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労働相談Q&A

45.フリーランス法
Q
フリーランスとして働いているが、発注事業者が業務委託内容や報酬を記載している契約書を交付してくれない。
A
発注事業者とフリーランスとが業務委託契約を結ぶ際に、取引条件を明示することは発注事業者の義務。その際、口頭ではなく、書面又はメールなどの電磁的方法により明示しなければならない。
法律のポイント

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下、フリーランス法)」の第3条では、発注事業者がフリーランスと業務委託をした場合には、直ちに取引条件を書面またはメールなどの電磁的方法で明示しなければならないとされている。なお、この「取引条件の明示義務」違反は所管省庁による勧告、命令の対象だが、その命令に違反する場合には、50万円以下の罰金となる。

解説
フリーランス法とは

 「個人」として業務委託を受けるフリーランスが、「組織」である発注事業者から業務委託を受ける場合、交渉力・情報収集力の格差から、フリーランスは取引上、弱い立場に置かれやすく、報酬の不払いやハラスメントなど様々なトラブルが発生している。
 そうしたことを背景に、発注事業者とフリーランスとの取引の適正化と、フリーランスの就業環境を整備することなどを目的として「フリーランス法」が制定された(2024年11月1日施行)。

フリーランス法の対象(第2条第1項、第3項、第5項、第6項)

 法の対象について、基本的には、業務委託契約※における、従業員を雇用する発注事業者(法律では業務委託事業者又は特定業務委託事業者)とフリーランス(法律では特定受託事業者)となる。ただし、第3条の「取引条件の明示義務」については、フリーランス同士の取引も対象となる。

  1. ※業務委託契約とは、物品の製造・加工委託や、情報成果物の作成委託、役務提供委託をさす(第2条第3項)。

 なお、労働者が、副業においてフリーランスとして発注事業者と業務委託を締結している場合には、その取引についてはフリーランス法の対象となる。

取引条件の明示義務(第3条)

 発注事業者はフリーランスに業務委託をした場合には、直ちに給付の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を明示※しなくてはならない。その際、口頭ではなく、書面又はメールなどの電磁的方法のいずれかの方法としなければならない。(第3条第1項)

※明示すべき事項

  1. ① 発注事業者及びフリーランスの名称(商号、氏名若しくは名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって発注事業者及びフリーランスを識別できるもの)
  2. ② 業務委託をした日
  3. ③ フリーランスの給付(提供される役務)の内容
  4. ④ フリーランスの給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日等
  5. ⑤ フリーランスの給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所
  6. ⑥ フリーランスの給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
  7. ⑦ 報酬の額及び支払期日
  8. ⑧ 現金以外の方法で報酬を支払う場合の支払い方法
その他、フリーランス法の主な規定

期日における報酬支払義務(第4条)

 発注事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で報酬の支払期日を定め、それまでに支払わなければならない。(第4条第1項・第5項)

 支払期日を定めなかった場合などには、次のように支払期日が法定される。(第4条第2項)

  1. ① 当事者間で支払期日を定めなかったとき ⇒ 物品等を実際に受領した日
  2. ② 物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたとき ⇒ 受領した日から起算して60日を経過する日

特定業務委託事業者の禁止行為(第5条)

 フリーランスとの1か月以上の業務委託に関し、以下①〜⑤の行為をしてはならない。

 ①受領拒否(第5条1項1号)②報酬の減額(第5条1項2号)③返品(第5条1項3号)④買いたたき(第5条1項4号)⑤購入・利用強制(第5条1項5号)

 フリーランスとの1か月以上の業務委託に関し、以下①〜②の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。

  1. ① 不当な経済上の利益の提供要請(第5条第2項1号)
    業務委託の内容には含まれない金銭の提供や何かしらの作業をさせること等、業務委託の範囲を超えて、金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  2. ② 不当な給付内容の変更・やり直し(第5条第2項2号)
    変更⇒給付を受領する前に、取引条件の明示で示した給付の内容を変更して、当初の委託内容と異なる作業を行わせること(発注取消、契約解除も含む)
    やり直し⇒給付を受領した後に、その給付について、追加的な作業を行わせること

募集情報の的確表示義務(第12条)

 発注事業者は、フリーランスの募集をする際に、その募集情報(求人)について虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならず(第12条第1項)、その内容を正確かつ最新のものに保たなければならない(第12条第2項)。

育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)

