日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸
1.条約採択に向けて大きな前進、国内法整備に期待
6月8日、国際労働機関(ILO)は、スイス・ジュネーヴで開かれていた第107回総会において、条約と勧告による補完を内容とする「仕事の世界における暴力とハラスメント」基準設定委員会の報告を採択した。#MeToo運動が日本にも広がりを見せ、世界共通の課題としてハラスメントの根絶が求められる中、今回の委員会報告採択は、来年のILO総会における条約採択に向けた大きな前進として評価するとともに、日本国内の法整備がめざす方向性として期待できる。
2.ハラスメントと労働者の定義、禁止規定などが盛り込まれる
委員会では、2016年に実施されたILO調査や専門家会議報告、2017年の加盟国政労使の意見聴取などにもとづき策定された結論案をたたき台に、議論が行われた。採択された報告は、「文書の形式」を条約と勧告による補完とした上で、「暴力とハラスメント」を身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす許容しがたい行為などと定義し、対象となる「労働者」に契約上の地位にかかわらず働く人々も含め、「加害者および被害者」には取引先や顧客などの第三者が盛り込まれた。また、加盟国は仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止するための国内法令を採択するべきとしている。
3.包括的な内容を評価しつつ、LGBT等のリスト削除は遺憾
連合を含めた労働側は、必要な内容が適切に盛り込まれた結論案を支持しつつも、より多くの政府の支持が得られるように柔軟性を持った対応で議論に臨んだ。その結果、ハラスメントや労働者の定義について、包括的な内容が確認されたことは評価する。また、ハラスメント禁止規定が盛り込まれたことは日本の国内法整備の前進につながるものとして期待したい。一方で、「条約の内容」から、LGBTを含めハラスメントの影響を受けやすいグループのリストが削除されたことは極めて遺憾である。
4.あらゆるハラスメントの根絶をめざして、条約採択と国内法整備を
今後、ILOは、加盟国政労使の意見聴取を経て、その結果にもとづき修正された草案を来年のILO総会で議論し、3分の2の賛成で条約採択となる。連合は、引き続き国際労働組合総連合(ITUC)とともに「STOP!仕事におけるジェンダーに基づいた暴力」キャンペーンを展開し、ILO条約採択と批准に向けた国内法整備を求めていくとともに、あらゆるハラスメントの根絶に向けた取り組みを強化していく。
以 上