労働相談

 

労働相談Q&A

31.労災保険
Q
仕事で負傷したが、「労災保険扱いにはしない」と言われた。
A
労災保険は、雇用形態の如何を問わずにすべての労働者に適用される。
法律のポイント
労災保険は、原則として全産業・全事業所が強制加入であり、雇用形態に関係なく、雇用される労働者全員が適用対象となる(労災法第3条)。業務上または通勤途上で労働者が負傷した場合、疾病にかかった場合等について、被災労働者またはその遺族に対し所定の保険給付を行う制度である。
解説
強制加入

 労災保険は、1人でも労働者を雇用する事業所は事業開始の時点から強制加入が原則となっている(例外:農水産業の事業のうち5人未満の個人経営の事業などは任意適用)。その保険料は全額事業主負担である。

労働者とは

 労基法第9条には「労働者とは、職業の種類を問わず、事業場に使用される者で賃金を支払われる者をいう」と規定されている。従って派遣労働者やパートタイマーはもちろん、学生アルバイトもここにいう労働者である。
 また、建築関係など個人事業主や中小企業主も一定の要件を満たせば特別加入することができる(労災法第33条~第36条)。

労働災害の認定

 労働災害については、業務遂行性および業務起因性があったかどうかで判断される。『業務遂行性』とは、労働者が労働契約にもとづいて事業主の支配下(指揮命令下)にある状態であり、そのもとで、業務起因性があることによって労働災害であることが認定される。『業務起因性』とは、負傷・疾病・死亡と業務の間に因果関係があったか否かで判断される。例えば、業務中であっても同僚との間で私的なけんかをした場合には業務起因性があるとは認められない。あくまでも業務に起因することがポイントである。

<精神疾患に関する労災認定基準>
 うつ病などの場合については、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2011.12)にもとづいて判断される。
その主なポイントは、①心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)を定めた、
②いじめやセクシュアル・ハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として心理的負荷を評価することにした、
③精神科医の合議による判定を、判断が難しい事案のみに限定したなどの点である。

過労死の認定

 業務の過重やパワハラや違法な業務を命じられたなど具体的出来事によって、その強度の基準が示されている。とりわけ、時間外労働時間の長さにより判断される長期間の過重業務に関しては、発症前1カ月間におおむね100時間、または2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働があるとの状況が認められると、業務と発症の関連性が強いと評価される。
 労働時間の把握は使用者の義務だが、自己防衛術として、時間管理をしない事業所の場合、普段から自分で手帳やパソコンで出退勤について記録しておくことが必要であるとのアドバイスも有効である。

解雇制限原則

 使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業している期間とその後30日間は、労働者を解雇できない(労基法第19条1項)。この解雇制限は通勤災害には適用されない。

長期療養の場合

 療養開始後3年を経過しても治らない場合において、労基法第81条にもとづいて打切補償(平均賃金の1,200日分)が支払われたときは、解雇制限は解除される(労基法第19条第1項、第81条)。
 なお、療養開始後3年経過した時点で傷病補償年金を受けている場合には3年経過の時点、療養開始後3年以上経過してから傷病補償年金を受けることとなった場合は年金を受けることとなった時点で、上記の打切補償が支払われたものとみなされ、解雇制限は解除される(労災法第19条)。

請求手続き

 労働災害の申請は、医師の診断書など必要書類を添えて、被災者本人または遺族が労基署に対して請求する(請求内容によって書式が労基署に備えてある)。通常は、会社が労基署に対して代理申請するが、これは手続きを代行しているにすぎない。
 会社が証明を拒否する場合もあるが、その場合には会社の証明印がなくても、本人または遺族が労基署へ申請することもできる。

