4.社会インフラの整備・促進(ICT(情報通信)政策)

ICT(情報通信)政策<背景と考え方>

  1. (1)ICT(情報通信)分野においては、新たな技術やイノベーションが次々に生み出され、とりわけIoTやAIをはじめとした第4次産業革命の進展の中では、ICTを取り巻く環境は日々変化し、その重要性は増している。また、多様な情報通信機器の普及などを背景にくらしや産業の中でICTの領域は拡大しており、ICTはグローバル化した社会における社会・経済活動に不可欠な社会基盤となっている。
  2. (2)日本においては、既に世界的にみても高い水準の情報通信技術やインフラ整備が実現され、今後も、総務省が公表した「2020年代に向けた情報通信政策の在り方-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて-」にもとづいた、さらなる情報通信基盤の整備や通信と放送の融合が進められることになる。また、このような情報通信基盤の整備を背景に、あらゆるレベルで、国民生活の利便性向上や社会的課題の解決に向けて、ICT政策の積極的な利活用が検討されている。
  3. (3)ICTの利活用が進む一方で、サイバー攻撃やICTを利用した犯罪が深刻化している。こうした状況に鑑み、サイバーセキュリティ基本法が制定され、2015年9月、政府は「サイバーセキュリティ戦略」を閣議決定した。この中には、ICT利活用のさらなる促進に向け、国民が安全に利用するための環境整備をはじめ、セキュリティ技術の開発、ICT人材の育成といった重要な施策が盛り込まれている。サイバーセキュリティは国民の安全なくらし、また企業の経済活動を守る重要な観点である。政府が主体となり、セキュリティ体系の構築を早急に進める必要がある。
  4. (4)また、近年多発する自然災害の経験から、迅速かつ確実に住民に警報等の情報を伝達できる強い情報通信体制を確立することの重要性は高まっている。
  5. (5)政府は、2018年6月に「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定した。わが国は「Society 5.0」を目指すこととしており、基本計画にも、防災・減災、雇用の創出や健康の増進、公共サービスのワンストップ化など、ICTによって社会的課題の解決をめざす重要な施策が盛り込まれた。また、官民に散在するデータの連携、ビッグデータとしての利活用を目指すとしている。さらに、国際的な議論に供するため、AIをより良い形で社会実装し共有するための基本原則となる「人間中心のAI社会原則」を策定し、教育・リテラシー、プライバシー確保、セキュリティ確保や公正競争確保の原則など、留意すべき基本原則などを定めている。
  6. (6)誰もが簡易にICTを利活用できる社会を実現するためには、継続的なデジタルデバイド(注1)対策の徹底が必要不可欠である。加えて、国民一人ひとりが日常生活にあふれる情報と適切に向き合い、情報を扱う能力を身につけるための教育も重要である。
  1. (注1)デジタルデバイド ~パソコンやインターネットなどの情報技術を使いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる待遇や貧富、機会の格差。

1.国・地方自治体は、防災・減災分野におけるICTの利活用と効果的な人的体制、地域住民との連携強化を図るとともに、災害に強いICTインフラの整備・構築に向けた支援・対応を強化する。

  1. (1)国・地方自治体は、災害発生時に情報が迅速かつ確実・正確に伝達されるよう人的体制も含めた整備を行う。

    ①Lアラート(注2)の普及・拡充とともに、情報発信と伝達の手段の多様化を推進する。また、平時におけるLアラートなどを活用した総合的防災演習の充実をはかる。

    ②J-Alert(注3)や防災行政無線などを通じた警報等が確実に伝わるよう設置場所や人的体制なども含めた整備を行う。

    ③防災行政無線および消防救急無線の早期かつ円滑なデジタル方式への移行を進めるとともに、妨害電波への対策を強化する。

    ④ソーシャルメディア(注4)なども含めた多様な情報通信手段の利用を周知・徹底するとともに、障がい者や外国人などに対しても確実に情報が伝わるよう施策を講じる。

    ⑤官民が保有するG空間情報(注5)を活用した「総合防災情報システム」の整備・運用を早急に進めるとともに、都道府県等における当該システム導入促進に向けた必要な財政や人的支援を積極的に行う。

    ⑥国・地方自治体は、災害発生時においても住民サービスや医療が提供されるよう情報資産を保護する取り組みを推進する。また、事業者に対してもバックアップ体制の構築などを指導する。

