6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障(行政・司法制度改革)

行政・司法制度改革<背景と考え方>

  1. (1)わが国では、超少子高齢化や人口減少が進行するとともに、都市部と山間部、内陸部と沿岸部など、地域間だけでなく、地域内での二極化が進む一方で、地域で求められる公共サービスも多様化している。また、リーマンショックを契機とする経済危機からの回復過程や東日本大震災からの復興過程の中では、それまでの行き過ぎた経済効率の追求が、ソーシャル・キャピタル(注1)の減少をもたらし、そのことが地域経済、地域社会に様々な負の影響を与えたことが明らかになっている。
  2. (2)社会経済が成熟し、大きく右肩上がりの成長が期待できない中で、上記のような本質的課題を克服するためには、政府・地方自治体だけでなく、地域の民間事業者、NPOなどが持つ知的・人的資源を有効に活用することが重要である。そのためにも、地域住民の参加のもと、NPOや企業等の多様な主体が当事者としての自覚と責任を持ち、協働・共助に取り組むことで、支え合いと活気ある社会をつくる「新しい公共」を推進する必要がある。
  3. (3)また、限られた財源の中で、住民のための公共サービスを維持・向上させるためには、行政改革を積極的に推進する必要があるが、その一方で、行政の透明性の確保、安心・安全のためのセーフティネットの確保を前提としながら、効率的で質の高い公共サービスを実現することが求められる。そのためには、それを担う「人と組織の改革」を行わなければならないが、まずもって、国際基準から大きく逸脱している公務員の労働基本権を取り戻すことが必要である。わが国の公務員の労働基本権については、これまでILOから11度もの勧告を受けていることを踏まえ、自律的労使関係が確立されるまでの間、国、地方自治体は労働基本権制約の代償措置たる人事院・人事委員会勧告制度を尊重することが必要である。国民本位の行政を行うためには、引き続き政府に対し、透明で公正な公務員制度改革を求めていかなければならない。
  4. (4)規制改革にあたっては、「雇用の安定」「消費者保護」「公平・公正な競争条件の確保」を前提とし、そのメリット・デメリットを慎重に見極め、行き過ぎた規制緩和にならないよう、雇用のセーフティネット、国民への安心・安全を保障する必要がある。
  5. (5)司法制度についてはこれまで「労働審判制度」や「裁判員制度」が実施されるなど、国民が参加することでより良い制度となるよう改革が進んできた。また、2016年5月には刑事訴訟法が改正され、冤罪を防止する観点から一部事件に限って被疑者取り調べの過程の録画が義務づけられた。今後、わが国の司法制度が国民の信頼を得つつ、増加するニーズに応えるためには、引き続き制度を充実させることが求められている。
  1. (注1)ソーシャル・キャピタル(Social capital)~社会関係資本と訳される事が多い。OECDでは、「グループ内部またはグループ間での協力を容易にする共通の規範や価値観、理解をもったネットワーク」と定義される。地域社会においては、住民同士の信頼関係や良好な人間関係のもとで、相互の協調行動や行政とのパートナーシップが活発になるほど、豊かな社会を形成できるとされる。日本では、東日本大震災の復興過程において、地域のつながりや絆の重要性が指摘され、注目が高まった。

1.政府は、生活と雇用の安定・向上に責任を持ち、労働組合も参加した平等で公正・透明かつ効率的な国民生活の維持・向上につながる行政改革、関係法人改革を推進する。

  1. (1)国の重要施策の策定に労働組合代表を含む民間有識者の意見を反映させるとともに、審議会などにおけるジェンダーバランス(男女比率)に配慮する。

    ①行政における政策の企画立案に国民や働く者の意見を反映させるため、政府の諮問会議や審議会などに産業界、専門家、学識経験者などに加え、消費者や労働組合代表を必ず参加させる。特に、国民生活や雇用労働に重要な影響を及ぼす政策分野の審議会については、労働者、生活者の意見を重視し、労働組合代表を含める。

