新逢見事務局長のココだけの噺

2015年12月11日

事務局長

今月号からコラムの欄を頂きました。題して「ココだけの噺」。「はなし」を表す文字には「話」「噺」「咄」などがありますが、後の2つは日本で生まれた国字です。私の趣味は落語です。落語のネタを「はなし」といいますが、「噺」または「咄」の字を使うことが多いようです。口偏に「出る」では、口からでまかせを言っているような印象になるので、口偏に「新しい」というほうの「噺」にしました。

不公平税制是正のために

さて、今回は「マイナンバー」です。国民一人ひとりに番号を付す納税者番号「マイナンバー」の通知が皆さんのところにも届いていると思います。この「マイナンバー」は、連合の永い運動の成果であり、これが実現したことは本当に感慨深いものがあります。

噺は、1976年に遡ります。この年は、私が労働運動の世界に飛び込んだ年ですが、労働組合にとっても節目の年でした。この年の10月、それまでの民間労組共同行動会議が政策推進労組会議に衣替えしたのです。これは、既存のナショナルセンターの枠を超えた民間労組による「政策・制度要求」を実現するための運動体で、事務局長は後に連合の初代事務局長を務めることになる山田精吾さんでした。山田さんは、私にとっての労働運動の師匠であり、酒好きで、話し好きで、坂本龍馬が好きな方でした。政策推進労組会議が取り組んだ政策項目は、「経済政策」、「物価」、「雇用」、「税制」の4つでした。当時の税制に関する要求の柱は、「不公平税制の是正」に尽きると言ってもいいと思います。勤労者は、所得はほぼ完全に捕捉されています。しかし中小企業者や自営業者は所得が6割、4割しか捉えられていない、これを「クロヨン」といいます。また、富裕層は株の配当や利息等の金融所得の割合が多いのですが、この名寄せも十分でなく、一律分離課税になっていました。そこで、少額貯蓄利用者にはカードを配布して、それで本人確認しようということで、「グリーンカード」(少額貯蓄等利用者カード)ができて、施行寸前まで行ったのに、富裕層の反対で廃止されてしまいました。1980年のことです。

 

山田初代事務局長の墓前に

山田事務局長の怒りは収まりませんでした。それ以降、納税者番号導入の要求は、政策・制度要求に掲げられ、全民労協、民間連合、連合の要求に受け継がれていきます。要求当初は、政府、与党からもまともに相手にされませんでしたが、連合は毎年のように要求を掲げ続けました。

そして、2007年の年金納付記録問題の発生、2008年の定額給付金制度の実施などがきっかけとなり、政府与野党とも番号制度の議論が本格化していくようになります。その後、「マイナンバー法案」は2012年に一度廃案となりましたが、ついに2013年5月成立しました。

連合にとっては、「悲願」というべき政策の実現でした。
私は、宮崎に出張に行った際、山田さんの墓前にマイナンバー成立の報告をしました。そして、成立に関わった総合政策局の現職、OBと祝杯を挙げました。私がその場で配った記念品は、南蛮(唐辛子)です。

そう、ナンバーのしゃれです。

 

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年12月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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