- (1)人口減少・超少子高齢化が、地域ごとに異なった態様で進行しつつ、日本全体として急速に進行していく中、地域の実情を踏まえた良質で効率的な医療提供体制および医療保険制度の再構築が課題となっている。誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう、患者本位で質の高い医療を切れ目なく受けられる地域包括ケアの推進と、持続可能な医療保険制度の確立が不可欠である。
- (2)各地域に必要な医療機能の需要推計を勘案した「地域医療構想」に沿った提供体制の構築が遅れている。医療機関の機能分化の推進においては、感染症拡大を考慮しつつ、外来を含めあらゆる設置主体の医療機関の参画により「地域医療構想」を再検討し、実現に向けた取り組みを強化するとともに、医療機関の雇用問題が生じないよう配慮する必要がある。また、医療現場で働く者全体の労働時間短縮の取り組みを前進させ、離職防止や復職促進につなげていくことが重要である。
- (3)国民医療費は40兆円を超え、高齢化や医療の高度化などによって今後も医療費の増加が見込まれる中、効率的な医療提供体制の構築により医療費の増加を抑制していくことが重要である。経済力によって医療アクセスに差が生じないよう配慮しつつ、皆保険の下、被保険者の納得性確保と、保険者機能を積極的に発揮できる医療保険制度の抜本改革を進めていく必要がある。
- (4)超長寿社会を迎えるわが国において、国民の健康寿命の延伸に向けた取り組みの重要性が高まっている。一人ひとりが健康で生き生きと暮らしていく上で、保険者や企業、個人が積極的に予防・健康づくりに取り組むための基盤整備や健康への意識啓発が必要である。
- (5)診療明細書の無料発行義務の対象拡大や、医療広告の規制強化など、患者に対する情報の確保については一定の進展がみられる。しかし一方、2015年10月に開始した医療事故調査制度は事故の対象が限定的なために、実際に再発防止に結びつける取り組みには課題が残されている。安心・信頼で患者本位の医療の確立に向け、さらなる施策の強化が必要である。