リーダーズボイス

連合リーダーの素顔に迫る!~第4回 神保政史 連合副会長・電機連合中央執行委員長~

シリーズ第4回は、連合「労働条件・中小労働委員会」委員長としてリーダーシップを発揮する神保政史連合副会長にインタビュー。高校時代は、インターハイで優勝した強豪バレーボール部で活躍。競技生活で培った忍耐力と判断力で電機産業の構造改革の嵐をくぐり抜けてきました。プライベートでも、地域のバレーボールチームで汗を流し、人脈を広げているというリーダーの素顔に迫ります。

神保 政史(じんぼ まさし) 連合副会長・電機連合中央執行委員長

1989年三菱電機入社。2002年三菱電機関連労働組合連合会事務局長、2003年三菱電機労働組合中央書記長、2008年同中央副執行委員長、2010年同中央執行委員長、三菱電機関連労働組合連合会会長、2014年電機連合副中央執行委員長、2016年同書記長、2020年同中央執行委員長、連合副会長。

相手を理解する努力を惜しまず時代にあった最適な方法を考えていきたい

―労働運動を始めたきっかけは?

1989年に三菱電機に入社しました。連合が結成された年であり、平成バブルの全盛期。就活は超売り手市場でした。

私は、社会インフラに携わるメーカーを志望し、大学のOBが活躍していた三菱電機へ。東京丸の内の本社に配属され、発電プラントの営業を担当。電力会社だけでなく、鉄鋼や石油化学関係の工場内発電プラントの受注もあり、様々な産業を知ることができました。

当時は、職場単位で運動会があり、飲み会も頻繁。部門を超えた若手社員のネットワーク活動も活発で、そんなコミュニケーションの場で活躍している人が労働組合の役員を務めているという印象でした。そんな中で、労働組合から声をかけられ、当時は労働条件を良くしたいといった高尚な思いなどないまま本社の支部委員になり、労働運動の世界に足を踏み入れました。

入社時工場研修(1989年頃)

構造改革の現場には働く仲間がいる

—労働運動への志が芽生えたのは?

原点は、単組の支部執行役員として、電機産業のドラスティックな構造改革に向き合ったことです。

本部執行役員はだいたい2期4年で役割を交代していく風潮がありました。
本社支部出身の本部役員が退任したら、本社支部から新たに本部にいく。私は、その歯車が噛み合うタイミングに巡り合わせ、本社支部から2002年に本部の役員になりました。

当時の日本はバブルの後遺症が深刻で、金融危機、雇用危機が進行していました。電機産業も厳しい環境にあり、分社化や合併、事業譲渡などの構造改革・企業組織再編などいわゆる構造改革が進められようとしていました。

三菱電機労働組合には労使協議を徹底的に行うという伝統があります。構造改革についても徹底的に議論しました。なぜなら、その現場には、働く仲間たちがいるからです。

なぜ構造改革を行う必要があるのか、経営状況はどうなっているのか、将来ビジョンをどう描いているのか、雇用はどうなるのか、労使協議の場で徹底的に聞く。そしてその内容を、各職場で組合員に説明し、組合員からもらった意見を集約して、次の労使協議でフィードバックする。

毎週のように労使協議が続く中、2003年に歴代最年少の書記長に就任しました。
当時の委員長が参議院議員選挙に出馬することになり、その時の書記長が新委員長になられたので、私に書記長職をやってほしいと新委員長からお声がけいただきました。
その頃は、構造改革だけでなく、人事処遇制度の見直しや年金改革なども課題になっていました。いちばん若くて本部末席にいた私に話が来た理由は、時代が大きく変わり始めた中で、困難な課題に対応していくためには、若い世代の考え方を反映させ、組織の刷新をはかる必要があるとの判断があったからだと聞いています。
色々な声もあり意見の対立もありましたが、そんなことを言っていられないくらい課題が山積していて、いつも追われているような日々でした。

私は、労使協議を通じて会社の置かれた状況を知り、対処法を誤ってはいけないことを理解しました。一方で、職場の不安も痛感しました。可能な限り事業所閉鎖は行わないという方針で臨みましたが、それでも異動が避けられない場合もある。工場の現場から「本社の営業出身者にオレたちの気持ちがわかるのか」と詰め寄られたこともありました。
しかし、何度も通い詰め話し合いを積み重ね、理解を深めていくことでしか、前を向いて進んでいけない。身をもって学びました。そして、労使が協力して会社を再建していかなければならないという、私なりの労働運動への志を持つことができたのもこのころだなと思います。
そして三菱電機労働組合の中央執行委員長に就任してまもなく東日本大震災が発生しました。被害はあまりに甚大で、被災した組合員もたくさんいました。労働組合としての向き合い方を日々考えながらの復旧・救援活動でした。

その後、2014年に電機連合の副中央執行委員長になり、2016年に書記長、2020年に中央執行委員長に就任し、現在に至ります。

三菱電機健保広報誌の取材にて(2011年2月)

産別統一闘争は大きな力になる

—産別にきて違いを感じたことは?

