JR千駄ケ谷駅は1904年に開業して今年120年を迎えた。駅北側に隣接して「新宿御苑」がある。大正天皇の大喪の礼が行われた時には、駅の真北に新宿御苑仮停車場が開設された。昭和天皇の大喪の礼も行われたこともあって、周辺の駅のような発車メロディは導入されず、代わりに発車ベルが鳴る。新宿御苑は、歴代総理大臣が主催した「桜を見る会」の会場としても有名になったが、昭和40年代頃、休みの日は若者の社交場として賑わった。ギター片手にフォークダンスに興じる多くの若者の集いに、小学生の頃、私も父の会社の従業員に連れて行ってもらった記憶がある。
改札口を出て、横断歩道を渡った右手に津田塾大学<1900年の設立時は「女子英学塾」>の千駄ヶ谷キャンパスがある。創設者は、今年7月に発行された新5,000円紙幣の肖像にもなった明治の教育家で、日本初の女子留学生として渡米した津田梅子だ。父が下総佐倉藩(現千葉県佐倉市=私の中学校教員時代の勤務地)の武士であったこと、江戸牛込南御徒町(現新宿区南町=私の出身の牛込第三中学校の近く)が津田梅子の生誕地であったことでどことなく親近感がある。津田塾大学の卒業生には、企業の役員や官公庁の職員も多く、女子差別撤廃条約の批准(1985年)や男女雇用機会均等法(1986年)の施行時の活躍がめざましかったと言われる。正門の脇には「Empowering Women to Make a Difference」の言葉が掲げられている。リーダーシップを発揮して、社会に新しい流れをつくり出せるようなバイタリティ溢れる気概ある女性を輩出し続けたいという建学以来の精神が読み取れる。
津田塾大学の先に、今年創立100周年を迎えた日本将棋連盟が入る9月竣工の「ヒューリック将棋会館千駄ヶ谷ビル」がある。会館には、プロ棋士の公式戦が行われる対局場の他、訪問した一般の人同士が指せる「棋の音道場(KINONE DOJO)」があり、初心者・学生・社会人や老若男女を問わず、多くの人が熱のこもった対局を楽しんでいた。
将棋会館から道を隔てて、東京体育館がある。1956年に東京都体育館の名称で完成し、1964年に開催された第18回東京オリンピックでは、体操競技の会場として使用され、日本は男子団体で2連覇、女子団体で銅メダルを獲得した。女子個人総合で優勝したチェコスロバキアのベラ・チャスラフスカの演技は「オリンピックの名花」と讃えられ、人気を博したことを覚えている人もいるだろう。1980年、大学の体育祭が東京都体育館で行われ、体育連合会剣道部の私は応援団長を務めた記憶がある。老朽化のため1回目の改修が行われ、1990年に東京体育館として全面改築オープンとなった。2012年に2回目、2018年に3回目の改修工事が実施され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、1年延期して2020年に開催された第32回東京オリンピック・第16回東京パラリンピックでは、卓球競技の会場として使用された。オリンピックの混合ダブルス金メダルの水谷隼・伊藤美誠ペア、女子団体銀メダルの石川佳純や平野美宇、男子団体銅メダルの張本智和などの活躍は記憶に新しい。
今年はラニーニャ現象1で、昨年より厳しい寒さが報じられている。北海道、東日本と北日本の日本海側、山陰地方も降雪量の増加が心配される。11月7日は立冬だったが、今年の首都圏は暖冬のスタートとなった。夏も秋も暑い日が続き、11月になっても台風の発生や真夏日の地域もある。散歩には有難い気候だが、地球温暖化の影響が心配だ。
- ラニーニャ現象:太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象。数年に一度発生する。(気象庁HPより) ↩︎