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労働相談Q&A

7.労基法の管理・監督者
Q
レストランの店長で、調理補助や会計、接客など、他のスタッフと同じように働いているが、「店長だから」と残業代がまったく支払われない。
A
「名ばかり管理職」であることが疑われる。労基法の労働時間規制の適用が除外される「管理・監督者」とは、店長やマネージャーなどの名称にとらわれず、就労の実態に即して判断される。
法律のポイント
労基法における労働時間、休憩および休日に関する規定は、「監督もしくは管理の地位にある者」は適用除外だが(労基法第41条)、この「管理・監督者」に該当するか否かをめぐりトラブル・紛争が多い。
解説
適用除外規定

 以下に該当する者は、労働時間、休憩および休日に関する規定が適用除外となる(労基法第41条)。

  • 農業、畜産・水産業の事業に従事する者
  • 監督もしくは管理の地位にある者、または機密の事務を取り扱う者
  • 監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者

 なお、高度プロフェッショナル制度の対象者は、労働時間、休憩および休日に加えて、深夜の割増賃金に関する規定も適用除外となるが(労基法41条の2)、「管理・監督者」に該当するとは限らない。(→18「高度プロフェッショナル制度」参照

管理・監督者とは

 「監督もしくは管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいうとされており、名称にとらわれず、実態に即して判断される(昭22. 9.13基発17号、昭63. 3.14基発150号)。

[管理監督者には当たらないとされた例]

  • 一般従業員と同じ賃金体系・時間管理下におかれている名ばかりの「取締役工場長」(橘屋事件大阪地裁判決昭40. 5.22)
  • 昇進前とほとんど変わらない職務内容・給料・勤務時間の「課長」(サンド事件大阪地裁判決昭58. 7.12)。
  • 出退勤の自由がなく、部下の人事考課や機密事項に関与していない「銀行の支店長代理」(静岡銀行事件静岡地裁判決昭53. 3.28)。
  • 材料の仕入・売上金の管理等を任されているが、出退勤の自由はなく、仕事もウェイター、レジ係等全般に及んでいる「レストラン店長」(レストラン「ビュッフェ」事件大阪地裁判決昭61. 7.30)。
  • 裁量権や待遇の面から見ても店長は管理監督者には当たらないと判断された(マクドナルド「名ばかり管理職」東京地裁判決、平20. 1.13、東京高裁で原告主張を認め平21. 3.18和解)。

[管理監督者に当たるとされた例]

  • 労働時間の自由裁量、採用人事の計画・決定権限が与えられ、役職手当を支給されている「人事課長」(徳州会事件大阪地裁判決昭62. 3.31)。
機密事務取扱者とは

 「機密の事務を取扱う者」とは、「秘書その他職務が経営者又は監督もしくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者」とされている(昭22. 9.13基発17号)。

監視・断続労働従事者とは
  1. ① 「監視労働」とは、原則として一定部署に在って監視するのを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ないものをいい、交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場等の監視等精神的緊張の高い業務、プラント等における計器類を常態として監視する業務、危険または有害な場所における業務は該当しない(昭22. 9.13基発17号等)。
  2. ② 「断続的労働」とは、実作業が間欠的に行われて手待時間の多い労働のことであり、手待時間が実作業時間を超えるかまたはそれと等しいことが目安とされている。
     また、実労働時間の合計が8時間を超えるときは、該当しないとされている(昭22. 9.13基発17号、昭23. 4. 5.基発535号)。
  3. ③ 使用者は、①②いずれの場合も行政官庁の許可を得なければならない。
残業代未払への対処 <証拠確保と請求>

 算定の裏付けとなる、労働時間管理記録、業務記録、就業規則等を確保し、その上で請求する。実労働時間を正確に記載していない虚偽の労働時間管理記録もよくあるので、注意を要する。労働時間管理記録が現実より過少に記載された虚偽内容の場合は、これを覆すための実質的な証拠収集が重要である。

※裁判上の請求では労基法第114条による付加金や遅延損害金等も請求できる。

賃金不払残業(いわゆるサービス残業)や裁量労働制に注意
  1. ① 日本の企業ではいわゆるサービス残業が広く行われており、労働者が実残業時間どおりの残業代を請求すると、昇進できなくなるなど不利益を被ることがある。これは違法なことであり、労組などによる集団的労使関係を通じて改善させるべきである。
  2. ② 日本の企業では管理職の肩書付の従業員が多く、実質的には労基法第41条の管理・監督者に該当しないのに、それに該当すると思わされている労働者が多い。労基法第41条の適用除外者に該当しなければ実労働時間にもとづいて残業代を請求できるので、このような誤解をとく必要がある。
  3. ③ 正しく残業代を算定するには、正しく実労働時間を計測することが必要である。企業によっては、裁量労働制(労基法第38条の3、第38条の4)を要件を満たさないのに違法に導入し、実労働時間の計測をしていないところもあるので、注意する。このような場合は、労働者自身に実労働時間の記録を作成させるなど工夫を要する。
時間管理

 いずれの場合も労働時間管理の責任は使用者が負う。

<参照条文>

労基法第38条の3、第38条の4、第41条、第114条

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