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リーダーズボイス

ITUC新会長に郷野晶子連合参与が就任

2022年11月17~22日、オーストラリア・メルボルンで第5回ITUC(国際労働組合総連合)世界大会が開催された。4年に1度の大会のメインテーマは「新しい社会契約※」。会期中の執行委員会では新会長に郷野晶子連合参与が選出された。
大会のポイントとともに、初の日本人トップとなった郷野晶子新会長に就任の抱負と日本の労働組合へのメッセージを聞いた(月刊連合2023年1・2月合併号転載)。

Report ITUC第5回世界大会

「新しい社会契約」をテーマに

ITUC第5回世界大会には、世界130ヵ国・地域から総勢1182名が参加。連合からは芳野友子会長を団長に代議員16名が出席した。女性代議員比率は50・84%で、国連が提唱する「203050(2030年までに意思決定の場に女性を50%入れる)」が達成された。
大会テーマの議論にあっては、ロシアによるウクライナ侵攻、ミャンマーや香港などにおける民主主義の後退と人権侵害に強く抗議し、新型コロナウイルス感染症のパンデミックや技術革新、気候変動の影響で世界の格差と不公正が一層深刻化しているとの認識を共有。連合の芳野会長は「生産性向上や公正な配分の実現、労使間の課題解決に向けて話し合う建設的な労使関係の構築が、新しい社会契約においても有効である」と意見表明。活発な議論を経て「結社の自由」「団体交渉」「社会対話」を中心に据えた「新しい社会契約(雇用、権利、賃金、平等、社会保障、包摂)」の実現によって、直面する課題の克服に必要な「回復力(レジリエンス)」の基盤をつくるとする「大会宣言」が採択された。
4つのテーマ別フォーラム(グローバル化、テクノロジー、気候変動、組織化)でも活発な議論が行われ、連合の代議員からは、平和行動・核兵器廃絶、フリーランサーの労働課題、「公正な移行」に向けた取り組みなどについて課題を提起した。
また、大会では、新体制として、連合から郷野晶子連合参与が会長、芳野友子連合会長が副会長、則松佳子連合副事務局長が女性委員会委員長に選出された。

ITUC(国際労働組合総連合)[International Trade Union Confederation]
ITUCは、各国のナショナルセンターで構成する国際労働運動を代表する組織。世界163の国・地域の332組織が加盟し、組合員数は2億人を超える。2006年にICFTU(国際自由労連)、WCL(国際労働組合連合)、両組織未加盟のナショナルセンターによって設立。連合は、ITUCの前身組織であるICFTUに1989年の結成と同時に加盟。

※ 社会契約とは、政府は人々の同意によって設立されたものであり、政府は人々の権利を保護する役割があると考える思想にもとづく用語。

Interview 郷野新会長に聞く

就任にあたっての思いと課題克服へのアプローチ

郷野晶子(ごうの あきこ)ITUC会長、連合参与
1981年ゼンセン同盟(現・UAゼンセン)書記局入局。1998年TWARO(国際繊維被服皮革労組同盟アジア太平洋地域組織)書記長。ゼンセン同盟、UIゼンセン同盟、UAゼンセンで国際局長(常任中央執行委員)を務める。インダストリオール・グローバルユニオン繊維衣料製靴皮革部門共同議長、UAゼンセン副会長等を経て、2017年ILO(国際労働機関)労働側正理事。2022年11月、ITUC(国際労働組合総連合)会長に選出。

「アジア繊維」が運動の原点

―ご就任、おめでとうございます。ITUCトップとして舵取りを担うことになりましたが、国際労働運動に関わるきっかけは?

1981年にゼンセン同盟(現・UAゼンセン)国際局に入局しました。大学を卒業して自動車メーカーに就職しましたが、英語力を磨きたいと勉強を続けていて、その英語の先生がゼンセン同盟の通訳をしていたご縁で声をかけていただきました。労働組合のことはまったく知らないのに、英語を活かせるならとこの世界に飛び込んでしまったんです。
最初に組合活動の基本を叩き込まれました。ゼンセン同盟ではどの局に所属していても、組織化と政治活動は全員が担います。オルグ活動の厳しさも喜びも体で覚えました。国際局で担当したのは、「アジア繊維」と呼ばれたTWAROの事務局です。全繊同盟(ゼンセン同盟の前身)は「アジアの繊維労働者を1つにまとめたい」という強い思いから、1958年に「アジア繊維労組会議」準備会を発足させ、当時の滝田実会長自らアジア各国の労組をオルグして回りました。その熱意が通じて1960年にTWAROが結成され、全繊同盟内に事務局が置かれました。繊維産業は、近代化に伴い最初に発展した産業であり、最初に労働組合が結成され弾圧されました。そういう厳しい環境に置かれたアジアの繊維労働者の組織化・連帯支援を通じて様々な経験を積むことができました。
1998年にはTWAROの書記長に就任し、ネパールやカンボジアの産業別労働組合の立ち上げ支援に関わりました。ICFTU-APROの活動にも積極的に参加しました。その中で世界の製造業労働者の厳しさ、世界の労使関係の違いを肌で感じる機会を得ました。2017年にはILO理事となり、労働基準づくりのプロセスや社会対話の大切さを学びました。これまでの経験と巡り合わせが、今に活きていると感じます。

一体感、納得感が持てる運動を

―ITUC会長に就任されての思いは?