    ⑦国や関連機関が保有する防災関連データを統合し、ビッグデータ解析やAI等による災害予測や、災害対応に活用する防災情報サービスプラットフォームを早期に開発する。

  2. (2)国・地方自治体は、大規模災害発生後における情報通信手段の確保や情報提供のあり方など、情報の発信や収集に関わる総合的な取り組みを推進する。

    ①大規模災害時における臨時災害放送局(ミニFM放送局等)の設置・開設にかかる行政手続きの迅速化・簡素化を制度化する。

    ②政府や地方自治体は、災害時における非常用移動基地局、非常用電源設備の移送、燃料の確保など、情報通信事業者が確実に事業を遂行できるよう必要な支援や対策を行う。

    ③政府は、停電時においても情報通信手段が確保されるよう非常用蓄電池の普及・開発に対する支援や非常用発電機の燃料備蓄などの取り組みを進める。

    ④公共施設や避難所等に衛星携帯電話などの非常用通信手段を配備する。

    ⑤国・地方自治体は、被災地で必要となる情報の発信について一元的な管理を行うとともに、被災者からの行政等に関する問い合わせについてもワンストップでの対応が可能となるよう取り組みを推進する。また、地域ごとにきめ細やかな情報提供が行われるよう、通信と放送の融合などICTの活用や情報通信事業者をはじめとする民間事業者との連携を強化する。

    ⑥国は、昨今の大規模災害の発生状況を踏まえ、災害に強い次世代ネットワークを構築する観点から、主要情報通信設備の分散化や伝送路の冗長化(障害時の代替用の設備の用意など)、IoT・ビッグデータ・AIの活用による輻輳等の回避など、情報通信事業者と連携し対応を強化する。

  1. (注2)Lアラート ~地方自治体、ライフライン関連事業者など公的な情報を発信する「情報発信者」と、放送事業者、新聞社、通信事業者などその情報を住民に伝える「情報伝達者」とが、住民に必要な安心・安全に関わる公的情報などを迅速かつ正確に伝えることを目的に利用する情報基盤。住民は、全国の情報発信者が発信した情報をテレビ、ラジオ、携帯電話、ポータルサイト等の様々なメディアを通じて入手することができる。
  2. (注3)J-Alert ~弾道ミサイル情報、津波情報、緊急地震速報など、対処に時間的余裕のない事態が発生した際に、国から住民に緊急情報を瞬時に伝達するシステム。
  3. (注4)ソーシャルメディア ~ライン(LINE)、ツイッター、フェイスブック、ブログ、電子掲示板やホームページほか、ネットを利用して誰でも手軽に情報の発信や相互のやりとりができる双方向メディア。
  4. (注5)G空間情報 ~位置や場所に関連づけられている情報。官民が保有するG空間関連データを組み合わせて利活用することで、災害時の効率的な情報収集および伝達ならびに救助・援助が可能になる。

2.政府は、利用者の権利の担保と情報セキュリティの向上をはかるとともに、自由かつ公正な利用環境の整備および必要な法整備を図る。

  1. (1)ICT行政の推進にあたっては、省庁横断的な取り組みをより一層推進する体制を確立するとともに、施策立案と実現を行う。
  2. (2)政府は、セキュリティ対策を含めたインフラの整備を進める。

    ①政府は、ブロードバンドネットワークへの移行期における急速な技術革新の進展の中で、固定電話等の利用者に不安と利便性の低下が生じないよう万全の配慮を行う。

    ②電波需給の逼迫状況緩和に向けて、電波の効率的な利用やデータ圧縮などの研究開発を推進する。なお、ホワイトスペース(注6)の利活用については、公共空間としての前提のもと、地域密着型のエリアワンセグ放送や防災・減災放送などを推進する。

    ③電波利用料制度の見直しに際しては、利用者負担の増加や利便性の低下など国民への影響が出ないよう慎重に対応する。

    ④5G(注7)など新たな通信技術の利活用に向けた環境整備を図るなど、あらゆる産業と社会インフラの健全な発展に資する取り組みを進める。

    ⑤技術革新の進展を踏まえ、ICT人材やセキュリティ人材の育成・確保に向け、教育分野におけるICT利活用やICTモラル・リテラシー教育を推進する。また、高等教育・大学における実践的教育の支援や新たな技術習得等に向けた労働者の学び直し支援、教育機関と企業が連携できる仕組みの構築、人材交流の場を設けるなど、産官学連携による施策を推進する。

