性保護条約を早期に批准するため、労働基準法第67条(育児時間)による育児時間中の賃金は100%保障することとし、産休終了時に原職または当該休業の直前と同一の額が支払われる同等の職に復帰する権利を保障する。
  11. (11)出産手当金については、賃金との併給の場合の限度額を雇用保険法の育児休業給付の限度である80%(標準報酬日額の80/100)まで引き上げる。
  12. (12)母体保護のため強制休業となっている産後休業期間については100%所得保障をする。
  13. (13)国内法を整備し、ILO第111号条約(雇用および職業についての差別待遇の禁止)、ILO第171号条約(夜業禁止)、ILO第175号条約(平等なパートタイム労働)、ILO第183号条約(母性保護)、ILO第189号条約(家事労働者)の早期批准を行う。
  1. (注1)労働組合は、男女雇用機会均等法制定前から募集・採用など雇用のステージごとの機会の均等だけでなく、賃金差別や仕事と生活の調和などの課題も含んだ男女間の不平等を総合的に是正する雇用平等法の制定を求めた方針を掲げ続けている。
  2. (注2)間接差別 ~雇用分野における性別に関する間接差別とは、①性別以外の事由とする措置であって、②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもので、③合理的な理由がないときに講ずることである。具体的には、男女雇用機会均等法の指針において、以下の3点が間接差別として規定されている。
  3. a)労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること

    b)コース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

    c)労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること。

  4. (注3)性暴力 ~社会的に形成される男女の差異(ジェンダー)にもとづくあらゆる暴力行為のことである。
  5. (注4)2022年1月発行のパンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の責務になりました!」では、職場のパワー・ハラスメントについて6つの行為類型が示された。

  ⅰ暴行・傷害(身体的な攻撃)

  ⅱ脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

  ⅲ隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

  ⅳ業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

  ⅴ業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

  ⅵ私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

2.男女平等社会実現に向け、男女共同参画社会基本法にもとづく「第5次男女共同参画基本計画」を着実に実行し、男女平等の視点に立った社会制度・慣行の見直しを推進する。

  1. (1)「男女共同参画社会基本法」の理念を達成するために以下の施策を推進する。

    ①第5次男女共同参画基本計画の実行の監視等を担う「計画実行・監視専門調査会」について、女性差別撤廃条約の履行状況ならびに第5次男女共同参画基本計画の施策の実施状況を継続的に監視し、定期的に施策を評価できるモニタリング機関として、実効性を持たせるための権限と機能を強化する。

    ②「男女共同参画基本法」をあらゆる機会・媒体などを通じ、国民各層に広く周知する。 また、基本法(基本計画)の趣旨に沿い、政府は、市町村における基本計画の策定、条例化に資するよう、情報提供などの支援を行う。

    ③都道府県の「男女共同参画基本計画」の達成状況を監視し、都道府県に対して勧告する権限を有する評価委員会を設ける。委員会は、当該地域の労働組合、経済団体、NPO・NGO、女性団体などで構成する。

    ④調査や統計における統計情報の提供にあたって、男女別統計(ジェンダー統計)の整備を、国、地方自治体、公的機関に義務づけるとともに、すべての民間団体、機関は男女別統計の収集・整備・提供に努めることとする。

  2. (2)政府は「第5次男女共同参画基本計画」を着実に実行する。

    ①国、地方自治体、公的機関などは、2020年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」にもとづく「2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指し、その通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取り組みを進める」との目標の達成に向けて、さらに踏み込んだポジティブ・アクションの実行等を通じ、女性の参画拡大を進める。

    ②民間部門でも「2020 年 30%」の目標の周知徹底をはかり、さらなるポジティブ・アクションの実行について国は指導する。

    ③男性の多い理工系分野への女性の進出を積極的に推進するため、女性教員および女子学生の割合向上に加え、企業のジェンダーバイアス払拭など、理工系女子学生の就職にあたっての課題についても取り組みを進める。

    ④国は、メディアに関わる業界における女性の参画を拡大するよう働きかける。

    ⑤国および地方自治体が設置・開催する防災・復興会議や、災害時の避難所の運営などの現場の意思決定などの防災・復興に関するあらゆる意思決定の場への女性の参画を拡大する。

    ⑥国は、個人のライフスタイルの選択に中立的な税・社会保障制度へと見直す。

    ⑦女性の人権と平等を確保するため、国は、個人通報制度と調査制度を有する女性差別撤廃条約選択議定書を早期に批准する。

    ⑧2030年までに、指導的地位に女性の占める割合を50%にすることを目標とし、2020年以降も、あらゆる分野における女性の積極的参画を達成するため、さらなる取り組みを加速させること。

  3. (3)男性自身が持つ固定的性別役割分担意識の解消に向け、長時間労働を前提とした働き方や介護等の困難を一人で抱えがちな傾向について、ジェンダーの観点からさらなる調査研究を進め、「男女共同参画社会」を効果的に推進する。
  4. (4)雇用の場におけるポジティブ・アクションを推進する。

    ①公契約基本法を制定し、各府省の公共調達において、「男女共同参画」等に積極的に取り組んでいる企業を優先する。地方においては、公契約条例を制定し、「男女共同参画」等に積極的に取り組んでいる企業を優先する。