    ②「政策評価・独立行政法人評価委員会」に、学識経験者だけでなく消費者、労働組合代表などを審議に参加させるとともに、評価結果を行政運営に的確に反映させる。また、各法人運営において、地域で運営協議会を有するところは、当該地区における消費者、労働組合代表の参加により、評価機能を強化させるとともに、中央の評価委員会と連携させる。

    ③政府は、歳入・歳出を含む行政監視機能の充実をはかるため、立法府への「日本版GAO(注2)」(行財政監視評価委員会(仮称))の設置を展望しつつ、非議員の積極的な招致を含め決算行政監視委員会の機能・組織を大幅に拡充し、より効率的な政策実現をめざす。(「経済政策」参照

  2. (2)効率的かつ公正、透明な中央省庁体制を確立する。

    ①不明確な許認可基準や事前規制などの不透明な裁量型行政を抜本的に見直し、明確で公正・公平なルールによる事後チェック型行政への転換を進める。

    ②各府省における縦割り行政を是正するため、省庁間における情報の共有化、中央省庁と地方自治体間の情報システムの単一化を推進する。また、地方自治体への権限委譲と地方支分部局への権限委任を一層進める。

    ③法令適用事前確認手続については、制度の周知広報を行うとともに、制度趣旨に沿い、民間企業の事業活動が迅速かつ公平に行われるよう、利便性の向上をはかる。

    ④公文書管理法を改正し、公文書の保存義務範囲の拡大、電子決裁の義務化、公文書管理委員会による監督機能の強化などをはかる。
    また、地方自治体においても、公文書管理に関する条例の制定などを進める。

  3. (3)マイナンバー制度を活用することで、国民生活を守るセーフティネットの仕組みづくりと公正・公平な社会基盤の構築を行う。

    ①マイナンバー制度が確実に運用され定着するよう、公正・公平な社会基盤として必須であることを引き続き訴え、国民全体への周知を進めると共に、個人情報や資産が国に把握されることの不信に対し明瞭で正確な説明を行っていく。

    ②感染症を含む緊急事態において、予算措置のみで行う給付にもマイナンバーを使用できるよう、社会保障・税・災害対策の三分野に限定された現行制度を見直し、利用範囲の拡大を法定化する。

    ③その他の分野での利用については、個人情報の保護を前提に、安全性の確保、行政の効率性の向上および国民生活の利便性の向上が認められる項目を対象とし、国民への丁寧な説明と合意形成をはかる。

    ④マイナンバー制度を活用し税情報(課税所得)と社会保障給付を連携させ一体的に運営する「給付付き税額控除」を導入し、有事の迅速かつ適切な給付インフラを構築する。

    ⑤緊急時のセーフティネットとして機能させるため、マイナンバーと口座情報の紐付けを行う。さらに、真に必要な層への的を絞った支援の基盤整備、「給付付き税額控除」の導入、及び金融所得課税を含めた所得税の総合課税化に向けて、国民が開設する全ての口座情報とのひも付けを行う。

  4. (4)すべての国民が安心して行政情報に容易にアクセスできる「電子政府」を構築し、国民生活の利便性向上につなげる。

    ①住民基本台帳ネットワークは、行政機関個人情報保護法の下、情報セキュリティ対策を強化し、安心してオンラインによる行政手続ができる体制を整える。

    ②オンライン申請と住民基本台帳をシステム的に連携させ、申請手続きをデジタルで完結させるなど、真の意味での行政のデジタル化を図る。

    ③そのために、国は申請データ項目や処理フロー等の統一基準を策定した上で、システム仕様について国が決定し、各地方自治体に対しシステム構築に向けた財政支援を行う。

    ④デジタル行政推進にあたっては、災害時に備えた非常用電源の確保、データのバックアップやバックアップセンターの整備など、非常時においても業務を継続するために必要な方策を適切に講ずる。

    ⑤マイナンバーカードを活用した納税手続きの簡素化や、身分証明書として使用できるよう関係諸団体への通知を徹底するとともに、自治体に災害時の避難所の入退所管理での利用を促すなど、普及促進を図る。

