ゆにふぁん活動事例集 ~沖縄県母子寡婦福祉連合会の就労・生活支援~

2022年5月6日

今回紹介する活動事例は、沖縄県における様々な「子どもの貧困」問題への取り組み。
日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率は13・5%と高い水準にあるが、沖縄県はその2倍を超える29・9%。一人当たりの所得は全国で最も低く、非正規雇用で働く人の比率は全国で最も高い43・1%※。コロナ禍が沖縄の主要産業である観光業・サービス業を直撃し、特にひとり親世帯の困窮は深刻な状況にある。でも、だからこそ、支え合い、助け合いの輪が広がっているのが沖縄だ。子どもの貧困問題に取り組む、沖縄電力総連、沖縄県母子寡婦福祉連合会、沖縄県労働者福祉基金協会、連合沖縄を訪ねた。

※出典:内閣府「子供の貧困に関する指標(沖縄県の状況)」

子どもたちの未来のために声を上げていきたい

続いて訪ねたのは、沖縄電力総連のランドセルの寄贈先である沖縄県母子寡婦福祉連合会。コロナ禍で厳しさを増しているというひとり親世帯の実情と求められる支援策、労働組合の社会貢献活動への期待について、与那嶺清子会長に話を聞いた。

─沖縄県母子寡婦福祉連合会の活動とは?

連合会には、県内31の市町村の母子寡婦福祉会や社会福祉協議会等の一部が加盟しています。会員世帯は現在3000世帯ほどで、会費は年間1000円。国や県の委託を受けて、ひとり親や寡婦を対象とした就労支援講習会や法律・生活相談などの事業を行っています。2014年に「母子寡婦福祉法」が改正されて、「母子及び父子並びに寡婦福祉法」になり、父子を含めた「ひとり親世帯」が行政支援の対象となりました。連合会も、名称はそのままですが、父子世帯も会員になれるよう会則を改正しました。

 

就学援助では間に合わない

─沖縄電力総連との連携のきっかけは?

母子世帯の家計は苦しく、入学準備費用、特にランドセルの購入費は大きな負担になっていて、祖父母の援助が受けられない家庭も多い。そんな時、沖縄電力総連から支援の申し出があり、「それなら、ぜひランドセルを」とお願いしたんです。それから14年間、子どもたちの笑顔を支えていただいて感謝しかありません。

就学援助という制度もできましたが、申請は入学後で、費用が支給されるのは早くて6月頃。行政の支援が届かないところに手を差し伸べていただいて、本当にありがたく思っています。また、沖縄電力総連の取り組みが広く知られるようになったことで、名護市やうるま市でも「ランドセル基金」の寄付を募る活動が始まっています。

 

─沖縄のひとり親世帯の状況、またコロナ禍の影響は?

沖縄県は、母子世帯の比率が高く約3万世帯、父子世帯は約4500世帯。ひとり親の86%が就労していますが、正規雇用は半数以下で、パート勤務の人はコロナ禍で収入が激減しています。家賃も払えないという悲鳴が上がるなか、ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業に「住宅支援資金」が追加されました。資格取得をめざすひとり親に、月額10万円の生活費に加え、原則12ヵ月に限り月額4万円(上限)の家賃補助が付きます。連合会ではこれを受託し、この半年ですでに200名以上の申請を受け付けました。資格取得・就労が貸付資金返済免除の条件になっているので、現在、専門相談員を配置して支援を強化しているところです。

─労働組合へのメッセージを。

連合会の設立は、1972(昭和47)年。沖縄は27年間も占領下にあり、復帰後も福祉政策には大きな格差がありました。戦争未亡人を中心に会を結成し、児童扶養手当支給を勝ち取るために7年間も闘った。弱い者同士が集まって組織をつくり、運動して勝ち取ったんです。その後、支援制度は拡充されましたが、一方で組織運動の大切さが忘れ去られているという思いがぬぐえません。

課題はまだまだ山積しています。教材費の無償化、奨学金制度の拡充、子どもが18歳になった以降の生活支援、女性の賃金の底上げなどへの取り組みが急がれます。最近、18歳までとされていた自立支援の年齢制限が撤廃されることになりましたが、当事者や支援者が声を上げ問題を指摘したからこそ、政策実現につながりました。これからも労働組合と手を携え、子どもたちの輝く笑顔のために活動していきたいと思います。

沖縄電力総連のランドセル寄贈の取り組み紹介はこちら

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