    ⑥プラットフォーマーをはじめとする企業が収集する多種・多様で膨大な情報の扱いやサイバー攻撃、著作権侵害など、インターネット上に顕在化している課題に対し、産官学が連携して対策を講じるとともに、早期の情報共有や、喫緊の課題である人材育成や技術開発、セキュリティ設備投資に関する施策を強化する。あわせて、国際的な対策やルールづくりを行う。

    ⑦国際的な技術革新競争に際し、良質なデータの獲得およびアルゴリズム(情報処理手順)構築に向けた国家的戦略を策定するとともに、個人情報や国家間の越境データの取り扱いに関する国際的規則を策定する。

    ⑧国・地方自治体・企業は、ビッグデータをはじめとする個人情報の流出や不正利用防止に向けて情報資源の適正な管理を行う。また、政府は、個人情報保護委員会の適正な運営を通じて、マイナンバーをはじめとする個人情報の厳格な保護を徹底するとともに、データの適切な利活用に向けて、不正競争防止法の周知・遵守を徹底する。

    ⑨テレワークの進展を踏まえ、就業時の情報セキュリティ向上、とりわけ管理分門が遠隔においても監査、監督業務が行うことができる環境整備を推進する。

  3. (3)国・地方自治体は、デジタルデバイド対策を徹底する。

    ①デジタルデバイドの解消に向け、ICT基盤(情報インフラ)がすべての地域・国民に保障されるよう、行政等が助成する仕組みを充実するなど、国、地方自治体、情報通信業者が連携し整備を進める。

    ②公共施設などで情報通信サービスを無料または安価に利用できる仕組みを構築する。

    ③高齢者や障がい者、外国人など誰でも分け隔てなく安易に情報通信を利用できるユニバーサルデザイン機器の開発支援を行う。

  1. (注6)ホワイトスペース ~隣り合う周波数帯の混信を防ぐために設けられていた空白の領域。デジタル方式での通信技術の進歩により、混信の懸念が少なくなったため有効活用が検討されている
  2. (注7)5G ~第5世代(5th Generation)無線移動通信技術の略称。通信速度は現行方式の4GやLTEより速い10Gbps以上で、1000倍もの大容量データの送受信が可能となる。

3.国・地方自治体は、ICTの利活用を促進し、生活者の利便性や生活の質の向上に資するICT政策を実施する。

  1. (1)国民が安心して行政情報に容易にアクセスできる「電子政府」を構築し、国民生活の利便性向上と経済の活性化につなげる。特に、マイナンバーの運用にあたっては、個人情報保護やセキュリティ対策に万全を期す。なお、マイナンバー法において、個人情報保護法等の特例として認められた任意代理人による特定個人情報の開示請求については、厳格な本人確認制度の構築、委任者への通知・確認、委任者と代理人との間で利益相反が認められる場合の開示請求制限などの個人情報保護策を地方自治体の条例等において徹底する。(「税制改革」「行政・司法制度改革」参照
  2. (2)ICTの利活用による社会的課題の解決や産業競争力向上等に向け、基礎研究等を一層推進するとともに、その成果の社会実装を促進する観点から、民間企業等における研究開発や設備投資に対する支援を行う。
  3. (3)ICTの利活用における安心・安全の確保に向け、消費者被害の防止や消費者の自立、および社会における多様な価値観を理解する観点から、すべての世代がICTモラル・リテラシー教育を受けられる機会を整備するとともに、教育機関における情報通信機器の導入を促す。
  4. (4)政府は、障がいや家庭での育児・介護などの要因で就労が困難な人をテレワークの普及・促進で支援する。テレワークの普及・促進にあたっては、適切な労務管理が行われるよう「在宅勤務ガイドライン」の周知・徹底や労働者保護ルールの明確化などをはかる。(「雇用・労働政策」参照
  5. (5)医療安全の確保を前提とする遠隔医療(診断等)、用語・コードの標準化、電子カルテの普及促進など医療分野におけるICTを活用するための法令等を整備する。(「医療政策」参照
  6. (6)国・地方自治体は、今後のまちづくりやインフラの整備・維持にあたっては、ICTを活用し、生活者の利便性や経済効率、エネルギー効率が高い、安心でくらしやすい社会の構築を推進する。
  7. (7)国・地方自治体は、スマートグリッドやHEMS/BEMSの開発・導入を支援するなど温室効果ガス削減に向けた取り組みを推進する。(「資源・エネルギー政策」「国土・住宅政策」「環境政策」参照

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