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リーダーズボイス

連合リーダーの素顔に迫る!
~第10回 安藤京一 連合副会長・情報労連中央執行委員長~

 シリーズ第10回は、情報労連委員長として二期目を迎えた安藤京一連合副会長にインタビュー。豊富な経験を活かし、昨秋には連合政策委員会の委員長に就任。産別機能の強化と、働く者・生活者の立場にたった政策実現に向けて日々奔走するリーダーの素顔に迫ります。

安藤 京一(あんどう きょういち)  連合副会長・情報労連中央執行委員長
1986年日本電信電話株式会社(NTT)東京総支社入社。全電通分会・支部役員等を経て、1998年NTT労働組合東京支部執行委員、2006年同東日本本部執行委員、2012年情報労連中央執行委員、2017年NTT労働組合副委員長、 2019年同持株グループ本部委員長を経て、2021年7月情報労連委員長、10月連合副会長に就任。

すべての働く人たちと手を携え
働く者・生活者の立場にたった政策実現を

面倒見がいい分会役員の先輩に導かれ

―労働運動を始めたきっかけは?

1985年、日本電信電話公社が民営化され、日本電信電話株式会社(NTT)が設立されました。

私はその1年後の1986年にNTT東京総支社に入社し、江東区の電話局に配属されました。その同じ課に「全電通」の分会役員がいて、彼に導かれるように組合活動に入っていったんです。

分会役員の主な仕事の1つは、毎週「分会ニュース」を発行し、門前で配ること。当時は、手書きのガリ版(謄写版)で印刷していました。ロウを塗った原紙に尖った鉄製のペンで文字や絵を書いて、インクをつけたローラーで1枚1枚印刷する。「一杯おごるから手伝って」と頼まれ、喜んで手伝うようになりました。

その分会役員が、連合東京前会長の杉浦賢次さんだった。杉浦さんは、1つ年上で職場に近い実家暮らし。私は世田谷にひとりで住んでいたので、ニュース作りの後は一緒に一杯飲んで、そのまま杉浦邸に泊めてもらうことが多くありました。

翌年、杉浦さんが支部の役員に推されて、私は分会役員の後任を託されました。

杉浦さんに出会わなければ、今の自分はなかった。まさに「運命の出会い」でした。

フリーダイヤル、ダイヤルQ2の販売を担当

—分会時代に印象に残っていることは?

当時の職場には、今ならパワハラと言われかねない厳しい指導もあったんですが、労働組合の役員は、存在感があって、管理職にも堂々とものが言えた。労働組合ってすごいなと思いました。

非専従なので、仕事では、公衆電話担当やフリーダイヤル・ダイヤルQ2の販売などを担っていました。ダイヤルQ2はすでに廃止されましたが、「0990」で始まる特定番号に電話をかけると有料で各種情報を利用できるサービスで、利用料はNTTの代理徴収。スポーツや株式の情報を想定していたんですが、いわゆる「出会い系」として利用が急拡大。担当区域には繁華街もあり、申込者との対応の苦労もありましたね。

1999年、NTTグループは持株会社体制に移行し、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズの各社が設立されることになりました。全電通はこれに対峙する形で1998年12月に組織体制を見直し、名称もNTT労働組合に変更して、私はその東京支部の執行委員になりました。

「雇用か、賃金か」という選択に

—支部ではどんな活動を?

IT技術の進展はめざましく、携帯電話、インターネット、ブロードバンドなど、新しいサービスが次々に登場する一方、通信各社間の競争も激しくなるとともに、電話利用は減少となっていきました。

会社は、業績悪化を理由に様々な構造改革や経営施策を打ち出し、あわせて労働条件の見直しにつながるケースもありました。

なかでも厳しい対応となったのは、2000年に提案された「50歳退職再雇用制度」です。50歳以上の社員全員を対象に、本体に残るか、子会社に再雇用かを選択させる。本体に残れば、賃金は100%維持されるが全国転勤あり、再雇用なら地域限定勤務だが賃金は15〜30%カット。

中央本部は、雇用を確保するため受け入れる判断をし、実を取る交渉を展開していきましたが、その経緯を職場に説明するのは、私たち支部の役員が中心となりました。

この説明は本当につらかった。組合員に怒鳴られ、怒られ、泣かれることもありました。本体に残ると全国転勤もあるということで、ほぼ全員が再雇用を選択しましたが、納得はできなかったと思います。

組合は、「会社が業績を回復させた時には制度を廃止する」ことをめざしました。それが実現したのは、2012年です。私は、その2年前の2010年に47歳で初めて専従役員(東日本本部組織部長)に就任していました。

東京山の会のメンバー。「僕を育ててくれた人たちです」と安藤委員長は話す。

東日本大震災ではカキの養殖再建を支援

—専従役員になってからは?

