7つの絆

 

新型コロナウイルス感染症拡大に対する総合的対策について(緊急提言)

2020年3月27日
日本労働組合総連合会

 現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う様々な対応により、経済活動の停滞が急激 かつ広範囲に生じており、経済、社会、雇用に深刻な影響を及ぼしている。この間連合は、働く者・生活者の立場から、政府・各政党に対し緊急要請を実施し、小中高校などの臨時 休校に伴う各種対応、およびサプライチェーン全体の維持・確保などを求めてきた。また、緊急労働相談で寄せられた多くの方々が直面する、働くうえでの困難に向き合い、対応を図ってきた。

 リーマンショック以上とも指摘される今回のコロナショックによる経済への影響に対しては、早急な対応と同時に、足元で生じているショックを恒久化させない果断な政策的対応が不可欠となる。日本の財政状況は深刻な状況ではあるが、将来への見通しが極めて立ち難い今回の危機の特徴を踏まえれば、一時的措置として、生活困窮と景気悪化を防ぐための積極的な財政措置をはじめとする総合的対策が要される。また、行政手続きの迅速性向上と負荷軽減を可能とするための徹底的な簡素化も不可欠である。

 これらのことを踏まえ、働く者や生活者の立場から、経済・雇用・生活の安心・安定の確保に向けた対策を現時点における緊急提言として下記の通りとりまとめた。政策当局はもとより世に広く訴えていくとともに、それを担保する補正予算の可及的速やかな編成を求めるものである。

Ⅰ.経済対策
1.基本的な考え方

〇第 1 段階として早急に「生活確保・事業継続のための緊急措置」を講じるべき。

  • 「生活困窮者への支援」、「倒産や失業の防止」を軸とする緊急措置を可及的速やかに実施すべき。
  • 緊急時に重視すべきは、不要不急の消費への補助ではなく、最低限の生活確保のための収入支援であり、事業継続のための資金繰り支援である。
  • 人の移動を活発化させる消費喚起策は、感染拡大リスクを高めるため回避すべき。

〇第 2 段階として「経済・社会・産業構造の変革」につながり得る措置を実行すべき。

  • 急速な景気減速と金融市場収縮に伴う実体経済の悪化が長期化することも念頭に、持続性ある財政政策が必要。同時に、需要の急減等を補うため、その影響度に応じた強力な産業支援策が不可欠。
  • 今回の様々な経済対策は、単に、経済を成長軌道に引き戻すだけでなく、持続可能な経済・社会に向け、新たな成長の基盤となるインパクトある重点投資を通じて、わが国の経済・社会・産業構造の変革に結びつける。

〇危機対応策として思い切った財政支出を図るとともに、将来的課題をより明確にしていくために、内閣から独立した機関(独立財政機関)を設置する。

  • 今回の危機対応への対策には思い切った額の財政支出が必須である。
  • 一方、既にある国内総生産の 2 倍超の長期債務残高は、日本の財政の信任に対する大きなリスク要因であり、財政破綻のリスクが高まることも厳然たる事実である。
  • 今般の経済危機の切迫性から必須となる積極的な予算措置の影響も含めて、今後、政府の計画の監視・評価、税財政のバランスを含めた中長期的な財政運営の客観的評価と分析を行う内閣から独立した機関(独立財政機関)の設置は、パッケージで考えられるべきであり、将来世代に対する責任でもある。
2.生活確保・事業継続のための緊急措置

