今こそ”みんなの春闘”だっ! 2020春季生活闘争・闘争開始宣言2.3中央総決起集会

2020年3月10日

今年の「2020春季生活闘争・闘争開始宣言2.3中央総決起集会」は、「連合アクション 〜みんなの春闘〜」と題して、2つの会場をつないで開催。構成組織と多様な働く仲間が集い、語り、互いに悩みを共有し、未来を変える取り組みの開始を力強く宣言した。

<よみうりホール会場>構成組織、地方連合会から約1050人が参加。神津中央闘争委員長(連合会長)の主催者あいさつの後、労働条件・中小労働委員会、労働法制委員会の委員長が決意表明。その後、連合本部会場とつないで「みんなの春闘」に向けた思いを相互に確認した。

<連合本部会場>日本で働く外国籍の人たち、留学生、パート・有期・派遣で働く人たち、ウーバーイーツの配達員、障がいを抱えて働く人たち、高校生、大学生など、約100人の多様な顔ぶれが参集し「トークライブ」を開催。相原中央闘争事務局長(連合事務局長)の進行で、働くことに関する悩みや思いを率直に語り合った。

 

主催者代表あいさつ(要旨):分配構造の転換につながり得る賃上げを

「すべての働く者の春季生活闘争」とするために、一人ひとりの思いや悩みをつなぎ合いたいと、今回、2つの会場を結んで集会を開催した。

2020春季生活闘争の最大のテーマは、「分配構造の転換につながり得る賃上げ」だ。この20年の間に日本の分配構造は大きく歪んだ。企業の経常利益は拡大を続け、いわゆる「内部留保」は積もり積もって約450兆円。一方、働く者の賃金は置き去りにされたままだ。アメリカの平均賃金は20年で2倍に増えたのに、日本は0・9倍と減少し、大手企業と中小企業の賃金格差、正社員と短時間や有期契約などで働く人との賃金格差が拡大している。

この分配構造の歪みを正すために掲げてきたのが、「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」だ。ここ数年の賃上げの取り組みの中で、中小組合の賃上げ率が大手のそれを上回る、あるいは短時間や有期契約などで働く組合員の時給引上げ率が正社員のそれを上回るという、「格差是正」の流れをつくり出してきた。しかし、それはまだ連合組織内の動きにとどまっている。これを社会全体のものとし、分配構造の転換をはかっていかなければならない。

職場に労働組合があってこそ

経団連とのトップ懇談会について、メディアは、経営側が「日本型雇用の見直し」を提起したと報じたが、なぜ今頃こんな言葉が出てくるのか、理解に苦しむ。日本型雇用の強みは、人を大事にし、人の力を磨くことであった。ところが、この20年、経営側が、その枠の外にいて働いても報われない人たちを増やし、日本型雇用の良さを失わせ、分配構造を歪めてきたのではなかったのか。よくよく聞けば、見直しの真意は高度人材、海外人材の流出防止にあるようだが、それならそうとはっきり言えばいい。連合は、組合員だけでなく、すべての働く者のために存在し、行動している。経団連も、会員企業のためだけでなく、日本社会全体の問題にもっと向き合うべきだ。

賃上げも、働き方の見直しも、職場に労働組合があって、労使関係の中で互いに認識を共有しなければ、実現はできない。働き方改革関連法の成立は確かに大きな前進だが、それを職場に定着させることができるのは、労使の取り組みにほかならない。

労働組合の必要性、労使関係の重要性を、春季生活闘争を通じて広く訴えかけ、一人ひとりの働く者の思いを結び合いながら、「みんなの春闘」を進めていこう!

 

決意表明:持続可能な社会の再構築に向けて、新たなスタートを!

続いて労働条件・中小労働委員会の野中孝泰委員長が、「今年の干支である庚子(かのえね)は、新たな芽吹きの時を意味する。2020春季生活闘争は、これまでの積み残した課題を解決し、将来を見据えて新たなスタートを切る闘いとしなければならない」と切り出した。そして「超少子高齢化・人口減少は、労働力不足だけでなく消費人口の減少にもつながる。日本が抱える最大の課題は、安心の社会保障制度を担保する財源確保をはじめ、持続可能な社会の再構築だ」との認識を示し、その解決に向けて「分配構造の転換につながり得る賃上げに取り組み、企業規模間、雇用形態間の格差を是正し、労働組合のあるなしにかかわらず、広く賃上げを実現し、すべての働く者の生活の維持・向上をはかる。そのベースとなるのは、雇用の維持・拡大、労使の協力・協議、成果の公正分配という生産性三原則だ。日本の産業・企業は、一人ひとりの懸命な働きによって成り立っている。人を大事にした日本的経営の意義を再確認し、賃上げと働き方の見直しに同時に取り組み、経済の自律的成長と社会の持続性の実現につなげていこう」と訴えた。

