コロナ禍の労働組合① UAゼンセン

2021年7月1日

2020年3月、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが宣言され、世界中で行動制限が行われた。日本でも感染が拡大し、生活は一変。旅客・宿泊・飲食・レジャーなどの産業は、需要が激減して休業や時短営業を強いられた。医療・介護や流通・小売、物流などの産業は、感染防止策を講じながらの事業継続が求められた。

こうしたコロナ禍で、労働組合は職場の不安をどう受けとめ対応したのか。UAゼンセン、私鉄総連、航空連合、連合石川に話を聞くと、働く人や産業をまもり、つなぎ、未来を創り出そうと、懸命に行動する労働組合の姿が浮かび上がった。

 

UAゼンセン  職場の不安や要望を受けとめ、迅速に対応

状況が日々刻々と変化する中、職場の課題に迅速に対応してきたU‌Aゼンセン。特に雇用維持については、雇用調整助成金を活用した休業のほか、独自の就労マッチング支援や産業雇用安定センターと連携した在籍型出向にも取り組み、成果をあげている。

 

休業手当100%支給をめざす

ー最初のコロナ対応は?

2020年2月、職場で陽性者が出たという報告が入った。組合員やその家族が感染した場合の対応方針が必要だと考え、感染や濃厚接触となって仕事を休む場合の賃金の取り扱いなどを整理して発信した。

3月に入ると製造業の職場で休業の情報が入り、雇用調整につながることも危惧された。そこで「新型コロナに関連する休業への対応」として、雇用調整助成金(以下、雇調金)を受給して雇用を維持するよう発信。また春季交渉の時期と重なって、定昇凍結や賃下げを逆提案される可能性もあったことから、「新型コロナの影響による合理化への対応」を発信して経営チェックの強化を促した。

4月7日には緊急事態宣言が全国で発令され、百貨店、外食、ホテル、レジャー、パチンコ、スポーツクラブなどへの時短営業・休業の要請がなされた。対象業種には多数の加盟組合があり、職場では一気に雇用不安が高まった。会社側には、休業でしのぐことを要請し、政府には雇調金の拡充や要件見直しを求めた。6月には雇調金の特例措置(助成率最大100%)がとられたことから、「休業手当100%支給をめざす」取り組みを展開し、約7割の加盟組合が100%を実現している。

一方、事業継続を求められた食品スーパー・ホームセンター・医療施設・介護施設・輸送物流などにも加盟組合が多数あり、感染防止やカスタマーハラスメント(悪質クレーム)の対策を求める切実な声が寄せられた。「コロナに負けない職場づくり」という指針をまとめ、安心して働ける環境整備に取り組んだ。また、休業中のモチベーション低下を防止するため、交替で教育訓練を実施するなどの対応を行った加盟組合もあった。

 

制度の狭間にあるシフト労働者

ーそういう中で、独自に就労マッチング支援にも乗り出した。

これも職場の強い要望を受けたものだ。昨年4月の緊急事態宣言で、時短営業・休業が要請された外食やホテル、レジャー、パチンコ関連の現場の主力であるパート・アルバイトの多くはシフト制。労働契約上労働日が明記されていない場合もあり、雇調金を使った休業手当が支給されないと生活が立ち行かなくなる。制度の狭間で生活が困窮している働く仲間を何とか救えないかという声がU‌Aゼンセン総合サービス部門に寄せられた。

一方、食品スーパーやホームセンターは、感染リスクへの警戒感や全国一斉休校の影響で深刻な人手不足にあった。そこで、U‌Aゼンセンの総合サービス部門と流通部門が連携し、例えば居酒屋チェーンのパート労働者が、元の雇用関係を維持しながら、食品スーパーで働けるよう斡旋する緊急かつ時限的な就労マッチング支援を考えた。就労希望者がいる加盟組合→総合サービス部門→流通部門→受け入れ可能な加盟組合という流れで情報を共有し、双方の企業が合意すれば、企業間で詳細を取り決める。その後、休業支援金などの制度が整備されるまで、複数のマッチングが成立し、100名を超える働く仲間の雇用維持につながった。

 

目的は雇用維持と教育訓練

ーさらにいち早く産業雇用安定センターとの連携協定を締結された。

昨年9月、労働組合として初めて連携協定を締結した。コロナ禍が長期化する中で、在籍型出向や再就職斡旋による雇用維持にも取り組む必要があると考えたからだ。

産業雇用安定センター(以下、産雇センター)とは、以前から地域で連携し、店舗閉鎖に伴う離職者の再就職斡旋などをお願いしてきた。しかし、コロナ禍の影響は産業全体に及んでいることから、全国的に連携を強化したいと考え、協定書を結んだ。産雇センターは、雇用保険財源で運営されているので、支援対象は雇用保険加入者に限定されるが、一人ひとり丁寧なマッチングで、コロナ禍だけでも多くの斡旋を受けることができた。今年2月には、在籍型出向を促進するために産業雇用安定助成金が新設されたので、大規模案件を含めてさらに増加していくという感触を持っている。

ー加盟組合や組合員の受けとめは?

連携協定を締結した時、加盟組合には、「会社が希望退職や雇い止めなどの雇用調整を提案してきたら、その前に在籍型出向で雇用を維持する方法があると伝えてほしい」と改めてお願いした。

実際の出向にあたっては、「合理化対策指針」に沿って、本人同意、期間、労働条件、原職復帰などを確認した上で協定を結ぶが、グループ外や異業種への出向は組合員の不安や戸惑いも大きかったと聞く。何のために行くのか、なぜ自分なのか、その納得感がないと、モチベーションが保てない。そこで、貴重な人材を手放したくないゆえの在籍型出向であり、需要が戻れば復帰して、出向先で学んだことを生かして、次の成長に貢献するためであるという目的を労使で共有し、組合員にも丁寧に説明した。

 

エッセンシャルワーカーへのワクチン接種を

ー課題や、連合、政府への要望は?

ワクチン接種については、今年2月に組織内国会議員・地方議員に呼びかけて緊急情報交換会を開催し、介護職の労働者への優先接種や自治体が抱える課題について国会議員を通じて国に強く要望した。また、雇調金の特例措置延長や産業雇用安定助成金の適用拡大については、連合と連携して要請を行っていきたい。

事業継続の支援強化も求めたい。これまで個別業種を挙げての休業・時短営業の要請がなされてきたが、現場で働く組合員は、「感染防止を徹底しクラスターも発生させていないのに」とつらい思いを抱えている。そういう現場の声を受けとめてほしい。

 

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合7月」をWEB用に再編集したものです。

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