【戦後70年とこれからの平和運動】
戦後70年を迎える今年の連合平和運動のキーワードは「次世代への継承」。
太平洋戦争における沖縄戦が終結した沖縄の「慰霊の日」6月23日を前に、平和4行動をどう展開していくのか。
山根木連合総合組織局長に聞いた。
─今年のテーマは「次世代への継承」…。
次世代に戦争体験を語り継ぐ上で、「戦後70年」は非常に重要な節目だ。「語り部」の方々は、80歳、90歳を迎え、「今伝えなければ」という一心で活動されている。理不尽な戦争の体験、二度と戦争をしてはいけないとの思いを、これからどう次世代に継承していくのか。これは国民全体で考えなければいけない課題であり、現役世代の責務だ。私たちは直接戦争は知らないけれども、祖父母や親など戦争を体験した世代と同じ時代を生きてきた。その記憶や教訓を受け継いで、つぎの世代にバトンタッチしていく責任がある。労働運動としても、なぜ労働組合が平和運動に取り組むのかを含めて、運動の継承は大きなテーマになる。
世界平和と結社の自由
─なぜ、平和運動に取り組むのか?
平和で安定した社会があってこそ、安心して働き、生活し、労働組合活動をすることができる。この大前提を守るために労働運動は平和運動の先頭に立つ必要があるのだが、それは労働組合の存在意義に関わることでもある。
ILO(国際労働機関)は1919年、第一次世界大戦の反省に立ち、社会正義を基礎とした世界平和の確立に寄与することを目的に設立された。しかし、ふたたび第二次世界大戦が勃発する。ILOは1944年、二度と戦争を起こしてはならないとの決意を共有し「フィラデルフィア宣言」を採択した。「労働は商品ではない」「一部の貧困は全体の繁栄にとって危険である」と。そして「結社の自由及び団体交渉権」を中核的労働基準と位置づけ、労働者が団結してその権利と労働条件を守ることで貧困や格差など戦争につながりかねない問題を解消し、平和を実現していこうと今日まで活動している。
この原点を考えれば、労働組合はメンバーシップのみを代表する組織であってはならないことはよくわかる。すべての労働者を包摂し、その雇用と生活を守り、格差や貧困を解消し、社会正義を追求する、まさに「人間の安全保障」の担い手であるといっても過言ではなく、だからこそ、団結する権利が擁護されているのだ。
そしてもう一つ、労働組合が求める「平和」とは、武力を背景とするものではなく、対話や相互理解によって実現していくものであることも確認しておきたい。世界情勢が不安定化している時代だからこそ、労働組合の役割は大きい。世界の労働運動と手を携えて、その役割を果たしていくことが求められている。
見て、聞いて 心が揺さぶられる体験を
─6月から平和4行動が始まります。
キックオフとなる6月23日からの沖縄行動では、連合沖縄、連合広島、連合長崎、連合北海道の青年委員会代表によるパネルディスカッションを企画している。さらに各地で、青年委員会を中心に「戦後70年とこれからの平和運動」をテーマに学習会やイベントを開催し、全国の仲間に親子での参加を呼びかけていく。また、これまでの運動で蓄積を生かし、「語り部運動」のDVDや4行動が具体的にイメージできる「平和検定」などの器材も作成中だ。新しいことを知ると誰かに話したくなる。職場や地域に「プチ語り部」がたくさん生まれ、連合の平和運動が身近なものになってくれればうれしい。
平和4行動は、それぞれその先にある政策課題を明確にし、その実現を意識したものでなければならない。願う平和から、叶える平和へ。沖縄のテーマは、米軍基地の整理・縮小と日米地位協定の抜本的見直し。さらには沖縄の負担軽減だ。広島・長崎は、核兵器廃絶と被爆者援護。北海道は北方領土返還だ。
日本の国土のたった0.6%の沖縄に在日米軍施設の74%が集中している。それがどういうことなのか、現地に行けば実感できる。戦後70年にもなるのに北方領土の島民はふるさとに帰れない。島々が目と鼻の先に見える納沙布岬に立てば、その望郷の思いが胸に迫ってくる。広島、長崎の爆心地に立てば、核兵器廃絶にどれほど強い思いが込められているのかがわかる。やはり見ないと、聞かないとわからない。他人事ではなく自分事として受け止め、受け継いでいくには、知識だけでなく心が揺さぶられるような体験が大切だと思う。
戦争を遠い過去の出来事として封じ込めてしまってはならない。戦前・戦中・戦後と時代は地続きで今に続いている。戦争の後遺症に苦しむ人たちがいる。世界を見れば戦火が途絶えたことなど未だにない。今の日本に生きる者として、それをどう感じるのかが、問われている。
山根木晴久
連合総合組織局総合局長
※各地域からの平和へのメッセージ
沖縄「戦後70年 悲劇の記憶を語り継ぐ」
※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年6月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。