労働者派遣法改悪に反対する特別決議
労働者派遣法改正法案は、国会で法案に多くの欠陥が指摘されている最中で委員会質疑が打ち切られて採決され、9月11日の衆議院本会議で与党の賛成多数による成立が見込まれている。本改正は、派遣労働者の低処遇をそのまま放置し、常態的な間接雇用を導入するもので、同法制定以来の大改悪とも言える改正である。
振り返れば、昨年の通常国会以来3回にわたる法案提出をはじめ、異例ずくめの異常な法改正であった。派遣業界の要望を色濃く反映した厚労省研究会の報告、労働政策審議会部会への派遣業界のオブザーバーの参加と圧倒的な発言量、厚労省による法案の条文ミス、与党からの突然の修正提案、同省による「法案が通らないと大量の失業者が発生する」とのミスリード文書の配布など、その度に幾度も国会審議が混乱した。また、衆議院では、野党の対案であった「同一労働同一賃金推進法」は提出者の知らぬうちに与党などによって修正された。参議院では、法案の施行日を過ぎても内閣から修正案が出されないまま審議が続行され、結局与党から修正案が出された。そして、大規模な改正にもかかわらず周知期間がほとんどないまま施行日を迎えることとなる。政府・与党がなりふり構わず改正に突き進む姿は異様というしかない。
3回の国会審議を通じて、質疑が進めば進むほどに法案の問題点や矛盾が次々と露呈してきたにもかかわらず、安倍総理は「派遣労働者の正社員化と処遇改善を進める法案」と、法案でなんら担保されていない的外れな答弁を繰り返すばかりであった。政府・与党からは、審議で明らかになっている課題に答える誠実さや真摯な姿勢は全く見られず、むしろ、3年前に民主・自民・公明三党が合意して本年10月1日まで施行を遅らせてきた労働契約申し込みみなし制度を、なんとしても骨抜きにしようとする政府・与党の姿勢が鮮明となった。
政府・与党がルール無視で産業界優先の法改正に突き進むその間にも、法改正を先取りして、専門26業務で働く派遣労働者が雇い止めを通告される事態が続出している。
施行日までわずか3週間という短期間に政省令等の改正の議論を労政審で行い、関係者への周知徹底を図らねばならないのは、まさに異常事態である。極めて短い周知期間しか置かずに改正法を施行することで、派遣労働者等に不利益を招くようなことは絶対にあってはならず、厚労省に対し責任を持った万全の対策を講じるよう強く求める。
なお、国会での民主党をはじめとする野党の追及の結果、与党による施行日以外の法案修正と39項目に上る附帯決議が行われた。これらは、ほぼすべてを労働者保護の強化を求める内容が占めている。今後は厚労省において、こうした国会の要請に真摯にこたえ、法の施行や検討を行っていかなければならない。
本改正法は、企業が“安くて、切りやすい”労働力を確保しやすくするとともに、派遣労働を常態化させてマージンを取り続けたいとする業界利益のための法改正に他ならない。派遣元・派遣先の使用者側の主張に偏った厚労省の姿勢は、労働行政を司る行政機関としてあるまじきものである。今回の異常な法改正を反省し、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図るという任務に立ち返り、法律名の通り、「派遣労働者の保護」の実効性を検証し、労働者保護を強化する法改正の検討に直ちに入るべきである。
我々は最大のナショナルセンターとしてすべての労働者を擁護する立場、そして派遣先・派遣元で労使交渉や意見反映を行う当事者としての責任をあらためて重く受け止め、真に労働者のための法改正に臨んでいくとともに、派遣労働者などすべての労働者の労働環境の改善に全力を注いでいく。
2015年9月10日
連合 第24回中央執行委員会