ゆにふぁん活動事例集 ~沖縄電力総連のランドセル寄贈~

2022年5月6日

 

今回紹介する活動事例は、沖縄県における様々な「子どもの貧困」問題への取り組み。
日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率は13・5%と高い水準にあるが、沖縄県はその2倍を超える29・9%。一人当たりの所得は全国で最も低く、非正規雇用で働く人の比率は全国で最も高い43・1%※。コロナ禍が沖縄の主要産業である観光業・サービス業を直撃し、特にひとり親世帯の困窮は深刻な状況にある。でも、だからこそ、支え合い、助け合いの輪が広がっているのが沖縄だ。子どもの貧困問題に取り組む、沖縄電力総連、沖縄県母子寡婦福祉連合会、沖縄県労働者福祉基金協会、連合沖縄を訪ねた。

※出典:内閣府「子供の貧困に関する指標(沖縄県の状況)」

夢がつまったピカピカのランドセルを贈ろう!

沖縄電力総連では、2008年から毎年、沖縄県母子寡婦福祉連合会を通してランドセルを寄贈。昨年12月にも新一年生の親子が参加して贈呈式が行われた。14年間で寄贈されたランドセルは累計1267個。それはどんな絆を紡いできたのか。沖縄電力総連の知念克也会長に聞いた。

 

─ランドセル寄贈のきっかけは?

2008年、当時の会長から「社会貢献活動として県民のためになる活動をやりたい」と投げかけられました。国や自治体ができないところに手を差し伸べたいと…。その時、私は社会貢献活動担当の専従役員。未来を担う子どもたちのために何かできないかと考え、多方面に話を伺ってみると、県内のひとり親世帯では新一年生のランドセル購入が大きな負担になっているという。ほかにもイベント開催や育英資金などの案が出たのですが、執行委員会として「夢がつまったピカピカのランドセルを贈ろう!」ということで意見が一致。職場でカンパを募り、沖縄県母子寡婦福祉連合会を通して、困窮するひとり親世帯の新一年生にランドセルを贈る活動を始めました。

実は同じ頃、タイガーマスクによる児童養護施設へのランドセル寄贈が大きく報じられ、社会現象になりました。先を越されたと思いましたが、私たちは、以来14年間活動を継続しています。カンパは、沖縄電力総連の加盟組合が組合員に声掛けをして、賛同をいただきながら毎年取り組んでいます。取り組みが浸透して、各職場で働く組合員以外の皆さんからもカンパをいただき、働く仲間一体の取り組みとなっています。

 

見える寄付と連合の強みが活きる

─14年間、継続し定着してきた秘訣は?

ランドセルを贈ったお子さんや親御さんから、毎年お礼のメッセージが届くんです。中学に上がる節目に手紙をくれたり、贈呈式のお手伝いにきてくれたりする子もいます。喜んでくれる姿、立派に成長した姿を見ると、本当にやって良かったと思える。目的が明確で、「見える寄付」になっていることが、組合員の共感を呼び、継続した活動につながっているのだと思います。

もう一つは、連携の輪を広げてこられたことです。社会貢献活動は独りよがりではうまくいきません。始めた頃は失敗もありました。ランドセルを必要とする子どもたちが多かったので、とにかく数を優先したのですが、色やクオリティの面で子どもたちの意に沿えなかった。猛省しました。

近年、ランドセルは高機能・高価格化しています。何とか品質と数量を両立できないかと、U‌Aゼンセンを通じてイオン琉球労働組合を紹介いただきました。その協力で一括購入が実現し、保証書付の丈夫で質が良く、色とりどりのランドセルを贈ることができるようになりました。本当に感謝しています。連合の強みは、様々な産業・企業の労働組合が集い、その枠を超えて連携できるところ。それが、活動継続の秘訣だと思っています。

寄贈先は、沖縄県母子寡婦福祉連合会の各市町村会で決めてもらっています。当初は年末にカンパを募り、年明けに贈呈していましたが、ランドセルの購入時期が早まっていることもあり、最近は12月上旬に前倒ししています。今年度は70個を寄贈しましたが、それでも全然足りない。いかに困窮世帯が多いのかと身につまされます。

 

 

社会課題が見えてくる

─労働組合が社会貢献活動に取り組む意義とは?

社会貢献活動とは、巡り巡って自分たちに返ってくるものであるという思いを強くしています。労働組合の活動を通して、私たちの産業に理解を深めていただける機会となり、また、他の労働組合との連携も広がる。でもそれだけではありません。職場にいるだけでは見えにくい世の中の課題が、社会貢献活動を通してはっきり見えてきます。

ひとり親世帯の生活困窮の背景には、沖縄県の低賃金・不安定雇用の実態がある。県内の主要産業は観光業・サービス業で、コロナ禍の影響は甚大です。また、労働組合は地方最低賃金審議会に参画していますが、沖縄県の最賃はこんなに低くていいのか、子どもの貧困率が全国の2倍という状況を放置していいのかという課題を突きつけられています。こうした課題の解決に向けて働く仲間が皆で助け合う、それが労働組合が社会貢献活動をする意義だと思います。

─知念会長のこの活動にかける原動力とは?

沖縄では、昔から「子どもは社会の宝」と言われてきました。先の戦争でたくさんの子どもが亡くなりましたから、余計に子どもを大切に育てていこうという気持ちが強い。また、1人では立てないから、みんなで支え合おうという助け合いの精神が今でも受け継がれています。その助け合いの精神を沖縄の言葉で「ゆいまーる」と呼び、今も「模合(もあい)」など自主的な共済制度が存在します。

その沖縄の心は、労働組合の活動にも受け継がれています。私は貧困から抜け出す最大のきっかけは教育だと考えます。子どもたちにピカピカのランドセルを贈ることで、学校が楽しい場所になり、学ぶことが楽しくなれば、そこから変わっていく何かが生まれる。子どもたちの可能性は無限大だから…。これからも、労働組合の連携を広げながら、子どもたちの成長を支えていけたらと思います。

沖縄県母子寡婦福祉連合会の取り組み紹介はこちら

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