給付内容と手続き

 業務災害、通勤災害により療養し、休業する場合に支給される給付の内容とその手続きをまとめると、次の表のようになる。

区分 内容 手続
療養補償給付
療養給付
傷病の療養を行う場合に支給
  1. ① 療養の給付
    労災病院や労災指定病院などで無料で療養を受けられる現物給付 手続
  1. ① 療養の給付請求書を療養を受ける労災病院・労災指定医療機関を経由して所轄の労基署長に提出
  1. ② 療養の費用の給付 労災病院や労災指定病院等以外で受けた療養に要した費用の支給 手続
  1. ② 療養の費用請求書を所轄の労基署長に提出 (費用の額を証明する書類を添付)
休業補償給付 傷病の療養のため労働できず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合、休業等4日目以降、原則として、休業1日について給付基礎日額の60%を支給 休業補償給付支給請求書を所轄の労基署長に提出
休業特別支給金 休業(補償)給付を受ける者に対し、休業1日について給付基礎日額の20%を付加して支給 休業補償給付支給請求書を所轄の労基署長に提出
  • *労働者が就業中または事業場内等で死亡・負傷した場合は、労働者死傷病報告書を労基署長に提出する必要がある。
  • *休業3日目までは使用者が休業補償として平均賃金の60%を支払う義務がある(労基法第76条)。
通勤災害と業務災害の差異

 労災法上、通勤災害と業務災害は別個のものとされており、保険給付についても内容はほぼ同じであるが名称が異なっている。両者の主な相違点は以下のとおりである。

項目 通勤災害 業務災害
受療に際しての一部負担金 あり
  1. なし
待期期間中の休業補償義務 なし あり
休業中およびその後30日間の解雇制限
(労基法第19条)の適用(最長3年)
なし あり
年休の要件たる出勤率の算定に当たっての休業期間の取扱い 出勤とみなす必要なし 出勤とみなす必要あり
休業からの職場復帰

 心の健康問題で休業していた労働者の職場復帰にかかわる相談が増加傾向にある。厚生労働省は、心の健康問題の特性に応じた対応が必要であるとして、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者を対象として「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」というガイドラインを示している。

図 職場復帰支援の流れ
<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア
  • ア 病気休業開始時の労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出
  • イ 管理監督者によるケア及び事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • ウ 病気休業期間中の労働者の安心感の醸成のための対応
  • エ その他
<第2ステップ>主治医による職場復帰可能の判断
  • ア 労働者からの職場復帰の意思表示と職場復帰可能の判断が記された診断書の提出
  • イ 産業医等による精査
  • ウ 主治医への情報提供
<第3ステップ>職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

ア 情報の収集と評価

  • (ア)労働者の職場復帰に対する意思の確認
  • (イ)産業医等による主治医からの意見収集
  • (ウ)労働者の状態等の評価
  • (エ)職場環境等の評価
  • (オ)その他

イ 職場復帰の可否についての判断

ウ 職場復帰支援プランの作成

  • (ア) 職場復帰日
  • (イ) 管理監督者による就業上の配慮
  • (ウ) 人事労務管理上の対応
  • (エ) 産業医等による医学的見地からみた意見
  • (オ) フォローアップ
  • (カ) その他
<第4ステップ>最終的な職場復帰の決定
  • ア 労働者の状態の最終確認
  • イ 就業上の配慮等に関する意見書の作成
  • ウ 事業者による最終的な職場復帰の決定
  • エ その他
職場復帰
<第5ステップ>職場復帰後のフォローアップ
  • ア 疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
  • イ 勤務状況及び業務遂行能力の評価
  • ウ 職場復帰支援プランの実施状況の確認
  • エ 治療状況の確認
  • オ 職場復帰支援プランの評価と見直し
  • カ 職場環境等の改善等
  • キ 管理監督者、同僚等への配慮等

出所:厚生労働省、(独)労働者健康安全機構「心の健康問題より休業した労働者の職場復帰支援の手引き(2020年9月改訂)」(https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf)を元に連合編集

<参照条文>

労基法第19条第1項、第81条
労災法第3条、第19条、第33条~第36条

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