Ⅰ.2021春季生活闘争に対する受け止め
●2021春季生活闘争は、緊急事態下にあっても、賃上げの流れを継続することの重要性を確認した闘争であった。
2021闘争は、コロナ禍により経済活動の停滞を余儀なくされ、また産業の置かれた状況もそれぞれに大きく異なる中、「雇用」と「賃上げ」を二律背反とせず、社会全体で雇用の維持・創出に取り組む中で、それぞれの産業における最大限の「底上げ」に取り組むという、緊急事態下にあっても賃上げの流れを継続することの重要性を確認した闘争であった。
●これまでの労使の信頼関係を礎に生産性三原則にもとづく真摯な協議・交渉が行われ、企業・産業の持続性とコロナ禍からの経済回復に向けた大きな基盤づくりにつながったものと受け止める。
今次闘争においても例年同様に多くの組合が交渉に臨んだ結果、賃上げ獲得水準は、全体として昨年を下回り、また業種・業態によって違いがあるものの、企業規模間、雇用形態間等の格差是正の動きの前進とともに賃上げの流れが継続し、さらに、個々人のニーズにあった多様な働き方を実現する労働諸条件改善についても多岐にわたる項目で前進した。このことは、これまでの労使の信頼関係を礎に生産性三原則にもとづく真摯な協議・交渉が行われ、企業・産業の持続性とコロナ禍からの経済回復に向けた大きな基盤づくりにつながったものと受け止める。
●分配構造の転換に向けた環境整備も進みつつある。
また、こうした結果を引き出した背景には、構成組織における賃金目標水準の設定や地域ミニマム運動による地域相場の形成、賃金実態にもとづいた要求構築など賃金水準にこだわった闘争体制が強化されてきたことに加え、交渉前段での経営者団体や構成組織における業界団体との対話活動、「パートナーシップ構築宣言」など労務費の価格転嫁に向けた取引適正化の推進、同一労働同一賃金の法施行など、企業規模間、雇用形態間等の格差是正に向け、分配構造の転換に向けた環境整備が進んできたことがある。
●春季生活闘争のメカニズムを社会に広げるための一層の努力が必要。
一方で、こうした結果が集団的労使関係のあるところに留まっているのも事実である。春季生活闘争のメカニズムをより社会に広げていくためにも、組織拡大に取り組むとともに、経営者団体や地域の関係者との対話の促進、大衆行動、情報公開などの一層の充実が必要である。
Ⅱ.2022春季生活闘争に向けて
・「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」の再発令やその期間が延長されコロナ禍の収束が見通せない中、その影響は、「観光」「飲食」「運輸」など特定の産業に依然として重くのしかかっているほか、セーフティネットが脆弱な層への深刻さが増している。国民や労働者の自助努力に頼った対応には限界があり、日本の抱える構造課題に対応し、将来世代に希望のつながる持続可能な社会を実現していくためにも、集団的労使関係の拡大はもとより、経済・社会の責任を担う政労使が、経済対策、生産性向上と賃金、社会政策、税・社会保障等を包含的に検討できる社会対話の場が必要である。
・特に、経済活動の再開はワクチン接種が大きな鍵を握っているが、経済の回復は、グローバル経済の回復状況に違いがみられる中、内需の大半を占める個人消費の拡大にかかっている。消費喚起の原動力となるのは、商品やサービスに込められた価値を共有し合い、必要以上に消費を冷え込ませない環境づくり、税制改革や社会保障の機能強化などによる将来不安の払しょく、そして分配構造の転換につながり得る賃上げであることに変わりはない。
・また、コロナ禍での雇用の維持・確保において、特例措置により拡充された雇用調整助成金等が果たした役割は大きい。枯渇した雇用保険財源の早急な確保が不可欠である。さらに、いわゆる非正規雇用の一部に対する休業支援金の迅速な給付に加え、フリーランスなど「曖昧な雇用」として働く者に対する対策など、一般会計を財源とする、適切な「セーフティネット機能」の創設について検討すべきである。
・したがって、2022闘争では、引き続き、社会のセーフティネット機能の強化に取り組むとともに、経済、社会、産業の置かれた状況などを精査した上で、部門別共闘連絡会議の機能強化など共闘体制の整備も含め、「感染症対策と経済の自律的成長」の両立と「社会の持続性」実現に向けた対応について検討を深めていく。
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