(1)個人への経済的支援

〇一定の所得水準以下の世帯に現金給付を行う。

  • マイナンバー制度を活用した適正な所得捕捉にもとづく給付を行うべく、国は早急に統一基準を策定した上で、各自治体に対しシステム構築に向けた財政支援を行う。

〇希望する全世帯に無条件で生活資金の融資を行う。

  • 事後に納税と合わせて返済(マイナンバーによる管理)する方式とし、事後の所得多寡に応じて返済減免を設け、境遇差に応じた現金給付と実質的に同じ効果にする。

〇所得税、自動車税、固定資産税などの納税猶予措置を設ける。

(2)中小・小規模事業者等への事業継続支援

〇政府系金融機関、民間金融機関それぞれによる、無利子、無担保の融資、信用保証による資金繰りの支援を行う。また、貸付金の返済猶予措置を設ける。

〇日銀から民間金融機関への資金融通による幅広い企業の資金繰りの確保を行う。

〇法人税、消費税、固定資産税などの納税猶予措置を設ける。

3.需要急減への対応と経済・社会・産業の構造の変革につながり得る措置

(1)需要急減の影響を受けた産業を中心とした支援

〇事態の収束を見据えつつ、旅行、宿泊、交通、飲食等の、外出やイベント自粛で影響を大きく受けた産業を中心とした消費喚起策を講じる。

(2)経済・社会・産業構造の変革に向けた整備促進

〇以下を始めとしたICTインフラの導入・更新、AI・ビッグデータの利活用など経済社会のデジタル化のための環境整備を積極的に支援することで、生産性や利用者の利便性を高める。そのことにより、非常時にも対応可能なデジタルインフラの整備を促進させ、経済・産業構造の変革と持続可能な社会へと繋げる。

  • 企業のリモートワーク推進のための設備導入支援
  • デジタルガバメント(行政サービスのデジタル化)の推進(※)
  • オンライン診療に対応可能な設備導入支援(※)
  • 学校のオンライン授業に対応可能な設備導入支援(※)
  • インボイス制度移行のためのシステムインフラ導入支援
    (※)規制改革含む

〇「給付付き税額控除」の導入など、マイナンバー制度を活用した適切な所得捕捉にもとづく、特定層への迅速な給付を可能とする環境の整備を行い、所得再分配機能を高め包摂的で持続可能な社会へつなげる。

Ⅱ.雇用対策
1.雇用維持の支援

〇雇用調整助成金の助成率の引き上げについて、非常事態宣言を発出して活動の自粛を要請している地域に所在する事業所だけでなく、全国一律の適用とする。

〇雇用調整助成金の活用について事業主への周知を徹底する。また、週 20 時間未満で働く労働者についても、一般財源により当該助成金と同等の支援を行うとともに、中小企業において社会保険労務士などに依頼して申請を行う際の手数料負担を助成する。

〇雇用調整助成金などの各種助成金につき、申請手続きの簡素化及び交付の早期化をはかる。

〇会社の都合により休業の指示や勤務時間短縮がされた場合、欠勤で休むことなく、さらには契約解除、解雇を助成金の活用により回避するよう事業主に対し指導する。

〇学校現場で任用されている非常勤講師、学校用務員、給食調理員や補助金事業により配置される職員等が臨時休業に伴い報酬が支払われない事態がないよう総務省および文部科学省からの通知に沿った適正な対応をする。

2.雇止め・内定取り消しの防止

〇雇止めや内定取り消し(中途採用者・転職者含む)が安易に行われることのないよう、不当な雇止めや内定取り決しは無効となることなどを、企業等はもとより労働者や学生・学校にも周知徹底するとともに、不適当な事案に対しては厳正に対処する。

3.雇用のセーフティネットの強化

〇雇用保険における基本手当について、法定賃金日額・所定給付日数・給付率の引き上げを行うとともに、国庫負担の引き上げをはかる。

〇新型コロナウイルス感染症の影響で職を失った労働者の生活の安定と再就職の支援に向け、求職者支援制度について、改善をはかるとともに、国庫負担の引き上げをはかる。

〇新型コロナウイルス感染症の影響により、事業の継続または生活の維持が困難な場合など一定の要件に該当する事業主は、申請により労働保険等の納付を一定期間猶予できることを周知・広報する。