    ②行政分野において、男女が同等の成績である場合に女性を採用・登用する「プラス・ファクター方式」を採用する。

  5. (5)2018年5月に施行され、2021年6月に改正された「政治分野における男女共同参画推進法」の実効性を高めるため、クオータ制導入に向けた必要な法整備を行う。また、政党による女性議員の発掘・育成を支援するために、女性議員の割合に応じた政党交付金の傾斜配分などの制度支援を行う。さらに、候補者・議員の仕事と生活の両立を支える環境整備や、あらゆるハラスメントを対象とした対策の強化を行う。(「政治改革」より再掲
  6. (6)性別にもとづく固定観念にとらわれない視点から、公的機関の策定する広報・出版物における表現は、国の「男女共同参画の視点からの公的広報の手引き」にしたがうよう周知・徹底をはかる。また、マスメディアから受ける影響も大きいことから、民間についても準拠するよう指導する。
  7. (7)男女平等社会実現に向けて、民法を下記のとおり改正する。

    ①選択的夫婦別氏制度を導入する。ただし、別氏を選択した夫婦の子の氏については、その出生の際に、父母の協議により、子の称する氏を父または母いずれかの氏とする。

    ②親族・扶養義務者の範囲を縮小の方向で見直す。

    ③離婚時の財産分与、子どもに対する親の養育費負担を制度化する。

    ④無戸籍の要因ともなっている嫡出推定については、2022年の民法改正により見直しがはかられたが、無戸籍者問題の全面的な解消には至っていないため、婚姻中に懐胎し、離婚後300日以内に出生した子の父親を前夫とする嫡出推定規定そのものの存廃も含め、無戸籍者を生じうる民法上の規定のさらなる見直しを求める。

    ⑤戸籍法を改正し、出生届書の嫡出子と嫡出でない子の別の記載事項をなくす。

    ⑥同性パートナーの権利保障のため事実婚に準じた扱いとすることや、戸籍変更要件の緩和など、性的指向や性自認に関する課題の解消に向けた民法の整備を進める。

  8. (8)男女平等の視点に立った学校・社会教育を推進する。(「教育政策」より再掲

    ①人種、民族、宗教、肌の色、性別、年齢、疾病、障害、門地、性的指向・性自認等による人権侵害を解消し、人権意識を高めるための教育を行う。

    ②ジェンダー平等教育のための基本方針を策定し、教職員や社会教育主事などに対する研修を行う。また、教科書の見直しや教材開発、性別で分けない名簿を進めるとともに、スクール・セクシュアル・ハラスメント防止に努める。

  9. (9)性やライフスタイルに中立な税・社会保障制度を確立する。(「年金政策」、「税制改革」より再掲

    ①雇用労働者である国民年金第1号被保険者についても、育児休業などの取得期間中の保険料免除措置を導入する。給付に反映する場合の財源は、国民年金財政で負担することを基本としつつ、公平なあり方を検討する。

    ②第3号被保険者制度の見直しについては、短時間労働者等への厚生年金のさらなる適用拡大、被扶養者認定の年収要件の見直しで対象者を縮小する。

    ③遺族厚生年金について、以下のとおり見直す。

    a)当面、遺族年金の支え手である被保険者の年収とのバランスをはかる観点から、年収850万円未満の遺族に支給される現行制度について、遺族となった者の年収に応じて、年収 600 万円程度から段階的に年金額を調整する仕組みに改める。また、適用認定については、毎年の年収をもとに認定する仕組みに改める。

    b)遺族厚生年金の支給要件の男女差については、将来の遺族年金のあり方、方向性と整合性をはかりつつ、格差解消に向けて見直す。

    ④配偶者控除は、扶養税額控除に整理統合する。

    ⑤勤労学生控除、老人扶養親族控除(70 歳以上)、同居老親等加算、障害者控除、寡婦・寡夫控除は税額控除に変える。

    ⑥夫婦が子等を共同扶養する場合の健康保険の被扶養の認定において、年間収入の多少により画一的に判断せず、家庭の実態などに即して判断すべきことを通知などで周知徹底する。

 

3.人間らしい働き方を実現するために、男女が仕事と生活を調和できる環境を整備する。

  1. (1)長時間労働の是正に向けて、労働時間短縮や年次有給休暇の完全取得など、労働者の健康・安全およびワーク・ライフ・バランスの確保に向けた施策を推進する。(「雇用・労働政策」より再掲

    ①時間外労働の法定割増率を時間外50%、休日労働100%、深夜労働50%に引き上げる。特に、休日労働の割増率は35%から50%以上に早期に引き上げる。

    ②労働基準法第40条の特例措置(週44時間労働制)は早急に廃止する。

    ③フルタイム労働者のあるべき労働時間として「年間総実労働時間1,800時間」など、数値目標を示す。

    ④「ワーク・ライフ・バランス憲章」に盛り込まれた「消費者の一人として、サービスを提供する労働者の働き方に配慮する」との趣旨の周知をはかるなど、深夜化するライフスタイルや長時間労働を是正し、平日のゆとり時間の確保を重視した環境整備を行う。

    ⑤多くの労働時間規制の適用が除外されている管理監督者については、その定義を法律で明確に定める。なお、管理監督者性の判断基準に関する昭和63年の通達等にもとづく厳格な監督指導は直ちに徹底する。

    ⑥すべての労働者を対象に「休息時間(勤務間インターバル)規制(原則11時間)」を導入する。

    ⑦男女ともに限度時間「150時間」を目標として、限度時間「360時間」以内の徹底をはかる。

    ⑧「自動車の運転の業務」「医師」については、2024年4月より適用される規制水準の実効性確保に向けた周知、施行後の遵守徹底とともに、着実な労働時間縮減に取り組む。その上で、引き続き一般則の速やかな適用に向けた議論を行う。

