多様性と包摂 Diversity & Inclusion

2020年6月12日

「多様性」と「包摂」、これは連合がめざす社会のキーワードだ。

コロナ禍で「分断」と「孤立」の課題が浮き彫りとなる中、私たちは改めて何をするべきなのか。様々なデータから探ってみた。

働く人々の多様化が進んでいる。同時に働き続ける上での課題も多様化している。

世界に先駆けて高齢化社会に突入した日本。今後、少子化に伴う人口減少により、いわゆる現役世代と呼ばれる生産年齢人口(15〜64歳)は大幅に減ることが推計されている。2065年には高齢者1人を支える現役世代は1.3人となり、社会保障制度と地域社会の持続性、経済成長などが危ぶまれている。

政府はこれまで労働力の量的確保にむけて、女性活躍推進、高齢者・若者雇用促進、外国人材の受け入れなどを行ってきた。一方で、質的確保として時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金などの職場環境改善策も講じてきた。その結果、グローバル化も相まって、多くの職場で働く人々の多様化は急速に進んでいる。しかし、労働力確保で進められてきた多様化に職場は果たして対応しきれているのだろうか。

連合は、結成30周年にあたり中長期の羅針盤として「連合ビジョン」を策定、「持続可能性」と「包摂」を基底に、年齢や性、国籍の違い、障がいの有無などにかかわらず多様性を受け入れ、互いに認め合い、誰一人取り残されることのない社会をめざすことを確認した。

2020春季生活闘争では多様性あふれる参加者がトークライブ

 

その矢先に、コロナ・ショックが起きた。連合には連日多くの相談が寄せられている。感染に怯えながら働くアルバイト、休校で仕事を休まざるを得ない親、収入減に悩むフリーランス、解雇された外国人労働者、コロナ・ハラスメントに悩む医療従事者など。

感染予防として、柔軟な働き方が急速に進む一方で、コロナの影響で解雇や雇止めされた人は、見込みを含め、5月中旬で7000人を超える。戦後最大の経済危機と言われる中、すでに多様化した働く現場は、また新たな局面を迎えようとしている。

 

現在、日本で働く人々は6700万人。そのうち、役員を除く5700万人が会社などに雇用されている。

女性割合はいずれも45%と増加傾向だが、管理職は未だ少なく、働く女性の過半数は非正規雇用である。

 

非正規雇用で働く人々は近年男女ともに増えており、この20年で2倍となった。特に65歳以上の高齢者は5倍増と突出している。

 

65〜69歳の就業率は男性52・9%、女性33・4%と他国と比較しても高い。

 

働く高齢者が増える一方で、介護しながら働く人々もこの5年間で60万人増の300万人となっている。

 

働く人々の高齢化は、医療の発展もあり、治療しながら働く人々の増加にも影響をおよぼしている。がんで通院しながら働く人々は少なくとも33万人いると推計され、近年増えているメンタルヘルスなど、治療との両立も多種多様である。

 

 

障がい者雇用では、義務の対象に精神障害が加わり、障がいを持ちながら働く人々は56万人とこの15年で倍増した。

 

働く人々が多様化する中、最も急増しているのは外国人労働者で、この10年で3倍の146万人となった。

 

グローバル化が急速に進み、多様な価値観を認め合うことが求められる中、いわゆるセクシュアル・マイノリティと呼ばれる人々の存在も顕在化してきた。連合をはじめ、各種調査で当事者は8%いるとされている。

 

月刊連合では、「真の多様性」をテーマに働く人々の立場に立った多様性の実態と課題について、シリーズで考えていく。第一弾は未だ世界から大きく後れを取っている日本のジェンダー平等について考える。

 

連合の取り組み

誰もが尊重される社会の実現を

井上久美枝 連合総合政策推進局長

 

連合が、なぜ6月を「男女平等月間」に設定して取り組みを行っているのか。これは、1985年6月に男女雇用機会均等法が公布されたことによる。それを記念し、翌年から厚生労働省が6月を男女平等月間と定めて周知・啓発を行ってきたとともに、内閣府が毎年6月23日〜29日の1週間を「男女共同参画週間」としている。

そして連合も、2004年より6月を「男女平等月間」に設定し、男女平等参画の重要性について、組合員への理解や組織内の合意形成、女性活躍推進の気運を高めるなど、時々の課題をテーマに取り組みを行ってきている。

2020年連合「男女平等月間」ポスター

 

今年は、仕事の世界におけるあらゆるハラスメントと暴力の禁止、均等待遇の実現、一人ひとりが尊重された多様性社会の実現などを掲げているが、この数年、取り組むテーマが「男女平等」から「ジェンダー平等」へと、領域が拡がっている。

未だ、男女間賃金格差は解消せず、女性の指導的地位に占める割合があらゆる分野において約1割程度など、日本における「男女平等」は実現していない。一方で、性別・年齢・国籍・障がいの有無・就労形態にかかわらず、誰もが多様性を認め、尊重される社会の実現が求められている。

2016年3月の中央執行委員会において、「性的指向・性自認に関する差別禁止に向けた連合の当面の対応について」を確認したことは、連合が多様性の課題への取り組みに舵を切ったターニングポイントといえるだろう。当初は、「労働組合が取り組むには時期尚早」との批判的な意見もあったが、いまや、国際的に見ても「多様性」はメインストリームになっている。組合員や職場の意識も変わり、攻めの姿勢になってもらいたい。

また、今回何より重きをおいているのが、2013年10月に取り組みを開始し、この9月に計画期間満了を迎える、連合「第4次男女平等参画推進計画」達成に向けたラストスパートだ。連合のめざす男女平等参画社会の理念を示した上で、3つの目標(女性の活躍推進、仕事と生活の調和、多様な仲間の結集と運動の活性化)と数値目標を掲げ、連合全体で取り組みを進めてきたが、未達成となる極めて厳しい見通しとなっている。この間、計画は着実に進んではいるものの、4次計画に至るまで一度も目標をクリアしたことがない。結成30年を迎えた連合の本気度が試されている。不退転の決意で取り組む。

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合5・6月合併号」をWEB用に再編集したものです。