コロナ禍が長期化する中、女性への影響も深刻さを増している。海外では、英語の「she(彼女)」と「recession(景気後退)」を合わせた「she-cession(女性不況)」という言葉もつくられた。女性不況は世界共通の政策課題だが、日本では具体的に何が起きているのか。まず、データを見ておこう。
雇用への影響—増加する「実質的失業者」
就業者数の推移(図1)を見ると、昨年4月に大幅に減少している。減少数は男性39万人に対し、女性70万人。背景には3月2日からの全国一斉休校措置、4月7日からの緊急事態宣言(休業・時短営業)があるが、なぜ男女で大きな差が出たのか。一つは、直撃を受けた宿泊・飲食、小売、生活・娯楽などのサービス業の就業者は女性の比率が高く、その多くを非正規雇用が占めていたこと(図2)から、雇い止めやシフト減などで退職に追い込まれたと見られる。もう一つは、休校や保育園・幼稚園の休園の影響だ。テレワーク実施率は、男性28・2%に比べて女性は15・6%と低い(図3)。一方で休園中に子どもの面倒をみていたのは、女性8割に対し男性は4割であった(図4)。テレワークができない仕事で働く女性は、子どもの面倒をみるために退職を選ばざるを得なかったケースも相当数あると推測される。
それから1年余り、感染の収束が見えない中で雇用の現状はどうなっているのか。公式統計の「完全失業者」は、男性114万人に対し、女性80万人。しかし、シフトが激減し、かつ休業手当を受け取っていないパート・アルバイトの「実質的失業者」は、女性103万人、男性43万人(図5)。退職後、再就職や求職活動をしていない「女性の非労働力化」も進んでいると言われている。コロナ禍は、特に女性の雇用を悪化させているが、その実態が十分に可視化されていないことも一つの特徴だ。
女性に重い家事・育児の負担
外出自粛による家事・育児の負担増も女性に偏っている。連合調査では特に小学生以下の子どものいる労働者は、男女ともに通常勤務よりテレワーク勤務の方が長時間労働になる傾向が高い(図6)。しかし、テレワークに難しさを感じる理由に「子どもの昼食の準備をしないといけないから」(男性32・2%、女性60・9%)、「子どもが頻繁に話しかけてくるから」(男性21・8%、女性43・8%)との回答には男女差があり、テレワークをする女性労働者は、通常時より量的に増大した仕事と家事・育児を一層偏ったかたちで担当せざるを得なくなっていることがうかがえる。
そのような中、家庭内で過ごす時間が増えたことでドメスティック・バイオレンス(DV)などのトラブルも頻発している。2020年度のDV相談件数は2月までで17万5693件と前年同期の約1・5倍(図7)。2020年の女性の自殺者数は前年比15・4%増の7026人。早急な政策対応が必要だ。
※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合6月」をWEB用に再編集したものです。