    ⑨すべての自動車運転者の長時間労働の是正および安全輸送や公正競争の確保のために、労働環境や賃金体系等が適正なものとなるよう関連法規の周知徹底をはかり、厳格に運用する。

    a)長時間労働による過労死等の発生や事故の防止をはかるため、2024年4月より適用される労働時間の上限規制および改正「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(告示)の施行に向けた周知および監督指導を徹底する。また、施行後の告示の運用状況を検証し、最大拘束時間の見直しをはかるとともに、事業者に連続休息期間の確保を義務づける。

    b)過当競争や賃金体系における過度な歩合制が低賃金・長時間労働の原因であるため、安全輸送の観点から、いわゆる「オール歩合」「累進歩合」の禁止を法律に明記し、不適切な事業者を排除する制度を構築する。

    ⑩労働基準法第41条第1号の農業および畜産・水産業従事者に関する労働時間・休憩・休日規制等の適用除外は、労働実態の把握を行い、事業場単位で行われている適用のあり方などについて検討する。

    ⑪厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」については、改正労働安全衛生規則における労働時間の適正な把握方法と同様に、使用者に求める措置を労働基準法上の義務として法文化する。

    ⑫時間外労働・休日・深夜労働等の削減に向けて、「所定外労働削減要綱」、「賃金不払残業総合対策要綱」、「労働時間等設定改善指針」の周知徹底をはかる。

    ⑬公務における超過勤務の実態を把握するとともに、実効性ある超過勤務規制をはかる。

    ⑭教員にも労働基準法第37条を適用し、長時間労働の是正をはかる。

    ⑮「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の中間とりまとめを踏まえ、地域において医療機関による労働時間短縮の取り組みを推進すべく、医療機関勤務環境評価センターによる評価体制の整備と、医療勤務環境改善支援センターによる相談支援の強化をはかる。また、医師の労働時間の実態把握と、取り組みの改善を定期的に行うとともに、医療を受ける側の国民の理解を得ながら国・都道府県が一体となり、医療現場で働くすべての労働者の長時間労働を是正する。

    ⑯ICTの進化・普及により生じている、退社後・休日の待機・呼び出しや行動範囲の限定という実態を調査するとともに、このような働き方/働かせ方に対する規制・ルールを検討する。

    ⑰高度プロフェッショナル制度は、施行後の状況を検証し、対象労働者の働き方や健康確保、対象業務の運用などに問題がみられる場合は、廃止も含めて制度の見直しを行う。

    ⑱裁量労働制の対象業務拡大は行わない。

    ⑲企画業務型裁量労働制の導入手続きは、2003年の労働基準法改正前の手続きに戻すことを原則とし、(a)労使委員会の労働者側委員については、過半数労働組合がある場合を除いては、労働者からの信任手続きを必要とし、(b)労使委員会の決議要件は全員一致とする。また、専門業務型にも労使委員会の設置を義務づけた上で、同様の手続きを課す。

    ⑳裁量労働制の適用後に、本人が希望した場合には一定の予告期間後には通常の労働時間管理への復帰を保障することを明文化する。また、前年度の休暇取得率を踏まえた特別の休日労働規制など、健康・福祉確保措置の最低基準を法律に規定し、複数措置(「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」より各1つずつ以上)の実施を義務づける。

    ㉑すべての労働者を対象に「連続勤務日数の規制」の導入を検討する。

    ㉒長時間労働につながる商慣行の見直しと取引の適正化をはかるため、事業主が取引上必要な配慮をする努力義務を定めた「労働時間等設定改善法」および「労働時間等設定改善指針」の周知徹底をはかる。

  2. (2)年次有給休暇取得促進に向けた施策を促進する。(「雇用・労働政策」より再掲

    ①法定年次有給休暇の最高付与日数を25日に引き上げるとともに、最低付与日数20日に引き上げる。また、6ヶ月の継続勤務要件は廃止する。

    ②本人・家族の病気・看護休暇、配偶者出産休暇(5日間)などの新設をはかる。

    ③年次有給休暇の取得促進につながる具体的施策(取得促進に向けた計画などの提出義務の企業への賦課、取得率良好企業の認定制度の創設、ポジティブ・オフ運動の推進など)の展開や、ILO第132号条約を踏まえた長期連続休暇の取得、年間休日確保に向けた施策の整備とその推進をはかる。

    ④年次有給休暇の取得による不利益取扱いの禁止を労働基準法上明確化する。

    ⑤国民のゆとり確保の観点から、国民生活などに欠かせない分野を除き、正月三が日、特に「元日」については、特別な日として休業の制度化をはかる。

    ⑥5月1日を国民の祝日とし、4月29日の「昭和の日」から5月5日の「こどもの日」までを連休とする「太陽と緑の週」を制定する。

  3. (3)雇用型テレワークについて、使用者が労働関係法令を遵守し、制度が適正に導入・運用されるよう、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に示されている労働条件の明示、各種労働時間制度の厳格な適用、労働時間の把握・管理、安全衛生管理の徹底、通信費・情報通信機器等の費用負担、労働災害への対応などに関して、周知・徹底をはかる。また、テレワークにおける作業環境整備のため、助成金の支給対象の拡大など支援の拡充を行う。(「雇用・労働政策」より再掲
  4. (4)「過労死ゼロ」の実現に向け、実効ある長時間労働是正策とともに、過労死等の事案の企業名公表など、労働者が安心して働けるよう、総合的な過労死等防止対策を講ずる。(「雇用・労働政策」より再掲

    ①「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を踏まえ、長時間労働の是正の取り組みやメンタルヘルス対策・ハラスメント対策などを強化し、大綱で設定されている数値目標等の着実な達成をはかる。また、現行の数値目標の達成状況を評価するとともに、「過労死等ゼロ」にむけた取り組みを強力に進めるべく、PDCAサイクルの構築をはかる。

