道幸せんせいと ワークルールを学ぼう! テーマ: 最低賃金制度

2018年8月22日

日本の最低賃金のいちばんの問題は、その水準が低いことだと指摘されている。中央最低賃金審議会は、今年度の地域別最低賃金の引き上げ額の目安として、過去最大の26円(平均)を提示した。最低賃金の引き上げをクラシノソコアゲにつなげていくために、制度のポイントを学んでおこう。

解説

最低賃金を下回る賃金の支払いは許されない

最低賃金制度は、労働者の生活の安定、労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保などを目的とします。最低賃金(最賃)は、地域ごとにすべての労働者に適用される地域別最賃と特定の産業に働く人に適用される特定(産業別)最賃があります。いずれも都道府県ごとに決まっているのでⒶは間違いです。

最賃額の決定は、地域における労働者の生計費、賃金の上昇率、通常の事業の賃金支払い能力を考慮して決められます。同時に生計費の決定に当たっては「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」と定められています(最賃法9条)。

また、最賃額未満の賃金支払いは許されず、労働者は実際に支払いを受けた額との差額を請求できます(最賃法4条)。この規定は強行法規なので、それに反する労使協定があっても請求は認められます。そのため、Ⓓは間違いです。また、最賃制度の対象はすべての労働者なのでパートや学生アルバイトもその対象となります。つまり、Ⓒも間違いです。

最賃法は、最賃額との差額の支払いを命ずるとともに、最賃額の不払いについては50万円以下の罰金を科しています(最賃法40条)。よって、Ⓑは正しい説明です。

[正解] Ⓑ

 

道幸哲也 どうこう・てつなり
(一社)日本ワークルール検定協会 代表理事、北海道大学名誉教授

北海道大学大学院法学研究科修士課程修了。小樽商科大学商学部助教授、北海道大学法学部教授、放送大学教授などを歴任。2007年、NPO法人職場の権利教育ネットワークを設立。「ワークルール検定」の立ち上げに尽力し、2013年に設立された検定協会の代表理事に就任。著書に『不当労働行為救済の法理論』(有斐閣)、『15歳のワークルール』(旬報社)など。