- (1)連合は、2011年3月の東日本大震災により引き起こされた福島第一原子力発電所事故を踏まえ、2011年9月の三役会において、「エネルギー政策総点検・見直しの基本的方向性について」を確認した。その要旨は以下の通りである。
<基本的考え方>①エネルギー政策の総点検・見直しにあたっては、「脱原発」「原発推進」の2項対立の議論を行うべきではなく、総合的・合理的・客観的なデータにもとづく冷静な議論のもとで、「安全・安心」「エネルギー安全保障を含む安定供給」「コスト・経済性」「環境」の視点から、短期・中長期に分けた検討を行う必要がある。また、国民の理解・納得という観点や「国民合意」のあり方にも十分に留意しつつ検討を行う。
②今回の福島第一原子力発電所事故により、大型の自然災害が不可避なわが国においては、原子力発電所事故が起こり得ること、そしてひとたび事故が起これば、人々の生活や健康、国土・海洋など広範な環境に甚大な被害をもたらす可能性があることを現実のものとして知ることになった。
③このことを踏まえれば、わが国においては、原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再生可能エネルギーの積極推進および省エネの推進を前提として、中長期的に原子力エネルギーに対する依存度を低減していき、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざしていく必要がある。
④原子力エネルギー政策については、今回の事故とこれまでの原子力行政の総合的・徹底的な検証を踏まえ、規制のあり方とリスク管理の見直し、国と事業者の責任区分の明確化が必要である。
⑤短期的な課題としては、産業や雇用への影響に十分配慮しながら、エネルギー安全保障の観点を含め、安定的なエネルギー供給をはかる必要がある。そのためには、無理のない省エネによってエネルギー需要を抑制する一方、既存発電設備の有効活用などによってエネルギー供給の増強をはかる必要がある。その際には、定期点検等による停止中原子力発電所について、周辺自治体を含めた地元住民の合意と国民の理解、安全性の強化・確認を国の責任において行うことを前提に、その活用も含めて検討する必要がある。
⑥中長期的な原子力エネルギーに替わるエネルギー源の確保にあたっては、エネルギーコストの低減や人類全体の課題である温室効果ガスの排出削減などに取り組みつつ、新しいエネルギーのベストミックスを構築する必要がある。
⑦短期・中長期の取り組みにあたっては、再生可能エネルギーの積極推進、化石エネルギーの高度利用、分散型エネルギーシステムの開発、省エネ技術・製品の普及、エネルギー節約型のライフスタイル・ワークスタイルの普及などに対する政策的な支援が必要になる。こうした施策を進める際には、産業の空洞化や雇用の喪失を回避し、グリーン・ジョブの創出と「公正な移行」を通じてグリーン・イノベーションに繋げていく必要がある。
⑧エネルギー政策を見直すことは、国民生活や産業・雇用、働き方にも多大な影響を及ぼすことになり、連合が提唱する「緑の社会対話(仮称)」など、幅広い国民の合意形成をはかりながら、これを進めていく必要がある。
- (2)その後、これにもとづくエネルギー政策総点検・見直しPTにおける検討・報告を経て、2012年9月の第12回中央執行委員会において「連合の新たなエネルギー政策について」を確認し、「2014~2015年度 政策・制度 要求と提言」における資源・エネルギー政策については、「連合の新たなエネルギー政策について」の考え方を厳格に踏まえ策定した。
- (3)以降、「2018~2019年度 政策・制度 要求と提言」における資源・エネルギー政策の策定までにあたっては、その後の状況変化に応じて都度修正・補強を行った。
- (4)2021年10月、中長期的・総合的なエネルギー政策の基本的な方針である「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定され、3年ぶりに改定された。本計画には、①2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応、②2050年を見据えた2030年に向けた政策対応などが盛り込まれている。2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、地域経済や社会、雇用への影響を最小限にとどめる「公正な移行」の確保が不可欠であり、連合は、働く者・生活者の立場から、労働組合を含む関係当事者との社会対話と丁寧な合意形成にもとづいた政策の実現を求めていく。