    ②教員など公務職場における過重労働の実態を早急に把握し、抜本的な過重労働対策を講ずる。

  5. (5)国は、男女がともに仕事と生活を調和できる環境を整備するため、育児・介護休業法を以下のように改正し、「両立支援法」とする。

    ①育児・介護休業制度の制度利用による不利益取り扱いの禁止について、周知・徹底をはかる。また、不利益取り扱い禁止の実効性を高めるため、法律に違反した企業について、企業名を公表し、過料などの罰則を課す。

    ②育児休業・介護休業等を理由とする上司・同僚などによるハラスメントの防止措置の対象に、両立支援制度を利用していない場合の育児や介護に関するハラスメントも追加する。

    ③実労働時間の短縮をはかるため、時間外労働の規制強化(年間150時間)と年次有給休暇取得促進のための措置を講ずる。

    ④育児・介護休業法第23条にかかる指針において、労使協定により短時間勤務制度の適用を排除できる例として示されている「流れ作業方式による製造業務等」については削除する。

    ⑤介護休業については、その期間を現行の93日から少なくとも1年に延長し、分割回数は制限を設けず、柔軟に対応できる制度とする。

    ⑥現行の短時間勤務は請求権とする。少なくとも、介護のための所定労働時間の短縮措置等の選択的措置義務のうち、短時間勤務制度は単独措置とし、介護の事由解消まで回数の制限なく利用できる制度とする。育児に関する短時間勤務については、子が中学校就学の始期に達するまで請求できることとし、当面は小学校就学前までとする。

    ⑦所定外労働の免除は、対象となる子の年齢を3歳までから「中学校就学の始期に達するまで」へ引き上げる。なお、当面は小学校就学前までとする。

    ⑧有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件を撤廃する。

    ⑨深夜業が免除される者の子の対象年齢は、小学校就学の始期に達するまでから「中学校就学の始期に達するまで」へ拡大する。

    ⑩育児・介護を行う者が請求したとき、休日労働・変形労働を免除する措置を設ける。

    ⑪介護サービスを利用できない場合や看取り介護を行う場合などは、介護休業期間を延長できる特例を設ける。

    ⑫育児・介護など、多様な労働者のニーズに応じて、フルタイムの正社員と転換可能な短時間正社員制度の導入が進むよう支援を拡充する。

    ⑬男性の育児休業取得促進に向けて、「出生時育児休業(産後パパ育休)」と「パパ・ママ育休プラス」の拡充等の施策を講じる。

    ⑭介護休業中の社会保険料について労働者負担分の掛け金を免除する。

    ⑮子の看護休暇・介護休暇について、現行の2人以上年10日の日数制限をなくし、子1人につき年5日とする。

    ⑯国は、仕事と介護の両立支援を強化する観点から、職場における介護に関する従業員からの相談対応や法定および社内の両立支援制度の周知、介護保険制度に関する情報提供を徹底するため、「職業家庭両立推進者」の活用を促進する。

    ⑰仕事と不妊治療の両立に必要な支援制度を法制化する。

    ⑱差別救済制度を設け、以下のようにする。

    a)政府から独立した雇用平等委員会を設置し、都道府県単位で支部を設置する。

    b)救済の対象は、雇用の全ステージおよび賃金等の労働条件に関する性差別(性的指向・性自認に関する差別を含む)、仕事と育児・介護に関する両立支援、パート・有期労働者等の均等・均衡待遇等、その他の労働条件に関する法違反および差別的取り扱いや不利益取り扱いの他、ハラスメントがあるときとする。

    c)救済申し立てを理由とする不利益取り扱いを禁止する。

    d)格差の合理的根拠を示す証拠およびその裏づけ資料の提出義務は事業主にあるものとする。

    e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。また、委員会は差別の認定に関して調査する権限を持つものとする。

    f)事業主がこの勧告にしたがわない場合は刑罰を科す。

  6. (6)国は、「雇用均等基本調査」で男女別の育児休業取得期間を毎年調査し、公表する。
  7. (7)仕事と子育てが両立できる環境整備を促進する。

    ①次世代育成支援対策推進法について、一般事業主行動計画および特定事業主行動計画の策定を推進するとともに、子育てサポート企業認定(くるみん、プラチナくるみん、ならびに新たな認定制度(トライくるみん))と、不妊治療と仕事との両立に関する認定制度(くるみんプラス認定)の普及・拡大をはかるため、税制優遇の拡充などにより企業に積極的インセンティブを与える。

    ②次世代育成支援対策推進法にもとづく認定に際しては、基準の適合確認の徹底と厳格化をはかり、認定後において基準に適合しなくなった場合は速やかに認定の取消を行う。

  8. (8)妊娠・出産や育児などを経ながら男女がともに就業継続できる環境の整備に向けて、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法等の周知・徹底とともに、企業における両立支援制度等の充実、働き方の見直しを含めたワーク・ライフ・バランスの取り組みの促進・支援など、施策の拡充をはかる。
  9. (9)マザーズハローワークの拡充、求人開拓、能力開発の促進、保育・介護サービスの拡充など、妊娠・出産・育児、介護などにより退職した女性の再就職を支援する施策を行う。
  10. (10)ひとり親家庭の経済的自立を支援するため、「母子家庭等就業・自立支援センター」を「ひとり親家庭等就業・自立支援センター」へと名称変更の上、支援事業の拡充、職業能力開発支援など、福祉行政と労働行政の連携を強化し、個々の世帯態様に応じた総合的な施策を行う。