    ⑥マイナポータルは、マイナンバーカードと共にデジタル・ガバメントの基盤であり、マイナポータルがハブとなり、国・地方・民間(保険会社、金融機関など)からの様々な情報を税申告(記入済み申告制度)と給付申請にもつなげ、行政手続きのデジタル化と税・社会保障の連携を図る。

    ⑦フリーランス等への社会保険適用が求められる中、プラットフォーマ―からの情報を取り込むなどによるマイナポータルの活用により、所得など労働者の実態を正確に把握し、フリーランス等への各種セーフティネットにつなげる。

    ⑧マイナンバーカードの利用で可能となる対象手続数が更に増加し、制度の利用範囲も拡大していくことが見込まれる中、国民の安心・安全のため、個人情報の厳格な保護、なりすまし防止、また個人情報保護委員会の機能強化など、国民の不安を払拭するための個人情報保護策を引き続き講じる。

    ⑨行政機関における個人情報保護措置の強化を前提として、国と地方自治体の権限を明確にしつつ、国と地方の垣根を越えた行政のワンストップサービスを一層進める。

    ⑩地方支分部局など、行政機関を統廃合する場合には、交通アクセスに不利な地域の住民への配慮など、地域事情や「電子政府」構築の進展状況を十分踏まえ、慎重に検討する。

  5. (4)財政構造改革にあたっては、安全・安心といった国民生活の質に直結する社会保障、公共サービスの充実・強化のために、税制改革による歳入の見直し、公共事業の抜本的な見直しによる歳出の効率化を同時に推し進め、健全な財政をめざす。
  6. (5)政策の質や行政サービスの向上をはかり、活力ある持続可能な社会を実現するため、第5次男女共同参画基本計画の行政分野で掲げる「国・地方公共団体の政策・方針決定過程への女性の参画拡大」を加速させる。
  7. (6)公益通報者保護制度における内部職員などからの通報・相談窓口の設置が遅れている市区町村への窓口設置を推進、拡充する。
  8. (7)独立法人などの改革については、国民へのサービスの水準の低下を招かず、当該職員の雇用の場を確保しつつ、国民生活の維持・向上につながる改革を行う。

    ①独立行政法人の整理・見直しにあたっては、労働組合との協議を尽くし、職員の雇用不安を引き起こさないよう、個別具体化法案に職員の雇用確保の対策について明示する。

    ②独立行政法人や特殊法人、認可法人の情報公開を徹底し、公正取引や労働法制の遵守と経費の透明化、事務の効率化を進めるとともに、経営責任の明確化を徹底する。

    ③独立行政法人については、公益性を堅持しつつ、事業運営における責任体制を明確化して過度な行政の介入を排除する。また、事業運営などについて幅広い国民の声を反映する。

  9. (8)情報公開法に基づき、行政および独立行政法人などの情報公開を積極的かつ迅速に行い、行政の透明化を進めるとともに、行政における個人情報の保護の徹底をはかる。

    ①国民からの情報公開請求に対し、不開示の決定をする際には、不開示理由を提示する。事案を請求先以外に移送する際には、理由を提示し責任の所在を明確にする。

    ②開示請求者、行政機関、独立行政法人などの所在地以外への請求窓口の設置を促進するとともに、電子情報化の推進によりインターネットによる請求手続きを可能とする。

    ③情報公開・個人情報保護審査会は、民間事業者に対する勧告・命令機能の付加や、専門性が求められる審査にも効率的かつ適正な対応ができるようにする。

    ④個人情報保護関連法を改正し、法令などに基づく場合を除き社会的差別を助長する情報の収集を禁止する。また、保護法を盾にした不祥事隠しを防止するための対策を講じる。

    ⑤行政機関・独立行政法人などの個人情報保護法については、職員もしくは職員であった者などの対象に加え、組織的行為も対象とし罰則を規定する。

    ⑥国、地方自治体は、個人情報取扱事業者などにおける実効ある個人情報保護を支援する。また、個人情報保護状況の把握に努めるなど、監督、指導を適切に行う。なお、就業規則などの改定を求める場合は、労使の十分な協議が前提であることに留意する。また、消費者の利便性を損なわないよう基準を明確化する。

