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リーダーズボイス

連合リーダーの素顔に迫る!
~第9回 壬生守也 連合副会長・電力総連会長~

 シリーズ第9回は、昨年9月に電力総連会長に就任した壬生守也連合副会長にインタビュー。阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして今年1月の能登半島地震への対応を通じて、電力の安定供給を支える現場力の重要性を痛感。智辨学園で活躍した元高校球児として今も野球を愛し、一期一会の出会いを大切にしているリーダーの素顔に迫ります。

壬生 守也(みぶ もりや)  連合副会長・電力総連会長
1984年、智辯学園高校(奈良県)を卒業し関西電力(株)入社。関西電力労働組合奈良支店支部の執行委員を経て本部執行委員、本部書記長、本部副執行委員長、本部執行委員長、連合大阪副会長などを歴任し、2023年9月に電力総連会長、10月に連合副会長に就任。

入社した瞬間、そこに労働運動があった

―労働運動を始めたきっかけは?

1984年に関西電力に入社し、地元である奈良の営業所に配属されました。

職場には、関西電力労働組合の組織内議員として衆議院議員が1人、地方議員が2人もいて、支部の委員長は営業所長より存在感があった。朝礼で所長が不明瞭なことを言うと委員長が「どういう意味か」と問い質す。「労働組合ってすごい!」と思いました。

秋には青年委員となり、青年部活動として、スキーツアーやクリスマスパーティなどの交流イベントを企画しました。

忘れられないのは「電力こだま」です。今で言う「ユース・リーダーズセミナー」ですが、全国の青年委員が富士山の麓の合宿所で二泊三日を過ごしました。青年部活動で出会った仲間とは今もつながっています。

1991年に営業所から奈良支店(現・奈良支社)に転勤になり、青年部を卒業して非専従の支部執行委員になりました。職場には、連合奈良の初代会長がいて鍛えられました。ここが、私の労働運動のスタート地点だと思っています。

—関西電力に入社したきっかけは?

出身は奈良県五條市で、小中高と野球に打ち込みました。ポジションはピッチャー。少年野球では関西大会で優勝し、中学では全国大会3位。高校は地元の野球強豪校である智辨学園に進みました。私は自宅通学でしたが、寮生活を送る部員も多く、練習は厳しかった。私の代では甲子園出場はかなわなかったのですが、もう少し野球を続けたいという気持ちもありました。小学校からバッテリーを組んでいた友人は、社会人野球の硬式チームがある企業へ。私は進路指導の先生の勧めで関西電力に入社し、軟式野球部でしばらく活動しました。高校時代は何かと制約が多かったので、就職した時は「こんなに自由でいいのか」と解放感でいっぱいでした。


新入社員時代

阪神・淡路大震災で救援活動

—支部執行役員時代に印象に残っていることは?

1995年1月17日の阪神・淡路大震災です。3連休明けの火曜日の早朝、職場に駆けつけると刻一刻と甚大な被害が明らかになって、胸が締めつけられる思いでした。組合員やご家族も多数被災され、亡くなられた方もいました。とにかく何か力になりたいと支部でトラックを用意し救援物資を送ることにしました。職場に呼びかけると、いつも組合活動に否定的だった組合員が毛布を何枚も背負って届けてくれた。涙が出るほど嬉しかったですね。

—その後、1997年に関電労組の本部へ。

専従役員として「賃金対策」を10年間担当しましたが、まさに1997年をピークに日本の賃金が低迷していくというタイミングでした。関電労組は1998年にベースアップを獲得したものの、以降は「ベアゼロ」を余儀なくされ、定期昇給制度廃止、福利厚生や人事処遇制度の見直しを迫られることになりました。

グローバル化を背景に規制緩和や自由化、市場開放が求められる中、電力関連産業についても、1993年に「エネルギーに関する規制緩和」が提言され、「電力自由化・電力システム改革」が進められようとしていました。企業が生き残るためにコスト削減が必要だと言われましたが、それは働く人たちの賃金・労働条件に直結します。労働組合の役割は「賃金・労働条件の維持・向上」なのに、それを果たせず、苦しい思いをしました。

アフリカのセネガルでボランティア活動

—2007年には関電労組本部書記長に就任されました。

在任中に東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故が起きました。

被害は甚大で一部の地域では計画停電を実施させざるをない事態になりました。お客さまに申し訳ないと思うと同時に、組合員にもたいへんな苦労をかけました。震災対応で業務量は増えているのに賃金カット・一時金ゼロが続く。私は単組役員として組合員と直接向き合う立場にありました。できるだけ職場に入って頭を下げ、膝詰めで状況を説明しました。概ね理解はしてくれましたが、納得はできなかったと思います。

連合全体では2014春季生活闘争から賃上げの流れが始まりましたが、電力の賃金は回復できていません。今季こそ、一歩を踏み出したいと思っています。

—本部委員長時代は?