今、世界は分断の危機にあります。ロシアのウクライナ侵攻、ミャンマーのクーデター、香港やベラルーシでの労組弾圧など、平和と民主主義が脅かされています。強い労働組合、強い団結がなければ、この危機に立ち向かっていくことはできません。
ITUCは2006年、様々な苦難を乗り越え、結成されました。加盟組織は163ヵ国・332組織にのぼり、それぞれの国の労働運動の歴史的経緯も背負っています。意見の相違があっても、すべての参加組織が「一体感」を持って「納得感のある運動」を進めていくことが、私の会長としての役割です。
そのためには運営における「governance(統治)」「transparency(透明性)」「accountability(説明責任)」が重要だと考えていますが、今回の大会では、運営の透明性を高める規約改正が実現しました。改正された規約に則り、コンセンサスを得ながら議事運営を行い、「納得感のある運動」を進めていきたいと考えています。
また、この40年余、私はアジアの繊維労働者とともにありました。その経験から、特に発展途上国に寄り添った運動を大事にしていきたい。途上国では、いまだ労働基本権が確立されておらず、社会対話も不十分です。ITUCとして、労働基本権の確立や多国籍企業との対話に向けた環境づくりに取り組み、途上国の組合が自立して活動を行うためのノウハウを提供していきたいです。

拡大する格差と貧困

―国際労働運動を取り巻く現状と課題をどう見ていますか?

世界で労働組合の存立を脅かす事態が起きています。パンデミック、技術革新、気候変動は、世界の貧富の格差を拡大させています。ITUCの「Global Rights Index 2022(世界における権利指標)」によれば、結社の自由を侵害している国は、2021年106ヵ国から2022年113ヵ国に増加。労働者に肉体的暴力をふるう国は45ヵ国から50ヵ国に増加。87%の国でストライキ権が、79%の国で団体交渉権が侵害されています。また、ILOの『グローバル賃金レポート2020-2021』によれば、賃金労働者の19%(3億2700万人)が最低賃金以下となっています。政治的にも経済的にも非常に厳しい状況です。

―大会では、その克服に向けて「新しい社会契約」を実現するという宣言が採択されました。

「新しい社会契約」には「雇用」「権利」「賃金」「社会的保護」「平等」「包摂」という6つの柱があります。
「雇用」は、ディーセントで安定した雇用の創出。2030年までに現在の非正規雇用の半数を正規雇用化することを要求しています。「権利」は、結社の自由・団体交渉権・ストライキ権の確保とサプライチェーンにおけるデュー・ディリジェンスの実施。「賃金」は、サプライチェーンも含めた公正な賃金。そのために組織化、団体交渉、社会対話を推進するとともに、「ミニマム・リビング・ウェイジ(最低生活賃金)」を使ってインフォーマル労働者・家内労働者も含めた賃金の底上げをはかります。「社会的保護」は、すべての人の社会保護の確立です。「平等」は、ジェンダー、性的指向、人種、イデオロギー、宗教、社会的地位にもとづく差別のない世界をめざします。「包摂」は、SDGsの目標8「働きがいも成長も」にあるディーセントワークの目標値を実現します。
この「新しい社会契約」としての6項目を追求しつつ、パンデミックや気候変動、プラットフォームエコノミーへの対応など世界共通の課題については、加盟組織と協議しながらITUCとして運動を進めていければと思っています。

現地の労働組合とのネットワークを

―日本の労働組合に求められる役割とは?

国によって、労使関係も運動スタイルにも違いがあります。日本の労働組合は、「建設的な労使関係」を通じて労働条件の向上を実現してきました。一方、「敵対的労使関係」を通じて存在をアピールし、要求を獲得してきた国もあります。今、「ビジネスと人権」という観点から、各国企業にはサプライチェーンも含めた人権・環境への目配りが求められています。欧州では、デュー・ディリジェンスを義務化する動きもあります。これまでの国際労働運動においては、敵対的労使関係型のキャンペーンを展開し、多国籍企業にプレッシャーをかけて改善を促す運動が主流でした。発注元はブランドイメージを損ねることを恐れて迅速に動くからです。それは成果が見えやすいのですが、サプライチェーンの労働者が自立し、労使関係を通じて問題を解決していく力を持てなくなるのではないかという思いも持っています。
日本の労働組合には、その素晴らしい建設的労使関係を海外のサプライチェーンまで広げてほしい。そのためにまず取り組んでほしいのは、現地の労働組合や活動家とのネットワークづくりです。日常的に交流すると、様々な問題が見えてきます。情報も入ってくるし、対応もしやすくなります。耳が痛いこともありますが、その段階で問題解決をはかることこそ、労使紛争を未然に防ぐ最大の方法であり、デュー・ディリジェンスを進める基盤にもなります。具体的な改善には、GFA(グローバル枠組み協定)などのツールも有効です。同じ働く仲間としてネットワークを構築し、アジアのリーダーとしての役割を果たしてほしいと思います。

―読者へのメッセージを。

ITUCにおいて、連合に対する信頼は非常に厚い。特にアジアの労働組合はそうです。これは歴代の連合会長がITUCの運動に積極的に参加し、アジアの代表としてリーダーシップを発揮されてきたからです。そういう連合のポジションは組合員のみなさんによく知られていないかもしれませんが、私のITUC会長就任をきっかけに国際労働運動に目を向けていただけたらうれしく思います。
平和と民主主義があってこそ、労働組合は活動ができます。ミャンマーで軍事クーデターが起きて2年になろうとしていますが、軍事政権下で強制労働や労組への弾圧が続いています。ミャンマーの労働組合は包括的経済制裁を求めていますが、日本企業には取引を再開する動きも出ています。改めて厳しい状況に置かれた世界の労働者に思いを寄せていただければと思います。

―ありがとうございました。

連合代表団

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