  10. (9)住民基本台帳の閲覧制度については、個人情報保護の観点から、行政機関が利用する場合など公共性が認められる場合を除き、原則非公開とする。
  11. (10)すべての地方自治体において貸借対照表を作成するなど、会計制度の透明化を進め、財政状況について情報公開を徹底する。
  12. (11)政府の広報機能の強化については、政策や法制化の考え方、進捗状況を国民に伝える機能を強化するとともに、この役割を支える言論の自由や市民の知る権利を担保する。
  13. (12)東日本大震災の経験を踏まえ、非常時に自治体に求められる職種の専門性維持やノウハウの蓄積、それらを担う人材(職員)の確保・育成を行うなどの、公共サービスのリスク管理体制を確立する。
  14. (13)公正取引委員会の法執行機能を強化・充実する。労働基準監督官を増員し、公正労働基準の監督機能を強化する。また金融機関などに対する市場監視機能を抜本強化するため、証券取引等監視委員会(SESC)に対し、金融庁が同委員会に委任している権限を直接付与し、会計・監査・開示に関する権限を与える(日本版SEC(注3))。
  1. (注2)GAO ~General Accounting Office の略。米国では、立法府内に設置され、議会の指示を受けて、行政に対する調査・提言を行っている。立法府が行政府の行った評価をチェックするとともに、行政府が評価し難い分野について評価を行う。分析・評価に関する専門的知識を活用するため、民間のシンクタンク、コンサルタントなどの活用が求められている。
  2. (注3)SEC ~Securities and Exchange Commissionの略。米国の証券取引委員会。大統領や連邦議会から相対的に独立した独立規制機関であり、2,000人体制という巨大な組織で、インサイダー取引、株価操作、情報開示違反等証券関連法規違反事件を捜査し告発する権能をもつ。

 

2.政府は、新しい公共と民主的で透明な公務員制度改革を進める。

  1. (1)政府は、地方自治体、民間事業者、NPO、協同組合など多様な担い手が地域課題を共有し対話できる場を各都道府県に設置するとともに、提案型モデル事業を展開するための交付金を復活するなど、「新しい公共」の推進をはかる。
  2. (2)国民本位の行政を行うため、ILO勧告(注4)に従って、公務員の労働基本権を保障し、公正で能率的に職務を遂行でき、職務能力を高められる公務員制度を構築する。