続いて労働法制委員会の増田光儀委員長は、今次闘争におけるワークルールの取り組みのポイントを3点提起。「第1は、同一労働同一賃金。4月からの法施行に対応し、同じ職場で働く仲間の待遇に不合理な差がないか、労使で点検し是正する取り組みを進めてほしい。第2は、長時間労働の是正。4月から中小企業についても時間外労働の上限規制が適用される。法を職場に定着させるには、36協定の適正な締結を徹底すると同時に、業務量や人員体制の見直しを含めた一体的な取り組みが不可欠。また、取引先やサプライチェーンで働く仲間にも思いを寄せて、商慣行や取引慣行の見直しを進めていかなければならない。第3は、高齢者雇用の環境整備。今国会では70歳までの雇用確保に向けた高年齢者雇用安定法改正法案が審議される見込み。現状では継続雇用者の賃金・労働条件が大幅に下がっている実態もある。働く意欲のある高齢者が安心して働ける環境づくりを進めなければならない」と述べ、「働く仲間の声にていねいに耳を傾け、意見を代弁し、安心して働ける職場を実現していくのは、労働組合の役割だ」と強調した。

 

「みんなの春闘」に向けた訴え

はじめに、よみうりホール会場から扶桑工業労働組合(JAM)の清水卓也執行委員長が「賃上げ」にかける思いを訴えた。建設機械や農業機械の部品を製造する扶桑工業は従業員数350名、うち組合員230名。派遣社員や外国人技能実習生も多数働いている。「20年前に会社更生法適用を申請し、労使一体で再建を進め、2014年に負債返済を完了して再スタートを切った経緯があるが、賃金水準は今も低いままだ。残業しないと収入が確保できないため、働き方の見直しも進まない。効率向上が収入減につながってしまう。そこで組合は、残業しなくても生活できる賃金をめざし、2019春季生活闘争では賃金水準にこだわった要求を行い5097円の改善を勝ち取った。人手不足の中で、賃金を上げていかないと優秀な人材が流出するという組合の主張を会社が受け止め妥結に至った。中小企業で働く者の賃金が上がり、消費が喚起されなければ、日本経済は失速する。格差是正のために今季も闘い抜きたい」と決意を述べた。

続いて、ヨークマート労働組合(UAゼンセン)の細谷良蔵中央執行委員長が「働き方の見直し」について訴えた。ヨークマートは、首都圏に78店舗を展開する食品スーパーマーケットで従業員数は9700名、その8割以上が時給契約の社員。「流通業界は『もっと便利に』を合言葉に営業時間が伸びて、24時間365日の業態も広がった。ヨークマートも、私が入社した25年前は20時閉店で、正月休みを含め月に1、2回の休業日があったが、今は年中無休で22時まで営業している。しかし、働く人の数は増えていないから、一人ひとりの仕事の負担が増えている。それに見合った賃金を要求し獲得もしてきたが、子どもの運動会に参加することも、家族の記念日に家にいることもできなくて、幸せと言えるのか。そんな働き方が人手不足の一因ではないか。そう考えて3年前、休日増を第1の要求に掲げて交渉し、年2日の管理職休日増を勝ち取った。また60歳以降の継続雇用者の労働条件改善にも取り組んでいる。労働組合として、賃金だけでなく、老いも若きも幸せを追求できる働き方を実現していきたい」と語った。

連合本部会場から発言に立ったのは、高校一年生の車世栄さん。中学の3年間不登校だったが、中高一貫の高校に進み、今は登校しながら学外で主権者教育の必要性を訴える活動に取り組んでいる。その経験から、「学校教育において、いちばん問題だと思うのは、社会に出る際に必要な教育がほとんどなされていないことだ。私は今、主権者教育について学んでいて、他校での出前授業の講師を務めたりしているが、それは定期テスト後の生徒がめちゃくちゃ疲れている時に行われたりする。学校では受験に関係ない教育は重視されないし、生徒の関心も低い。また、働いている高校生もいるが、友人は高校生だからという理由だけで時給が低かったりする。受験最優先の価値観を見直し、学校で主権者教育や労働教育がきちんと行われるようにしてほしい」と訴えた。

 

