働き方改革関連法案の可決・成立に対する談話

2018年7月2日

日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

 

 

1.時間外労働の上限規制等は評価も、高度プロフェッショナル制度の創設は遺憾

本日、参議院本会議において、働き方改革関連法案(働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律案)が可決、成立した。罰則付の時間外労働の上限規制や中小企業における60時間超の時間外労働の割増賃金率に対する猶予措置の撤廃、雇用形態間における不合理な格差の解消に向けた同一労働同一賃金の法整備など、連合が求めてきた事項が実現する点は評価できる。しかし、「高度プロフェッショナル制度」という、労働基準法上の労働時間規制を適用せず長時間労働を助長しかねない制度が法案から削除されることなく創設されたことは、極めて遺憾である。

2.答弁の引き出しや附帯決議等は、野党の強い意思の表れ

法案の提出以前から国会論戦はスタートし、労働時間に関する調査データや不適切な答弁に対する野党の追及を受け、3月1日には法案から裁量労働制の対象業務拡大部分が削除されるに至った。また、立憲民主党および国民民主党は、高度プロフェッショナル制度の削除を始めとした、「働く環境をより良くしたい」との理念に沿ったそれぞれの対案を5月8日に衆議院に提出するとともに、衆参の厚生労働委員会質疑において、法案では明確にされていない問題点に切り込み、今後の労働政策審議会における議論の糧となる多くの答弁を引き出した。加えて、参議院厚生労働委員会において、法の実効性を高めるため、47項目の附帯決議がなされた。これら一連の取り組みは、何としても働く者のための働き方改革を実現しなければならないという、野党の強い意思の表れであり、その渾身の努力に敬意を表したい。

3.労働政策審議会をはじめとした場で、さらなる取り組みが必要

働き方改革関連法の議論の舞台は、労働政策審議会に移る。条文では明確になっていない、「高度プロフェッショナル制度」の対象業務や年収要件、時間外労働の上限規制の詳細、勤務間インターバル、同一労働同一賃金に関するガイドラインなど、省令・指針等において定めなければならない事項は多数に上る。また、自動車運転業務に関する改善基準告示の見直しや、長時間労働による現場の疲弊が指摘される医師や教員の働き方の見直しなど、過労死等ゼロはもとよりすべての働く者の健康と安全を確保する視点からの引き続きの取り組みが必要である。

4.働く者の働き方改革の実現のためには、労使の取り組みが必要不可欠

法律は各職場で活かされて初めて、働く者の働き方改革が実現する。法の実効性確保のためには、労使がともに法を理解し、運用するための集団的労使関係が必要不可欠である。連合は、労働政策審議会における政省令等の議論に全力を尽くすとともに、労働組合のない職場も含めて、安心して働き続けることのできる職場づくりに向けて構成組織・地方連合会と一体となり、引き続き取り組んでいく。

以 上