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リーダーズボイス

【前編】連合リーダーの素顔に迫る! ~第1回 芳野友子連合会長~

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すべての働く人たちの「必ずそばにいる存在」へ。
そうなりたいと、連合は新しい運動にチャレンジしている。
この「RENGO ONLINE」もその1つ。労働に関わる時事テーマや情報を広くタイムリーに発信するツールとして開設された。
連合「労働組合および連合のイメージ調査」(2022)では、「連合を知らない」との回答は4割を超え、知っている人のイメージも「伝統」「保守的」が上位に。「身近」や「親しみやすい」という回答は残念ながら一桁台にとどまっている。
そこで「RENGO ONLINE」では、もっと連合を身近に感じてもらえるよう、連合の各リーダーの人柄や労働運動にかける思いを伝える「リーダーズボイス」コーナーを開設。
その新シリーズ「連合リーダーの素顔に迫る!」では、労働運動に関わるきっかけから、休日の過ごし方やマイブームまで、根掘り葉掘り60分のロングインタビューを配信する。

やるしかない! スタートは初の女性専従執行委員、女性の課題解決のために奔走した日々を経て今がある

シリーズ初回は、初の女性会長となった芳野友子連合会長。前編では、JUKI労働組合(単組)や連合東京女性委員会で奮闘した日々を通して、その素顔に迫ります。

女性初の執行委員に立候補

—労働運動を始めたきっかけは?

ミシンメーカーのJUKIに入社して2年目に、労働組合の委員長に声をかけられて専従書記になりました。「3歳の頃からバレエをやっていた」という社内報の記事を見て、「1つのことを長くやってきた人は労働組合の仕事に向いている」と。それがきっかけで、労働運動にもこんなに長く携わることになりました。

組合専従になった時、書記長から「労働組合はお世話係。どんな些細なことでも組合員の声を受け止めて解決していかなければならない」と教わりました。ところが、女性組合員から相談があった時、「それは女性の中で解決して」と取り合ってもらえなかった。執行委員がダメなら委員長に相談したら、「だったら、君が執行委員になって解決すればいい」と返されました。「やるしかない!」と役員選挙に立候補し、初の女性専従中央執行委員になりました。

中央執行委員になれば、会社と直接話ができます。女子の制服のリボンやベルトがすぐ傷んで困るという話を聞いて、会社と交渉し、貸与を実現しました。女性組合員のみなさんがすごく喜んでくれて、組合を応援してくれるようになりました。社員食堂のスープの肉団子が3個から2個になったのは実質値上げだという声にも対応しました。

単組の執行委員になったことで、連合東京の女性委員会にも参加することができました。ここで、「仕事も子育ても組合活動も」というパワフルな女性役員に出会い、衝撃を受けました。先輩たちは、職場の実態を把握し、どうすれば女性の権利が守られ、安心して働き続けられるのか、真剣に議論していました。それに刺激を受けて、私も必死で勉強しました。この出会いがあったからこそ、今の自分があると思っています。

女性が働き続けられるように

—JUKI労組の活動で印象に残っていることは?

1990年に法律の施行に先駆けて育児休業制度を導入したことです。

当時、女性社員は結婚や妊娠・出産を機に退職していました。均等法が施行され、女性の職域は拡大していましたが、両立を支援する制度は不十分だったからです。どうすれば、働き続けられるのかと他の組合の取り組みを調べてみると、労働協約で育児休業を制度化していました。JUKIでも導入できないかと執行委員会で提起しましたが、「女性の幸せは良き妻・良き母になること」と言われ、理解が得られませんでした。私も勉強不足で、なぜ育児休業がJUKIに必要なのかを十分説明できませんでした。説明できなかった自分が悔しかった。そこで、猛勉強し、女性組合員の声も集めました。そして1年かけて執行部を説得し、育児休業を制度化することができたんです。取得第1号の女性組合員から「育休ができたから会社を辞める理由がなかった。ありがとう」と言ってもらえた時は、本当に嬉しくて…。もっと頑張ろうと思いました。

もう1つは、「パパの日・ハハの日」(8月8日)の職場見学会です。組合員の子ども(小学生)を対象に毎年開催していますが、事前にIDカードを渡して、親と一緒に出勤し、一日を会社で過ごす。始業時間中に親の職場に行き、そこで、どんな仕事をしているのか聞き、親が自分の子どもに直接説明する。子どもたちは、親が働く姿を見て、働くことの意義や大切さを実感します。生産・設計・管理・営業といろんな職場を回るんですが、一番人気は、やはりものづくりの職場。メッキの表面処理工程の熱さや臭い、産業機械を制御するボタン操作、そんな現場の光景に子どもたちは心を動かされています。

