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(1)政府の「第4期消費者基本計画(2020年度~2024年度)」では、「消費者教育を通じ、地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮して消費者が自ら考える賢い消費行動、いわゆるエシカル消費の普及啓発を図る」としている。事業者と消費者との関係において、情報の非対称性などの問題から、消費者が保護されるべきであることは当然である。その上で、持続可能なより良い消費社会を実現するためには、事業者と消費者が互いを思いやり、消費者教育などを通じて、倫理的な消費者行動を促していく必要がある。今後は、工程表にもとづく同計画の着実な実行が求められる。
なお、「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」最終報告では、消費者庁として初めて「消費者(生活者)同士のトラブルや、常識的な程度を超えて執拗・過剰に苦情を申し立てるクレーマーへの対応について消費者教育に一定の効果を期待する」といった考え方が記載されたが、第4期消費者基本計画には織り込まれなかったため、倫理的な消費者行動を促すための法制面の整備をはじめ、施策の実施が求められる。 -
(2)国や地方自治体においては、消費者団体訴訟制度を効果的に運用するため、「被害回復」を行うことができる特定適格消費者団体の適切な認定による体制の強化や公的な活動をしているにもかかわらず予算や人的な配置が厳しい状況におかれている適格消費者団体の実情を踏まえた対応が求められる。また、消費者庁が設置されて12年が経過したにもかかわらず、消費者の身近な相談窓口となる消費生活センターの設置は1,116ヵ所に留まり、設置されていない市区町村が605ヵ所もある。(2021年度「地方消費者行政の現況調査」)地方自治体における人手不足や財源不足などの問題が背景にあることが指摘されており、地方消費者行政の財政基盤を強化し、消費生活相談員の大半を占める非正規職員の処遇改善と能力開発の機会の充実をはかることで、すべての市区町村に消費生活センターの設置を進める必要がある。
- (3)改正民法の施行により、2022年4月以降、成年年齢が18歳となった。これに伴い、保護者の同意がなくとも、クレジットカードの作成をはじめ、各種ローンやクレジット契約を締結できるようになった。一方で、これまでの未成年者取消権による保護の対象とはならなくなったが、若年消費者の保護を明確化した改正消費者契約法とあわせて、消費者庁、文部科学省、法務省、金融庁が連携し、消費生活センターの相談員による高等学校等での出前授業など、消費者教育の強化が求められる。