働く者の立場で「働き方改革」を進めよう!①長時間労働の是正へ

2017年7月7日

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「働き方改革実行計画」を受けて、長時間労働是正の具体策を検討してきた労働政策審議会は6月5日、報告「時間外労働の上限規制等について」をとりまとめた。時間外労働の上限規制、勤務間インターバル、労働時間の客観的把握のほか、36協定の適正化に不可欠な過半数代表者の課題についても方向性を示す内容だ。
連合は6月14日、都内で「長時間労働の是正に向けた行動開始宣言集会」を開催。早期の法改正実現と職場の取り組み強化の運動をスタートさせた。

 

罰則付き上限規制の意義は大きい

主催者代表あいさつで神津会長は、議員を務めた「働き方改革実現会議」において長時間労働是正に関する「労使合意」に至った経緯を報告。「70年を迎える労働基準法の歴史の中で、罰則付きの時間外労働規制が実現する意義は大きい。早期の法制化を求めるとともに、職場での取り組みを通じ実効性を高めていくことが重要だ。

また、この動きを、今回別の基準となった運輸業、建設業や、教職員の長時間労働是正にもつなげていかなければならない。労使関係を通じて徹底的に話し合い、解を見出して世の中を改善していく。今日の集会をこれからの運動に向けた心合わせのスタートとしたい」と述べた。

続いて逢見事務局長が、4月から急ピッチで行われてきた労働政策審議会の議論と、とりまとめについて報告。「時間外労働の原則上限時間を月45時間・年360時間と規定し、特別条項を結んでも超えられない上限を年720時間とする。指針に時間外労働、休日労働の抑制を盛り込むとともに、労働時間等設定改善法に勤務間インターバル制度を努力義務として規定し、すべての労働者を対象に労働時間の客観的把握を省令で規定する、という内容で、労働者側委員が求めた過半数代表者の選出手続き適正化も反映させることができた」と評価した。

また、世論喚起の取り組みとして、『0からはじめる36協定ハンドブック』の作成配布、テレビ・ラジオCMの作成、地方連合会労働時間街頭アンケートなどを紹介。「労働組合は先頭に立って、働き方改革の名に値する職場環境の改善に取り組んでいこう」と呼びかけた。

 

業務を見直し、生活時間を取り戻す

続いて、渥美由喜東レ経営研究所主任研究員が登壇し、『長時間労働是正の必要性と労働組合が果たす役割への期待』と題して次のとおり講演した。

◎要旨

「働き方改革」を単なる「働き過多改革」にしてはいけない。労働時間を削減して生み出される時間とは、決して「仕事をしない」というだけの時間ではない。来たる人口減少社会においては、職業人としてだけでなく、家庭人、地域人としても社会に貢献していく「市民の三面性」がますます求められる。そういう人が増えなければ、地方創生の活力も生み出されない。企業にもまた、地域に貢献する「公共性」、さまざまな事情を抱えながら働く社員一人ひとりの人生に責任を持つ「人間性」が求められる。

そのために必要なのが長時間労働の是正だ。生活時間を取り戻し、家庭人、地域人としてワーク・ライフ・バランスを実現する。それは、同時に将来会社に利益をもたらすタネを見つける時間であり、リフレッシュしてまた仕事に真摯に向き合うための時間でもある。

長時間労働是正のために、今すぐ職場でやるべきことは、業務の見直しだ。ポイントは「や・か・ま・し・い」。やめる業務はないか、簡単にできないか、真似をできないか、してもらえないか、一緒にできないかという視点で、不必要な業務を発見し、もっと質の高い業務に振り分けていく。

最近、「労働時間にとらわれない成果に応じた報酬」といった言葉をよく耳にするが、実際に成果に応じた報酬が支払われているのは、プロスポーツの世界くらいだ。働き方改革を進める上で、「労働時間把握」はむしろますます重要になる。削減すべきはムダな労働時間であり、奪われてきた生活時間を働く者一人ひとりが取り戻し、それを生かせるように職場に喝を入れる。それが労働組合の役割だ。業務改革を推進すれば、やる気が高まり、人材が確保でき、業績がアップする。働きがいのある職場にこそ、人が集まる。

