「曖昧な雇用」の問題点が見えてきた!

2020年4月6日

約8割が不安を抱えて働き

半数が低い報酬や無理な注文などのトラブルに遭遇

雇用と自営の中間的な働き方や、業務委託、請負、フリーランスなど、従来の労働関係法令では保護の対象とならない「曖昧な雇用」で働く人が増えている。インターネット上には仕事を仲介するマッチングサイトやアプリなど様々なサービスが登場し、利用者が拡大している。

連合は今年1月、「ネット受注をするフリーランス」を対象に調査を実施。どんな仕事をしているのか、働く時間や収入はどうなっているのか、どんなトラブルに直面しているのか、その実態の一端が明らかになった。

「副業」が44.8%を占め、仕事内容は「データ入力」がトップ

働き方の位置づけは、「専業」が37.5%、「本業は別にあり、副業として行っている」が44.8%、「本業を決めず複数就業の一つとして行っている(以下、「複業」)」が17.7%。世代別では、50代以上で「専業」比率が高く、若い世代では「副業」が多い。

受注している仕事の内容は、「データ入力作業」(29.8%)が最も多く、次いで、「文書入力、テープ起こし等」(17.7%)、「添削、校正、採点」(12.2%)、「原稿・ライティング・記事等執筆業務」(6.6%)、「取引文書作成」(6.4%)。

 

 

平均は1週3.7日、1日4.5時間

1週間あたりの平均労働日数は、「5日」が24.3%、「3日」が17.4%、「2日」が16.3%。専業では、約6割が週5日以上働いている。1日あたりの平均労働時間は、「2時間未満」(26.1%)や「2時間以上〜4時間未満」(21.4%)、「4時間以上〜6時間未満」(21.3%)に回答が集まり、平均は4.5時間。

 

約4割が平均月収「5万円以下」

平均月収(税込)は、「5万円以下」が40.8%と最も多く、「50,001円〜100,000円」が25.2%と続くが、「30万円超」も9.9%を占め、平均は105,410円。働き方別にみると、専業では「30万円超」が23.2%を占めるものの、約4割は「10万円以下」の収入しか得ていない。「5万円以下」が副業では56.9%、複業では44.6%と多数を占めているのが実態だ。平均月収額は、専業168,600円、副業60,201円、複業85,960円。専業者の世代別収入は、20代・30代では「5万円以下」、40代以上では「30万円超」に最も多くの回答が集まり、世代による差が大きいことがわかった。

 

トップは「収入を増やしたかったから」

フリーランスを選んだ理由は、「収入を増やしたかったから」(44.9%)、「自分のペースで働く時間を決めることができるから」(42.0%)が上位。世代別にみると、20代では収入アップやキャリアアップが重視され、60代以上では、自分のペースで働けることや専門的な技術や資格を活かせることが上位にきている。

 

不安定な収入など8割以上が不安を抱えている

働く上で「不安に思うことがある」との回答は80.9%。特に30代で高く、9割を超える。最も多い不安は、「収入が不安定、低い」の48.2%で、「納期や技術的になど無理な注文を受ける可能性がある」(22.7%)、「報酬がきちんと支払われるかわからない」(22.1%)、「報酬額や条件がクラウド・ソーシング事業者や発注者に一方的に変更される可能性がある」(21.1%)、「仕事がない場合、失業手当のような保障がない」(20.4%)と続く。

 

半数以上が報酬などに関するトラブルを経験

実際にトラブルも起きている。その遭遇率は50.6%と半数を超え、20代では7割を超える。具体的には、報酬をめぐるトラブルが圧倒的に多く、「不当に低い報酬額の決定」「報酬支払いの遅延」「報酬の不払い、過少払い」「一方的な報酬額の引き下げ」が起きている。また「無理な注文」「一方的な仕事の取消し」「内容の一方的な変更」「継続的な発注の打ち切り」なども少なくない。

トラブル対処として労働組合への相談も

では、こうしたトラブルにどう対処したのか。「不当に低い報酬額の決定」「一方的な報酬額の引き下げ」では「第三者(行政機関、労働組合など)に相談した」(それぞれ31.7%、42.7%)、「報酬の不払い、過少払い」では「クラウド・ソーシング事業者に連絡・交渉した」(36.2%)、「納期や技術的になど無理な注文」「報酬の支払いの遅延」では「発注者に直接交渉した」(それぞれ32.8%、57.5%)が最も高かった。一方で「何もしなかった」という回答も1割前後あった。

 

3割がトラブルの場合の取り扱いを決めずに受注

受注にあたっては、クラウド・ソーシング事業者や発注者と仕事の内容やトラブル発生時の取り扱いなどについて約束を取り交わしておくことが望ましいが、実際には「取り交わしていない」との回答も多く、「業務内容」で20.3%、「トラブルの場合の取り扱い」で36.3%が約束を取り交わしていない。

クラウド・ソーシング事業者の利用状況別にみると、全体的に非利用者で「取り交わしていない」比率が高い。また、仕事の詳細や遂行に関して誰から指示や命令を受けているのか聞いたところ、「報酬の支払い」については「クラウド・ソーシング事業者」が51.9%を占めるが、仕事の内容や納期などについては、半数近くが「発注者」から指示を受けていると回答。

書面での契約がトラブル回避に有効

約束の取り交わし方によるトラブル遭遇率を分析すると、「不当に低い報酬額の決定」というトラブルを経験した人の割合は、「業務開始前に書面で」約束を取り交わしている人では8.4%だったのに対し、「業務開始前に口頭で」は24.2%、「業務終了後に書面で」は20.2%、「業務終了後に口頭で」は32.3%となった。業務開始前に書面で契約を明確にしておくことが、トラブル回避に有効と言えそうだ。

 