試練が続きました。発電部門が原則参入自由となった後、2016年には小売部門も全面自由化され、2020年には発送電分離が実施されました。会社は、関西電力と関西電力送配電に分社化されましたが、労働組合は単一組織として活動していくことを決定しました。

ところが、そんな状況の中で、幹部の金品受領やカルテル、顧客情報の不正閲覧などの企業不祥事が相次いで発覚し、3度の業務改善命令を受けることになりました。

私は委員長として現場を懸命に支えてきた組合員の声を直接聞きたいと思いましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きてかなわなかった。

ただ、コロナ禍は、オンライン会議など組合活動に参加しやすいシステムをつくる契機ともなり、同時にフェイス・トゥ・フェイスの重要さも再認識できました。

コロナ禍でいちばん残念だったのは、2021年の夏の甲子園です。母校が勝ち進み、決勝は「智辨対決」だったのに応援に行くことができませんでした。

「智辨対決」は自宅のテレビで観戦

—そして電力総連の会長に。

奈良の自宅を離れ、初めての単身赴任生活。全国の電力関連産業の労働組合が加盟する産別のトップとして、各地域の実情や課題を知る中で日々責任の重さを実感しています。

電力は国の政策と深く関わる産業です。今、国際情勢などの影響で燃料費が高騰する中、新電力の撤退が相次ぎ、自由化をはじめとする「電力システム改革」がむしろ国民の利益を損ねている状況がある。その検証が始まりましたが、現場の声を政策決定の場に届けるために日夜奮闘しています。

「昭和40年会」でマウンドに

—尊敬している人は?

感謝しているのは、15歳で出会い23歳の時に結婚した妻です。智辨学園で3年間同じクラスだったので共通の友人も多く、2人の子どもにも恵まれましたが、今回離れてみて、ずっと家を空けることが多かったなと改めて申し訳なく思っています。せめてもの罪滅ぼしで、奈良に帰った時はできるだけ一緒に過ごすようにしています。

—休日の過ごし方は

東京では、都内に住む息子夫婦が4歳になる孫を連れて来てくれます。奈良の自宅に帰ると、近くに住む娘夫婦が3歳になる孫を連れて来てくれます。先日は3家族でディズニーランドにも行きました。「育爺」をやらせてもらって幸せです。

—趣味は?

私は、昭和40年生まれですが、野球で得たつながりを大事にしたいと関西の名門校の野球部OBが中心となり、毎年8月に高校時代のユニフォームに身を包んでトーナメントの「昭和40年会野球大会」を開催しています。ここ数年はコロナ禍で参加できていませんが、同じ時間を共有した仲間と毎年野球ができるのは本当に楽しみです。東京ではコンビニ型ジムに入会。出勤前の有酸素運動でリフレッシュしています。

「色即是空」を唱えて無の境地に

—好きな映画や本は?

妻が韓流ドラマのファンで、『宮廷女官チャングムの誓い』など時代劇系ドラマを一緒に観ていました。あれは何度観ても泣けますよね。

本はあまり読まないのですが、「般若心経」は手元に置いています。智辨学園は、弁天宗(智辯尊女を宗祖とする宗教法人)が設立した学校で般若心経の暗唱や写経が必修。当時は苦手でしたが、社会に出てからは拠りどころに。世の中は「空」だと考えると気持ちが楽になるし、「[i]色即是空(しきそくぜくう)」と唱えていると無の境地になれるんです。

—座右の銘は?

「一期一会」です。その日初めて会った人について名前や簡単な情報をメモした「一期一会」ノートをずっとつけています。

—誰にも負けないことは?

寝つきが良くて、秒で眠れます。友人からは「のび太君」と呼ばれていました。

—ご自分を動物に例えると?

動物占いではないんですが、性格診断は「エンターテイナー」だそうです。「高い社交性を持ち、人を楽しませることが大好きな性格。 自分のことよりも相手や周囲に対して手厚くサポートすることを好み、誰かが悩んだり困っていたら、真っ先に手を差し伸べるタイプ」だと…。娘も同じらしく「性格はお父さん似」と言っていました。

—最後にメッセージを。

今年1月1日、能登半島地震が起きて甚大な被害が生じました。被災地の組合員は、自ら被災しながらも避難所から復旧の現場に向かう日々を送ってきました。全国の仲間とともに、今も困難な状況にある被災組合員を全力で支えたいと思っています。


[i] 現世に存在するあらゆる事物現象はすべて実体ではなく、空無であるということ。

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