労働者の「お祭り」であるメーデー中央大会が、4月27日に代々木公園で開かれる。労働者の団結をアピールするイベントというと堅苦しいが、食べ物の販売から子ども向けの野球教室まで、家族で楽しめるコーナーが盛りだくさん。カンパや買い物を通じて、能登半島地震の被災地支援ができるブースもある。東京以外の全国各地でもこの時期、関連イベントが多数開催されるので、ご家族やご友人と一緒に会場を訪れてみては?
【メーデー】
1886年5月1日、長時間労働と低賃金に苦しんでいた米国の労働者たちが、シカゴでストライキを決行したのが起源。これを機に5月1日は「国際的な団結の日」と定められ、多くの国でメーデーが開催されるようになった。
日本では1920年に第1回が開かれ、第二次世界大戦中は中断されたが戦後再開された。5月なので「メーデー(MAY DAY)」ではあるものの、大型連休の期間中、しかも平日の5月1日は参加しづらいという事情もあって、現在は連休初日の4月末に開かれている。
※この記事のガイドを務める人
連合連帯活動局長 杉山 寿英さん
連合連帯活動局部長 清原 隆秀さん
見どころ①出展ブースは70以上!屋台グルメも堪能できる
コロナ禍に伴う動画開催から、リアルとウェブの併用へとシフトしてきたメーデー。「昨年も新型コロナウイルスが2類相当感染症から5類へ移行する直前だったため、一部の出展者は自主的に行動を制限していました」と、杉山さんは振り返る。子ども向けイベントなども、一部は休止されていた。
95回目となる今年は4年ぶりに、コロナ禍前と全く同じ条件での開催となる。例年通り、連合の芳野友子会長や政府関係者らを招いて式典が開かれるほか、70以上の団体がブースを出展する。連合加盟の労働組合だけでなく、子ども支援や動物愛護、外国人支援などに取り組むさまざまな団体が物販、展示などを行う予定だ。
「世界が平和でなければ、労働者は安心して働けず組合活動もできません。だからこそ、メーデーでは多くの人に、SDGsの課題や世界の問題に目を向けてもらおうとしています」と、清原さんは話す。当日は、海外で活動する国際機関や、国内で子どもの貧困問題などに取り組む団体の関係者もブースに詰めているので、具体的なエピソードを聴くなどして、視野を広げてみてはどうだろう。
ちなみに「15以上の団体がイカ焼き、オムそば、タピオカドリンクなどの飲み物、食べ物も販売します」(清原さん)。出展者以外にキッチンカーも設置されるので、屋台グルメも大きな楽しみになりそうだ。
見どころ②子どもが喜ぶイベントがいっぱい!
「労働者のお祭りなので、子どもも含めて家族が楽しめるイベントにしたい」(清原さん)という思いから、子ども向けのイベントもたくさん用意されている。例年人気なのは、元東京ヤクルトスワローズ選手のギャオス内藤こと内藤尚行さんによる「キャッチボール教室」。プロ野球選手会が2004年にストライキを断行した時、連合と関わるようになったことが縁だとか。「盛り上げ上手の内藤さんが、毎年楽しい場を作ってくれます」と、杉山さん。
コロナ禍で休止されていた、子ウシやヤギ、ウサギなどの動物と触れ合える「移動動物園」も久々に復活。ミニSLやバルーンアート、子ども縁日なども開かれる。
「キャッチボールもできない公園が増える中、広い場所でのびのびお子さんにボールを投げさせてあげられる良い機会では。遊んだ後でさりげなくNPOのブースに誘導し、SDGsなどを学んでもらうのも『あり』かもしれません(笑)」(清原さん)
見どころ③被災地支援のコーナーを特設
杉山さんは「元旦早々に能登半島地震が起き、いまだに復興には程遠い状態が続いています。メーデーも一人ひとり、できることをして被災地を支え合おう、と呼びかける場にしたい」と語る。このため地元の特産品や地酒、和菓子などを販売して売上金の一部を復興支援に寄付するブースが設けられる。イラストレーターが来場者の似顔絵を書き、売上金を寄付するコーナーや、各家庭で余っている食料や不要な文房具を、被災地で必要としている人に届ける活動もある。
また中央式典では、来賓あいさつや春季生活闘争の現場の訴えなどに並び、被災地で復旧・復興に取り組む関係者から現場報告も行われる予定だ。式典は堅苦しい挨拶ばっかりで…と敬遠しがちな向きも、一度耳を傾けてみては。
「1人でも多くの人に会場に足を運んでいただき、迅速な復旧・復興に向けてできる範囲でお力を貸していただきたいと思います」(杉山さん)
見どころ④会場に直接来られない人へ…地方にも「メーデー」はある!
首都圏以外に住む人が、東京のメーデー中央大会に来るのは難しいだろうが、実は多くの都道府県で、連合の地方組織である地方連合会が中心となってメーデーを開催している。各地域の参加者が工夫を凝らし、アトラクションや社会貢献の場を用意している。
例えば秋田県では「ご当地ヒーローショー」が開かれるほか、熊本県では地元の高校生による和太鼓の演奏も行われる。このほか大道芸人によるショーやじゃんけん大会などが開かれる地域も。フードドライブや復興支援の募金、献血など社会貢献に関われるブースも多い。
ただ日程は連休初日から5月上旬まで、地域によってばらつきがある。地元でイベントが開かれるかどうかも含め、ウェブサイトや地域で発信される情報をチェックしてみてほしい。
見どころ?⑤ちょっとマジメな話
人びとの趣味や嗜好の多様化、労働組合の組織率の低下などによって、残念ながらメーデーは昨今、社会からの注目度がやや薄れている。連休真っただ中の5月1日から、4月の連休初日に開催日を移したり、式典時間を短縮したりと工夫しているものの「パワーダウンは否定できません」(杉山氏)。参加する労働組合も、家族を抱え休日の予定もある組合員に、メーデーへの参加を促すのは難しくなっている。
「だからこそ、メーデーには実は楽しいイベントがたくさんあることも知ってもらい、より多くの人に進んで参加してもらいたい。また今の形に満足せず、外部からも新鮮なアイデアを頂いて、メーデーそのものの魅力も増してければと思っています」と、杉山さんは話す。
「一方で、メーデーがあくまで『働く』を軸とした労働者のイベントです。春季生活闘争での大幅賃上げが報じられているものの、恩恵を受けてはいない人もたくさんいます。労働者が集まって社会を変えるという気運醸成の場であることも、忘れてはならないのです」
(執筆:有馬知子)