2011年3月11日東日本大震災が起きて被災地支援に奔走しました。3月末からは、連合ボランティアが派遣されましたが、その人選に当たるとともに、東日本本部として独自にカンパや救援物資を募り、被災地に送りました。また復旧作業にあたる応援要員の安全確保などについても会社と交渉しました。

当時組織内議員であった岩手県山田町町長の依頼で取り組んだのが、「復興カキオーナー制度」です。壊滅的被害を受けたカキ養殖業の再建に向けて一口5000円の支援金を募り、3年後に返礼品としてカキを送ることにしました。

これを情報労連で取り組もうと提案していたら、情報労連の執行委員に就任することに。自ら手がけた復興カキの発送責任者に任命され、何度も山田町に足を運びました。

その後、参議院選挙を担当するために2015年にNTT労組に戻り、政治部長を務めた後、副委員長、企業本部委員長を経て、2021年に情報労連委員長に就任しました。

「値下げ」だけで競争する時代ではない

—情報労連で取り組んでいるのは?

情報労連には、238の労働組合が加盟しています。全国単組であるNTT労組、通建連合、KDDI労組のほか、地域加盟の中小組合も多く、連合と連携して裁判闘争を闘ってきた全ベルコ労組もその1つです。

情報労連としての課題は、第1に組織拡大と加盟組合の強化。中小や新規結成組合の自立に向けたサポートに全力を挙げています。

第2は、産業政策を確立し、産別機能を高めること。

参入自由化を目的に公社が民営化された経緯から、企業間の競争が激しく、横串を通した産業政策がいまだ確立できていません。そんな中で今年の4月に「NTT法改正案」が可決・成立しましたが、もはや電話サービス時代を問題にする時代じゃないし、「値下げ」だけで競争する時代でもない。産別として産業の未来を見通せる政策を議論し、提起していかなければと思っています。

第3は、加盟組合を含めた人材育成をトータルで強化すること。「若者の組合離れ」なんて言われますが、若い人と話をしてみると、みんな豊かな感性と前向きな気持ちを持っている。それに応えることこそ、これからの人材育成のカギだと思います。

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」

—趣味は?

続いているのは、ゴルフです。一緒にコースを回ると親しくなれるし、その時の気持ちがプレーに出るから自分を見つめ直す機会にもなる。

観戦するなら格闘技ですね。東京に出てきた頃はプロレスの全盛期で、新日本プロレスの東京ドーム興行も始まって、アントニオ猪木とスタン・ハンセンの名勝負とか、本当にワクワクしました。

—好きな映画や本は?

『男はつらいよ』シリーズ(山田洋次監督・渥美清主演)や高倉健さんの映画をよく観ます。自分がおしゃべりなので寡黙な健さんに憧れるんです。今は、映画館や家で観ることはなく、もっぱら海外出張時に機内で観るばかりです。

本は、歴史ものが好きで司馬遼太郎はほぼ読破。『鬼平犯科帳』は愛読書です。対話会にそなえてビジネス書も読みました。 心に響いたのは、ヤクルトや楽天で監督を務めた野村克也さんの本です。

マンガも大好き。『こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)』(秋本治作、集英社)は心配事が多い時に読むと心が和みます。少女マンガの名作『キャンディ・キャンディ』や『エースをねらえ!』は連載時にリアルで読んでいました。

—座右の銘は?

野村克也さんの本にあった「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」。戦前の政治家・後藤新平の名言だそうですが、人を育てることは難しく、それゆえ価値があるという言葉にグッときました。

—尊敬している人は?

両親です。岐阜県中津川市の出身ですが、自分が親になった時、育ててもらった「ありがたさ」を改めて感じました。父は亡くなりましたが、こんな時、父は何を考えていたんだろうと思いを巡らせると、少し光が見えてくる気がするんです。

—これなら誰にも負けないことは?

年齢の割によく眠れる。夜10時から翌朝10時までぐっすり眠れます。

—ご自分を動物に例えると?

このシリーズで石川幸徳連合副会長が朝早く目が覚めるから「ニワトリ」だって答えていたでしょう。私の場合は、「三歩歩くと忘れる」という意味での「ニワトリ」かな。

健康器具やサプリの通販番組を観ていると、いかにも効きそうでつい注文しちゃうんですが、商品が着く頃には熱が冷めてる。家にトランポリンやら乗馬型の健康器具やらが溢れていて、妻に怒られています。

—読者にメッセージを。

今年は、高水準の賃上げが実現して春季生活闘争に注目が集まりました。労働組合は働く人や生活者の権利とくらしを守るために日々活動しています。ぜひ多くの人に、労働組合という存在を、その多彩な活動を知ってもらいたい。そして、すべての働く人たちと手を携えて、その立場にたった政策を実現し、より良い社会をつくっていきたいと思っています。

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