第4次産業革命の波に向けて、企業のイノベーションを支援

2016年9月1日

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今年6月、連合は「2017年度 連合の重点政策」を決定し、さらにそこから優先度の高いものを絞り込んだ7つの「最重点政策」を設定した。そのうちのひとつである、「第4次産業革命」への対応について解説する。

主な政策として、「IoT (Internet of Things ※1)、ビッグデータ(※2)、人工知能(AI)等の企業におけるイノベーションによる新たな価値の創出に向けた設備投資や研究開発の支援」や、「サイバー攻撃に対して産官学が協力し対策を講じるとともに、早期の情報共有や技術開発、人材育成などを行うこと」に加えて、「働く者の学び直しの機会の拡充、企業の職業能力開発に対する支援強化など、中長期的なキャリア形成支援やワーク・ライフ・バランス推進のための環境整備を行うこと」があげられる。

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背景にあるのは、「第4次産業革命」とも呼ばれる新たなイノベーションの大波だ。ドイツでは、「Industry 4.0」の名のもとに製造業の国際競争力強化に向けた政策が進められており、それに対応した労働のあり方を探る「Work 4.0」の議論も始まっているという。働く人々への影響に対する懸念の声が上がる中、労働組合はどのように考え、対処していくべきか。その問いに答えるためにも、まずは世界で何が起きているのか、整理していこう。

身近で進行する第4次産業革命 

「第4次産業革命」と言われる大きな潮流の推進力となっているのは、飛躍的に進化する、IoT・人工知能、ビッグデータなどの技術革新だ。それは、すでに私たちの身近なものになっている。ネットにつながるスマート家電、自動運転車、インターネットの検索エンジンやショッピングサイト、フェイスブックなどのSNSや迷惑メールフィルターなどを可能にしたICT(※3)が、従来にないスピードとインパクトで進行している。

しかも、それは単なる技術革新にとどまるものではなさそうだ。「産業革命」という言葉には、人類の歴史の中で画期をなすという意味が込められている。18世紀、蒸気機関の発明によって起きた第1次産業革命では、工場の機械化が実現して英国が「世界の工場」となり、「労働者」が生まれた。20世紀初頭には、電力活用による第2次産業革命で大量生産が可能になり、米国ではフォードシステムが構築され、中産階級が形成された。20世紀後半の第3次産業革命においては、電子化による生産ラインの自動化が実現し、日本の製造業が競争力を高めた。いずれの「産業革命」においても、生産システムの変革は、経済・金融・政治・社会のシステム、労働や暮らし、教育のあり方に大きな影響を与えてきた。そういう意味で「第4次産業革命」も、歴史の画期となる可能性を持つものとしてとらえたほうがよさそうだ。

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職場の変化と働く人への影響 

第4次産業革命は、生産システムをどう変えるのだろうか。生産現場では、ネットワークでつながれた機械同士が連携して作業する「Machine to Machine(マシーン・トゥー・マシーン)」や、遠隔操作などによる工場のスマート化により、大幅な効率化が期待されている。サプライチェーンとの取引や、販売部門でもビッグデータを活用した業務連携が進んでいくと考えられている。

これにより、毎日職場に出勤し、終業時間が来たら退社するという働き方も変わるだろう。より安全で快適な場所から、遠隔操作で生産ラインの管理ができるようになり、在宅勤務なども広がるだろう。新たな仕事が生まれ、機械で代替が可能な仕事が増えていく中、これらを人の手でどのようにコントロールしていくか、人材育成や教育訓練、労働移動に対するルールの設定や支援がより重要になることは間違いない。

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つまり第4次産業革命が進めば、国内外問わず、企業間、サプライチェーンを超えたネットワークが構築され、国外の企業とも連携した製造が可能になってくる。「第4次産業革命は、日本にとって産業競争力の強化や市場拡大につなげることができるのではないか」というのが、連合の最重点政策の問題意識だ。そして、必要な設備投資や研究投資を促進し、誰も取り残されることがないよう、中小企業や働く人たちへの支援強化を求めている。

産官学労の連携が重要

第4次産業革命への対応では、ドイツが一歩リードしているようだが、実は世界各国でも対応を始めており、日本政府も例外ではない。

「日本再興戦略2015」には「IoT・ビッグデータ・人工知能等による変革が従来にないスピードとインパクトで進行している」との認識が示され、昨年8月に産業構造審議会に新産業構造部会が設置された。部会では、変革の姿と可能性や状況、ビジネスチャンスの可能性、官民が行うべき対応について検討され、連合も労働者の立場から提言を行った。今年4月には、「新産業構造ビジョン~第4次産業革命をリードする日本の戦略」という中間整理がまとめられている。

第4次産業革命に的確に対応するためには、政府と研究機関、産業界、労働組合などが連携して、総掛かりで取り組む必要があるといえそうだ。

※1 IoT(Internet of Things/モノのインターネット)
世の中に存在するさまざな物体に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。身近な例として、スマートフォンによる外出先からの家電の操作などが挙げられる。

※2 ビッグデータ
インターネットの普及や、コンピュータ・人工知能の処理速度の向上などに伴い生成される、大容量のデジタルデータのこと。

※3 ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)
情報・通信に関する技術の総称。「IT(Information Technology)」とほぼ同義の意味だが、国際的にはICTのほうが一般的で定着している。

 

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2016年8・9月合併号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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