    ①一般職の公務員には、原則として労働三権を回復し、団体交渉を基本とした給与・勤務条件決定の仕組みを導入する。また、非現業職員にも不当労働行為救済制度を適用する。

    ②刑事施設に勤務する職員、消防職員に団結権を認め、労働組合を結成する権利を回復する。

    ③一般職の公務員に対し、労働組合法、労働基準法、労働関係調整法を適用する。また、雇用保険の適用について検討を行う。

    ④行政組織方針や国民のニーズに応える行政のあり方など、団体交渉になじまない課題について、労使が意思疎通を深めるための労使協議制度を設ける。

    ⑤労働委員会に公務部門を担当する委員を配置し、賃金などの団体交渉が不調に終わった場合、労働委員会が斡旋、調停、仲裁を行う制度とする。

  3. (3)労働組合参加により人事処遇制度を構築し、公平、公正な人事処遇、人事評価とする。

    ①一般の公務員(含む管理職)の人事処遇は、職務・職責に応じて行うものとし、その職務・職責に対応する処遇内容を労働組合との交渉・協議を通じて定め、適用する。

    ②人事評価に関する制度や、その運用のあり方などは、勤務条件事項またはそれに密接に関わる事項であることから、労使間で交渉・協議する。

    ③縦割り行政を廃し、職務・職責を適切に遂行できる人材を配置・育成するため、各府省間の人事交流、配置転換、関係団体などへの出向・派遣に関わるルールを定める。

    ④公務員の賃金体系については、自律的な労使関係を構築する中で、労使での十分な協議、検討のうえで決定していく。

  4. (4)採用区分にとらわれない登用や民間などの有為・有能な人材の活用などにより、公務能率向上をはかるとともに、ワークライフバランスの実現に対応するため、中途採用、任期付採用の拡大や、短時間勤務制度など、多様な勤務形態の導入・活用を行う。公務員の民間企業派遣については、労働組合との交渉・協議に基づき派遣基準を定める。
  5. (5)国の非常勤職員制度の抜本改革のため、労働組合が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取り組みを推進する。当面、国の非常勤職員の任用は、同一労働・同一賃金を基本とした明確な法規定を設け、勤務条件などについて、常勤職員に適用している法令、規則を適用する。
  6. (6)採用試験制度の再編や幹部候補育成課程などの整備を踏まえ、採用試験の別によらない、能力・実績に基づく人事管理を徹底するとともに、再就職規制などの透明で厳格な運用を進める。
  7. (7)公務員に対する基本的人権の制限は、公務員としての職責を果たすために必要最小限の範囲にとどめる。

    ①不法、不当な職務命令を排除する不利益取り扱いの禁止を法定する。

    ②政治的行為の制限規定について、一般の公務員(除く管理職)は一定条件の政治活動を行いうるものに改める。

    ③信用失墜行為に関する服務規定について、公正・公平な基準を示す。

  8. (8)総人件費の抑制や行政改革の実施により、行政機関・独立行政法人などに働く者の労働条件、雇用に影響が予想される場合には、必ず事前に関係労働組合との交渉・協議を行い、労働条件の維持、雇用の確保に万全の対策を講ずる。
  9. (9)国家公務員制度改革にあわせ、地方自治を支える基盤として地方公務員制度改革を行う。

    ①ILOにおける国際労働基準に沿い、地方公務員の労働基本権を確立する。

    ②地方公務員制度は、地方自治体および労使間の自主性・自律性を尊重するものとする。

    ③臨時・非常勤職員の処遇改善に向けて、地方公務員法、地方自治法などについてパートタイム・有期雇用労働法の趣旨を踏まえた更なる改正を行う。加えて、これら処遇改善に向けて適宜必要な予算措置を行う。

  1. (注4)ILO勧告 ~2002年2月に連合がILO結社の自由委員会に提訴した日本の公務員制度改革案件(第2177号案件)に対する同委員会の審査報告書が同年11月にILO理事会において採択され、報告書の中で日本政府に対して、労働側の主張を受け容れ、日本の現行公務員制度はILO条約(結社の自由・団結権保護、団結権・団体交渉権)に違反しており、すべての関係者と全面的で率直な協議が直ちに実施されるよう勧告したもの。これまで11回の同案件に関する勧告が出されている。

3.政府は、雇用創出、地域活性化につながる規制改革進めるとともに談合を排除し、公正労働と質の高いサービスを確保できる入札改革を行う。その際、雇用安定のセーフティネットに配慮し、公正ルールを確立する。

  1. (1)規制改革については、 先端技術等競争力や新たな雇用・産業の機会創出につながる分野の規制を優先して見直すとともに、国民の安全や健康の確保、環境保全、公正労働基準の維持など「社会の質」に関わる規制は強化する。規制改革の推進にあたっては、不公正取引の排除、反競争的行為による独占の禁止、雇用の安定など、公正な競争ルールの確立をはかる。また、行き過ぎた規制改革が起きないよう、規制改革された結果に関する検証システムを構築する。
  2. (2)官民競争入札の事業選定にあたっては、国民に保障されるべき公共サービスの質・水準を明示した上で、「官民競争入札等監理委員会」において慎重に検討する。
  3. (3)構造改革特区や総合特区は、地方自治体が住民や労働組合などの幅広い意見を必ず聞き入れた上で構築し、真に雇用創出や地域活性化に資するよう進める。特区の特例措置が、労働条件の悪化、企業倒産・失業増などの弊害をもたらす場合は、国・地方自治体が責任をもってこれを廃止し、復旧させる。
  4. (4)公契約において、公正労働基準の確保、環境や福祉、男女平等参画、安全衛生など社会的価値も評価する総合評価方式の導入を促進する。その際は明確な評価基準を設定する。
  5. (5)公契約に関する基本法を制定し、その中で公正労働基準と労働関係法の遵守、社会保険の全面適用などを公契約の基準とする。法整備をはかることにより、ILO第94号条約の批准をはかる。また、違反企業に対する発注の取り消しや違約金の納付制度などのシステムづくりを進める。あわせて、発注側(国や地方自治体など)についても、改正官製談合防止法の適切な運用や公務員の天下り規制強化などによって、談合などを生み出さないしくみを強化する。