「収入」面では「不満」が「満足」を上回る

フリーランスの働き方の「全体としての満足度」は、「大いに満足している」が11.1%、「やや満足している」が37.5%と高い。具体的な内容別では、特に「労働時間」「自由に使える時間、休日」の満足度が高く、自身の裁量で仕事を進められるなど時間の使い方に満足している人が多いことがわかる。しかし、「収入・報酬額」については、「不満(計)」(31.3%)が「満足(計)」(27.8%)を上回っており、仕事上の責任や裁量、やりがいなどの満足度も4割程度にとどまった。

安全に安心して働けるように法的整備を

働く上で、どのような保護を受けたいか聞いたところ、「最低報酬額(最低賃金)」(16.5%)がトップで、以下、「労働安全衛生法に基づく危険または健康障害を防止するための措置」(11.3%)、「報酬の受け取り確保」(10.1%)、「契約期間途中の一方的な理由による解約の制限」「一日あたりの最長作業時間・拘束時間の上限設定」(いずれも9.0%)が続いた。

最後に、同じような働き方をする人たちと情報交換・共有ができるネットワークはあるか、また、必要だと思うか聞いたところ、「ネットワークがある」は27.9%、「ネットワークはないが、必要だと思う」は54.3%にのぼっている。

 

 

就業者保護の枠組みを早急に検討すべき

「ネット受注をするフリーランスに関する調査2020」結果によれば、約8割がフリーランスとして働く上で不安を抱えており、半数の人がトラブルを経験している。連合は、フリーランスを含む様々な契約形態で働く人を「曖昧な雇用」としてとらえ、こうした実態を把握しつつ、現在、法的保護に関する考え方を整理している。仁平章連合総合政策推進局長にそのポイントを聞いた。

─「曖昧な雇用」の現状をどうとらえるか。

IT化およびグローバル化が進展する中で、就業形態が多様化し、プラットフォームエコノミーの台頭により、労働市場が大きく変化してきている。従来の雇用契約にもとづく働き方ではない、雇用と自営の中間的な働き方や、業務委託、請負、フリーランス等の「曖昧な雇用」で働く就業者が急速に増加する一方、使用従属性によって労働者性を判断し適用する従来の労働関係法令では、保護の対象とならない事例が増えている。

今般の新型コロナウイルス感染症拡大の件で、このような「曖昧な雇用」で働く就業者の問題がさらに顕在化した。イベントの自粛等により、仕事がキャンセルになることで、大幅な収入減が発生している方も存在する。労働者であれば、新型コロナウイルス感染症により休業になった場合、休業補償の対象となるが、「曖昧な雇用」で働く人は対象外だ。政府は、一定の要件を満たすフリーランスにも支援を行うとしている。しかし、このような緊急の場合のみならず、同じ働く仲間として、「曖昧な雇用」で働く就業者の保護の枠組みを早急に検討すべきだ。

 

─「曖昧な雇用」で働く人を守るためにどのような法整備が必要か、連合の考え方のポイントは。

「曖昧な雇用」で働く人の中には、実態として労働者性が認められる人が少なからず存在している。その背景には、使用者による労働関係法令上の使用者責任や、社会保険料負担等の回避を目的とした、意図的な「非雇用化」という実態がある。

連合として重要と考えるポイントは3点ある。

1点目は、実態として労働者性が認められる者に対しては、確実に労働関係法令の適用が図られるよう、適正な指導・監督を行うべきである。

2点目は、「労働者」概念についても、拡充する方向で見直しが必要だと考える。現在の「労働者」概念は、1985年に労働省(当時)「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」において示されたものだ。指揮監督、報酬の労務対償性、事業者性の有無、専属性の程度といった要素を総合的に勘案することとしているが、報告が出されてから35年余りが経過する中で、労働市場や経済構造は大きく変化した。このような社会の変化を踏まえ、実態に合わせて、「曖昧な雇用」で働く就業者の保護を図るべく、「労働者」概念を見直すべきだと考える。

3点目として、「労働者」概念の見直しと並行して、契約条件の明示や報酬額の適正化、契約の締結・変更・終了に関するルールの明確化等の法整備を図る必要があると考えている。

さらに、連合としてはプラットフォーム事業者に対しても、プラットフォームを通じて就業する者に対し、一定の責任を負わせるべきだと考えている。少なくとも、報酬の決定や契約条件等について関与する事業者については、災害補償や契約トラブル等について、使用者として責任を負わせるべきではないか。

 

─連合の今後の取り組みは。

先程も述べたように、現在、政府の動きも見据えながら、連合としての「曖昧な雇用」で働く就業者の法的保護に関する考え方について検討しており、近く考え方を取りまとめる予定だ。

また、こうした法的整備とあわせ、多様な雇用・就労形態で働く人たちをゆるやかにつなげる仕組みである「連合ネットワーク会員(仮称)」の創設や、「曖昧な雇用」で働く就業者の組織化・団体交渉・労働協約締結による課題解決など、新たな運動の可能性についても検討を深めているところだ。

 

※プラットフォームエコノミーとは

インターネット上のウェブサイトであるプラットフォームを通じて労務(労働の成果物)やサービスの提供を行う業態で、その一つの類型であるクラウドソーシングは、受注者が発注者と直接対面することなくプラットフォームを介して仕事を請負う仕組み。

 

ネット受注をするフリーランスに関する調査2020

2020年1月22〜24日の3日間にインターネットリサーチにより実施。対象は、インターネット上のサービス(マッチングサイトやアプリ、自身のFacebook やブログのページ等)を介して仕事を受注する働き方をしている全国の20歳以上のフリーランス(以下、「ネット受注をするフリーランス」)1,000名。

(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)

※調査結果全文はこちら

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合4月号」をWEB用に再編集したものです。