そして職場を変えるキーワードは、「制度」「風土」「リード」だ。そのうち「リード」とはその気にさせるという意味だ。共感の連鎖を起こすには、「1:2:4:8の法則」を頭に入れておくといい。指示されてやると1の成果が、納得して参加すると2になり、企画段階から手伝うと4になり、共感・共鳴し自ら実践すると8になる。

これから、労働組合が果たすべき役割を一言でいえば、企業をニューフロンティアに導くJFKだ。Jは自警。職場の権利を確保することが、企業不祥事を防止し、結果的に企業を救う。Fは俯瞰する視点。短期的利益を追求する経営に対し、持続可能な経営のための視点を提起する。そして、こうした取り組みには、Kすなわち葛藤と格闘し続ける覚悟が求められる。

今回の働き方改革で罰則付きの時間外労働上限規制が課されることになったが、一方で、裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の創設などの動きが強まることも懸念される。そうした悪しき動きに対して、最後の砦となるのも労働組合だ。

職場で困っている人がいたら、ぜひ手を差し伸べる覚悟を持ってほしい。そして、この機運を生かし、誰もがずっと働き続けたいと思える職場を実現してほしい。

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渥美 由喜| あつみ・なおき |

東レ経営研究所主任研究員1968年生まれ。東京大学法学部卒業後、(株)富士総合研究所、(株)富士通総研を経て、2009年(株)東レ経営研究所に入社。専門は、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ、少子化対策、社会保障制度、家計消費など。プライベートでは2児の父親として育児休業を2回取得。父の介護も担いながら、ライフワークとして「こども会」のボランティア活動も続ける。

 

 

健康で安全に働き続けられるルールを

構成組織の取り組みとして、U‌Aゼンセンの松井常任中央執行委員は、「労働時間は業種や職種間の格差が大きく、流通部門は製造部門より年間で約160時間も長く働いている。そこで、業種ごとに共通要求を設定し改善を進めている」。情報労連の柴田書記長は、「I‌T業界では、多重請負、多段階工程、無理な納期設定が常態化している。

時短の産別目標を設定するとともに、36協定の上限時間を超える場合の労使協議の徹底、勤務間インターバル制度導入促進などを進めている」と報告。連合雇用法制委員会委員長の岸本副会長(電力総連会長)は「労使がギリギリで合意した内容はスタート地点。ここを確実に法律に刻み込むことが次の展開を拓く道だ。働くことで命や健康が犠牲になることを決して見過ごしてはいけない」と訴えた。

最後に、福澤連合中央執行委員の提起による行動開始宣言を満場一致で確認し、川本連合会長代行の音頭による「がんばろう三唱」で閉会した。

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職場環境を改善できるのは、集団的労使関係

政府の「働き方改革実行計画」を受けて、①時間外労働の上限規制など労働基準法等の改正、②いわゆる「同一労働同一賃金」の法制化として、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正が、労働政策審議会で示された。

いずれも、法改正の早期実現が重要であるが、法律を改正しただけでは職場は変わらない。労働時間については、職場の実態を踏まえて36協定の締結内容を労使で真剣に議論し、業務のやり方の見直しなども含めた対応が求められる。併せて重要な点は、労働時間の把握と適正な管理を労使で徹底していくことである。厚生労働省は、2016年末の「過労死等ゼロ緊急対策」を踏まえて、通達として「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を2017年1月に発出している。ここでは、労働時間の概念や客観的な把握が必要であることなどが示されており、参考にして、労働時間の管理・把握を適正化することが必要である。

また、「同一労働同一賃金」として、雇用形態に関わらない均等・均衡待遇原則が法制化されるが、同じ職場で働く非正規雇用労働者の実態や声も受け止めた上で、より納得性のある処遇にしていくことが重要である。その際には、組合への加入にも積極的に取り組むことが求められる。

「働き方改革」を一過性のキャンペーンに終わらせず、本物にしていくには、私たち労働組合が役割を果たすことが必要だ。すべての労働者が、働きがいをもって、安心して働き続けられる社会の実現は、集団的労使関係の力にかかっている。

村上 陽子
連合総合労働局長

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※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2017年7月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

 

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