長期ビジョンに「平和産業の担い手として、国際的な視野による産業地位の向上」を掲げているサービス・ツーリズム産業労働組合連合会(以下:サービス連合)。組織として初となる “第1回社会貢献活動デー”を4月13日(土)に開催し、全国7ブロック(札幌、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇)で一斉に清掃活動を実施した。
そこで今回は、取り組みに至る経緯や活動のポイントなどをサービス連合で事務局長を務める石川聡一郎さんに聞いた。
組織初となる活動の実現の難しさ 間違いのない運動と信じて推進
サービス連合は、長期ビジョンに則り、「包摂的で持続可能な社会をめざすSDGsの実現に向けて社会貢献活動を行っていく」という考え方を今期の運動方針で示している。それを具体化したのが組織として初の“社会貢献活動デー”だった。取り組むにあたって何をすればいいのか悩んだすえ、相談先に選んだのが連合の運動企画局だった。
「半年ほど前から、さまざまなアドバイスをいただき、ゆにふぁんの活動なども参考にしながら自分達の組織に合う社会貢献活動を検討しました。その結果、我々の産業の1つである観光産業にフォーカスし、観光地のごみを拾うことで、日頃働いている自分達のフィールドをきれいにしたいと思ったのです。
そこから、全国7ブロックで一斉ごみ拾いを行い、共に活動をした仲間と食事会でさらに交流を深めるという社会貢献活動デーの企画に繋がっていきました」
しかし、組織内での議論は当初、厳しい反応もあった。
「今までやったことがないことを提案しているので、執行部役員の反応は総論賛成、各論反対という感じでした。ですが、我々の仕事は人流や物流の一端を担っており、やはり社会と一緒に共生していく産業です。そうした意味で、社会貢献活動は我々には必要なことなのだという運動の意義を繰り返し伝えました」
さまざまな意見が寄せられても、石川さんには「間違いのない運動」という確信があり、実現への想いは揺るがなかったという。
サービス連合 石川事務局長
参加者同士のコミュニケーションを増やす仕掛け
“社会貢献活動デー”を実施するにあたり、はじめはNPOや自治体と協力し、関連団体も巻き込んだ大きな展開も考えた。しかし、1回目ということもあって、目的をシンプルに「社会貢献活動」にしぼり、まずは自分たちだけでやり切ることを重視した。
「自前でやるとなったときに大きな課題となったのが、拾ったごみの処理です。組織内で検討した結果、活動の拠点を加盟組織のホテルとし、集めたごみの処理もホテルにお願いしました。ごみ拾い後の食事会も同じホテルで開催することにしました。これには、活動を通して仲間の施設を知ってほしいという組織の思いが込められています」
また、多くの組合員が参加できるよう早めに周知を行い、組合員の家族に呼び掛けたこともポイントだ。
「お父さん、お母さんが組合活動をしていると知っていても、労働組合がどのような組織か知らないお子さんに、我々を知ってほしいという想いがありました。この部分はこれまであまり積極的に取り組んでこなかったのですが、今回ご家族で参加された組合員も多く、やって良かったと思いました」
さらに、ごみ拾い当日の運営にも工夫があったと話す。仲間同士で会話やコミュニケーションを楽しみながら活動できるように、一人1枚ごみ袋を持つのではなく、班ごとにごみを集めながら分別をしてもらうスタイルにし、参加人数が多い地域では、所属単組を越えたグループ分けも行った。
「小さな仕掛けですが、参加者の間で自然に声掛けが発生し、とてもうまく機能していたと感じました。参加した組合員からも、ごみ拾いで親しくなったあとに一緒に食事をすることでより関係性が深まり、1日トータルで楽しかったという声もいただきました」
班ごとにゴミ集め 参加者間でのコミュニケーションも活発に!
「社会貢献活動」と「地域を越えた交流」の定着をめざして
石川さんは「社会貢献活動は対立が生まれるようなものでもなければ、人を傷つけるようなこともなく、やればやるほど良い運動。本当にやって良かった」と振り返る。
「実施までに試行錯誤はありましたが、全国一斉活動としたことで、組織としての一体感が生まれたと感じました。労働組合では団結や連帯という言葉をよく使いますが、それを実感できる取り組みになったのも良かったと思います。また、集めたごみを誇らしげに持ち帰ってくる参加者のみなさんの充実感にあふれた表情は、とても印象的でした」
一方で、次の活動に向けた課題や気づきもたくさん見つけられたと話す。
「たとえば、私が参加した東日本ブロックでは、日本旅行労働組合の皆さんがお揃いのビブスを着ていましたが、地域住民の理解を得やすいよう、また一体感をつくるためにもサービス連合のビブスを着たいという意見がありました。まだ活動は始まったばかり、他にもいろいろなご意見やアイデアがあると思います。一つひとつ改善して次回につなげていきたいです」
社会貢献活動と地域を越えた交流が、サービス連合の定例行事になることをめざして、まずは来年も継続することが目標だ。
「ごみ拾い後の各ブロックの食事会を中継で繋ぎ、地域を越えて報告や交流ができる企画も検討しています。そのためにも機関紙をはじめとした広報ツールを通じて“社会貢献活動デー”を知ってもらい、各ブロックの参加者をもっと増やしていきたいです!」