4.すべての子どもの豊かな育ちと男女が協力しながら仕事と子育てを両立することができる社 会の実現に向け、子ども・子育てを社会全体で支える第一歩としての「子ども・子育て関連 3法」の着実な施行に向けた取り組みを進める。(「子ども・子育て支援政策」より再掲)

  1. (1)子どもの権利条約に則り、子どもの最善の利益を優先しつつ、保護者が安心して生み育てられる条件整備や、子どもが健やかに育つための環境整備をはかる。なお、結婚や出産は当事者の選択であり、国や行政は介入すべきではない。
  2. (2)待機児童を早期に解消し、安心して子どもを生み、仕事と子育ての両立ができることで、誰もが能力を発揮できるよう、「子ども・子育て関連3法」の着実な施行のための支援を強化する。

    ①地方自治体は、潜在的なニーズも含め保護者の意向や状況を把握し、全国の待機児童の実態を明らかにする。また、地方版「子ども・子育て会議」において、各地方自治体事業計画の検証を行い、実効ある子ども・子育て支援がすべての地域で実施されるよう、対策を強化する。

    ②国は、待機児童解消のため、市町村を強力に支援するとともに、子ども・子育て支援新制度に保育サービスの利用者などの意見が確実に反映されるよう、「子ども・子育て会議」の機能を着実に発揮させる。

  3. (3)国および地方自治体は、既存の保育所および幼稚園の幼保連携型認定こども園への移行を促進するとともに、子ども・子育て支援新制度の質的な改善と量的な拡充をはかる。

    ①子どもの安全と育ちの保障を重視し、幼保連携型認定こども園の設置基準・職員配置基準を改善するとともに、基準を満たすための財政支援を行う。同様に、幼稚園・保育所についても改善する。

    ②保護者の様々な就労状況や経済状況にかかわらず、すべての小学校就学前の子どもに対するより良い幼児教育・保育環境を確保するため、インセンティブを設け、さらなる移行を促進する。

    ③市町村の保育に関わる責任を明確にし、あっせん、利用調整、要請の権限について、その実効性を確保する。また、利用者と教育・保育施設等との契約における施設の応諾義務を徹底する。なお、公立の教育・保育施設については、地域のニーズに応じて行政機関としての責務と役割も担うこととする。

    ④教育標準時間認定子ども(1号認定)に対して、定員を上回った場合の入所選考については、他の認定こども園と同様に、市町村のあっせん、利用調整、要請の対象とする。

    ⑤インクルーシブの理念を重視し、障がい児など、特別な支援が必要な子どもについて、市町村によるあっせん、要請などの利用支援を積極的に行う。同時に、受入れ側の人員配置、体制などを十分に確保する。

    ⑥保育所の認可について、「欠格事由に該当する場合や供給過剰による需給調整が必要な場合を除き、認可するものとする」との考え方どおり機動的に実行するとともに、都道府県と市町村との間で十分な連携がはかられるよう周知する。

    ⑦市町村が定める利用者負担額以外の上乗せ徴収・実費徴収については、上限を設定するとともに、低所得者対策として利用者負担の軽減などを実施する。

    ⑧小児医療などの充実をはかる。

    a)地域における小児医療・救急体制を確実なものとするため、財政支援の拡充等の対策を早急に講ずる。

  4. (4)国および地方自治体等は、事業所内保育、家庭的保育や小規模保育のさらなる整備・充実をはかる。

    ①事業所内保育施設について、さらなる整備・充実を進める。また、労使の主体的な判断のもと、積極的に子ども・子育て支援新制度の地域型保育の運営基準を満たし、地域の子どもを受け入れる体制をつくるとともに、適切なワーク・ライフ・バランスが確保できるよう努める。

    ②家庭的保育や小規模保育については、子どもの安全などの質を確保した上で、さらなる整備・充実をすすめる。特に都市部での家庭的保育や小規模保育の推進にあたっては、内部設備等だけでなく、子どもの最善の利益のため、周辺環境も考慮する。整備する際は、保育が適正かつ確実に行われるよう、認可保育施設を連携施設として確保する。

    ③過疎地の幼児教育・保育について、小規模保育の充実や、認可施設への移行に向けた認可外施設の改善を促すなど、安定的にサービス提供できるよう施策を拡充する。

  5. (5)国および都道府県等は、放課後児童クラブなどの地域子ども・子育て支援事業のさらなる充実をはかる。

    ①放課後児童クラブにおける待機児童を解消し、子どもを取り巻く環境を向上させるため、次の措置を講ずる。

    a)市町村の実施責任を明確にし、小学校区内に最低1つ以上の設置をはかるよう早急に整備する。設置にあたっては、児童福祉法において「参酌すべき基準」とされている従事する者の資格、職員数については早急に「従うべき基準」へ改める。また、児童の集団の規模、設備、開所日数、開所時間などについても、その改善をはかるとともに「従うべき基準」へ改める。

    b)放課後児童クラブにおいて、基準を満たすよう、施設の改善や職員の資格取得に向けた支援を行うとともに、適切なワーク・ライフ・バランスが確保できるよう努める。

    c)保育時間の延長や入所要件の弾力化をはかるなど、地域のニーズと実情に応じて多様なサービスの提供を推進する。併せて、障がい児の受入れが可能な体制を整備する。

    d)運営にあたって小学校との連携・協力体制を構築する。

    e)「放課後子ども総合プラン」を推進するにあたっては、放課後児童クラブと放課後子供教室の連携を強化するとともに実施水準を確保する。また、児童館との連携を進める。

  6. (6)国および地方自治体は、子どもの最善の利益を確保する観点から認可外施設への取り組みを強化する。

    ①認可外保育施設について、財政支援を行うことで認可施設への移行をはかり、保育環境を改善・向上させる。

    ②国は、自治体が全ての認可外保育施設への立入調査を実施するよう財政支援を強化する。

    ③企業主導型保育については、子どもの育ちと安全を保障するため、認定・指導・監査などに市町村による関与を行う。認可施設への移行を強力に進め質を確保する。また、企業主導型保育事業における地域貢献の理念を徹底する。