 業務委託期間が6か月以上の場合について、発注事業者は、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申し出に応じて必要な配慮※を行わなければならない(第13条第1項)。なお、6か月未満の業務委託の場合であっても、必要な配慮をするよう努めなければならない(努力義務)とされている(第13条第2項)。

※必要な配慮の具体例

  1. <ケース1>「つわりにより急に業務に対応できなくなる場合について相談したい」
    との申し出に対し、そのような場合の対応についてあらかじめ取決めをしておく。
  2. <ケース2>「子の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申し出に対し、納期を変更する。
  3. <ケース3>別の事業者から委託された業務をフリーランスに再委託した場合に、「介護のため特定曜日にオンラインで就業したい」と申し出があった際、元委託事業者に対して一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整する。

 また、フリーランスが配慮を申し出たことや、その配慮を受けたことのみを理由として、契約解除などの不利益な取り扱い※を行うことは、望ましくない取り扱いとされている。

※不利益な取り扱いの例

  1. ① 契約の解除を行うこと。
  2. ② 報酬を支払わないことまたは減額を行うこと。
  3. ③ 給付の内容を変更させることまたは給付を受領した後に給付をやり直させること。
  4. ④ 取引の数量の削減
  5. ⑤ 取引の停止
  6. ⑥ 就業環境を害すること。

ハラスメント対策(第14条)

 発注事業者は、ハラスメント(セクハラ、マタハラ、パワハラ)行為によりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置※を講じなければならない。(第14条第1項)なお、契約の交渉中の段階からハラスメント対策を講じることは望ましいとされている。

※その他の必要な措置とは

  1. ① ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
  2. ② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. ③ 業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

 また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として、発注事業者が、契約の解除などの不利益な取り扱いをすることは禁止されている。(14条第2項)

中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)

 業務委託期間が6カ月以上の場合について、契約の中途解除をしたり、契約更新をしなかったりする場合には、発注事業者はフリーランスに対し、少なくとも契約満了日の30日前までにその旨を予告しなければならない※(第16条第1項)。また、フリーランスが中途解除などの理由の開示を求めた場合には、例外事由を除き、発注事業者は遅滞なくその理由を説明しなければならず、その際は、書面やメールなどの方法で行わなくてはならない。(第16条第2項)

  1. ※災害などのやむを得ない場合や、契約期間が30日以下など短期間である場合などの例外事由あり
違反行為への対応等(第6条〜第9条、第11条、第17条〜第20条、第22条、第24条〜第26条)

 発注事業者がフリーランス法に違反している場合、フリーランスは所管省庁(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)に対し申し出ができる(第6条第1項、第17条第1項)。なお、発注事業者は、申し出を理由にして、フリーランスに対し契約解除などの不利益取扱をすることは禁止されている(第6条第3項、第17条第3項)。
 申し出を受けた所管省庁は、その内容に応じ、必要な調査(報告徴収・立入検査)を行い、申し出の内容が事実である場合、本法律の規定に則って、指導・助言のほか、勧告、命令・公表を行う。命令違反に対しては、50万円以下の罰金がある(第24条)。

<申出先>
◯オンラインでの申出:
フリーランス・事業者間取引適正化等法の被疑事実についての申出窓口|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/freelance_moushide.html
◯来所での申出:
  • 第3条〜第5条、第6条第3項違反(取引の適正化):公正取引委員会地方事務所および経済産業省経済産業局
  • 第12条〜第14条、第16条、第17条第3項違反(就業環境の整備):厚生労働省地方労働局雇用環境
  • 均等部(室)また、法違反かどうかわからない場合などは、「フリーランス・トラブル110番」への相談も可能。弁護士による電話・メール相談のほか、和解あっせんも実施している。

フリーランス・トラブル110番
https://freelance110.mhlw.go.jp/
電話番号:0120-532-110

<参照条文>

フリーランス法 第2条第1項、第2条第3項、第2条第5項、第3条、第3条2項、第4条1項・5項、第4条2項、第5条1項1号、第5条1項2号、第5条1項3号、第5条1項4号、第5条1項5号、第5条2項1号、第5条2項2号、第6条3項、第12条1項、第12条2項、第13条1項、第13条2項、第14条1項、第14条2項、第16条1項、第16条2項、第17条3項、第24条

<参考>
労働相談
よくある労働相談Q&Aコーナー
なんでも労働相談ホットライン
労働相談メール受付
労働相談集計報告