4.司法制度改革を着実に推進する。

  1. (1)司法制度改革審議会意見書の理念を実現する司法制度改革が今後も推進されるよう、労働組合代表を含む民間有識者による会議を実施する。
  2. (2)裁判員制度の国民への定着を促進する

    ①裁判員制度への国民の理解を促進するための取り組みを推進する。

    ②裁判員に選ばれた国民が裁判に参加しやすい環境を整備する。特に、各企業が「裁判員休暇」を有給で創設するよう啓発活動を推進する。

    ③裁判員とその家族などに対するインターネット上の誹謗中傷も含めた安全が担保できるよう必要な制度の見直しを行うとともに、裁判員の精神的負担に対するフォローが出来る体制を整える。

    ④裁判員候補者の辞退率の上昇に拍車がかかることがないよう、辞退事由についてのチェック機能を強化する。また、裁判員経験を社会で適切に共有できるよう、守秘義務の明確な運用に向けたガイドラインを策定する。

  3. (3)手続きの透明性や国民への説明責任が担保された、国民にもわかりやすい刑事司法制度の実現に向けて更なる改革を推し進めるとともに、現行制度の運用の適正化をはかる。

    ①裁判員裁判対象事件・検察独自捜査事件に限らず、全事件の取調べの全過程を録音・録画することを制度化する。

    ②通信傍受の対象拡大に際しては、通信事業者の負担や対応者の安全確保に配慮した制度設計を行うとともに、通信の秘密が守られるよう適正な運用を行う。

    ③被疑者・被告人の身柄拘束の判断が適正に行われるよう、防御権とともに刑事訴訟法に考慮事情を明記する。

    ④被疑者取調べへの弁護人の立会いを制度化する。

    ⑤証拠の全面的な開示を進めるとともに、再審請求事件においても証拠開示を制度化する。

  4. (4)「法テラス」(注5)が利用者本位の運営となるよう、業務状況のフォローアップと適宜見直しを行う。
  5. (5)裁判官、検察官、弁護士の法曹人材の質・量(数)を十分に確保する。多様な法曹人材を養成するため、法科大学院における教育や司法試験の在り方、司法修習の在り方、就職支援のための制度整備などが一体的な制度となるよう必要な見直しを行う。
  6. (6)法律文言の見直しや訴訟手続きを簡易なものに改善する。また、司法のしくみや働き全般に関する司法教育を学校教育や社会人教育においても充実させる。
  7. (7)労働事件を扱う司法制度を充実させる。(「雇用・労働政策」参照

    ①労働事件に、労使の専門家が参加する「労働参審制」を全地方裁判所に導入する。なお、参審員は労使団体から選出された者を裁判所が任命し、裁判官と同じ評決権を持たせる。

    ②労働関係訴訟の専門性確保の観点から、主要な高等裁判所に、職業裁判官1名と労使団体の推薦による「労働裁判官」(仮称)2名の計3名により事件処理にあたる「労働高裁」(仮称)を創設する。

  8. (8)改正民法(債権法)の施行にあたっては、労使双方に広く周知するとともに、当事者の予見可能性を害することのないよう、十分な経過措置を講じる。
  9. (9)商法(運送・海商関係)改正にあたっては、船員の労働債権の範囲を狭めることがないよう、現行法を尊重したうえで、より労働者の保護に資する改正を行う。
  1. (注5)法テラス ~独立行政法人。地方裁判所本庁所在地(全国50カ所)に地方事務所を持ち、紛争解決に役立つ法律情報や紛争解決機関の情報の無料紹介、民事法律扶助、犯罪被害者支援など、国民に対して法律に関連するサービスの提供を行う。

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