  7. (7)社会全体で子ども・子育てを支えるために、地域資源の活用をはかる。

    ①国および地方自治体は、地域の子育て支援機能回復の観点から、児童館の運営・活動を拡充する。また、開設時間の延長、日曜開設等への支援を強化する。

    ②市町村は、NPOなど地域の様々な資源とともに子育て支援ネットワークを構築するとともに、保育施設などにその中核的な拠点としての役割を担わせる。

    ③国は、ベビーシッターについては、届出の義務付けだけでなく、認可制の導入などにより子どもの安全を確保するとともに、将来的には子ども・子育て支援新制度の枠内での実施によって子どもの最善の利益をはかることを検討する。

    ④国および地方自治体は、「子ども食堂」が子どもや子育ての地域の中での居場所となるよう、地域と連携できるよう支援する。運営にあたっては、地域の誰もが利用できるよう配慮する。

  8. (8)国は、待機児童対策について、実施状況の把握、見直し等に労働者の意見を反映する。また、いわゆる潜在的待機児童を生じさせないよう、待機児童の定義と「新子育て安心プラン」を見直す。
  9. (9)国および地方自治体は、「子ども・若者育成支援推進大綱」に基づき、すべての子ども・若者の健全な育成と社会へのひとり立ちを支援するために社会環境の整備と必要な財政支援を行う。また、困難を有する子ども・若者とその家族の支援にあたっては、福祉と教育の連携などライフサイクルを通した切れ目のない支援を行う。
  10. (10)国および地方自治体は、待機児童の速やかな解消と質の高い保育等のサービスの提供のために、幼稚園教諭・保育士・放課後児童支援員等の人材確保対策を強力に進める。

    ①待機児童の早期解消のため、質の高い保育所等の整備とともに幼稚園教諭・保育士等へ抜本的な処遇改善を行い、幼児教育・保育の質の向上および人材の定着と確保、ディーセントワークを実現する。

    ②幼稚園教諭・保育士等が職場で長く働き続けられるようにするために、研修やキャリアアップ制度を確実に利用できるよう支援する。

    ③潜在保育士が円滑に保育職場に復職できるよう、その支援体制を構築する。

    ④職員の資格について、幼稚園教諭の免許または保育士資格のいずれか一方しか有していない場合は、両資格取得を可能とする人員体制、財政支援を確保する。なお、保育教諭の政治的行為の制限等の処遇について、労働組合や関係機関と十分に協議する。

    ⑤放課後児童クラブの質を確保するため、放課後児童支援員の数は支援の単位ごとに2人以上を堅持する。また、放課後児童支援員の処遇改善と研修体制の強化のため人員体制、財政支援を確保する。併せて、保育時間の延長や職員体制の強化のため、放課後児童支援員の常勤化を進める。

    ⑥保育従事者の負担軽減や防犯、事故の予防など安全性の向上のため、保育サービスにおけるICTの活用に向け、研究開発をすすめる。

  11. (11)国は、子どもの貧困対策への支援を拡充し、子どもの貧困の解消をはかる。

    ①子どもの貧困に関する全国的な実態調査を速やかに実施する。

    ②子どもの貧困対策を充実するために経済的支援、就労支援とともに、食事支援、生活支援、学習支援などを包括的に行う。

    ③ひとり親家庭の課題を把握・整理し、適切な支援メニューにつなげるため、母子・父子自立支援員を中心としたアウトリーチ(訪問支援)型の相談支援体制をより一層整え、相談支援窓口の整備のために必要となるさらなる支援を行う。

    ④地域における、ひとり親家庭への支援メニューや支援施策のさらなる周知、広報対策、利用を促進する。

  12. (12)国は、消費税率の引上げによる財源(0.7兆円)を含めて1兆円超程度の財源を確実に確保する。併せて、地方一般財源も確保し、子ども・子育て支援に関する公的社会支出についてOECD加盟国の平均並みの水準をめざす。
  13. (13)国は、保護者の様々な就労状況や経済状況にかかわらず、子どもがより良い環境で育つことができるよう、無償化の対象施設となった認可外保育施設の質の改善に取り組み、認可化移行計画を進める。また、すべての小学校就学前の子どもの利用料の無償化に向け財源確保に努める。
  14. (14)国は、出産、子育てにかかる経済的負担を軽減するため、次の措置を講ずる。

    ①子育て支援と、安心・安全な出産のため、妊娠・出産にかかる費用については、正常分娩も含めてすべて健康保険の適用(現物給付)とする。また、窓口自己負担が増加することのないよう別途負担軽減措置を講じ、現行の出産育児一時金は廃止する。具体的な診療報酬の設定などに向けて、医療機関から保険者への分娩費用の請求明細の提出を義務づけるなど、正常分娩と異常分娩それぞれの実態把握や費用内訳を把握・検証するとともに、産科医療の標準化と質の向上を進める。(「医療政策」より再掲

    ②特定不妊治療費助成事業の助成額や回数をさらに拡大する。また、特定不妊治療(体外受精および顕微鏡受精)以外の不妊治療に対しても、助成制度を設ける。

    ③不妊治療の公費助成の拡大にあたり、不妊治療実績、費用、専門医の数、年間の治療件数などの情報開示制度を構築する。

    ④不妊治療については、当事者の意思を尊重することを前提に、患者の安全性の確保と医療の標準化を重視し、保険適用による影響の検証調査を踏まえ、可能な限り広く治療法の選択が可能となるよう見直しを行う。また、医療アクセスへの公平性の確保を重視し、保険収載を前提としない「混合診療」の導入につながらない仕組みとする。(「医療政策」より再掲

