連合は、在日米軍基地問題の解消をめざした運動を展開しています。
現在、日本国内には130以上の基地を含む米軍施設があります。横田基地(東京都)、厚木基地(神奈川県)、普天間基地(沖縄県)など、在日米軍基地の多くが人口密集地付近に位置するため、騒音・事故など深刻な問題が起こっています。これらの問題は、在日米軍基地がある地域だけの問題ではなく、日本全体で国民共有の課題として考えていく必要があります。
また、米軍関係者による事件・事故も後を絶ちませんが、そのときに立ちはだかる大きな壁があります。「日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)」です。
「地位協定」とは、外国の軍隊が駐留する際、その地位・役割・権利などを定めるために当事国の間で締結される協定です。
しかし、この日米地位協定には、多くの問題があります。例えば、
また、日米地位協定の運用に関して月2回、実務者協議を行っているのが「日米合同委員会」です。この日米合同委員会は、日米地位協定第25条にもとづき、「この協定(=日米地位協定)の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政府と合衆国政府との間の協議機関」として設置されています。そして、「合同委員会は、特に、合衆国が相互協力及び安全保障条約の目的の遂行に当たつて使用するため必要とされる日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう」としています。しかし、その議事内容は原則非公開です。
この間、日米地位協定の運用改善や補足協定締結などが行われてきたものの、問題の抑止・解決の施策としては不十分な内容となっています。
日米地位協定が、1960年の締結から一度も必要な見直しが行われてこなかったことによる弊害が生まれているのです。
一方、主要諸外国では、基地・施設への立入、訓練・演習への関与、警察権の行使などを外国の駐留軍に対しても認めています。それは、特段の例外でない限り、それぞれの国内法を原則として駐留軍にも適用させているからです。
日本と同じく、第二次世界大戦で敗れたドイツ、イタリアでも地位協定(NATO軍地位協定)の補足協定(ボン補足協定)や了解覚書(モデル実務取極)の改正などが行われています。また、韓国でも在韓米軍地位協定の改正が行われています。
日米地位協定は、在日米軍基地で働く労働者にも影響を及ぼしています。
現在、約2万5,000人が日本国政府(防衛大臣)に雇用され、全国各地の在日米軍基地で「駐留軍等労働者」として働いています。その仕事は、事務、技術、消防、警備のほか、在日米軍基地内の売店・食堂など多岐にわたっています。
しかし、ここにも日米地位協定の壁が立ちはだかります。駐留軍等労働者は、「日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の日米安全保障条約第三条に基づく行政協定の実施に伴い国家公務員法の一部を改正する等の法律」第8条により、国に雇用されているが「国家公務員ではない」と定められています。一方、日米地位協定第12条第5項の解釈により、民間労働者のための国内法適用から漏れてしまうという、法の谷間の立場に置かれています。例えば、
連合は、日米地位協定の問題を放置できないと考え、2003年より、主要な在日米軍基地を抱える15の地方連合会、在日米軍基地で働く労働者でつくる全駐労(全駐留軍労働組合)とともに検討を行い、2004年1月16日、「日米地位協定の抜本見直しに向けた連合要求(PDF)」を決定しました。
その主な内容は以下の通り。キーワードは「1と3と5」です。
その後、2つの補足協定が締結されるなど、一定の改善は得られました。
(1)「日米地位協定の環境補足協定(日本国における合衆国軍隊に関連する環境の管理の分野における協力に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定)」(2015年9月28日締結)
(2)「日米地位協定の軍属補足協定(日本国における合衆国軍隊の軍属に係る扱いについての協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定)」(2017年1月16日締結)
しかし、依然として、在日米軍基地に関する問題が起こるたび、日米地位協定の「運用改善」による対応にとどまっています。
私たちがめざす平和で安定した社会・暮らしの実現のためには、日米地位協定の運用改善ではなく、抜本見直しを求めていかなければなりません。
特に沖縄県は、日本全体のわずか0.6%の面積ながら、米軍専用施設面積の70%が集中し、米軍関係者による事件・事故などにより住民の生命・人権・財産が日常的に脅かされています。
連合は、6月23日の沖縄「慰霊の日」に合わせ、毎年6月に沖縄で「平和行動in沖縄」の開催をはじめ、各地で集会、学習会を開き、関係省庁への要請行動などにも取り組んでいます。
沖縄県の日本復帰40周年にあたった2012年には、「日米地位協定の抜本的見直し、在日米軍基地の整理縮小、沖縄の負担軽減を求める署名活動」を実施し、4,755筆にのぼる署名を集めることができました。
また、在日米軍による実弾射撃演習の沖縄県への集中を軽減するため、1997年から全国5ヵ所(北海道・矢臼別、宮城県・王城寺原、山梨県・北富士、静岡県・東富士、大分県・日出生台)に移転して分散実施されています。
しかし、本来は沖縄県と「同質・同量」を前提としていたにもかかわらず、弾数・日数が増えたほか、早朝・夜間での実施など、移転演習が拡大しているという問題もあります。
連合は、移転演習の拡大・固定化を防ぐとの考えに立って集会、シンポジウム、要請行動などに取り組んでいます。
在日米軍基地の整理・縮小と、日米地位協定の抜本見直しについて、その具体的履行と跡地利用、雇用対策の確保を求める運動を連合は続けていきます。