民族衣装に身を包んでマイクを握ったのは、2年前に来日したブータンからの留学生、スニル・ガレーさん。「日本の良さは時間を守ること。仕事でも、みんな始まりの時間をしっかり守る。でも、終わりの時間は守られないことが多い。みんな当たり前のように残業する。でも、それは私にはあまり良いこととは思えない。1日は24時間。働く時間の残りの時間は、個人が自由に過ごせるとても大事な時間。私は自分の時間も大切にしたい。これから日本で働く外国人はもっと増える。残業は当たり前という働き方は、大きな問題になるのではと心配している」と語った。

榎原あやこ中央闘争委員(航空連合副事務局長)が闘争開始宣言(案)を提起した後、逢見直人中央闘争委員長代行の先導により、よみうりホール会場・連合本部会場が心をひとつに「がんばろう三唱」を実施。2020春季生活闘争を闘い抜く決意を共有し、散会した。

 

トークライブ/「働くこと」に関する今の最大の悩みは?

連合本部会場のトークライブは相原中央闘争事務局長の進行でスタート。その趣旨について「職場や社会を支える顔ぶれは多様。今日お集まりいただいたみなさんがそのことを体現している。年齢や性別や国籍、障がいの有無など、様々な個性と個性が重なり合うところに新しいエネルギーが育まれていく。連合はその接点になりたい」と説明。①賃金、②労働時間、③ハラスメント、④その他の番号札を使って、働くことの悩みが語られた。まず、①賃金から。派遣で働く女性は「派遣先の会社は、正社員の事務職の女性を営業職に配転し、代わりに派遣社員を入れた。補佐的な仕事だと言われ時給も低かったが、実際には責任の重い仕事を任された。仕事に見合った賃金になっていない。正社員への転換もかなわなかった」と実状を訴えた。「アルバイトをする高校生は高校生というだけで最低賃金」「障がい者団体で働いているが、運営資金の確保が難しく給料が低い」「障がい者の就労や引きこもりを支援する一般社団法人を立ち上げたが、人件費を稼ぐまでには事業が回っていない」「ベンチャー企業では、能力に対し適正な賃金が支払われているのか疑問だ。働きが賃金に反映されないとモチベーションが低下する」「ウーバーイーツの配達員。昨秋、報酬などの条件が一方的に変更されたが、いまだ交渉すらできない。『個人事業主』だからと責任逃れが続いている」。

②労働時間に関しては、「残業があって仕事の終わる時間が守られないのが常態化」「高校生だが、漠然とオーバーワークに対する不安がある」。

③ハラスメントに関しては、「職場におけるLGBTへの差別が問題になっているが、もっと問題なのは無知や無関心」「LGBTへのハラスメントとなる制服や髪形などのルールも見直すべき」「①、②、③は全部つながっている。外国人に対する差別やハラスメントだけでなく、日本人同士の間でも問題が多い」。

④「その他」も多数。「日本で働く外国人労働者が直面する健康問題をなんとかしたい」「労組の専従オルグをしているが、相談を受けて支部を結成し、団体交渉を要求しても拒否される」「仕事と子育ての両立が難しい環境があるが、そういう問題が顕在化しない状況こそ問題」「障がいがあって、フリーランスで仕事をしている。企業に勤めたいが、現行制度では、通勤や職場内で介助サービスが受けられない」「月100時間以上の残業が続いたが、どこに相談したらいいのかわからなかった。学校での労働教育を充実させてほしい」「多国籍労働組合の専従スタッフ。日本を生活基盤とする外国人は増えているが、いまだ『お客さん扱い』。一緒に働いているのだから、連帯して頑張りたい」「自分以外の人がどんな働き方をして、どんな悩みを持っているのか、みんなが想像力を働かせることで、助け合ったり、会社や社会を変えていけるのではないかと思う」。

連合本部会場に参加した3人の連合中央闘争副委員長からは「多様性を語るにはまだまだ学ぶべきことが多い。今日を真の多様性実現のスタートとしたい」(松浦UAゼンセン会長)、「すべての働く者の春季生活闘争を掲げてきたが力不足。想像力をもって一緒に頑張りたい」(野田情報労連中央執行委員長)、「聞いて終わりではなく、労働組合としてその悩みを解決できる運動を進めたい」(安河内JAM会長)とコメント。

相原中央闘争事務局長は「今日この会場で発せられた意見は、私たちが真正面から向き合い改善していくべきテーマばかり。春季生活闘争は、私たちが考える以上に遠い存在だったのかもしれないが、今日2つの会場が確かに結ばれ、心の距離もおおいに縮まったと思う」と締めくくった。

集会の動画はこちら   よみうりホール会場   連合本部会場 

 

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合3月号」をWEB用に再編集したものです。

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