    ⑤18歳までの子どもがいる世帯に対し、公的賃貸住宅の優先入居を行う。また、子育て世帯など住宅セーフティネット法の住宅確保要配慮者が入居しやすくなるよう、民間の優良賃貸住宅に対する支援を強化する。

    ⑥児童手当について、次の措置を講ずる。

    a)義務教育終了までの子どもを養育する保護者に対し、特例給付も含め所得制限や世帯合算なしで支給する。なお、所得再分配については、税制などにおいて対応する。

    b)年少扶養控除の廃止等により、児童手当受給時に比して実質手取額が減少する世帯が生じない額(3歳未満児1人あたり月額20,000円程度、3歳以上中学修了までの子ども1人あたり月額15,000円程度)を最低限支給する。

  15. (15)国は、児童扶養手当などをはじめとしたひとり親世帯への支援策をさらに拡充し、子育て・生活支援や職業訓練等の自立支援策を個々の世帯の態様を踏まえ、総合的かつ強力に取り組む。また、児童扶養手当制度における一部支給停止(減額)措置は廃止するとともに、安定的な生活設計のため毎月支給とする。
  16. (16)国および地方自治体は、すべての未就学児が必要な医療および健康診査が受けられるよう、低所得者への負担軽減を行う。

5.リプロダクティブヘルス/ライツ(性と生殖の健康・権利)を確立する。

  1. (1)リプロダクティブヘルス/ライツの概念を踏まえ、女性の生涯を通じた性と生殖の健康・権利への支援を行う。

    ①リプロダクティブヘルス/ライツの概念にもとづき、女性の生涯を通じた性と生殖の健康・権利に関する社会環境の整備および実態調査を規定した法制度の確立を求める。

    ②政府の「第5次男女共同参画基本計画」(2020年12月決定)を着実に実行するとともに、特にリプロダクティブライツの視点を含めた政策展開を推進する。

    ③各市町村や学校、職場で行う健康教育では、男女にリプロダクティブヘルス/ライツの知識の普及をはかる。(「医療政策」より再掲

    ④学校教育において、すべての児童生徒の発達段階に応じた性教育、特に性的自己決定権に関する教育の充実をはかる。

    ⑤HIV/エイズについて、児童生徒の発達段階に応じた性感染症予防、薬物乱用防止教育を推進する。

    ⑥女性の月経困難症、妊娠・出産、および女性特有の疾病などについて周知するとともに、すべての都道府県に女性健康支援センターを設置し、保健所・女性センターなどにおいても性差を考慮した健康相談が受けられるよう環境を整備する。(「医療政策」より再掲

    ⑦男女の思春期、更年期などに対して適切な健康相談が受けられるよう環境を整備する。

    ⑧医療機関の機能分担と連携強化、救急医療や産科・小児医療体制の確立により、地域の医療格差、医師・看護師などの不足を解消し、良質で安心の医療サービスを提供できる体制を確立する。

    ⑨長時間労働や、深夜労働が妊娠・出産に与える影響についての調査・研究を行い、改善措置を講じる。

    ⑩リプロダクティブヘルス/ライツの理念から、不妊治療時の仕事と治療の両立ができる環境の整備を行う。

    ⑪母体保護法をリプロダクティブヘルス/ライツにもとづいた内容に改正する。刑法第29章「堕胎の罪」は廃止する。(「医療政策」より再掲

    ⑫女性の生涯を通じた健康支援のニーズに対応するため、21.1%(2016年)の女性医師割合を30%に増やすことをめざし、女性医師の就労環境の改善、仕事と生活の両立支援策の充実など女性医師のM字カーブを解消する。また、女子学生の医学部への進学、医療機関でのキャリアアップを支援する。

6.人権を冒とくする性の商品化や暴力を許さない社会づくりを推進する。

  1. (1)政府は「第5次男女共同参画基本計画」(2020年12月決定)の「第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶」に記載されている施策について迅速かつ着実に実行する。
  2. (2)女性に対するあらゆる暴力(パートナーからの暴力(DV))、性犯罪、売買春、ストーカー行為、セクシュアル・ハラスメントなどを根絶するため、「女性に対する暴力をなくす運動」(毎年11月12日から女性に対する暴力撤廃国際デーである11月25日までの期間、内閣府男女共同参画推進本部)を中心に、社会認識の徹底、意識啓発や情報周知などの充実をはかる。また、商業的な目的で行われる未成年の性的搾取に対する規制を強化するとともに、偽装請負に対する取り締まりなど性的搾取を防ぐための監視と査察のプログラムを強化する、「親子断絶防止法」の制定や離婚別居後の子の居所指定に関連する法改正については、配偶者からの精神的・身体的暴力が深刻なケースにおいて、被害者や子どもの安心・安全が脅かされる恐れがあるために慎重に検討する、ストーカー対策においては、加害者への説得を行える体制を地域ごとに整備するなど、性の商品化や暴力への対策を講じる。
  3. (3)性の商品化や暴力を許さない社会づくりに向け、包括的な「性暴力等被害者支援法」を制定する。

    ①法の目的を性暴力、売春、虐待等様々な困難を抱える女性等や同伴する子どもをはじめとする被害者が、尊厳を回復し、基本的人権が尊重される旨を記載する。

    ②基本理念に、女性等や同伴する子どもをはじめとする被害者の人権と自己決定を尊重し、困難からの自立に向けた切れ目のない支援を明記する。

    ③法は困難からの自立に向け支援を必要とするすべての女性等や同伴する子どもをはじめとする被害者を対象とし、従来の相談、一時保護、施設利用に加えて就労支援など地域生活における中長期支援を含む。