この職場見学会は、組合員と子どもたちから大変好評で「子どもの看護休暇」導入に向けて職場実態調査を行った時、自由記入欄に「職場見学会に参加して、子どもが働くことを応援してくれるようになりました。ワーク・ライフ・バランスにつながるイベントだと感謝しています」と書かれていて嬉しかったです。

「子どもの看護休暇」は、2002年の育児・介護休業法改正で努力義務となり、2005年に義務化されました。法整備も重要ですが、組合員一人ひとりがやりがいをもって働き、幸せに暮らしていくための支援も、労働組合にとって大切な取り組みだと学びました。

国内初のセクハラ実態調査を実施

—連合東京女性委員会の活動で印象に残っていることは?

1996年に実施したセクシュアル・ハラスメントの職場実態調査です。

当時、均等法施行10年の見直しが日程に上っていました。労働組合の女性たちには、均等法を抜本改正し、今度こそ「男女雇用平等法」を実現しようという強い思いがありました。連合本部はもちろん、地方連合会の女性委員会や構成組織の女性部・女性協議会でも頻繁に勉強会が開かれ、改正の論点や審議日程について情報が共有されました。連合東京女性委員会も、プロジェクトを立ち上げ、休日に集まって議論を重ねていました。

大きな論点は2つ。男女を対象とした性による差別を禁止する法律とし、労働時間等については男女共通の規制とすること。セクシュアル・ハラスメントの防止規定を入れること。

セクハラについては、1991年に日本初の訴訟で会社の責任を認める全面勝訴判決が出ていました。アメリカでは、日本企業の現地事業所がセクハラで訴えられ、不買運動も起きていました。

セクハラは、労働者の人権問題であり、安全・快適に働くという職場環境の問題。どんな対策が必要なのか、まず職場の実態を知る必要があると、連合東京女性委員会でセクハラ実態調査を行ったんです。びっしりと体験が書き込まれたアンケート用紙が返ってきて、「調査を通してこれがセクハラだったのか」と気づかされたという声が多数寄せられました。

調査結果は大きな反響を呼びました。労働関係の情報誌やマスコミに大きく取り上げられ、テレビドラマのデータにも使われました。私たちは職場のチェックリストを作成し、連合本部と連携して「ストップ セクハラ」キャンペーンを展開しました。

私は当時、審議会の下に設置されたセクハラに関する調査研究会に労働側委員として参画していました。調査結果をもとに職場のセクハラの実態を訴え、それが反映された研究会報告が審議会に提出され、事業主にセクハラ防止措置を義務づける画期的な法改正につながりました。まさに現場の声を生かした政策実現の取り組みであり、自分たちの運動が社会を変える原動力になると実感できた経験でした。

女性による女性のエンパワーメント

—産業別組織の活動で印象に残っていることは?

私がJUKI労組の執行委員になった時、加盟していたのはゼンキン連合でした。その後、1999年にゼンキン連合と金属機械が組織統合してJAMが結成されますが、産別の活動では、ゼンキン連合が設置しJAMに引き継がれた女性協議会での活動が印象に残っています。

ゼンキン連合の女性役員は本当に少なくて、女性組合員の声を聴くために女性協議会を設置しました。参加者は単組の職場委員や書記の女性たち。執行部ではありません。ゼンキン連合の加盟組合の中でも、私は初の女性専従役員で、もっと女性の役員やリーダーを育てていかなければと思っていましたが、産別のリーダー研修に参加できるのは、単組の次期委員長や次期書記長の男性役員。女性が参加するチャンスはほとんどありませんでした。

そこで、女性協議会で「女性のためのリーダー育成研修」をやろうと考えたんです。

二泊三日の合宿形式で、講師を招いて、発声やスピーチの表現、ディベートなど議論の仕方や理論武装を学ぶ、実戦的なリーダー育成研修を企画・開催しました。とても好評で、JAMの女性協議会にも継承されました。毎年の研修で参加者のレベルは着実に向上していきましたが、労働組合の女性役員はなかなか増えない。女性協議会は何の権限もない。講師の先生も、こんなに素晴らしい人材が育っているのに、なぜ活かさないのかと憤慨していましたが、この研修で学んだこと、そして一緒に学んだ仲間とのつながりは、今も私の大きな糧になっています。

→[後編につづく

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