東日本大震災から3年が経過した2014年夏。震災でいちばんの弱者である子どもたちを元気づけたいと、連合は「東北の子ども応援わんぱくプロジェクト」をスタート。夏休みに全国の地方連合会が東北3県の子どもを受け入れ、地元の子どもと一緒に地域の特色をいかしたイベントや職場見学などを「体験」。続いて秋には、受け入れ先の子どもたちが東北3県を訪問し、被災地の現状や防災を学び、絆を深めるという相互交流プログラムだ。
当時小学生だった参加者は、今や10代後半。あの体験はどういかされているのか。応援団長を務めたやくみつるさんは、今何を思うのか。
東日本大震災から丸10年が経とうとしています。
嵩上げされた造成地や大型防潮堤などこの間に進捗した復興策もある一方、今なお仮設の住宅で暮らしておられる住民の方も多くおられます。
また抜本的解決策さえ見出せず、問題を抱えたままの原発後処理の現状を見ると、「復興途半ば」と表現することすら憚られる思いがします。
私が連合のプロジェクトに参加させていただき、岩手、宮城、福島の各被災地の子どもたちと束の間ではありましたけれど、時間をともにしたのは震災後3年半を経過した夏のことでした。ある程度の時間を経ていましたので子どもたちは明るさこそ取り戻してはいたものの、個々には重すぎる体験を引きずっているだろうことは想像できます。児童心理に関し何の知識も持っておらぬ身、子どもたちとどのように接したらよいか、当初は手さぐりの心境だったことを記憶しています。
そんな中、こちらからは被害の態様を尋ねることは慎んでいたのですが、一人の女児が自分から喋りかけてきたことがありました。「お家が流されちゃったの」と女児。ご家族は無事だったようなのですが、無邪気に振舞っていながら、負っている心の傷に凝然としました。
連合のプロジェクトに参加してくれた子どもたちも今は高校生以上。当時の6年生には既に社会に出られた若者もありましょう。それぞれの暮らしの中で懸命に生きていることと思います。最近になってコロナ禍というまた新たな困難に直面し抗っているかもしれません。けれど、あの震災を経験したことではからずも見知った自分の、仲間の、そして社会の回復力や、手をつなぎ力を合わせることの大切さは、必ずやあのときの子どもたちの中に血肉となっていると信じます。
どうか各々の歩む道で躍動してください。そして何かの機会に再会することができましたら、2014年夏に連合の「わんぱくプロジェクト」に参加したものです!と声をかけていただけたら―。そう願ってやみません。
やくみつる 東北の子ども応援わんぱくプロジェクト応援団長、漫画家
※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合3月」をWEB用に再編集したものです。