三菱電機労働組合の中央執行委員長時代も電機連合の意思決定に関わってきましたが、産別の執行部として加盟組合の意見をまとめ、政策や要求をつくるという役割は別世界でした。

ご存知の通り、電機連合は産別統一闘争を重視し成果を上げてきました。同じ産業の仲間が一致団結して取り組むことで大きな力になる。とはいえ、電機産業には発電所など巨大なものから、半導体や、ITなどもあり産業のすそ野が広い。事業内容や置かれた環境の違いが大きいなかで、電機連合として取り組むこと、向かうべき方向を1つにまとめていかなければならない。最初は苦労しましたが、今は手応えを感じています。

—違いを超えていく秘訣は?

互いを知り、理解し合うことですね。特に執行部の立場にあっては、まずこちらが相手を理解する努力を惜しまないことが大事だと思っています。

三菱電機労連50周年記念イベント USJにて(2014年4月)

座右の銘は「継続は力なり」

—尊敬する人は?

高校時代の恩師ですね。バレーボール部の監督でした。
強豪校でしたから、部員が多かったのですが、教育者である先生は、すべての部員に公平にチャンスをくれました。勉強との両立に悩んで辞めていく仲間が少なくない中で、私は控えのセッターでしたが、3年間最後まで日々の練習に打ち込みました。先生はその姿を見てくれていて、卒業する時に「継続は力なり」という言葉をかけてくれた。これが私の座右の銘です。先生からの「日々努力を続けなさい」というメッセージだと受けとめています。この言葉をかけていただいた先生がいてくれたから、今の私がある、本当に感謝しています。
毎年、チームメイトと先生を囲む会を継続し、先生や仲間たちと懇親を深めていましたが、2017年に先生が亡くなられてからは先生を偲ぶ会として続いております。

高校生時代バレーボールインターハイ優勝(1984年頃)

—バレーボールを続けられていると…。

子どもが小学校に入学した時、地域のパパさんに誘われてバレーボールチームに入りました。身体を動かすことは大好きだし、練習後の飲み会も楽しい。地域の人間関係が広がりましたね。まったく違う仕事をしている人たちとの関係は、仕事だけでは見えなかった世界を知って生活が豊かになりましたね。

―趣味は?

唎酒師(ききざけし)である友人のセレクトした日本酒を楽しむこと。湧き出てくるうんちくを聞きながら飲む酒は、最高に美味しい。

―好きな本や映画は?

本は雑食派。小説も新書も読みますが、実は漫画も好きですね。一推しは『あかね噺』(原作:末永裕樹/作画:馬上鷹将)。『キングダム』(原泰久)も好きでフォローしています。私の子どもが、自分が読みたい漫画をいろいろ私に勧めてくるんです。作戦には気づいていますが……、乗ってあげて読んで見ると、作戦にまんまとハマってしまいました。

映画ではNetflixオリジナルの『サンクチュアリ—聖域—』(江口カン監督、2023年)を見ました。大相撲を舞台にした人間ドラマなのですが、若者たちが土俵で大逆転を狙う。稽古の迫力もすごく、イッキ見してしまいました。

—誰にも負けないことは?

難しいですねぇ。しいていえば、楽観的に考えられる能力でしょうか。上手くいく、という気持ちを忘れずに、難しいことも諦めずに継続して取り組むことですね。

—休日は?

どうしても平日は出張が多いので、助けてもらっている家族への感謝の気持ちを込めて休日には一緒に食事に出かけたりして同じ時間を過ごすようにしています。

—ご自分を動物に例えると…。

昨秋、飼っていたトイプードルを亡くしてロス状態なんですが、犬って飼ってみると、本当に可愛くて惜しみなく愛情を注いでしまうでしょう?だから、みんなに可愛がってもらえる犬がいいかな。

—連合副会長としてメッセージを。

連合の労働条件・中小労働委員会の委員長も務めていますが、ここに来て賃上げの流れが鮮明になり、結果も出始めました。これは、10年近く前から、連合が取り巻く情勢を正確に分析し、賃上げの必要性を主張してきた積み重ねがあるからです。

最近は、春季生活闘争の「足並みが揃っていない」といった批判もありますが、時代によってスタイルは変わっていきます。野球だって、かつては俊足の1番が出塁し、2番がバンドで送り、長打力のある3番、4番へというのが定式でしたが、今はホームランバッターの大谷翔平選手が2番を打つ時代です。

環境が変わり、戦略や戦術が変われば、組織も変わらなければいけない。めざすべきゴールと守るべきことは維持しながら、いかにチームとして力を発揮していくか、その時々に最適で効果的な方法を柔軟に考えていかなければならないと思います。

構成組織は、連合に結集していこうという強い意欲を持っています。一方でどの組織も譲れない部分を軸として持っています。それを互いに認め合った上で、どう合わせていくのか。この「リーダーズボイス」がつながっていくと、そこから何か見えてくるかもしれませんね。

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