連合の10年と未来への決意

2021年3月11日

連合は、震災直後から救援カンパ、救援ボランティア派遣に取り組み、その後も「震災を忘れない、風化させない、教訓をいかす」という強い思いを共有して、「東北の子ども応援わんぱくプロジェクト」や「命を守る絆フォーラム」、「復興支援視察団」など被災地に心を寄せる運動を継続してきた。いつもその中心で奮闘してきた山根木晴久総合局長は、この10年をどう振り返り、未来に向けてどう進むのか—。

 

あの時の気持ちを忘れない、忘れてはならない

—あれから10年…。振り返って思うことは?

多くの命と生活が失われた東日本大震災。被災された方々にとっては大変な10年であったと思う。今も、心的ストレスを抱える子どもたち、独居老人の高齢化など教育や心のケア、地域システムなどの課題が残り、産業面でも復興は道半ばである。連合は「震災を風化させない、教訓をいかす」ことを訴えてきたが、時間の経過とともに風化は進み、教訓も十分にいかされているとは言い難い。だから、この10年という節目は、あの時何が起きたのか、労働組合としてどういう活動をし、その活動を通じて何を感じたのか、もう一回原点に立ち戻って考える契機にしなければいけないと思う。

 

顔合わせ、心合わせ、力合わせ

—連合は、あの時、民間で最大規模のボランティアを派遣し、現地で頼りにされた。

被災地は東北の沿岸部で個人が駆けつけるのは困難だった。構成組織や地方連合会は、阪神・淡路大震災以降ボランティアの実績を積んでいたが、今回は連合で集約できないかという声が聞こえてきた。当時は民主党政権であり、辻元清美ボランティア担当内閣総理大臣補佐官からも「一日も早く連合の力を」と要請を受けた。慌ただしい中で、構成組織や被災地の地方連合会と検討を重ね、連合は何ができるのかを思案し、そのスキームづくりに入った。

視察に入った被災地の惨状に言葉を失ったが、地域の連合や加盟組合の施設、公民館や廃校などの拠点の確保と食料の調達、地元バス会社によるボランティアの移送など各方面の協力を得て体制がつくれると判断。社会福祉協議会などが運営するボランティアセンターと連携し、連合は「現場作業に従事する」ことに徹した。居場所も食事も自ら確保して被災地に迷惑をかけない体制をとり、産別責任者をリーダーとする班を編成して必要な人数を送る。現地では、その規模と統率力、そして平日に活動できるという「組織ボランティア」の強みが高く評価され、頼りにされる存在となることができた。「被災地・被災者に迷惑をかけない」「現地の指示に従う」「安全第一」の3つの原則を徹底できたからだと思う。

—まさに連合運動の原点がそこにあった…。未来に向けては?

労働組合は、目的が明確で組合員の共感を得られれば多くの人を動かせる組織力を持ち、人材が豊富だ。災害復興において貴重な「社会インフラ」と言える。また、活動を通じて、被災者とボランティアの絆、ボランティア同士の絆も深まった。ベースキャンプで初めて顔を合わせた人たちが、心を合わせ、力を合わせて汗を流した。参加者は社会貢献活動の意味を深く理解して組織に持ち帰って発信し、参加希望者がどんどん増えるという現象も起きた。

構成組織・単組も、地方連合会も、この間様々な支援の取り組みをしてきたが、当時を知らない組合役員、組合員も増えている。まず、それぞれの活動を振り返って原点に立ち戻ってほしい。そして組織として関わった被災地域が、今どうなっているのか、これからどうなっていくのか、忘れずに思い続けてもらいたい。例えば、折に触れて現地を訪問する活動の継承は、教訓をいかしていくことにもつながる。

あれから10年…。今なお厳しい状況に置かれている被災者に寄り添い、この2021年を、希望への転換点、安心への転換点となる年にしていきたい。

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合3」をWEB用に再編集したものです。