〇新型コロナウイルス感染症による影響が今後長期にわたる場合も想定し、一般財源による雇用・雇用類似で働く者などに対する支援を行う。

〇自営業を廃業した者が雇用労働者を目指す際にも活用できる「求職者支援制度」の周知・広報を強化する。

〇雇用関連の各種制度に関するワンストップでの相談窓口を設置する。

4.労働時間・安全衛生

〇労働基準法 33 条 1 項(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等の延長)の適用に関しては、要員の臨時的確保等の長時間労働回避策が実行されるよう指導し検証する。また本来、対象となり得ない場合にまで労働時間の延長等が行われることのないよう、厳格に判断する。また、事後届出において不適当と判断された場合は、超過労働分に相当する休憩・休日が確実に取得できることを含め、指導を強化・徹底する。

〇暮らしを支えるインフラ事業で働く労働者の感染防止および事業場での蔓延防止の観点から、マスクや消毒薬などの優先購入や非常時のバックアップ体制に対する支援を強化する。

Ⅲ.生活支援対策
1.失職者等に対する生活支援の強化

〇雇用・就労形態にかかわらず失職・休業した労働者、内定を取り消された者の住宅保障を行う。(生活困窮者自立支援制度の住宅確保給付金の柔軟な適用と早期の支給、敷金・礼金等の入居時初期費用の支援、公営住宅の入居あっせん及び家賃軽減措置の導入など)

〇失職者等に対する医療保険の確実な給付を行う。(無保険者による感染拡大を防ぐための国保料(税)減額特例措置を前提とした円滑な保険適用、国保における傷病手当金の支給の促進など)

〇失職者等の税・社会保険料の減免(健康保険、厚生年金保険、国民健康保険、国民年金、介護保険における保険料(税)の減免額の算定に係る所得基準の弾力的運用等)、任意継続被保険者制度における標準報酬月額の減額特例措置の創設を行う。

〇生活保護の円滑な適用を行う。(2009.3.18 社援保発 0318001 号に準じた対応の徹底等)

2.感染拡大防止対策及び母子保健対策の強化

〇新型コロナウイルス感染症の疑似症患者の一般外来と帰国者・接触者外来への確実・円滑な連携を行う。

〇生活困窮者に対する医療扶助の迅速な適用を行う。(生活困窮者の医療アクセスを保障することによる早期からの感染拡大防止)

〇パパ・ママ学級等の中止に伴う妊娠・出産・育児の準備に関する個別ケアの実施や電話相談等の実施、乳児に対する感染対策に関する情報の提供を行う。

3.医療・福祉・介護等のサービス提供体制の確保対策の強化

〇医療機関の診療継続のための衛生資材の確実な供給を行う。(感染症病棟や同外来を有さない医療機関を含め、マスク、防護服等の供給ルートの確立、全国の備蓄品の把握等)

〇介護サービス事業者、障害者福祉サービス事業者、障害者福祉施設、保育所等児童福祉施設、高齢者の「通いの場」や家庭的保育、ベビーシッター等の事業継続のための衛生資材の確実な供給などを行う。(マスクや消毒液などの供給ルートの確立、事業継続のための感染防止対策の徹底(動画配信)など)

4.生活者・勤労者の仕事と生活の両立支援の強化

〇家族等による介護、子ども・子育て等に関する相談ダイヤルの整備・周知を行う。(NPOなどを活用した全国的な相談体制の周知など)

〇介護サービスや障害者福祉サービス、就学前教育・保育サービスのサービス利用者の家族等に対する事業停止時の弾力的な休暇の付与の指導を行う。

〇生活支援関連の各種制度に関するワンストップでの相談窓口を設置する。

5.高齢者・生活困窮者などに対する相談支援の周知

〇家族や地域の支援が得られにくい高齢者や生活困窮者に対する相談支援について、自治体における周知を徹底する。

6.感染症拡大に伴うハラスメント等の防止

〇新型コロナウイルスに感染した、あるいは感染が疑われる労働者に限らず、その同僚等に対するハラスメントや嫌がらせが現に起きている実態に鑑み、本年 6 月施行予定のパワー・ハラスメントに関する雇用管理上の措置について、事業主に対して前倒しでの対応を促す。

〇自宅で長時間過ごすことを強いられるストレスなどで、女性や子どもに対する暴力につながる危険性があることから、ドメスティック・バイオレンスに関する相談窓口の増設など、対策を強化する。

以上
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