    ④関係機関の連携により、個々の事情に応じた支援を行う。

    ⑤医療費・検査費用等は公費負担とする。

    ⑥専門性の確保や人権への配慮、プライバシー保護の担保のため、関係機関等は研修等を実施する。

    ⑦広く暴力被害等に関する教育・啓発を実施する。

  4. (4)「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」について、緊急保護命令違反に対する罰則強化、デートDV(恋愛カップル間暴力)被害者保護、対象に同性カップルなどあらゆる形態の家族を含めることや、加害者を自宅から出て行かせる別居命令、暴力を受ける子どもへの単独の保護命令を可能とすることなどの見直しを行う。
  5. (5)国および地方自治体は、性別にかかわらずすべての暴力(性犯罪、性暴力、DVなど)の被害者の支援体制の充実をはかる。

    ①配偶者などからの暴力相談支援センター機能を充実し、全市区町村での設置を促進する。

    a)相談、緊急時の一時保護、居住施設の確保、保護命令制度の周知徹底など、婦人相談所の相談保護体制の強化と全政令指定都市への設置など、施設整備の充実をはかるとともに、全市区町村に婦人相談員等の相談窓口の設置を進める。

    b)婦人相談員の専門性の向上と雇用の安定をはかり、心理療法担当職員の増員、医療機関との連携など緊急一時保護体制を強化する。

    c)官民の資源を活用した被害者保護の受け皿づくりを進め、母子生活支援施設や民間シェルターなどがDV被害者への安定した支援を行うよう連携強化する。

    d)保護された母子への心理的ケアの充実をはかるため、児童家庭支援センターや児童相談所との連携をはかる。保護期間中は通学できない同伴児童のために学習指導員の配置を行う。

    ②性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを全国に設置し、性犯罪・性暴力被害者の保護と支援の受け皿づくりを促進する。

    a)性犯罪被害者のニーズに寄り添った支援を実施するため、二次被害を受けることなく1カ所で法的・医学的(心身両面)・心理的・社会的支援を受けることができるワンストップ機能を確立する。

    b)医療関係者、弁護士、臨床心理士、ソーシャルワーカー、支援者、NPOなど、地域で活用できる資源を結集し、24 時間対応可能な緊急保護体制を整備する。

    ③外国人に対する通訳や在留資格手続きなどの支援を進める。

    ④女性警察官の増員など、関係各機関における女性担当者の増員や、相談担当者に対する研修の実施など、二次的被害の防止をはかる。

    ⑤性犯罪・性暴力の専門的知識を有する司法へのアクセスを確立する。

  6. (6)加害者には、適切な更正プログラムを受講させるなど、再発防止の体制を確立する。
     
  7. (7)国は、人権擁護の観点から、人身売買(トラフィッキング)について、以下の取り組みを実施する。

    ①「人身取引対策行動計画2014」にもとづき、未然防止策を強化する。

    ②2014年7月に出された「国連自由権規約委員会」勧告を踏まえ、人権に配慮した被害者の保護と帰国、再定住までのきめこまかなフォロー体制を構築する。

    ③被害者支援の強化に向け、民間シェルターなどへの積極的な支援を行う。

  8. (8)国は、性犯罪、性暴力被害者の人権擁護を強化する。

    ①性暴力被害者の人権擁護の強化、二次的被害を受けないよう事件の立証のあり方について改善するため、いわゆる「レイプシールド」(注5)を被害者の権利として法制化する。

    ②教職員、警察官、婦人相談員、人権擁護委員、民生委員、児童委員、 家庭裁判所調停員、裁判官などの対応者側に、セクシュアル・ハラスメント、配偶者からの暴力、つきまとい行為(ストーカー行為)、児童虐待などについての理解を深める研修と最新の情報提供を行う。

    ③被害者の人権擁護の強化をはかるために、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ法)」の法改正を早期に実現する。

    ④性犯罪の事実認定における暴行・脅迫要件を削除し、国連女性差別撤廃委員会の勧告にもとづき、対象に配偶者の強姦も含めるものとする。

    ⑤性犯罪・性暴力被害に対する予防教育を関係機関が連携して取り組むよう改善する。

  9. (9)「児童買春、児童ポルノ禁止法」の確実な履行と施設の充実をはかるため、中央・地方行政は、子どもの人権に関する相談・一時保護・広報などを行う窓口または支援センターなどを設置する。
  10. (10)子どもを有害情報(性の商品化、暴力表現など)から保護するために、報道・表現の自由に留意しつつ、放送・新聞・出版などマスメディアに対して、自主的な規制機関の設置や機能の充実を強く求め、受け手側から苦情や意見の申し立てが簡便にできる仕組みを提供させる。 インターネット上の「子どもポルノ」など有害情報を排除する対策を講じ、子どもの商業的性的搾取に関する取り組みを強化する。「ネット上のいじめ問題」への対策を強化する。 また、子ども自身のメディア・リテラシー(注6)向上のための支援を積極的に行う。
  1. (注5)レイプシールド ~犯罪事実とは無関係の被害者の過去の性遍歴等を暴いたり、証拠として提示することを禁止することについて、アメリカをはじめ欧米各国で法整備されているが、日本では未整備。
  2. (注6)メディア・リテラシー ~メディアからもたらされる膨大な情報を、各人が無批判に受け入れるのではなく、批判的に読み解く力をつけること。

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